「ま、待てって!今朝の事といい、話しておく事はあるんだ!」
「や……無い。意味無い。シオン起きたらまた時間取るから……」
引き止められるけど、多分私じゃ分からない。なんせ何も覚えてない。
とは言え、必要ならシオンが再度話す様にしよう。
「待て待て!聞くだけ聞け!」
【黙れ】
「「「……!?」」」
全員拘束。
「うるさいなぁ……私が帰るって言ったの聞こえてないの?」
「な……!なんだ、コレ……!」
「…………動かない……!」
「信じられん……!指先さえ動かせぬぞ!」
「私と話したいなら身分の証明からしてよね。まぁ……私が学校出たら解放してあげる。私の記憶に残るくらいの事してから話しかけてよね」
あー……そういえば能力の事は黙ってたんだっけ……まぁいいや。
認識してないってことは存在しないってことだから。
私が認識してない生物は存在していない。
「誰だったか……見覚えはありそうだけど、今日のことは水に流して。明日からまた、シオンと変わらない日常を過ごしてね」
なんとなく、どこかでは見たことある気がする。
主要人物だったとして……ここまで記憶から消えるとは……そう言えば、日が浅い内に1ヶ月も引きこもるのは転生生活でも確かに無かった気がする……
まぁいいや。シオンが覚えてるなら。どうでも。
「チャオ」
これ以上会話をするのも無意味だ。
♢♢♢
『ハンにゃらばっぴんば!?』
「おー、おはようシオン」
(……おぉ、おはよう姉さん。今何時……というよりスゲェことしてんな)
「だって声かけたりしても起きなかったんだもん。試してみるのもアリかと思って」
(……まぁ、いいならいいが)
「体が一緒だと伝わるんだねー。私、やっぱり色々鈍いのかもー」
(……)
シオンを起こそうと色々試してみた。
「とりあえず代わろ?私、歩いて帰ってきたんだよ?」
(あー……そういや、島田どうなった?)
「シマダ?」
(……ポニーテールの女。代わった後で見てないか?)
「うーん……いたような、いなかったような……」
聞いたことくらいはあるような……
(まぁいい。とりあえず問題はなかったんだろ)
「多分?何人かには絡まれた。シオンのこと知ってたから多少話したけど、私が思ってるより完全に忘れてる」
(またテストするか……)
「テスト?」
(やらなかったか?クラスメイト覚える暗記)
「えぇ?知らない。クラスって何人いるの?」
(おおよそ50だ)
「……私、やっぱり学校やめとくよ。致命に向いてない」
50?
何それ、1クラスでそれ?が?何クラスあるの?
100?無理無理無理。それ以上はもっと無理。それ以下でも無理。
そんなの当たり前に覚えてるの?頭おかしくない?
(いくら興味無いっても顔だか名前だかは聞けば分かるだろ)
「分かんない。トリチウムとかテルフェナジンとか言われて普通の人は分かるの?」
(……分からんかもしれん)
「でしょ。生物の名前なんて番号でいいんだよ。国、県、都市、あと地区くらいをアルファベットにしてさ、そこで何番目に生まれたとかで」
(……VNAMT12345、みたいなもんか?)
「うん、そんなもん」
したらわざわざ氏名住所生年月日なんて書かなくても名前だけで証明できる。
なんでわざわざバラバラにしたがるんだ。
(区別つかねぇだろ。というか覚えてられんだろ)
「そう?よく分からん文字覚えるより単純化した記号と数字の方が覚えやすいと思うけど」
(……まぁ、漢字全部覚えろは無理だな。どんな字か聞くこともあるしな。けど記号と数字も同じだろ。より長くなる)
「んなもん名前呼びするみたいに数字だけでもいいじゃん。少なくとも都市は同じでしょ。地区まで同じなら数字だけ、年代も近いなら数字も下何桁くらいで分かる」
(……合理的に考えればそうだな?ただ、名前には願いとか個性も出るじゃないか)
「願い、ねぇ……」
名前には名付ける意味があって、意味には願いがある。
どうなってほしい、というのも、星だか技だかウイルスだかに自分の名前を付けて誇示したいというのもそれだろう。
双神詩音には、どんな意味があるだろう。
詩音は能力から、音と詩、言葉の文字や響きによる世界改変の名前だろう。
双神……同じ名前に出会った事はない。漢数字の二神であれば探せばいるが、双子の字を使うものは見た事がない。
そもそも私は双神詩音とかいうほとんど根源、ほとんど神みたいな奴の現実逃避システムだという事がほぼ確実だ。
名付けによる願いと言うなら、奴の理想とする世界にしてくれ、という意味になる。
奴とは直接話した事は無い。おおよそ私が死んでる時か意識の無い時、この体で出てくるからだ。
奴は何を望む?私がその世界にする?
それが私の発生理由なら……
「よし、全て……潰そうか」
(まーて待て待て待て!何でそうなる!?バカが発狂すると極端な飛躍をするな!?)
「うん?いや、双神詩音の理想を目的に私がいるならそうなる」
(あ……?何でアレの話になる?)
「私の名前って奴の理想をこの言葉で叶えろって意味なんでしょ」
(……?アレがそのまま姉さんなんだから、そもそもウタネの名前に意味があるか?)
「あ、そっか……無いかも」
(オレも同様。けど姉さんだって『言葉の願い』は理解するところだろう)
「願い……まぁ、そうなってほしい、ってことなら分かるよ。私の全部みたいなもんだし。昔は……転生し始めた頃は、この言葉でもあまり使ってなかった。だんだんできる事がハッキリわかってきて、次元世界最強に首チョンパされる頃にはやるやらないまで意識した。つい前の世界では、私は完全に全てを超えることを理解した」
(……太陽に対応不能だったろ)
「それはアナタが止めたからでしょ。太陽も金星も、私が認識したからで良かったんだ」
(……あ?)
「ふふ、私の能力範囲である『私がいる世界』って……どこまでだと思う?」
(……は?)