「……呆れ果てるばかりだ。2人で悩んだ結論がそれか?」
「……そのため息はもっともだ。だが女の喜ばせ方、奴の好みは記憶を探っても見つからなかった。であるなら全ての生物に共通の快楽が最適だと判断した」
やはりダメか。
登校してきたコイツと話すために霧島に相当の説得をしたというのに。
「答えは昨日既にあったはずだ。そこまで昔の記憶を探る必要は無い」
「昨日……?」
「明らかに変わった点があっただろう」
「異端審問か?」
「それの後だ」
「……島田とオレが付き合っているという匂わせを許可した事か」
「それだ」
「ふぅ……ん、で?それをどうしろってんだ」
「今からでもヨリ戻せ」
「匂わせることは許可したが付き合うとは言っていない気もするぞ」
「事実はどうあれ、島田はお前と付き合い始めたと思ってたんだ、それを何かしらでフッたんだろ?なんか言ったんじゃないか?お前かウタネか知らんが」
「……あぁ、そういえば屋上に行く前に不可解な会話をした」
「言ってみろ」
「内容についてはあまり言えないな。オレ達に関わることだ」
確か、奴の変わり身を見て多重人格の症状と推察、オレ達を知りながら日常を送れるなら永遠に届くやも、とオレ達に誘いをかけた。かけたら1番が良いなどという不明な解答があり加入順は変わらないと言った瞬間キレて殴り飛ばされ、姉さんに切り替わって……という流れだったな。
「どうせ島田に聞いても内容は分かる。隠すだけ無駄だ」
「む、しかし奴のプライバシーにも関わることだ」
「島田の?」
「代表、お前は奴とどのくらいの付き合いになる?ドイツにいたらしいからこの高校からか?中学時代とか知らないか?ドイツにいた事は知っていたか?」
「島田はこの学校に来るまでドイツにいた、と言うのは普通に話している。それこそ日本語での会話もたどたどしいくらいだった。日本にはいなかっただろうな」
「そうか……ならやはり、奴の過去を知るのは本人と妹、親はいるのか?」
「何故そこまで聞く?個人情報だ。俺からは言えん」
「……奴の変わり身を見て、オレは奴も姉さん同様の多重人格じゃないかと考えている」
「……はぁ、バカが」
慎重に進めたつもりがため息を吐かれてしまった。
何故だ?
「島田はお前と付き合えたと思って舞い上がってたんだ。多少ハイになってもいいだろ」
「……分からないのはそこなんだ。奴はオレに庇護的な態度を取ったり下に置いたり、オレをコントロールしようとしていた。そんなのと付き合って何故喜ぶ?答えは簡単、別の人格の感情であれば整合性が取れる」
「お前も頭の良い割にバカだよな。女心は俺より分かるだろ。ツンデレってやつじゃないのか」
「……知らん」
女心と秋の空はなんとやら、知った事ではないな。
だかそうか……ツンデレね。そういう見方もできる。
今までは読心を使う事も多かったし、前の世界では言葉にする奴も多かった。
心情を察知する力は衰えていたか。
「では代表、オレはどうすればいい。島田と付き合えば済むのか?」
「まぁ、言ってしまえばな」
「なるほど。協力感謝する。ホームルーム終わったら話してみる」
「全くお前……まぁいい、面倒は起こすなよ」
「ああ」
♢♢♢
「あー、島田、昨日は悪かった。少し話がしたいんだが」
「お断りよ。消えて」
オレとしてはかなり低く出たつもりなんだが、殺意さえ帰ってきた。
「……じゃあ迷惑にも独り言を目の前で言わせてもらう。6番目と言ったのはオレ達の加入順の話で恋愛における優先度の話では無い。その辺りはオレが鈍かった。だから6つだ。お前がその気なら、6つだけ願いを聞いてやる。オレに死ねと言うのもいいし、1人でAクラスに勝てと言うのも良い。遊んで暮らせるだけの金でも良いだろう。オレと姉さん以外の死で無いなら、オレにはその用意がある……じゃあな」
オレ達は支配しない。
ここで説得する行為は相手をコントロールすること。
今回は条件の提示。返事を迫る事は無い。
だが……6は多かったかもしれん。
「待ちなさい」
「……」
背を向けたオレに島田の静止。
素直に止まり、次の言葉を待つ。
「次の休み時間、私が屋上前の階段に行くから、後から着いてきなさい」
「……オーケー。抵抗しない」
授業開始まで数分。今まともな話はできないだろう。
話をする場を設けてくれるなら願ったり叶ったり。素直に了承。
さて……どうくるか?
未来は3つ。
1つ、誤解であったこと、互いに意思疎通不十分であった事で和解。以後以前と変わらない環境に置く。
2つ、条件に記した通り、オレを殺し、残機で復活したオレと恋人関係を形成。
3つ、その素性を明かし、オレと戦闘ないし敵対意思を表明する。
……3つ目、恐らくは無い。あるならこれまでいつでもできたはず。オレが手をこまねく間いつでもできたはずだった。それが無い以上、コイツはこの世界に元からいて、何故かドイツにいたオレと顔見知りであるということ。
考えても分からんな。そもそもコイツに関して分かった事が無いかもしれん。
♢♢♢
「じゃ、ウチと正式に付き合いましょ」
「ぬぅ……」
「何そんな唸るのよ」
言われた通りついて行ったらコレだ。
「いや……その理由が分からんから戸惑っている」
「何が?願い事、6つも叶えてくれるんでしょ?」
「……ああ。それはオレが言ったことだ。それは遵守する。だが……もっとあるだろ?」
「お金とか戦争の話?」
「ああ」
「要らないわ。別に困ってるわけでもないし、戦争はみんなでやらなきゃ意味無いでしょ」
「……で、出てきたのがオレと付き合うことか」
「今のところそれが『1番』よ」
「根に持ってるな。謝罪はするが」
「で?いいの?悪いの?」
「……あぁ、分かったよ」
「ちゃんと口に出して」
「ふー……う、いいよ、お前と付き合ってやる」
「よろしい。じゃ、今からヨロシクね」
姉さんもいいか?
(何今さら。どうでもいいよ)
了解。この手の話になったら代わるから。
(そりゃそうよ。私に言われてもわかんないから)
「で?何すりゃいい?」
「ん?別に?」
「なんだそりゃ。そこまで言うからなんかやらせたいのかと思ってたぞ」
「そうねぇ……」
「じゃあ代わりだ、お前の立ち位置を明確にしたい」
「立ち位置?」
「オレがお前と付き合うどうこうに色々言ったのは、お前が意味わからんからだ」
「共存する多重人格に言われても、って感じだけど」
「……まぁ、それもそうだ」
単にコイツはドイツでオレと会ってて能力についてもある程度知ってる、ってだけだからな。
オレは唐突に過去の記憶無くすわ知らん能力使い出すわ2人に分裂するわでマジで訳分からんな。
「じゃあいい。今後気が向いたら話してくれ」
「そうね。でも1つ叶えてくれたから、1つ話してあげるわ。シオン」
「……」
「そうね、今さらなんだけど、ドイツでもウチと同じ学校にアナタたちはいた。けどウチより学年は1つ下だったはず。こっちから聞くようになるけど、なんで?」
「……」
パズルのピースは埋まらない。
むしろ致命な間違いを見つけて数日分をやり直す気分だ。
「なんで?じゃねぇよ。聞いてんのはこっちなんだよ。何が学年いっこ下だった、だよ。お前マジで今の今までどういう心境でオレ達に接してたんだ」
「そうね、よく考えればおかしな話よね。ウチもドイツから引っ越してきて色々あったから……こんがらがってて……」
キーンコーンカーンコーン
「あ、予鈴……行きましょ、話す時間は今後無限にあるわ」
「……そうだな、いずれ話すならいい」