「シ……ウタネ、集合、屋上だ。飯食いに行くぞ。島田も行くか」
「……?」
「ご飯?ウチ、シオンと2人きりがいいんだけど」
「そう言うな。今後の話し合いだ」
「「……」」
妙に真剣な代表に、2人して黙ってついて行く。
「ムッツリーニ、もう大丈夫か?」
「…………問題無い」
屋上に着くや否や、謎の確認を取る代表。
「ただメシ食おう、と言うわけでは無さそうだな」
「あぁ。残念ながら、お前らのせいで厄介な事になった」
「……オレ達か?オレとコイツか?」
「どう違うんだ。お前らが付き合ったからだよ」
「……どう厄介になったか知らんがお前がそれを咎めるのか……?」
「……」
真剣に呼び出したからと思ったが、元を辿ればコイツのアドバイスのせいではないか?
「まぁ、それもいい。で、何がトラブルなんだ?」
「…………Dクラスが戦争の準備を始めている」
「Dクラス……?」
「あぁ……美春ね」
「その通り」
「美春……ああ、例の」
合宿の時に島田襲ってたガチレズか。
「島田が付き合いを始めた事でかなりヒートアップしているようだ」
「…………他のクラスメイトは意見出来ない状態」
「Dクラス代表も先の覗きの件がある。男子側の発言権は無いに等しい」
「……で?」
「で?じゃねぇ!分かってるのか!?俺たちは覗き以降補充を受けてないんだぞ!対して女子陣はこの1ヶ月十分に補充し点数がある!俺たちは補充始めた瞬間に宣戦される!このままだと確実に負ける!」
「……そんな事か。オレがいるだろ。蹴散らしてやるよ」
「お前……合宿の最後、何したか覚えてないのか」
最後……ライダーシステムで全員潰し……あぁ。
そういえば総合科目で全滅させた時にオレのも死んだんだ。
つまりは点数ねぇのか。
「そーだったな。じゃあなんだ、姫路にやらせろよ」
「いくら姫路でも包囲されればひとたまりも無い。とにかく、戦争回避が万全だ」
果たしてそうだろうか。
Dクラス程度であればまだ100点かそこら。400を超える姫路の点数なら単独で屠ることも可能ではないのか?
代表の言では20人相手は流石に厳しいらしい。
「まぁ、方針なら従おう。で、どう動く」
「とりあえずお前ら、別れたフリでもしとけ」
「えぇ!?今日付き合う話したばっかりなのに!?」
「フリでいい。戦争を回避、最悪先延ばしにして、点数を補充できるまでだ」
「残念だが代表、オレはコイツと付き合う約束をした。反故にはできん」
「フリでいいっつってんだろ」
「……フリを咎めたからこうなっている。だからそれもできん」
「お前なぁ……」
元々フリさえオレが嫌がったから正式にという話になった。
だったら……面倒だが、仕方ない。
「どうする島田。お前がいいならオレはそれで構わないが」
「イヤよ。あと呼び方もやめて。美波って呼びなさい」
「……だとよ、代表」
「く……あのままの方が良かったか……いいか、このままだとほぼ負け確だ。これ以上教室のランクが下がれば姫路の転校もあるんだぞ」
「ふむ……そういえば清涼祭で何とか回避してたようだったな。姫路本人の言い分を信じるなら、転校は回避させてやるべきか」
そういえば姫路は合宿後様子がおかしい。
ラビット成分を抜いたからメンタルか何か狂ってるのか?
「ちょっとシオン?ウチをフッて瑞稀に行こうとしてるわけ?」
「……目に見えた嫉妬だな。そんなロールプレイならやめるぞ」
「……悪かったわよ。じゃあ今から別れたフリ……でいいのよね」
「おぉ、お前、そんな聞き分けいいのか。Fクラスは割とそう言った面で優秀だよな」
「お前、じゃないわ」
「あぁ……美波」
「そ。褒めてくれてありがと♪」
代表やFFF団を名乗る不審者ども、極端な振れ幅から知性の欠如かと考えもしたが島田まで柔軟性を持つならそれはそれで評価できる。
「まぁ、お前らがそれでいいなら解決だ。しばらくは自然な流れで補充できるまで大人しくしておいてくれ。それ以降はシオンと姫路がいれば簡単に宣戦はしてこないだろう」
「……了解だ、代表」
「でも別れる必要は無いのよね」
「ああ。清水にそう思われなければいい」
「オーケー。で……シオン」
「なんだ?」
「条件追加よ。願いごと、1つ増やしなさい」
「……」
「願いごと?」
代表とムッツリーニは何の話だと首を傾げる。
「……オレが謝罪に際して提示した条件だ。願いごとを6つ叶えてやると。1つはオレと付き合うこと。それは達成した……いや、達成したからこんな面倒を言ってるわけだが……で、それを6つに戻せと」
「そうね」
「面倒な約束したもんだな。まぁお前なら何とかなるんだろうが」
「オレにだって出来ることと出来ないことがある。この世の全てとは言えんな」
オレがそうなることは可能だが。
他人を全てとするならプライムの多重譲渡……複数はまだ未達成だったな。最悪この世界のゴミがまだいるならソレに試してからでもいいかもしれない。
「俺のも忘れんなよ」
「あぁ……そうだったな。希望を聞いておこうか」
「なに?坂本にまで色目使う気?」
「ちげーよ。んな事するか。姉さんの約束もある」
「翔子のあれは忘れていい。で、希望ってなんだ。候補があるのか?」
「……無い。お前が望む力があるなら、可能な限り近付けてやろうと思っただけだ」
「あー……そこまでは考えてなかった。お前と同じはダメなのか?」
「……オレのフウシャはオレにしか使えない。だから姉さんにも別のボトルを渡してる。そうだな……お前からも成分をいただいておこうか」
「戦車とかウサギって言ってたやつか」
「ああ。お前は何になるか……」
空のボトルを取り出し、代表へ向ける。
「何に、って選べないのか?明久や姫路のやつは指定してたろ」
「……まぁ気にすんなよ。神ってのは気まぐれが常だ」
《ウルフ》
蒐集された成分はオオカミ。
「狼か。まぁ妥当なとこだろ。良かったな代表」
「どんなリアクションとりゃいいかわからん。で?それがオレのか?」
「いや……これをこのまま使うことはできない」
ウルフエボルボトル……生物モチーフ。
組み合わせるなら……無機物モチーフのタンクか。
「正確には……このボトルでの能力なら、お前ら人間には使えない」
「はぁ?」
「この、エボルトの能力には、……一般的に言うなら『耐性』が必要だ」
「じゃあなんだ、俺もそれ付けさせろよ。予防接種か何かか?」
「いいや……元基準で言うなら、ハザードレベルという基準で5以上。そして更に、一定の閾値を超える強い想いが必要だ」
「はぁ……?」
「それでも使いたいというならやってもいいが、まず間違い無く死ぬ」
オレも原典の世界をそこまで詳しく知るわけじゃない。
能力だけ、どんな事ができるかを大体わかるだけだ。
オレも初見ではフェーズ1も相当な負荷だった。このフウシャに慣れない生身の人間が使うならまず保たないだろう。
「死ぬって……そんなモン使ってやがったのか」
「あくまでお前らが使うなら、だ。オレにそこまでリスクは無い。だから今しばらく待て」
「まぁ……どうせこっちからの開戦はできないんだ。今回みたいなケースを除けばFクラスに戦争しようだなんて物好きもいないだろ」
「そうだったな。じゃあそんなとこだ。チャオ」
そういえば戦争の相談だったな。
島田ともこれで別れたフリ……このまま続けてほしいもんだ。
あとは授業サボってウルフの調整か。
ウルフタンク……速度の代わりに貫通力でも手に入るのか?