「久しぶりだね、クソガキ」
「……」
教育者にはおおよそ使用不可能だろう言葉を平然と使うコイツ。
「お久しぶりです。学園長」
「ネコ被るのはやめな。以前の態度見てれば分かる」
「……」
前回、試験召喚システムへの介入交渉にオレ寄りで喋ったからな。
伊達に学園の長はしていないか。
「なら遠慮なく」
「で、何の用だい。バカのFクラスと違って教職は忙しいんだがね」
「コレについて確認に来た」
手にしたのはエボルドライバー。
清涼祭後はなんやかんやで使用を止められるかと思っていたが、西村教諭の言では正式許可が降りているらしい。
「コレはあの時なんぞやのチケットを取り返すためだけの使用用途と話したはずだったが」
「そう聞こえるように話しただけで使い続けるつもりだったんだろう」
「そうだな。それが目的だったわけだが。聞いたところによれば正式に許可が出ているらしいじゃないか。どういうつもりだ?」
「どうも無いよ。お前さんが無理矢理使い続けるなら、他生徒だけではなく教師たちにも学園の規律が疑われる。だったら例外中の例外、観察処分者に更に例外を、というワケさ」
「ふん、オレが一度介入できた以上対策は不可能と判断したか。残念だがその通りだ。だがなるほどな、それならまぁ分からんでもない。西村教諭を通して指示するなら、担任の言う事は聞いてやったのにな」
「なら呼んできな」
「一度それで納得している西村教諭に今の話を繰り返すのか?」
「全く可愛くないガキだよ、アンタ」
「あぁ……トシは近いくらいだ」
「あん?」
「いいや何でも。したらコレは今後も使っていいってことだな」
姉さんだと百を数えてたか……もはや年齢が意味無いからな。
「そうさね……確か2つのアイテムを使っての装備だったね」
「ん……あぁ。2つの力を組み合わせ、更なる進化を遂げる能力だ……ま、現状片方は試験召喚システムボトルに枠を割かれるわけだが」
「更なる進化?はん、笑わせるね」
「……あ?」
「先の強化合宿、一部始終を西村先生から聞いたよ」
「……」
「何をどうしたかは知らないが、ほぼ全ての男子生徒を制圧したそうじゃないか」
「……」
「ふむ、ぬか喜びでもするかと思ったがねぇ」
「するわけないだろ。明らかに批判の意図がある」
「そうさ。召喚獣に任意の追加能力を、しかも敵対する全ての点数分の武器を召喚するなんてこともできるそうじゃないか。それだけの能力を持ってして、最後は肉弾戦に頼らざるを得なかった。豚に真珠、持ち腐れだよ。バカめ」
「……っ!」
《エボルドライバー!》
「おっと、逆上してアタシをどうこうしようなんて思わないことだよ。そうできるだけの能力はあるんだろうが、その事は必ず世に知れる。そうなればアンタの望みである試験召喚システムは永遠に失われる」
「……ふー、永遠に、か。それもいいかもしれない。だがわかった、それも飲み込もう。結局は何が言いたい」
「素晴らしい力を持っていても使い方が悪いって言わなきゃ分かんないかね」
「……」
「ただがむしゃらに使えばいいってもんじゃないのさ」
「……あぁ、そうだな。無限に武器を射出したり速さと硬さを装甲に使うだけじゃスマートじゃないよな」
「なんだ、わかってるじゃないか」
ふー、と息を吐き切り踵を返す。
「じゃ……次からは全体即死能力を解禁するかぁ……スマートになぁ……」
バカが……オレは最初から言っている。
この能力には即死効果もあると。
「スマートに、目に映る全てを殲滅する。ウタネはそうするからな?オレもやらせてもらおうか」
「まっ……待ちな!まともな話しようじゃないか!」
「……なんだよ」
「まさか……即死させられるって本当なのかい?」
「嘘は言わない。試してやろうか?」
「……ちょっと待ちな」
学園長は机に備えてあった電話でどこぞに連絡する。
「失礼します。学園長。急用とは何でしょうか」
「にっ!?西村教諭!?」
数分の待機後、西村教諭が学園長室に入ってきた。
「む、フタガミか。授業で見かけないと思えば何をしていた?あぁ、そういうことか。分かりました学園長。こやつを回収していきます」
そういえば授業中だな今な。
ウルフの調整といいつつ組み合わせや使い道を考えてたらここに来ていた。
まだ午後イチの授業中か。教職が忙しいってのも皮肉どころかストレートだったんだな。
「待ちな、クラスの授業は止めてるんだろう?」
「少しの時間は自習としてきました。まぁ、奴らがまともに自習などするとは思えませんが」
「ま、いいさね。西村先生、ちょっと召喚獣を出してみておくれ。1番点の低い科目がいい」
「……?はぁ、いいですが。
学園長が承認、西村教諭が召喚する。
西村宗一 日本史 605点
召喚された教諭のデフォルメキャラ。
……?
「西村教諭、学園長は最低点をと言われましたが」
「あぁ、だから最低点の科目だ」
「……600オーバー?最低で?なら最高は?」
「その時々によるが、800は超えるな」
「……まじか」
教員の召喚獣も確か物理干渉できたはず。
覗きの時に点数あればこの人1人でも可能性があるレベルだったか。
「そんな話はどうでもいいさね。ほら、ちょっとやってみな」
「学園長、やってみろとは?」
「ソイツの能力を試すのさ。真実なら点数無くなるが、許しとくれ」
「なんと!?」
「じゃ……失礼するぜ、西村教諭。
召喚されたのは栗色のサイドテールに白の装甲、へんてこな杖を持ったどっかのエースオブエース。
「あぁ、もう一つ確認したかったんだ。大体召喚獣って本人のデフォルメだよな。オレのは召喚するたび見た目変わるんだが、何か理由があるのか?」
「それも知らないね。本来なら召喚者をデフォルメするはずなんだがね」
「ふむ……まぁ、特段デメリットは無いから無視しておいてやろう」
《エボルドライバー!》
《フウシャ》《試験召喚システム》
《エボリューション!》
《Are You Ready?》
「変身」
《プライム!》《プライム!》
《エボルプライム!》
《フッハッハッハッハッハ!》
「学園長や西村教諭もご存知の通り、これがフェーズ1。その能力は召喚フィールドに存在する他の全ての召喚獣の武器召喚」
「まぁ、それは合宿の時に存分に見せてもらったが。何だ、それで俺と戦う気か?」
「違うよ西村先生。ソイツのもう一つの能力を試させたいのさ」
「もう一つ……?装備の変更ですか?」
「それも違う。この能力は、召喚獣を即死させられるらしいんだよ」
「即死……!?」
「あー、驚いてるとこ悪いが、やっていいのか?仕組みとしてはシステムを介して毒……ウイルスプログラムを流す。するとエラーを起こした召喚獣が消滅する」
言ってて何だがメチャクチャだなこの能力。
エボルドライバー内蔵というか、エボルトの能力なのか?
「全く……本当か?それなら何故合宿の時使わなかった?」
「使っても良かったのは良かったが……初期に学園長と使わないと話したし、あの合宿はオレの能力を試す意味もあった。ギリギリだったが……」
「そうか。まぁお前に助けられたのは事実だ。では、その能力を使ってみろ」
「確認だ……即死した場合、その科目の点数も無くなる。構わないか?」
「Fクラスは宣戦できないし、日本史科目なら他にも教員もいる。構わないぞ」
「じゃ……失礼」
双神詩音──日本史──28点
西村宗一──日本史──DEAD
「ふむ……」
「まぁ、こんだけだ。文字通り即死させるだけ」
「触れる必要さえ無いのかね」
「言ったろう、フィールド内の召喚獣を即死させると。同じフィールドに居ればいい」
不自然も不自然なのは分かるが。
「同時に複数即死させたりも可能なのか?」
「可能だ。召喚獣を動かしてるシステムは1つだからな」
「ふむ……まぁなんだ、それを戦争で使う気か?」
「いいや。売り言葉に買い言葉、学園長がその気なら使ってやるが」
「禁止しな」
「だそうだ。俺からも禁止しておこう。使うようなら没収したアイテムは返却しない」
「やっっ!?かっ!使わない!いや、返してくれ!?即座にAクラスぶっ殺すから!」
「殺すな。アレがあるからと何が変わる?アイテムは他にも複数あるんだろう?」
「あぁ……ボトルは……いくらか予備はあるし、代用も効く。だがあの
ここまで能力を見せたなら喋っていいだろう。
能力を示唆すれば返却可能性も上がるかも。
「どうなる?そこまで能力が変化するのか?」
「そうだな。アレを使う事自体は先の即死を超えるものではない。ないが……アレはこのドライバーの能力を最大限引き出す事ができる。むしろ、アレが本命で、アレがあるからこのドライバーを使っている」
そして……その世界では観測すら不可能だろう神秘を内包する。
押すなと言ったのもそれが理由。たとえ超人だろうが半神半人と神の混ぜ物の宝具レベルの神秘に触れれば蒸発するだろう。
神秘については説明したところで理解されるものでもない。
「どういうことだ?アレはそのベルトの装備品なのではないのか?」
「それは正しい。だから使わざるを得ない。このドライバーは割と、何本かは……用意できる。だがアレは1つしかない。世界、オレの人生の中で1つだ。だからアレに関しては本気で頼む。可能ならすぐ返して欲しい。そして繰り返すが、できないならアレを絶対に損傷させないでくれ。そして、絶対に押すな。最悪壊していいから押すな」
「む……」
「押すくらいなら退学する。首を吊る。このドライバーもボトルもくれてやる。だから押すな。以上だ。失礼する」
学園長が何やら言ってたようだが今は聞く気になれん。
流石にこれだけ押しておけばトリガーを押して爆散、周辺を魔力で分解していくこともないだろう。
……帰るか。