「…………Cクラスに動きがある」
この世の不合理について呪詛を吐いていると既に日は傾いていた。
「ムッツリーニ、どういう事だ?」
「…………戦争の準備を始めている」
代表さんの問いに答える忍者コス個人諜報部隊。
何故にニンジャ?ニンジャなんで?
「俺たちかBクラス、勝った方を狙って設備を奪おうって魂胆だろうな」
「雄二、どうするの?」
「協定でも結びに行くか。どうせ俺たちが勝つとも思ってないだろう。簡単なはずだ。Dクラスを使えば更に漁夫の利をくらう訳だからな」
「代表さん、それ私もいる?」
「ああ。格上だぞ?代表が出向くんだ、盾となる肉はいくらあっても足りない。だから秀吉以外はついて来い」
「む?ワシはよいのかの?」
「もしものための万が一の作戦もある。お前の顔は見せない方がいい」
「了解じゃ。では先に帰っておるぞ。健闘を祈る」
「ああ。明日もよろしくな」
何らかの思惑らしく男装じょ……女装だん……?女顔男子は鞄を持って教室を出た。
あの子、普通に女子なのよね……女顔なんてレベルじゃない。女として設計されてる顔してる。
「よし、俺たちも行くぞ。サクッと終わらせてサクッと帰るぞ」
「了解……」
「はいっ」
代表さん、私、もう1人の観察処分、諜報員さん、姫路瑞稀さんで行くことに。
「ちょっと吉井。アンタの血、ぜんぜん落ちないんだけどどうしてくれんの」
「それ、吉井が悪いのか?」
「あ、須川くん、島田さん。ちょうど良かった、今からCクラスに行くんだけど、ちょっと付き合ってくれない?」
「んー?別にいいわよ?」
「俺もいいぞ」
速やかにパーティメンバーが2人増えた。
「Fクラス代表、坂本雄二だ。このクラスの代表はいるか?」
Cクラスの教室は比較的普通。私の馴染みのある世界で言う結構良い教室って感じ。普通なら最上級、文句無しって感じなんだどもBとAはより狂ってるからなぁ……
「私だけど。なにか?」
「クラス代表として交渉に来た。不可侵条約を結ばないか?」
「不可侵条約……?そうね、どうしようかしら、根本クン?」
「「「……っ!?」」」
Cクラス代表が振り返ると、奥からBクラスの代表が顔を出す。
「当然却下。酷いじゃないかFクラスの皆さん。協定を破るなんて。戦争に関する一切を禁じて翌日に持ち越す。それが達成されなかった……つまり、被害者はこちらだよな」
「な、何を言うんだ!僕らはBクラスに何も──」
「やめなさい、こういう輩に常識は通用しない。今は逃げるか殺すしかない」
「そうだ明久!話す暇があったら走れ!逃げるぞ!」
餌に掛かった以上、選択肢は少ない。
こんな餌を撒く奴にはこちらの言い分を聞く耳は無い。相手の理論も通ってはいる。
私がここで潰すのは簡単だ。でもそれは試験召喚戦争ではなく戦争だ。
それで得られる物は……何も無い。
「姫路さん!掴まって!走るよ!」
「っ、は、はいっ!」
走れそうに無い姫路さんの腕を掴んで走り始める。
シオン、後は頼んだ!
♢♢♢
『Bクラス芳乃が──』
『させるか!Fクラス須川──』
背後に声を置いて走る。
状況は大体わかった。とりあえず生存戦略だな。
「姫路!大丈夫か!後5分は走るぞ!」
「は、はいっ!頑張ります!」
追手も何人か来ている。
逃げ切るにはやはり、誰かが囮になるしかないか……既に1人失っている。
姫路は戦力的に残すしかない。代表は当然。
それを除いて十分に時間が稼げるとなると……オレか。仕方ない。ここで死んでも1日の拘束で済む。戦争に負ければ3ヶ月。
「だいひょ……」
「雄二!」
「何だ!」
「ここは僕が引き受ける!姫路さんたちを逃してくれ!」
「よし、頼んだぞ!ムッツリーニ!先行してルートを確保してくれ!」
「…………明久1人で残すのか」
「いいわよ土屋!私も残るわ!」
「…………承知した」
仲良しチームはオレの思考速度を超え、即座に判断して役割を決めた。
オレと姫路は走るだけ。
「代表、ならオ……私も残ろう。姫路を頼む」
「ダメだ。お前は万が一の明久の代わりだ。2つしかないコマを同時に使い潰すわけないだろ」
「ヤツらの点数じゃ突破される!私がいれば確実だ!」
「お前でも同じだ。それに、明久は大丈夫だ。信じろ」
「……了解。そこまで言うなら従うよ」
追手の方が多いというのにこの態度。
いいだろう。信用してやる。負けにはならないだろうしな。突破されたなら今度こそオレが止めるだけだ。
「代わりに姫路を頼む。疲れる」
「ああ。姫路、まだ走れるか?」
「は、はいっ」
姫路を渡して最後尾に移る。
……一応、探知しておくか。
あの観察処分者で止まってる様だな。具体的には分からんが、まぁおおよそ、あの回避能力で食い下がってるのだろう。
「代表!しばらくは持つだろうが相手は格上だ!このまま帰宅でいいのか!?奴らはやられても!?」
「それは無いだろうが構わない!奴らの目的は俺だ!お前は好きにしろ!」
「……だったらそうさせてもらう。少し時間が欲しい!せいぜい負けるなよ!」
「言われなくてもだな!」
代表たちと違う道を走り、誰の視点にも入らないタイミングでオーロラカーテンを用いて自宅へ帰宅。
……前の世界の能力を取り戻す必要があるな。敵の策略もまぁまぁだ。姫路だけじゃ戦力不足だ。