代表たちに島田美波、須川くんが合流した後、一行を急かす居ないはずの言葉遣いが見られる。
この転生が無ければ今後一生気が付かなかった。
(ねー……何する気?)
帰宅後、例の如く食事も取らずパソコンに向かうシオン。
「ああ……この世界の力……試験召喚システムを解析する……! そしてこの世界で再び! オレの力を取り戻すぅ!」
(再びって……フェーズスリー? マジェスティリバイブ、すぐ使えるんじゃないの?)
そのテンションはいつぞや、魔法世界で新形態を作り出した時と同じレベルだ。
前の世界でシオンが手にした、シオンのフウシャに最も近しい能力。
世界を壊して吸収して、2つの能力を合わせて進化していく。
マジェスティリバイブは救世主の尊厳復活、歴代ライダーの力と自分の時間を操作してスピードとパワーを手にした形態。シオンが言うには投影魔術と正義の味方を志す精神、正義の味方のお父さんも体内時間をイジってたみたいだからリバイブに適合したんだって。
「……マジェスティリバイブはあの世界だけのもの、このオレ達が通る並行世界に存在しない固有のものだ。同じ並行世界ならともかく、別世界で使うには難しい。この世界ではこの世界の力を手にしなければベルトは使えない。今使えるのはプライムトリガーだけだ」
(プライムトリガー?)
「エボルトリガープライム。まぁ、この世界で全力戦闘なんて無いだろうけどな。召喚獣の強化に応用していきたい。していいか知らんが」
(グレー……というかアウトだよね。それよかさ、良かったの、放ってきて)
「あ? Fクラスか?」
(うん。耐えられるのかなぁ)
「……大丈夫だろ。Aクラスに勝とうだなんて奴らがBクラス数人に負けるようじゃ知れてる」
シオンの言うプライムトリガー、フェーズ3はブラックホールの操作さえ可能にする圧倒的破壊力。
あくまで学力で競おうってこの世界では使い道は無いと思うけどね……
「ともかく、オレの力を取り戻すことが最優先だ。フェーズ4のためにドライバーごと破壊しちまったからな。残機は用意したが、死なない可能性もゼロじゃない。オレは姉さんみたくその場の最大を確実に取れるわけじゃない。フェーズ4ともなれば別だが、アレは後が無い。現実改変を持たない以上、オレは出来る対策はしていく」
(……ふーん。私だって限定的なんだよ。まぁ、私の言葉に準備が要らないってのはわかるけども)
「姉さんの言葉は常にその世界の最大だ。オレは能力の範囲。コピー能力と言えば聞こえは良いが、所詮その程度だ。プライムでのマジェスティリバイブ以外は基本世界の原典とさして変わらない……ナンバーズが惜しまれる。単純強化ではなく別系統と掛け合わせるべきだったんだ」
(ナンバーズねぇ……私もプライム、欲しいなー?)
シオンの能力は無限に存在してる並行世界に使うだけじゃなくて他人に付与するとかいう意味不明な能力が存在してる。
名称、プライムとされる能力付与は適性とやらを超えれば幾つでも付与できて……付与さえできればノーリスクだそうだ。
「何度言っても……どの世界で言ってもやらねぇぞ? そもそもいるかぁ? 言葉だけで現実改変だなんて、そうそう無い……どころか、まずないぞ」
(だろうねぇ。知らん場所に知らんタイミングでランダムポップで先に殺した方が勝ち、なんてルールで私以上なんてそれこそ……神様? みたいなモンでしょ)
「全範囲存在否定だからなぁ……まぁ、オレ達の言う神はロリコンのカスでゴミクズなんだが……」
(あんなモンに構うだけ無駄よ。殺したいけど殺せないし、私達も殺されない……というか、どう死んでも転生され続ける……)
「ソラが言ってたか、いずれゴドーワードと戦うことになる。そうなれば四象と言えど存在ごと消されるだろうな」
(そーねー……それよね。私が消えるのは私の永遠じゃないから……両儀に到達する?)
「四象のカケラだってのに無理だろ。魔術師が根源に辿り着くのは例外中の例外だ。何百年の歴史の中で片手で数えるほどだぞ。オレ達がそうじゃないくらいは分かる」
(この世界じゃ居ないだろうしね。前の世界で浅神家に行っても良かったかも)
「ぜってー門前払いだろ。まぁいい。明日は戦争本番だ。今のうちにある程度、システムの理論を理解しておかないとな」
(何かと超常技術だよね、召喚獣って。デフォルメモンスター召喚して、召喚者の思考とリンクして動作するって。点数に応じたパワーにも調整してって何考えて作ったんだろ)
「思考とリンク……点数……よし。姉さん、ナイスアイデアだ。鏡を広げた意味があった」
(ん?)
「できるかどうかはともかく、オレはこの世界で更なる力を手に入れる」
(……ファイト?)
♢♢♢
「……しまった……徹夜……オレとしたことが……」
並行世界のオレにも流石に召喚獣となった奴は……驚くべきことに、いた。
だが……この世界での召喚獣とは少し違うのか、その能力を使う事はできなかった。
そしてその原因を究明しようとして……なんやかんやで朝になっていた。姉さんは爆睡して起きてこない。
「おいフタガミ! 貴様何時だと思っている!」
「う……西村教諭……いや、さして遅れて無いと思うんだが……」
「遅刻は遅刻だ。既にクラスの連中は何やら動いているようだぞ」
「……? 開戦まではまだ余裕があるはずだが……?」
西村教諭が指差した先から何やら女のヒステリックが聞こえてきた。
何してんだ? 比較的常識が共有されてる学舎でそこまで野生に還るような事が起こるか?
「さてな。そこまでは俺も知らん。まぁ、早めに合流してやれ。お前は必ず勝つのだろう?」
「……ああ。必ず勝つ。期待して見ててくださいよ」
「ふん。さっさと行け。遅刻の罰はまた伝える」
「げ……まぁ、失礼します」
緩めに見てもらえるかと思ったが罰則はあるのな。まぁいいが。
「代表、すまない、遅れてしまった。何かしていたようだが?」
「フタガミか。まぁ……開戦に間に合ったから今回は許してやる。作戦も秀吉メインだったからな」
「ヒステリックな叫びと関係があるのか?」
「ああ。だがそれは気にしなくていい。今日の作戦を伝える。お前らは何とかして敵を教室内に閉じ込めろ。ドア付近であれば戦場をかなり限定できる。入れ替わりながらうまく立ち回れ」
「「「了解」」」
閉じ込め……時間稼ぎか?
「フタガミは護衛だ。残れ」
「……戦線に加わらなくていいのか?」
「お前は昨日考えなくていい事ばかりを宣っていただろう。お前のスタートは教室の隅だ」
「……だった。まぁ、それはそれで」
考えなくていい事なんて何も無い。永遠にそれは必要だ。
「よし、行こうみんな!」
ゾロゾロとスタート位置に出ていくクラス勢。
「……」
そして始まる暇。
護衛ともなればするが、教室に封じ込めるならしばらく何も無い事が確定してるしな……くそ、家のパソコン持ってくればよかった。
ん〜……
「フタガミ、何振ってるんだ?」
カラのエボルボトルを振ってそれを眺めていると、代表が怪訝そうにオレを見てきた。
「代表……お前、暇なのか?」
「いや、明らかヒマそうなのはお前だろ。あと座り方直した方がいいぞ、パンツ丸見えだ。ムッツリーニが死ぬほど死んでる。作戦の要が潰れちゃ困るんでな」
「ん……ああ、気付かなかった。普段スカートなんて触ることも無いからな。というかそもそも、この学校のスカート短過ぎないか?」
「まぁ……そうだな」
「まぁ見たけりゃ見りゃいいんだが、作戦失敗は困るな」
足を組んで体育座りみたいのをしていたんだが、言われてみれば自分でパンツ見えるくらいにはスカートが捲れていた。
確かにスカートめくって足あげてボトル振ってんだから怪訝な顔するわな。姉さんじゃないが痴女ってる。
「お目汚し済まない。必要があれば色気のあるものに変えてくる」
「……いや、別にエロく無いとは言ってないんだが……」
「? まぁいい、作戦ってのはなんだ?」
「ああ。今は相手を教室に閉じ込めている状態だ。そこに……」
『雄二っ!』
「うん? 明久。どうした? 脱走か? チョキでシバくぞ」
脱走者には私刑。チョキでしばくって何だよ。目突きか?
「話があるんだ」
「……とりあえず、聞こう」
「根本君の着ている制服が欲しいんだ」
「…………お前に何があったんだ?」
「ぶははははっ! どーしたどーした」
戦争の真っ只中、ラリってくる兵士も無いことは無いだろうが……この戦争でそんな事あるのか? 観察処分されるほどのバカならあり得るか?
今後のため知っておくか? いらんな?
「あ、ああっ、いやっ! えーっとー……」
「まぁいいだろう。勝利の暁にはそれくらいなんとかしてやろう」
「おおマジか。その要求通るのか」
何でもアリか?
「で、それだけか?」
さも何事も無いかのように続ける代表。
ホモカミングアウトがこうもすんなり受け入れられるとは。理想的な多様性だな?
「それと、姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい」
「理由は?」
当然だな。
最高戦力の撤退は無い。
「理由は言えない」
「……どうしてもか?」
「どうしても」
「何がなんでも?」
「うん。何がなんでも」
「ふむ……」
カミングアウトより考え込む代表。
姫路瑞稀の撤退は戦力の大幅な低下をもたらす。姫路がいる、という抑止力も無くなる。封じ込め打開のため一点突破を選ばせる事にもなりうる。
「頼む! 雄二!」
「……条件がある」
「ほう、それも通るのか」
個人の頼みで戦況さえ変えるのか。
信じられん柔軟性だな?
「姫路が担うはずだった役割をお前がやるんだ」
「不可能なことじゃないよね?」
「不可能なら姫路を下げない。この役割を果たす者は必要だ。必ず達成しろ」
「やってやるさ! 必ず! 命を掛ける!」
「良い返事だ」
そーとーゆーずーの効く指令だな。どこぞの八神とはえらい違いだ。
「それで、僕は何すればいい」
「指示するタイミングで根本に攻撃を仕掛けるだけだ」
「……今のまま?」
「ああ。しかも、他のフォローも無い」
「……失敗したら?」
「お前の名前が世界から消える」
「ぐっ! 命を掛けるなんて事を本気にするのか!」
「言ったのはお前だ。失敗は無い」
「……」
「それじゃ、上手くやれよ。俺はDクラスに指示を出してくる。護衛も連れてくから、お前も戦線に加わっておけ」
代表が護衛を連れて教室を出ようとする。
クラス全員の命運を別つ判断だ。冷酷とは言えない。
だが命をかけて姫路を戦線から遠ざけるとするとなんだ……? 体調不良なら、素直に話せば承諾されるだろう。
明確に口にできず、かつ重要な理由……
「代表、少しいいか」
「なんだ。そう時間は無いぞ。戦線が崩れる前に動かなきゃいかん」
「その役割、オレがやる」
オレの思考ではそこまでだ。
だが、いいだろう。吉井明久。
「……なんだと?」
「フタガミさん?」
「姫路を下げる、戦争に勝つ。両方やらなくっちゃあいけないのが優しい代表の辛いところだな。その為に、姫路と少し話がしたい。残りの護衛と姫路を交代してくれないか?」
「……勝算は?」
「確実だ」
「……いいだろう。おい、お前ら! 姫路を教室に呼び戻し、戦線に加われ! 封じ込め続行だ!」
護衛は迅速に指示を受ける。
そしてしばらくして、姫路瑞稀が戻ってくる。
「戻りまし……あ、明久くん……? 話したんですか……?」
「ち、違うよ姫路さん! 姫路さんに戻ってもらったのはフタガミさんの意見で!」
「そ、そうですか……」
「……? よし、吉井明久。少しすまない」
「えっ何!?」
吉井明久の心を読む。
相手代表の手元にある封筒……姫路の書いた手紙……
「よし。姫路、悪かったな。呼び戻してしまって。本当にコイツは何も話してない。代表も何も知らずコイツを信用した」
「……」
「そこで、オレから質問だ。お前を例えるなら……何?」
「え……?」
「モチーフだよ、何でもいい。動物とか、無いか?」
「えっと……ウサギ、でしょうか。髪留めですけど」
「姫路さん、いつもその髪留めしてるもんね」
「えっ! は、はい……大切な、ものなので」
ウサギ、ウサギねぇ。
「次、吉井明久」
「うん」
「戦争、この戦争ではなく、一般的に言われる戦争において、ウサギを殺すものは何だ? 実在するしない、使える使えないは構わない」
「ウサギを……? えっと、銃、だと当てられない? いや、広範囲で吹き飛ばせば……じゃあ、戦車、戦車だ」
「戦車、ねぇ……」
「えっ、何? 何かマズかった?」
「ふはは、あっははははははははは! サイッコーだな! 兎と戦車、ベストマッチだ!」
《ラビット》
《タンク》
2人の胸元へボトルを翳せば、さっき暇つぶしに使ってたカラのボトルに成分が宿る。
ラビットエボルボトル、タンクエボルボトル。
「それ、さっきのか」
「ああ。コレでBクラスに勝てる。そして、極めつきは……」
《オーバー・ザ・エボリューション!》
「このプライムトリガー。コイツを使えば、この世界の常識を……」
『坂本、話とは何だ……フタガミ』
「げ……」
掲げたプライムトリガーはしっかり西村教諭の視界に入ることとなった。
「て……西村先生。Bクラスとの戦争なんだが、体育科目を使いたい。少し危険なルートを使うから、頼れるあんたを呼んだんだ」
「ふむ。まぁ多少はよかろう。だが、フタガミ。分かってるな。ほら」
「ちが、コレは戦争に勝つ為に……いや、分かった。悪かった。確かに不要な物だ……」
言い訳は……見苦しいだけだな。
しかし……トリガーを……
「全く。なんだコレは。戦争には本気だと思っていたのだがな」
「……戦争は本気さ。ソレがあれば、すぐにも勝てたんだがな……まぁいいだろう、代表、引き止めてすまなかった」
「では西村先生、タイミングとルートに関してはムッツリーニに任せてある。不可能であれば早めに伝えてくれ」
「よかろう」
「じゃあムッツリーニ、頼んだぞ」
「…………承知した」
代表は軽く伝令を残し、教室を出て行った。
「西村教諭、ソレなんだが……」
「なんだ。返せと言うのか?」
「いや……一般的に学業に不要な物を持ち込んだオレの落ち度だ、没収については異論は無い。だが、ソレはとても大切なものだ。返却とは言わないから、破棄だけはしないでほしい。それは一つしか無いものだ」
エボルトリガーならばともかく……ギルガメッシュオルタの力を取り込んだプライムトリガーはもう2度と……絶対に替えが効かないと言っていい。
神秘は歴史と希少性。人類史では最古の英雄譚となるギルガメッシュ以上の神秘はそうそう無い。
精霊、神獣……神。これらはオレの並行世界では存在しない。人の身であるウタネがどうあっても出会う事がないからだ。
最悪でも……この世界から離れる直前には、何が何でも取り戻す必要はある。
「よかろう。元より生徒の物に触るつもりも無い。返すタイミングは俺が決める。それまでは厳重に保管しておく。盗み返そうなんて思うなよ」
「そんなまさか。他の人間ならともかく、西村教諭に反逆しようなどと。これでオ……?」
「お、おいおいフタガミどうし……」
♢♢♢
「フダカミ! どうした! おい!」
「ん……」
目が覚めたらそこはさびれた教室でした……
「えーっと……了解。自力でBクラス倒せばいいんだよね」
周囲をマッチョ先生と代表さんと……ピンクの人とバカの人。
ヤバい……今起きた……
とりあえず状況的に……戦争中でしょ。勝てば良いのよね。
「待って待って!? 急にどうしたの!?」
えっと……バカの人に止められる。
「いいじゃん何? 勝ちたいんでしょ?」
「そうだけど!」
「なら全部私に任せてなよ。どーせ勝つなら、今やっても変わらないでしょ。話なんてしてる間に貴重な学生の時間が削れてくんだ。チャーオ♪」
シオンが何話してたかは知らないけど、私は人間と話をする気は無い。
ただ目の前の敵を殲滅するだけ。
敵がこの世界にあるのなら、何であっても私の前に意味は無い。