切り替えよう。
薔薇が無い。
うん。ないなら仕方ないね。
…というか、無いなら無いで食らうダメージもないのでは?
まぁあれだ。
本格的にこれは「ゲーム」として見るより「VRでの散歩」と捉えた方がいいのかもしれない。
制作者はこの3Dで作った世界を誰かに見せびらかしたい。
だから俺が寝ている間に高度なVR機器をつけられて。
そんで見せかけだけだけど、「Ib」の世界を散歩させられている。
うん。とりあえずこの仮説で行こう。
俺の知り合いにそんなことするやつは全く心当たり無いが、今やるべきことはこの世界を満喫することだ。あらでもなんでも探してやんよ。終わった暁には「お前ここ再現できてねーじゃねーかよ!!」と怒鳴り散らしてやろう。
奥の部屋の鍵は開いていた。
次は確か…
そう、腕が生えてる廊下の部屋だ。
ワキワキと動く腕が生えてる廊下の部屋だ。
…なんでもう生えてんだよ。ビックリ要素だろがい。
と、そういえばこの部屋にはもう一つ見るところがあるんだった。
「…ってデカ!?」
トカゲぐらいの大きさのアリが足元にいた。
…あーそうかい。ドットでの表現からリアルにしたから、普通のアリより大きめになっちゃったわけだ。
…なんでそんな方向に再現したんだよ。真面目かよ。
まぁいいか。
「Hey、アリ!」
「………」
「Hey!アリ!!」
「………」
なにもいわない。
ただのむしのようだ。
「ぼくのえ」がどうのこうのとも「かっこいい」とも言わない。
マジでちょっとでかいアリでしかない。
どうやらマジに見た目だけの張りぼて説が出てきた。
最初の感動を返してほしいんだが…。
「……しゃあねえ。先行くか。」
ついでに壁の腕と空中腕相撲でもするか?
…
……
相手にもされなかった。
『エピローグ』の部屋に行こうにも、アリの絵がなくなっていたのであきらめざるを得なかったな。
そういう系のギミックまで省くのか…まぁ鍵は開いていたし?
うん。そうだ、これは観光みたいなもんだ。
マネキンに追いかけられるのは後からいつでもできるだろ…。
次の部屋は~…。
「…あぁ、猫の顔の部屋か。」
案の定ギミックは解かれて真ん中に通路が出来ているが、壁についた大きな二つの目から、ここが猫の部屋だと分かった。
他にやるギミックが無い以上、あんまり長居するのもあれだが…
あ、そういえば…!
『キャーッ!!』
バチン!!
「びゃっ!!…ぶったね!?」
なんてふざけて言うころには、カーテンは閉じられていた。
くっ…ちょっと下心があったとはいえ、やっぱ痛いね!いらんギミックは作りこみやがって!
…別に見た目だけだけど同じ女なんだし、裸体を見られてもそんな恥じらうこともないんじゃ…。
いや。逆に男同士だったとしてもいきなり知らん男に裸見られたらトラウマになるな。
少なくとも俺は。うん。
…
……。
「あれ?」
猫の顔の廊下の先にあった光景。
俺はそこに、ちょっとだけ違和感を感じた。
その部屋の中心にあった大きな木。
『ゼンマイじかけの植物』
俺は、こんなもの知らない。