人類史の汚点がヒーローを目指すようです 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「サングラスを付けて欲しい?」
校長先生にある日呼び出され、雄英高校体育祭の時にサングラスを着用して欲しいと言われた
「個性差別と言われるかもしれないが、君の瞳の模様を映像に流す事はそれだけで雄英高校のイメージダウンに繋がってしまうし、君自身も誹謗中傷が飛んでくるだろう。動画配信は把握している。ヒーローとして売り出す時にその模様は大きな足枷になるだろう」
「選手宣誓でどうしても目立ってしまう。勿論強制ではないけどさ」
私は少し考えた後に
「お断りします」
「なぜかな?」
「逆に言えば今であれば私の瞳や体の痣が映像に映っても雄英高校が守ってくれることになりますよね。多少のイメージダウンで雄英高校の看板は揺らぐのでしょうか?」
「···軽率な発言だったね。謝罪しよう。でも良いのかい? 君の配信は荒れると思うけど」
「荒れる以上に圧倒的な成績を残しますから。私はオールマイトを超える女ですよ!」
「···楽しみにしているのさ!」
個性の関係で苦労したことのある校長先生だからこそ私を守るためにあえて雄英高校のイメージダウンとかの言葉を使ってサングラスをかけるように誘導しようとしたのだろうが
「イメージダウン? 気にすることは無いでしょ。着いてくるものは味方、反発する者は敵、至ってシンプルじゃない」
個性に脳が侵食されてきているのか過激な思考がちらほらしているのだった
雄英高校体育祭当日
クラスメイトの皆も入学からこの日の為に準備をしてきていた
個性が一般化する前のオリンピックと同様の日本にとって一大イベント···それが雄英高校体育祭
プレゼントマイクの実況で入場を済まし、主審のブラドキング先生から選手宣誓と言われ、ヒーロー科首席合格であった那智が台に上がる
ざわついていた会場におもむろに那智が手を上げると、パンと銃声が響き渡る
那智の手がピストル型になっており、火薬が多すぎたのがバナナみたいに銃身が裂けているが、大音量の発砲音に会場は静まり返る
那智の口から発せられた選手宣誓は5分ほど
勢いよく、滑舌良く、そして大切なフレーズを2回繰り返し、身体を大きく動かしながら宣誓をしていく
宣誓というよりスピーチであり、那智の言葉を要約すると
『導く為のヒーローは常に偉大でならなければならない! ヒーローとは倒れてはならない! 倒れなかった者が勝者! 諸君、闘争をしよう』
と言いきった
会場は異様な熱を帯びだすのだった
予選の障害物走、本戦の棒倒しをそこそこの成績で突破した那智
ちなみに1位は光速の貴公子という渾名がネットで定着し始めた光円であり、圧倒的な速度をもって他を翻弄していた
レクリエーションも程々に決勝ステージが始まる
ここからは1対1のガチバトルである
第一試合は光円であり、下馬評では選手宣誓の割には控えめな成績な那智が分が悪いと思われていた
ステージに上がり
「那智! 精一杯やろうぜ!」
「うん、光円君···悪いけど勝つのは私だよ」
『試合開始!』
「光の速さで蹴られた事はあるかな!」
光速化した蹴りが飛んできたが
ガゴン
「!?」
那智の顔面に良いのが入ったが全く効いていない
「光円君ってさ、光速化による速さで勝負をするけど、個性で光速化に耐えられる肉体をしていても限界があるでしょ。鋼鉄の塊を蹴って肉体は耐えられるかな?」
「うがぁぁぁぁ!」
光円が悲鳴をあげる
肉体を鋼鉄に変化させ、高い硬度と質量により光円の足の方が耐えられなかった
今の蹴りで光円の骨が折れたか、折れてなくても打撲は免れない
「迂闊だったね!」
那智の腕からボンと網が発射される
痛みを堪えながら光円は避けるが、気にせずに那智は網を乱射する
「光円君、足場が網だらけだけになっちゃったよ? 君光になれても浮けるわけじゃないでしょ。成れていたら個性把握テストで立ち幅跳びの記録が無限になるはずだもんね」
網に粘着物質を混ぜており、足場が無くなった光円がついに網に引っかかる
ギュイイインとけたたましい音を立てながら網が那智の体に巻き取られていき、光円が那智に勢いよく近づく
「どっせい!」
近づいてきた光円の顎に掌底からの足払いですっ転ばせ倒れ込む所に腹部に思いっきりの拳を叩き込んだ
「かは!?」
光円は白目をむきながら意識を失い、勝負が決まった
『勝者土井那智』
「お疲れー」
2回戦に駒を進め、相手は雷鳴であり
「那智、私が勝つから」
と宣戦布告されたが
「いや、勝つのは私だよ」
とこちらも返した
実際雷並みの電気を自由に操れる雷鳴の個性は強力だし、磁力をも自由に操れる力を持っている
1回戦豹柄と戦っていたが、圧倒的な電力をもって感電させて倒していた
ステージに上がり、体を耐電仕様変更していく
『試合開始!』
「1億ボルト!」
ドゴンと会場に雷が落ちるが、那智はピンピンしている
「マジか!」
「絶縁物質に変えたからね」
すると雷鳴は地面から砂鉄を集め、黒色の剣を作り出した
「磁力操作でこんな事もできるんだ! 凄いね雷鳴さん」
「万能なあんたを倒すにはこれを使うしか無いと思ったわ! 死なないでよ」
「うーん、まぁその剣の切れ味がどれくらいか試そうか」
那智は剣を生成し、雷鳴に斬りかかる
「直接斬りに来るなら! これで!!」
砂鉄の剣をぶんと横振りすると砂が伸びて予想以上のリーチが出る
それを剣で防ごうとしたが
バチン
剣は真っ二つにされ、そのまま那智の体も真っ二つにされてしまう
ドチャ
那智の上半身と下半身がステージに転がる
「キャーァァァ」
会場から悲鳴があがり、主審のブラドキング先生が慌ててステージに上がるが
那智の上半身が手を使って起き上がるとみるみると下半身が生え、そして切られた下半身からは上半身が生えていた
「「ああ、そうそう、私の個性は『ナチス』、国という概念だよ。1人が死んだ程度で国は崩壊するのかな? しないよね? それと同じなんだよ」」
2つに分裂した血だらけの那智が語る
次の瞬間にスーツに着替えられていた
「「雄英高校の体操服は残念ながら私の個性で再現できないからこれで許してほしいな。あと砂鉄の攻撃はもう『学習』した」」
「化け物め」
「「いつも言われるよ」」
再び砂鉄の剣が振られるが、那智にふれる前に地面に落ちた
「「まぁ対処法はこちらも磁力を操作すればいいだけだよね」」
那智の飛び散った血液に磁力を付与して、砂鉄が届かないようにしていた
「「さて砂鉄は封じたからこれでトドメかな」」
足をドンと踏みつけると地面からコンクリートが生え、雷鳴が吹き飛ばされるコンクリートから更にコンクリートが生え、今度は横に吹き飛ばされ、更にそこからコンクリートが生え今度は下に向かって押され、ステージ外に叩きつけられた
『決着! 勝者土井那智!』
すぐにブラドキング先生が大丈夫かと心配されたが問題ないと返し、一応保健室に行けと言われ分裂した肉体と一緒に会場を出る
会場を出て人気の無い場所で分裂した肉体と手を繋ぐと体が一体化していき1人へと元に戻った
「あー、痛覚を軽減しているとは言え痛いものは痛いんだよなぁ。さて保健室に行きますか」
保健室にはリカバリーガールだけでなく予選落ちしたために救護班に駆り出されていた同級生の修善寺治癒さんからも心配された
「治癒が効かないってことは健康なんだろうけど、体育祭でスプラッターな光景を見せつけて会場はドン引きだよ」
「えへへ···すみません」
「全く、ヒーローらしからぬ行いは慎むように···最も怒るべきは威力もわからずに攻撃した雷鳴の方だけどね」
「那智ちゃん大丈夫ですか? 血がドバって出てましたが」
「大丈夫大丈夫! ほら元気!」
治癒さんに心配されながらも保健室を後にして観客席に戻ると、クラスの皆にも心配されたが、平気な事をアピールした
「ねえ那智ちゃん、那智ちゃんの個性って不死身ってこと?」
「いや、不死身じゃないよ。ねえとろろちゃん。人が死ぬ時って何時だと思う?」
「人が死ぬ···心臓が止まった時?」
「うんん、人から忘れられた時だよ。人から忘れられた時に概念的な死になるんだ。私の個性は概念的な要素が強いんだけど、物理に干渉できるタイプだから、私が死ぬ時は個性を『奪われる』とか個性を『破壊』された状態で死ぬか、皆から『忘れられた』時、もしくは老衰、そして私が死を望んだ時のどれかだね」
「とんでもなく死ににくいってことはわかったけど、それって人から逸脱してないか?」
「日帝君、その通りなんだけど、倒れないヒーローって素晴らしくは無いかな?」
「まぁ倒れないヒーローはオールマイトを見ていればわかるように安心感があるよ。負けないって」
ただ同時に皆は思う
(((あれ? どうやったら那智を倒せるんだ?)))
と···
準決勝は氷叢だったが、氷を生み出し、操れ、氷漬けにされでもなお動き続ける那智に恐怖を抱きながらも攻撃を続けたが、体に霜が降り、キャパオーバーとなった所を投げ飛ばされて終了
決勝は豪炎寺であったが、燃えながらも突き進む那智に最大火力の熱線を放つも、幾重もの鉄板が地面から生えて防いだ
コンクリート壁を生やして障害を作り、炎の攻撃を防ぎながら最終的には壁をぶち破り、スタンガンを豪炎寺の体に当てた事で勝敗は決まったのだった
一旦ここで休載とさせていただきます