人類史の汚点がヒーローを目指すようです   作:星野林(旧ゆっくり霊沙)

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公安に保護される

「那智ちゃん、那智ちゃんは夢はあるかな」

 

「教頭先生、私の夢はヒーローになることです」

 

「そうか、そうか。なら個性の使い方をしっかり学ばないとね」

 

 教頭先生はしわしわの手で私を撫でてくれた

 

 思えば初めて頭を撫でてくれたかもしれない

 

「那智ちゃんの個性はどんなのか教えてくれるかい?」

 

 教頭先生は勿論私の個性は把握している

 

 しかし、どれくらい使いこなせるか等は知らない

 

「私の個性はナチスドイツで使われていた武器を作ることができます」

 

「ほう?」

 

「例えば」

 

 そう言うと手のひらが拳銃に変わった

 

「実際に発砲することもできます」

 

「強力な個性であると同時に危ない個性だね。じゃあそれをいかに皆の役に立てる個性にするか考えようか」

 

「はい」

 

 教頭先生はプロヒーローとかではなんでもないが、個性カウンセラーという資格を持っていた

 

 複雑化した個性社会でいかに個性を有用な物に変えるか、無害化するかが彼らの仕事である

 

 例えば血を吸う個性を持つ者がいたとする

 

 そういう者はどうしても吸血衝動が付き纏うが、人工血液みたいな薬を定期的に摂取することでその衝動を抑える事ができる

 

 これも一種の無害化である

 

 那智の場合は有害性が特に高い

 

 武器を創り出すことや毒ガスを振りまく事だってできる

 

 この力がヴィランとなった時、簡単に大量殺人ができてしまう

 

 だからこそ正しい力の使い方を教えなければならないと教頭は考える

 

「まずは守る力を付けよう」

 

「守る力?」

 

「鉄板を体中に生み出してカチコチに守るってのはどうだろうか。守れるってのはヒーローっぽくないか?」

 

「たしかに! ヒーローっぽい!」

 

「よし、やってみよう!」

 

 那智は教頭に誘導されながら個性の正しい使い方を学んでいくのであった

 

 

 

 

 

「知れば知るほど悪い組織だったんだね···ナチスって」

 

 図書館で調べ物を今日もする

 

 ノートにはナチスがした事件や兵器がびっしり書き込まれている

 

「那智ちゃん今日も調べ物?」

 

「司書のお姉ちゃんこんにちは!」

 

「こんにちは、毎日偉いね」

 

「私の個性危ないから調べてできることを増やさないといけないから」

 

「そうなんだね。でも本当にその力は歴史に縛られるのかな?」

 

「どういうこと?」

 

「那智ちゃんは歴史そのものなのかなってこと、個性は成長するんだから歴史ではできなかったことでも概念さえあればできたりするんじゃない?」

 

 ただ那智はまだ兵器の再現も事件の再現も全然できていなかったのでいつかできるようになれば良いなぁ程度に彼女の言葉を留めた

 

 

 

 

 

 

 学年が進むと妹が入学し、出来た妹と出来損ないの姉というレッテル貼りがされてしまった

 

 妹である羽黒は瞬く間に人気者となり、友達も多かったが、那智には友達らしい友達は居ない

 

 小学校に上がってから羽黒は那智と様々な事で比べてくる

 

 那智が負けないのはテストの点数くらいで他はすべて羽黒に負けていた

 

 ただテストの点数で勝ちきれないことに羽黒はイラつき、那智は図書館に通って自力で勉強しているのに、羽黒は塾に行かせてもらい、塾でしっかり勉強することができた

 

 それでも那智のテストの点数を超えることはできなかった

 

 

 

 

 

 

「八百屋のおじちゃん、これとこれをくださいな」

 

「あいよ、今日は何を作るんだい?」

 

「今日はオムライスをリベンジしようと思うんだ!」

 

「前回失敗したって言ってたなそう言えば」

 

「うん、卵がとろっとしなかったんだ。今回はやり方を変えてやってみるよ」

 

「そうかそうか! はい、人参とピーマン、それにマッシュルームだ」

 

「ありがとう」

 

「おう、もう那智ちゃんも4年生か、早いもんだな」

 

「うん、鍛えてヒーローになるんだ!」

 

「そうかそうか! 那智ちゃんなら立派なヒーローになれるぞ」

 

「うん!」

 

 商店街で買い物を終えて帰り道の途中···人通りの少ない道に進んだ時だった

 

「む、むぐ!」

 

「はぁはぁ、幼女だぁ···少し汚いが可愛い幼女だぁ」

 

 那智は変質者に襲われてしまった

 

「おっと俺の体からは媚薬が分泌されるからな。少しずつ気持ち良くなってくるはずだぜ」

 

「むーむー!」

 

「可愛いなぁ、外人さんかなぁ? 帰ったら手足をもいでオナホールに改造しようかな! 前のは痛みで死んじゃったけどこの子はどうだろうなぁ」

 

 那智はその言葉に恐怖がピークに達してしまい、ボワっとガスを噴出した

 

「うわ! なんだ···あ、あが! ぐるじい···目が痛え」

 

 手が離れた瞬間に荷物を抱えて走って逃げ出した

 

 

 

 

 

 翌日地元では連続誘拐犯が変死体として発見された事がニュースになり、全身をかきむしり、目玉が抉られ、喉に指が突き刺さった状態で呼吸困難で死んでいたらしい

 

 那智は初めて人を殺した

 

 その話を聞いて平然を装っていたが、学校のトイレで罪悪感から盛大に吐いた

 

 警察も毒ガスが使用されたと判明すると重大事件に指定して捜査を開始し、数週間もしないうちに那智が犯人と突き止められた

 

 

 

 

 

 

 

 ピンポーン

 

「はい」

 

『ごめんください。○○警察署の者ですが、聞き込みをしておりまして話を伺ってもよろしいですか?』

 

「今お母さんもお父さんも出かけていません。また後日お願いします」

 

『そうですか、わかりました』

 

 その日は何もなかったが、その次の日、那智が河川敷で特訓をしていると

 

「嬢ちゃん少し良いか」

 

「ひっ!」

 

「まぁ待てって、そんなに怯えるってことは変質者に襲われたか?」

 

「···」

 

「よっこいしょっと、別に危害を加えようってわけじゃねぇ、おじさんも仕事で聞かなくちゃならねぇんだよ···学校で事情聴取されるのも嫌だろ」

 

「···うん」

 

 缶ジュースを渡された、河川敷のベンチに腰をかける

 

「先日、連続少女誘拐犯が変死体で発見された。これが刃物の刺し傷とかだったり、鈍器で殴られ〜とかだったらおじさんは動いてないんだが、死因がマスタードガスだったからな。流石に毒ガスとなれば動かねーといけねーんだわ」

 

「···うん」

 

「嬢ちゃんの個性で毒ガスが作れるのは知ってるんだ。公安にある個性バンクで知ってるからな。ここの周囲に毒ガスを製造できる施設も個性も嬢ちゃんしか居ない···わかるな」

 

「···私捕まるのですか」

 

「あぁ、そう言う仕事だから捕まえなきゃいけねぇ。ただ未来ある若者をこのまま将来を閉ざすのは公安としても本意じゃねぇし、子女を誘拐犯を迎撃するために毒ガスをやったと考えれば過剰防衛だが情状酌量の余地はある···司法取引だ。公安の犬にならないか」

 

「公安の?」

 

「あぁ、家庭環境とかも調べたし、君の友人関係も調べたが···酷いもんだな。個性差別でいじめられているんだから」

 

「···うん」

 

「公安でしっかり力の使い方を勉強してヒーローを目指してみないか」

 

「ヒーローになれるの?」

 

「あぁ、なれる」

 

「なら···行くよ。私」

 

「じゃあ親御さんに俺から説明する。車に乗って移動するぞ」

 

 

 

 

 

 

 

「おぇぇ」

 

「おいおい大丈夫かよ」

 

「は、初めて車に乗ったから車酔いが」

 

「参ったな」

 

「ボス、酔い止め薬買ってきますよ」

 

「悪いな」

 

「···ボス?」

 

「あー、室長って役職なんだわ、それでボス···あだ名みたいなもんだな」

 

「···あだ名良いなぁ」

 

「コードネームみたいな物だからな。公安で働けば自然と付けられるさ」

 

「そうなの?」

 

「そうだ」

 

「買ってきました。那智ちゃんイチゴ味の酔い止め薬だけど大丈夫?」

 

「うん、ありがとうお兄さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 那智が公安に保護されたことは家族と学校に報告され、家族は

 

「厄介者が居なくなって清々した」

 

 と言い放ち

 

 逆に担当していた教頭は

 

「どうか那智ちゃんの未来を考えてください。お願いします」

 

 と那智の事を第一に考えてくれた

 

 那智が居なくなっても教頭先生以外は誰も気にすること無く、那智が居たこそも自然と忘れ去られていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方公安に保護された那智は公安にて勉強やトレーニングの毎日を送っていた

 

 コードネームはリヴァイアサン

 

 それが那智に新しく付けられた名前だった

 

 公安での毎日は充実していた

 

 勉強の質もトレーニング機材も今までとは雲泥の差があり、少しばかりのお賃金も渡された

 

 公安では力のある子に目をつけて将来のヒーローや公安の職員を育てたりしている

 

 幼い子供に目をつけて育てるのはホークスというヒーローの成功例があるからで、そのホークスは10代でヒーローのランキングで10位以内に入り、今や3位にまで上り詰めていた

 

 公安ではそういった使えるヒーローの育成をしていた

 

 ただ公安所属というのは普通のヒーローではない

 

 ヴィランと繋がったヒーローや悪に手を染めたヒーローの粛清の役目も担わなければならない

 

「お、今日もやってるねぇ関心関心」

 

「相変わらず勤勉やな〜」

 

「リコ、セーラー!」

 

 2人は那智と共にチームを組んでいる仲間であり、クリーム色のボブカットの高校生がリコ、茶髪でボーイッシュの関西弁の高校生がセーラーであった

 

 勿論2人とも偽名であるが、那智もリヴァイアサンからリヴァちゃんと言われていた

 

 2人は個性は強くない為ヒーローのサポートをする役割を担い、将来的に那智のバックアップメンバーとして支える予定である

 

 ホークスが何でも1人でこなせる人材だったが、そんな都合の良い人材は中々出てこない

 

 そこでチームとして優秀であれば負担を分散し、より長く活動できるだろうというのが公安としての回答であった

 

 公安での訓練は多岐に渡り、水泳やマラソン、筋トレ等の基礎トレーニングからサバイバルや多言語等のヒーローというよりスパイ訓練みたいなものまであった

 

「MP18」

 

「はい!」

 

「88cm砲弾」

 

「はい!」

 

「M39卵型手榴弾」

 

「はい!」

 

「ガスマスク!」

 

「はい!」

 

「間違い無し、生成時間1秒未満、流石やな」

 

「えへへ」

 

「リヴァはヒーロー向いてるよ。この調子で頑張ればホークス先輩を超えられるって」

 

「そ、そうですかね」

 

「自信持ちなって」

 

「はい!」

 

 公安で3年が過ぎた時、初任務が言い渡された

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