ドゥ~ラドゥラドゥラ! 私が最強のウマ娘メンテねえ!   作:東頭鎖国

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ドゥラメンテ実装おめでとう


16話

 11月。

 この頃になると、エアプメンテも暇なんて呑気なことは言えなくなってくる。

 迫りくる期末テストに向けて、毎日勉強に努めていた。

 今日この日も、エアグルーヴと共に図書室で勉強をしていた。

 しかし──

 

「集中できていないようだな、プメンテ」

 

「えっ、そ、そんなことないドゥラよ!?」

 

 エアプメンテは慌てて否定するが、エアグルーヴにはお見通しだった。

 なにせ、ずっと耳が忙しなくピコピコと動いているのだ。

 誰が見ても落ち着きがないのは明らかだろう。

 エアグルーヴは小さくため息をつく。

 

「まあ、気持ちはわかる。

 自分の周囲が次々とレースに出る中、自分は動けないのだからな。

 私にも経験がある」

 

「グルーヴお姉ちゃんも、ドゥラか?」

 

「ああ。

 私も丁度……秋華賞の時だ。

 レース中に右足をやってしまってな。

 あの時の私は今のお前と似たような状況だった」

 

 エアグルーヴは当時を思い返し、どこか遠い目をしながら穏やかに語り始める。

 

「あの時は……とにかく、焦燥感が強かった。

 同期やチームメイトがどんどん先に進んでいるのに、何も出来ない。

 自分だけが置いていかれてしまいそうな感覚に囚われて、気が休まらなかった」

 

「それを……そんな時期を、グルーヴお姉ちゃんはどうやって過ごしてたんドゥラか?」

 

「そうだな……私の場合はチームメイトがいたからな。

 励ましてもらったり、逆に世話を掛けさせられることもあって退屈はしなかった。

 それに、トレーナーもよく気にかけてくれたしな」

 

 そう言ってエアグルーヴは微笑む。

 エアプメンテは少し羨ましそうにそれを見ていた。

 

「そういえば、グルーヴお姉ちゃんってチーム所属だったメンテね。

 そういう時いいメンテねー、私もトレーナーにチーム結成してって言ったら作ってくれるドゥラかね?」

 

「彼はプメンテ一人で精一杯なんだからよしてやれ……。

 それに、どっちみちお前はチーム向きではない」

 

「ドゥラ?」

 

「お前は突出しすぎている。

 それに周囲に実力を合わせるのも苦手だろう? チームと足並みが揃わず苦労するのが目に見えている」

 

「ドゥラっ……」

 

 エアプメンテは併走相手に難儀していた時のことを思い出す。

 そして実は、今も変わらないのだ。

 結局のところ彼女は大逃げ以外できないし、やらないことには変わらない。

 

「まあ、そういうことだ。

 マイペースなお前はトレーナーとマンツーマンでやっていく方が合っているだろうな」

 

「そう言うグルーヴお姉ちゃんはしっかりしてるから、チームでもそうじゃなくてもやっていけそうドゥラね」

 

「いや……おそらく専属では、上手くいかないだろうな。

 私のことをよく理解し、尊重した上で共に歩んでくれるトレーナー。

 相当優秀でしっかりした人物でなければならんし、その点でいうと今のトレーナー以上の人間がいるとは思えん」

 

「えー、案外だらしない人のほうが相性いいかもしれないドゥラよ? 

 グルーヴお姉ちゃん、よく人の面倒見てくれるメンテし」

 

「ふふふっ、冗談を言うな。

 ウマ娘がトレーナーの面倒を見ていたら本末転倒だろう。

 そんな世話のかかるたわけと契約しているウマ娘がいたとしたら、顔を見てみたいものだ」

 

「ドゥラドゥラドゥラ! それもそうメンテねえ!」

 

 そんな風なやり取りもありつつ、エアグルーヴはエアプメンテの面倒をよく見ていた。

 なんだかんだいって、結局彼女も世話焼きなのだ。

 特に傷つき弱っている妹分に対しては、尚の事だった。

 

 *****

 

 エリザベス女王杯。

 エアプメンテの同室であるリバーライトと、同期のイッツコーリングが走る。

 

「リバー先輩! リングー! がんばれドゥラ~!」

 

 エアプメンテはトレーナー同伴のもと現地まで駆けつけ、スタンドで声援を送っていた。

 

『さあ向こう正面回って最終直線! 各ウマ娘一気に上がってきた! 後方からグングン追い上げてくるのはリバーライト! 

 ものすごい末脚だー! そのまま差し切ってゴール! 今ここに、新たな女王が堂々と誕生しました!』

 

「やった……やった! やったぁ~!!」

 

 リバーライトは歓喜のあまり、飛び上がって喜ぶ。

 彼女にとっては初の重賞勝利、それもG1だ。

 13戦のキャリアの中で、やっと掴んだ栄冠だった。

 

「すっげえドゥラ、リバー先輩! おめでとメンテねえ~!!」

 

 同室のエアプメンテは、彼女の苦悩を知っていた。

 敗戦を嘆いていたこと。

 重賞に出られずに燻っていたこと。

 それでも勝利を重ね、やっと重賞に出られる! と意気揚々と臨んだG3レースで二着に終わったこと。

 なかなか勝ちきれないことを気に病んでいたこと。

 それでも腐らずに頑張っていたこと。

 

 それを知っていたから、余計に嬉しかった。

 

 一方のイッツコーリングは、8着。

 悔しい敗戦となった。

 

「なんて、不甲斐ない……。

 次こそは、絶対……!」

 

 イッツコーリングは悔しさを噛み締め、堂々とターフを立ち去っていく。

 涙は流さない。

 次勝つためには、こんなところで止まっていられない。

 

「リング……」

 

 そんな彼女の姿を見て、エアプメンテの手にも思わず力が入るのだった。

 

 *****

 

 その次の週、マイルチャンピオンシップ。

 レッツゴードンキの走るレースだ。

 

「ドンキ! ぶちかませドゥラ~!!」

 

 ドンキは観客席で声を張り上げるエアプメンテに対して、笑顔で手を振って応えた。

 どうやらエアプメンテの声は聞こえているらしい。

 

「よ~し、心機一転、ドンキちゃん頑張っちゃうぞっ☆」

 

 そう言ってドンキはレースを駆ける。

 しかし──

 

「6着ドゥラか……」

 

 レッツゴードンキの順位は、ギリギリ掲示板外といったもの。

 

「ファンのみんな! 見に来てくれてありがと~☆

 次は絶対勝つからね!」

 

 そう言ってドンキは笑顔で観客席に手を振る。

 表面的には、悔しさなどおくびにも出さない。

 だが、エアプメンテは知っている。

 悔しくないはずなんて、ないのだ。

 それでも、レッツゴードンキは笑って立ち去る。

 少しでもファンの皆を暗い気持ちにさせないように。

 

 *****

 

 11月最後のG1、ジャパンカップ。

 

「ミッキー! ゴルシ先輩! やってやれドゥラ~!!」

 

 エアプメンテは声を張り上げて、必死に応援する。

 だがしかし、結果は残酷で──

 ミッキークイーンは8着、ゴールドシップは10着。

 

「~~ッッ!! この私が、入着すらできないなんて~ッ!」

 

 今までのミッキークイーンの連対率は10割。

 2着以下に甘んじる経験など初めてのことだった。

 それも、掲示板外。

 シニア級混合G1の洗礼を浴びる形になった。

 

 一方のゴールドシップは──静かに、ただ空を見上げていた。

 その胸中に何を抱えているのかは、本人にしか分からない。

 

 その様子を見ていたエアプメンテは、耳を畳んだままトレーナーに零す。

 

「……見てるだけって、こんなにもどかしいメンテね」

 

「……そうだね。

 一度レースが始まってしまえば、外野に出来ることは何もない。

 応援してる子の力になってあげることもできないし、一緒に走ることも出来ない」

 

「……走りたい。

 走りたいメンテよ……!」

 

 エアプメンテは松葉杖を持った手を握りしめる。

 加減なく握られた松葉杖のグリップがミシミシと音を立て、ばきり、と潰れる。

 

「……あ」

 

 やってしまった、という気持ちになる。

 これでは、帰れない。

 賠償費も安くはない。

 元々暗くなっていたエアプメンテの気持ちが、更に沈んでいく。

 

「あ、やっちゃったね……しょうがないな、僕が支えて行くよ」

 

 そう言ってトレーナーはエアプメンテに肩を貸し、慎重にゆっくりと歩く。

 

「世話かけてごメンテ……」

 

「大丈夫だよ、気持ちは分かるつもりだから。

 それに、プメにかかる負担は少しでも減らしてあげたいしね。

 ……そうだな、帰ったらトレーナー室で話をしようか」

 

「話? なんのドゥラか?」

 

「次走の話さ。

 今から明確な目標があったほうが、キミにとってもいいだろう?」

 

 それを聞いて、エアプメンテの表情が一気に明るくなる。

 

「……うんっ、うんドゥラ! レースの話したいメンテ!」

 

 *****

 

「──まず、何事もなければキミの怪我が治って練習に復帰できるのは年明け以降だろう。

 その後も勘を取り戻すのに暫くかかるとして……問題は調整期間をどれだけ長く取るかだね。

 一応参考までに、かつてキミと同時期に怪我をしたエアグルーヴさんの復帰レースは6月だったらしい」

 

「そんなに待てないメンテよ!」

 

「そう言うと思った。

 そこで目標にしようと思うのが、春の天皇賞。

 4月に行われるG1レースだ」

 

「4月ドゥラか。

 それでも、だいぶ待つメンテね……」

 

「怪我が治ることと競争能力を取り戻すことはまた別の話だからね。

 レースで勝てる身体を作り直す必要がある。

 こんなに運動しない期間なんて、キミの人生にとっては初めてのことだろう?」

 

 そう言われて、エアプメンテは今までの人生を思い起こす。

 確かに、運動していない日はなかった。

 夏前に行われた地獄のテスト勉強期間でも、気晴らしに身体を動かすくらいのことはしていた。

 

「……言われてみれば、そうドゥラね」

 

「うん。

 その証拠にプメ、ちょっと太ってきてる」

 

「ドゥラぁっ!? えっ、嘘メンテよねぇ!」

 

 エアプメンテは自分の身体にぺたぺたと触れる。

 言われてみれば、お腹に肉がついてきているような……。

 それになんとなく、輪郭もふっくらしてきたような……。

 

「運動量が激減したのに食事量が変わってないからね。

 食べるなとは言わないけど、ほどほどに節制してね」

 

「トホホ……動けない中で数少ない楽しみだったメンテのに……」

 

 エアプメンテはショックで落ち込んでしまう。

 トレーナーはそれをあまり気にすることなく、さらに続ける。

 

「厳しいことを言うようだけれど、あとで困るのはキミだからね。

 それに春の天皇賞は、今までのレースよりもっと厳しいよ。

 なにせ京都の3200m……わかるね?」

 

「き、菊花賞より長いんドゥラか!?」

 

 エアプメンテは驚愕の声をあげる。

 菊花賞よりもしんどいレースがあるとは思わなかったからだ。

 

「そう。

 そこが懸念点の一つだ。

 菊花賞でギリギリだったのを見るに、スタミナが保つかどうか……」

 

「保たせるドゥラ! 私は最強だからいけるメンテねえ! 

 菊花賞だって練習したら走れたんだから、もっともっと練習すれば天皇賞だって走れるメンテねえ!」

 

「……よし、わかった。

 それじゃあ春天を第一目標として、まずは治療と減量! 

 そして傷が治ったらリハビリ! それが済んだら本番だ! 

 キミにとって辛いことが続くけど、乗り越えられるって信じてる。

 だってプメは最強だから!」

 

「ドゥ~ラドゥラドゥラ! そうドゥラよね! 

 私は最強なんだから、痩せることなんて楽勝メンテねえ!」

 

 こうして新たな目標を据え、エアプメンテ達は再出発を誓うのであった。

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