ドゥ~ラドゥラドゥラ! 私が最強のウマ娘メンテねえ!   作:東頭鎖国

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23話

 6月。

 エアプメンテにとって、待ちに待ったその日がやってきた。

 

「ついに、宝塚記念メンテねえ!」

 

 待ちに待ったリベンジの機会。

 そして、特訓の成果を試す時。

 エアプメンテのテンションは、いつも以上に高かった。

 

 

「プメ。

 例の作戦で行くんだよね?」

 

「もっちろんドゥラ! そのために今日まで特訓してきたメンテねえ!」

 

「そうだね。

 問題はキタサンブラックのプレッシャーにどこまで耐えられるかだ。

 こればっかりは走ってみないと分からない。

 それでも、プメは──」

 

「最強だから、心配いらないドゥラ! 

 そうドゥラよね、トレーナー!」

 

 エアプメンテはトレーナーが言おうとしたことを先取りして、得意気に笑う。

 トレーナーは苦笑しながら言った。

 

「その様子だったら、安心だね。

 キミが作戦を使うのは初めてだ。

 くれぐれも、作戦にこだわりすぎて自分を見失わないようにね!」

 

「わかってるドゥラ。

 今までの特訓も、そのためにやってたドゥラよ。

 それじゃ、行ってくるメンテねえ!」

 

 トレーナーは、エアプメンテの背中を見て思う。

 気合のノリがいい。

 浮ついているように見えながら、落ち着いている。

 トレーナーには、確信めいたものがあった。

 

「プメ。

 今日のレースを支配するのは、君だ」

 

 *****

 

 エアプメンテが入場すると、嵐のような歓声が彼女を迎える。

 

「なんか、いつにも増してお客さんの盛り上がりが凄いメンテねえ」

 

「今日は宝塚記念。

 ファン投票で集まったウマ娘たちが走る、一つのお祭りみたいなレースだからね」

 

 そう言って近づくのは、キタサンブラックだった。

 

「そう言えば私たち、一番人気と二番人気だったメンテね」

 

 ちなみに、宝塚記念の人気投票一位はエアプメンテ。

 前走で敗れたとはいえ、やはりクラシック六冠娘の人気は凄まじいものがあった。

 二位のキタサンブラックも、得票数では後続を大きく引き離している。

 やはり世間は、この二人のライバル対決に注目していた。

 

 しかし、だからといって。

 このレースは二人だけのものではないのだ。

 

「私達のことも、忘れてもらっちゃ困るわよ?」

 

「クラちゃん!」

 

 サトノクラウンが二人に声を掛ける。

 

「あ! えーっと……何回か一緒に走ったメンテよね。

 えーっと、えーっと、名前は……」

 

「サトノクラウン。

 エアプメンテさん、この間はうちのダイヤがお世話になりました」

 

「サトノ……って言うと、ダイヤの家の子メンテね!」

 

 エアプメンテが気づくと、クラウンはニコリと笑う。

 その眼の奥には、確かな闘志が見て取れた。

 

「忘れられないようにしてあげますよ。

 それじゃ、後はレースで、ね!」

 

 そう言って、クラウンは自分のゲートへと向かっていく。

 

「クラちゃん……負けないよ。

 それに、プメちゃん。

 今回も、私が勝つからね!」

 

 キタサンもまた、自らのゲートに向かう。

 

(今日警戒すべきウマ娘は、()()ドゥラ。

 あとは……)

 

 エアプメンテはしばらくの間、観客席を見つめていた。

 

「エアプメンテー! 今回こそ負けんじゃねえぞ~!!」

 

「お前の実力思い知らせてやれー!!」

 

「クラシック最強はシニアでも最強だって、信じてるからな~!!」

 

 激しい声援が聞こえる。

 その中には、小さな子供の声もあった。

 

「エアプメンテ、がんばれ~!」

 

 老人の姿もあった。

 

「お前さんのレースを見るためにホームから脱走してきたんじゃぞ~!!」

 

 様々な層が、自分を応援してくれている。

 エアプメンテは目を閉じて、大きく息を吸う。

 そして、観客席に向けて叫ぶ。

 

「ファンのみんな~!!」

 

 その叫びを聞いて、レース場は静まり返る。

 静寂を切り裂き、エアプメンテは再び叫ぶ。

 

「この間は、負けちゃってごメンテ! 今日はぶっちぎりで勝つドゥラよ!!」

 

 その言葉に、観客席は沸いた。

 堂々の勝利宣言。

 今までのエアプメンテがやりそうでやらなかったそれは、全ての人の注目を一心に集めた。

 もちろんそれは客席だけではなく、出走ウマ娘たちにとっても同じことだった。

 

「すごいや、プメちゃん……」

 

「場の空気を全部持っていっちゃったわね」

 

 キタサンとクラウンは大胆な行動に感心しながらも笑う。

 負けていられない、と気合も入る。

 

「……なんて心臓してるんだ、一体」

 

 シュヴァルグランは呆れると同時に畏怖の感情を覚える。

 この大舞台であんな啖呵を切るなんて、正気じゃない。

 それだけの自信と、それを可能とする実力があるのだ。

 

「……でも、好きにはさせない」

 

 キタサンブラックとエアプメンテという、二人の強敵。

 より警戒しなくてはいけないのは、エアプメンテのほうだ。

 シュヴァルグランは、より深く帽子を被り直した。

 

「……」

 

 そして、リバーライトはただ静かにエアプメンテの方を見ていた。

 その表情からは、集中している様子が伝わってくる。

 

(プメちゃんと一緒にG1を走る時が来るなんて、思わなかったな)

 

 リバーライトは、エアプメンテに声をかけない。

 エアプメンテもまた、何も言わない。

 言葉なんて、同じ部屋でいくつも交わした。

 

 今日は言葉じゃなくて、レースで語る日だ。

 

『票に託されたファンの夢。

 想いを力に変えて走るグランプリ、宝塚記念!!』

 

 ファンファーレが鳴り、実況の声が響く。

 出走ウマ娘達は、個々人のペースでゲートに入っていく。

 

『一番人気はやはりこのウマ娘、エアプメンテ!! 

 六冠の覇者は、今度こそシニアG1での勝利を成し遂げるか!?』

 

 名前を呼ばれると共に、凄まじい声援が上がる。

 エアプメンテはそれに応え、笑顔で両手を振った。

 

 そんなエアプメンテの様子を、ティアラ三人娘は観客席から見ていた。

 

「……なんか、らしくありませんわね」

 

 エアプメンテの様子を見ていたイッツコーリングは、何かを感じて訝しむ。

 

「そうですの~? 私にはいつものプメンテと変わらないように見えますわよ。

 敗戦後一発目のレースだっていうのに、いっちばん目立ちやがってますし」

 

 ミッキークイーンは気にしていなかったが、レッツゴードンキもまた違和感を覚えていた。

 

「いや……プメちゃんって、こんなにファンサービスする子だったかなあ? 

 そりゃ観客席に手を振ったりはしてたけど、大体こういうのってレースが終わってからだったし。

 なんていうか……目立ちすぎてないかな?」

 

 それはエアプメンテと関わりが多いからこそ気づく、僅かな違和感。

 殆どの人間は、それに気づかず熱狂していた。

 気付いた一部の人間も、深く気に留めることはしなかった。

 

「そろそろ、レースが始まりますわね」

 

 全員がゲートに入ったのを見て、三人はターフに意識を集中する。

 

 

 静寂。

 

 

 そして──

 

 がこんっ!! 

 

 独特の音と共にゲートが開き、一斉にスタートを切る。

 

『さあ各ウマ娘綺麗なスタート! 早速ハナに立ったのはエアプメンテ! 毎度のことながら、見事なスタートダッシュだ!』

 

 エアプメンテはするりと抜けて、当然のように先頭に躍り出る。

 

(ダービーの時より)

 

(春天の時より)

 

((速いッ!!))

 

 サトノクラウンとキタサンブラックの内心が一致する。

 可能なら、ここで塞ぐつもりだった。

 しかしそんな甘い戦略が通用する相手ではないことを、改めて思い知らされる。

 

『エアプメンテ、後続をグイグイ引き離す! 流石の逃げ足だー!』

 

(──でも、これでいい)

 

 キタサンブラックは切り替えて、エアプメンテの後ろに張り付く。

 対エアプメンテ用のマーク戦術だ。

 前回勝利を呼び込んだ、キタサンブラックが最も信頼する戦い方。

 

(いくよ、プメちゃん!)

 

『キタサンブラックもペースを上げ、一気に後を追う! やはりこの二人のデッドヒートが始まるのか!!』

 

 一方のエアプメンテはちらりと目だけを動かしながら、後ろを確認する。

 

『……いや! この二人だけではない! 後続のウマ娘たちも次々とエアプメンテを追う!』

 

『彼女のペースに乗せたら駄目だという判断でしょうね。

 果たして、エアプメンテはこれを跳ね除けられるのでしょうか』

 

(とりあえず、作戦の第一段階はクリアしたメンテね)

 

 まず、ハナを取る。

 これができなければ話にならない。

 これでひとまず、レースの主導権は握ったも同然だ。

 

(でも、まだまだレースは始まったばっかりドゥラ。

 気が抜けないメンテねえ)

 

 実際、エアプメンテは後ろからのプレッシャーをバチバチに感じていた。

 それも、キタサンブラック一人のものではない。

 何人ものウマ娘がエアプメンテの背中に張り付こうとしている。

 だからといって、クラシックの時のようにレース展開が崩れることもない。

 

 右をちらりと見る。

 サトノクラウンが迫ってきている。

 

 左をちらりと見る。

 シュヴァルグランが隙を伺っている。

 

 スタートで引き離した後続の集団が、どんどん近づいてきている。

 

『エアプメンテを中心に右、左、そして背後! これはエアプメンテ包囲網が出来上がりつつあるのか!?』

 

『このままだと厳しい展開ですね。

 進路が塞がれる前に、なんとか引き離したいところですが』

 

 複数人からかけられる圧力に、額から汗がたらりと流れる。

 勝つためには、絶対にハナを渡してはならない。

 

(ルドルフ会長との特訓で揉まれたとは言え、複数人からってのは初めてドゥラ。

 思ってたより、ちょっとばかしキツいメンテね)

 

『さあ第一コーナーを抜けて、直線に入った! おっとエアプメンテ、ペースが落ちてきたか!? 

 らしくない展開が続く!』

 

 いつもの大逃げが、出ない。

 そんな展開に、応援している人々はやきもきしていた。

 

「おい……今日のエアプメンテ、調子悪いんじゃないか?」

 

「いや、周りが強いんだ。

 相手はシニア級でやってきた猛者揃い。

 スペックで圧勝してたクラシックとは違う」

 

「くそーっ……がんばれエアプメンテー! 

 早いとこぶっちぎって、一気に逃げてくれ~!」

 

 そんな声援も虚しく、状況は変わらない。

 辛うじて先頭を維持してはいるものの、後続との差は一バ身もない。

 

 *****

 

「がんばれキタサン! そのままプメ公に張り付き続けろー!」

 

「根性で負けんじゃねーぞ!!」

 

 スピカ陣営は、キタサンブラックに声援を送る。

 今のところは作戦通り、キタサンの狙い通りのレースが出来ている。

 

「いい感じじゃない? 最初の直線の時より、差も縮んでるわ。

 エアプメンテのスピードが落ちてる。

 さすがにあの人数からマークされたら、スタミナが保たないって思ったのよ」

 

 ダイワスカーレットが明るい声で言う。

 

「エアプメンテさんのペースが乱されている、ということですわね。

 普段より、エアプメンテさんのペースについていくための消耗が少なく済んでいますわ」

 

 メジロマックイーンの声も明るい。

 彼女は、マーク戦術をされる側の辛さを身を以て知っている。

 だからこそ、それが上手くいっている現状はとても有利な形に感じた。

 

 スピカが明るいムードで観戦している中、スペシャルウィークだけが難しい顔をしていた。

 

「どしたの、スペちゃん? 

 キタちゃん、いい感じに頑張ってるよ」

 

 トウカイテイオーの声に顔を向けぬまま、ただレースをじっくり見ながら考える。

 

「いえ……なんだか、違和感があるんです。

 いくら負担が強くても、エアプメンテちゃんがこんなに早く、簡単に減速するんでしょうか? 

 それにあの走り方、どこかで見たことがあるような、ないような……」

 

「スペちゃん……?」

 

 トウカイテイオーも真剣な顔でターフに目を向ける。

 

「……確かに、おかしい。

 最初こそ後ろを引き離したけど、それ以降は明らかに抑えてる。

 いつものあの子の走りじゃない」

 

「……やられたか」

 

 エアプメンテの策に気づき、沖野トレーナーは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

 ずっと大逃げ一辺倒でやってきた彼女が作戦を使ってくるなど、考えもしていなかった。

 

「ペースが乱されてるのはエアプメンテじゃない。

 キタサンたちの方だ!」

 

 沖野の叫びに、スピカの面々は一斉に振り向く。

 

「えっ!?」

 

「どういう事!?」

 

 そんな中、スペシャルウィークはある事を思い出す。

 アレは、見たことがある気がする。

 

「……セイちゃん?」

 

 エアプメンテとは似ても似つかないはずの友人の姿が、なぜか重なって見えた。

 

 *****

 

 そう、エアプメンテは一芝居打っていた。

 スタートダッシュだけ大きく飛ばして先頭を走り、乱れたと見せかけてわざとペースを落とす。

 そして、後続の動きを見た。

 抜こうと思えば抜けるはずのスピードで走っているというのに、抜いてこない。

 それを見てエアプメンテの予想は、確信に変わった。

 

(思った通りドゥラ! 

 みんな、私が作ったペースに乗っかろうとしているメンテね。

 ってことは……)

 

 エアプメンテが試しに少しペースを上げる。

 すると、後続もそれに合わせてペースを上げてくる。

 エアプメンテが少しペースを落とすと、後続もそれに倣う。

 常にエアプメンテと一定の差を保とうとするのだ。

 

 特に顕著なのはキタサンブラック。

 常にエアプメンテの視界に入り、並ぶか並ばないかの位置を維持しようとしてくる。

 

 今までなら、急かされるように感じてついスピードを上げてしまっていたことだろう。

 しかし、今は違う。

 抜いてこないのがわかっている。

 

(ならば、このペースのまま流せばいいメンテね)

 

 エアプメンテが出すのは、8割の力。

 ずっと練習していた、抑える走り。

 しかし、キタサンブラック達は気付かない。

 エアプメンテという強い光に眩んで、全体の展開に目が向かない。

 

(あの日……なんでキタサンに負けたのか、考えたドゥラ。

 あの時、ラストスパートで全力を出しきれなかった。

 そもそもの原因は、キタサンとの削り合いに付き合っちゃったからメンテね)

 

 だから、対策を考えた。

 有効な作戦だと分かった以上、他のウマ娘が仕掛けてくる可能性も考えた。

 そうして辿り着いた結論は、相手を気にせず、相手に合わせない。

 ……すると、どうなる? 

 相手は自分のペースに合わせて走るようになるのだ。

 じゃあ、負担の少ないスローペースな走りをしても、全く問題ないんじゃないか? 

 

 エアプメンテはそう考える。

 しかしこの作戦には、二つの問題点があった。

 一つは、あからさますぎるとバレること。

 もう一つは、エアプメンテ自身が掛かりやすいこと。 

 その二つの問題点を解決するために、ずっと特訓を積み重ねてきた。

 

 また、この作戦は大前提として自分がもっとも注目されていないと成立しない。

 エアプメンテは自分なら、そこは問題ないと確信していた。

 しかし念を入れ、もっと注目されるために観客席に対する勝利宣言などもしてみせた。

 全ては、エアプメンテなりに精一杯考えての行動だったのだ。

 

 そのまま、第三コーナーを回る。

 

(まだ、来ない!?)

 

 エアプメンテは、まだ抑える。

 ここでやっと、キタサンブラック達は異変に気づく。

 そこで、一瞬迷ってしまった。

 エアプメンテがまだ出ない。

 ここは本当に仕掛け時なのか? 

 それとも、まだ時期尚早なのか? 

 

 その一瞬の迷いが、致命傷だった。

 

「いただきドゥラ!!」

 

 エアプメンテは強く踏み込み、一気にラストスパートをかける。

 このスパートのために、たっぷりと体力を残していたのだ。

 

 他のウマ娘たちも、スローペースで走っているのだから本来は体力が残っているはずだった。

 しかしエアプメンテと比べて、消耗した気力が違う。

 それ故に、出せる力にも雲泥の差があった。

 

『エアプメンテ、ここで一気に加速した! 後続のウマ娘もそれに続いてラストスパートをかける!』

 

 先んじて抜け出したエアプメンテを止められるものは、もはや存在しない。

 ……ただ一人を、除いては。

 

 びゅん、と。

 後方から風が舞い、キタサンブラックを抜き去っていく。

 

「……誰っ!?」

 

 完全に意識の外から飛んできたウマ娘に、キタサンブラックは思わず声を出す。

 それは唯一エアプメンテのペースに合わせず、ずっと機を伺っていたウマ娘だった。

 

『リバーライト! 大外からリバーライトがやってくる! すごい脚だ!! そのまま最終直線、エアプメンテと競り合う形になるか!?』

 

 リバーライト。

 エリザベス女王杯を勝ち取ったG1ウマ娘であるものの、それ以外に目立った勝ちレースはなく、今回のレースも8番人気。

 正直言って、彼女が来るなどとは誰もが予想していなかった。

 ……ただ一人を、除いては。

 

「やっぱり来たメンテね、リバー先輩!!」

 

 今日、エアプメンテが警戒していたウマ娘は二人。

 それはキタサンブラックと、リバーライトだった。

 

 今回の作戦で危惧していたのは、作戦がバレること。

 つまり、自分のことをよく知っているウマ娘。

 看破されるなら、この二人しかいないと思っていた。

 

 リバーライトは、エアプメンテをよく知っている。

 それでいて、エアプメンテのレースのことを常に一歩引いた目で見ていた。

 彼女の事を知っていながら、誰よりも客観的にレースを観察していた。

 

 キタサンブラックとの差は、そこだった。

 色々な意味で、キタサンはエアプメンテに近すぎた。

 故に、全体像を見誤った。

 

「プメちゃん……!!」

 

 彼女が入学してきた頃から、ずっと一緒の部屋で過ごした。

 すごく強くて、すごく素直で、すごく世話の焼ける子。

 彼女はデビューの時からずっと輝かしい成績を残して、大活躍してきた。

 最初は、純粋に応援していた。

 でも、彼女のことを見ている内に……リバーライトの中に、一つの気持ちが芽生えた。

 

『プメちゃんに──こんな凄いウマ娘に、勝ちたい』

 

 それから、G1を獲り、この宝塚に……エアプメンテと本気で戦える舞台に立った。

 リバーライトはこのレース、外枠からのスタート。

 今回はそれがプラスに働いた。

 

 一人、大外でエアプメンテのペースから離れて走っていたからこそ、異変に気づいた。

 その上で、勝つためにはどうするか。

 彼女は息を潜め、存在感を消し……ただ、足を溜めた。

 そして、スパートのタイミングを見極めて……最高の状態で、最後の直線勝負に出た。

 

『リバーライト、どんどん差を詰めていく! これは、まさか!? まさかがあるのか!?』

 

 それは、リバーライトの競争人生の中でもベストと言っていい走りだった。

 しかし、エアプメンテがさらに一段階加速する。

 縮まっていったはずの距離が、どんどん引き離されていく。

 リバーライトの末脚では、エアプメンテに届かない。

 

(ああ──やっぱり、強いや)

 

 

『ゴォール!! 一着はエアプメンテ! 宝塚の舞台を制し、シニア級でもその強さを証明してみせたー!』

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