ドゥ~ラドゥラドゥラ! 私が最強のウマ娘メンテねえ!   作:東頭鎖国

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25話

「ねえねえ、これからどこに行くの?」

 

 ウララがそう尋ねると、キタサンはぎこちなく反応する。

 

「え? どこって……場所、ですか?」

 

「うん! 高知には観光に来たんだよね?」

 

「え、あ……ええっと……」

 

 キタサンブラックは迷った。

 なんと答えたらいいものか

 高知に来たのは、全くの偶然だ。

 

 キッカケがなければ、電車で行ける果てまで行ってしまおうとでも思っていた。

 たまたま、景色が良かったから下りただけ。

 キタサンが答えあぐねていると……腹の虫が、ぐぅ~と鳴った。

 

「あっ……!」

 

 キタサンの顔が赤くなる。

 そういえば、家を出てから何も食べていなかった。

 気づけば、時刻は既に三時を回っていた。

 

「おなかすいたの?」

 

「はい……」

 

 キタサンが俯き気味に答えると、ウララはキタサンの手を引いて歩きはじめた。

 

「う、ウララさん!?」

 

「それじゃあ、一緒にごはん食べに行こう! 私も今、おなかペコペコなんだ!」

 

 そう言われて、キタサンは大人しくついていくことにした。

 いつの間にかハルウララのペースに巻き込まれ、流されるがままになっていた。

 でも……不思議と、嫌な感じはしない。

 

 これからの指針を失ったキタサンブラックは、心の底でそうして欲しかったのかもしれない。

 誰かに導いて欲しかったのかもしれない。

 でも、周りの人達にはどこか引け目みたいなものを感じて、それができなかった。

 

 皮肉なことに、交流のなかったハルウララだからこそ素直についていくことができた。

 小さく温かい手に引かれ、キタサンは歩いていく。

 そうして連れて行かれた先は、年季の入った定食屋だった。

 

「ここ、すっごくおいしいんだよ!」

 

 そう言ってウララが扉を開ける。

 からんからんとドアベルの音色が鳴ると同時に、人の良さそうな老婆が出迎える。

 

「はい、いらっしゃい! あら、ウララちゃんじゃないか。

 隣の子はお友達かい?」

 

「うん、キタちゃんっていうの! 中央から来たんだって!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 キタサンが遠慮がちに挨拶すると、老婆は優しげに笑った。

 

「よろしくねぇ、キタちゃん。

 遠くから高知まで、よく来たねぇ。

 これもやっぱり、ウララちゃんのおかげかねえ」

 

「ウララさんの?」

 

 キタサンの疑問を余所に、ウララは元気よく注文する。

 

「おばあちゃーん! 私、いつものやつね!」

 

「はいはい。

 キタちゃんも注文が決まったら言ってねえ」

 

「は、はい!」

 

 そう言われて、キタサンはメニュー表に視線を落とす。

 からあげ、ハンバーグ、とんかつ、肉を甘辛く炒めたやつ……。

 非常にオーソドックスな定食屋といった趣の連中が揃って顔を並べている。

 

「ここはね、カツオのたたきがオススメだよ!」

 

「カツオですか?」

 

「うん! 高知のカツオはこじゃんと美味いきに(とってもおいしいよ)!」

 

「えっと……じゃあ、それで!」

 

「あいよ、すぐ出来るから待っててね! 

 聞こえてたわねアンタ! たたき1つにウラランチ1つ!」

 

「あいよ!」

 

 老婆が叫ぶと、厨房にいる老人が手を挙げて応える。

 この食堂の店主だ。

 ウララはご機嫌にぴこぴこと耳を動かし、尻尾を振っている。

 

「えへへ、楽しみだな!」

 

 その様子に微笑ましいものを覚えながら、キタサンは店内を見渡す。

 お昼時を過ぎたのもあって他の客はいない。

 

「ここって、お二人で経営してるんですか?」

 

 キタサンが何気なく尋ねる。

 

「そうだよ。

 息子たちも成人して出てったんで、年寄り二人で気楽なもんさ。

 平日は客もそんなに来ないしねえ」

 

「……っていうことは、休日はいっぱい来るんですか?」

 

「ああ、週末は観光に来たお客さん達が来るのさ」

 

「えっ、こんな寂れたお店にですか!? 

 ……あ!」

 

 思わず口を滑らせて、キタサンは慌てて口を閉じる。

 老婆はただただ笑顔でキタサンを見ていた。

 

「ふふふ、私があと20歳若ければ手が出てるところだねえ」

 

「ごめんなさい……」

 

「いいんだよ、本当のことだからねえ。

 実際、客なんて顔見知りの数人しか来ない。

 利益なんてさっぱり出ない、年寄りの道楽だったさ。

 そこのウララちゃんが来るまではね」

 

 老婆はそう言ってウララを見る。

 

「私ね、がんばったんだ! このお店、とってもおいしいんだもん! 

 それをみんなに知ってほしくて、色んな人に教えてあげたんだ!」

 

 ウララが元気よくそう言う。

 

「そっか……ウララさんがこのお店を宣伝してくれたおかげで、お客さんが増えたんですね」

 

「そういうことさ。

 でも、それだけじゃないよ。

 ウララちゃんはね……」

 

 そう言いかけた時、店主が料理を運んでくる。

 

「おい。

 料理運ぶのはわしの仕事やないぞ?」

 

「別にえいろう、他に客おらんのやき」

 

 本来、料理を運ぶのは老婆の仕事だ。

 店主は不服そうな顔をしていたが、老婆は大して気にも留めない。

 どうせ暇なのだ。

 

「わあぁ、おいしそ~! おじいちゃん、ありがとう!!」

 

 目の前に置かれた料理を見て、ウララが瞳をキラキラと輝かせながら喜ぶ。

 それを見て、不服そうな店主の表情が一瞬で緩んでしまう。

 

「おぉウララちゃん! 今日も元気だねえ。

 キタちゃんも、遠いところからよう来てくれたねや。

 ほい、お待ちよ」

 

 キタサンの目の前に、たたき定食が置かれる。

 の断面がキラリと輝き、ほっかほかの白米が湯気を立てている。

 

「うわぁ、美味しそう……。

 いただきます!」

 

 キタサンは一も二もなく、定食にパクつく。

 炙った皮の香ばしさに、中の身に詰まった濃厚な旨味。

 そこに薬味がツンと効いて、サッパリとしてしつこくない。

 

「本当に、おいしい……!」

 

 滋味溢れるカツオの味わいが、弱っていた心身に沁みる。

 

「ねっ、おいしいでしょ!」

 

 ウララはまるで自分のことのように自慢気だった。

 

「はい、とっても美味しいです! 美味しいんですけど……」

 

 しかしキタサンブラックには、釈然としないところが一つだけあった。

 

「なんでウララさんはカツオじゃなくてお子様ランチ食べてるんですか!?」

 

「お子様ランチじゃないよー! これはね、ウラランチっていうの! おじいちゃんに特別に作ってもらったんだ!」

 

 そう、ウララはカツオと全く関係ないものを食べていた。

 にんじんハンバーグにエビフライにオムライス。

 その他ウララの好物がワンプレートに収められた特製ランチだ。

 デザートにはにんじんプリンもついている。

 

「みてみて、オムライスに私の旗が立ってるの!」

 

「本当だ……」

 

 オムライスに刺さっている旗は、日本国旗ではなくデフォルメされたハルウララのイラスト。

 まさしく、ハルウララのためのランチと言ってもよかった。

 

「これもね、観光客さんたちに大人気なんだよ! 

 ウララの好きなものを、自分も食べたいーって来てくれるんだって!」

 

「そ、そうなんですか!?」

 

「ウララちゃん目当てで高知に来る人はいっぱいいるからねえ。

 そのおかげで、私たちも大助かりだよ」

 

「そのおかげで隠居もできんけどな」

 

 老夫婦は揃って笑う。

 キタサンはあっけに取られていた。

 

「あの、もしかしてなんですけど……ウララさんって、すごい人なんですか?」

 

「すごい人も何も……もしかしてキタちゃん、テレビとか見ないのかい? 

 ウララちゃんはたった一人で高知を変えた、伝説のウマ娘だよ」

 

「伝説って?」

 

「うん! それってウララだよ!」

 

 キタサンはウララを二度見する。

 そんな彼女の口の端にはデミグラスソースが付いていた。

 子供っぽく覇気のない様子を見る限り、とてもそうは思えない。

 

「……伝説かぁ」

 

 しかし、ウマ娘は見た目によらない。

 きっと、さぞかし強いウマ娘なのだろう。

 それだったら、キタサンが知っていてもおかしくないハズなのだが……。

 

(だったら、なんで私は知らないんだろう)

 

 *****

 

「さ、行こ行こ! 一緒におさんぽしよ!」

 

 二人はお腹を満たすと、ハルウララ案内のもと歩き出した。

 

「ようウララちゃん、お疲れ様!」

 

「ありがとー! 八百屋のおじさん!」

 

「ウララちゃん、今日も元気だねえ」

 

「うん、とっても元気!」

 

 商店街を歩いていると、ウララは様々な人に声をかけられる。

 その様子を見て、キタサンは自らの地元の商店街を思い出していた。

 

『ようキタちゃん、今日も元気だねえ!』

 

『手伝ってくれてありがとう、助かるよ!』

 

『これ持っていきなよ、遠慮しないで!』

 

 商店街の優しいみんなの顔が次々と浮かぶ。

 彼らが必死に応援してくれた時の姿も、思い起こされる。

 

 そして自分が負けて、残念そうな顔を見せる姿も──

 

「キタちゃん?」

 

「は、はい!?」

 

 ウララに声をかけられて、キタサンは我に返る。

 どうやら、また考えに耽ってしまっていたらしい。

 

「な、なんでしょうか?」

 

「八百屋のおじちゃん、キタちゃんのこと知ってるみたい!」

 

 ウララがそう言うと共に、八百屋がキタサンに話しかける。

 その顔は、キタサンにとってどこか見覚えのあるものだった。

 

「ようキタちゃん、初めまして。

 兄貴から話は聞いてるよ」

 

「兄貴、って……まさか?」

 

「おう、そっちの商店街にも八百屋がいるだろ? あれ、うちの兄貴さ」

 

「え~っ!?」

 

 キタサンはびっくりした。

 まさかこんなところに知り合いの縁者がいるなんて。

 ウララの時といい、妙な縁に恵まれる日だった。

 

「兄貴のやつ、話す機会があったらいつもキタちゃんのこと自慢気に話しやがる。

 そのおかげで、俺もキタちゃんのレースを追っかけるようになっちまったよ。

 宝塚は残念だったけど、次は応援してるぜ?」

 

「……なさい」

 

「え?」

 

「ごめんなさい……勝てなくて……」

 

 キタサンは俯いて謝罪の言葉を口走る。

 自分が不甲斐ないせいで、また残念な思いをする人が一人出てしまっている。

 そんな自責の念でいっぱいだった。

 

「何言ってるんだよ? 勝てなくて謝る必要なんてないじゃないか。

 それに、諦めなきゃ負けじゃない。

 俺達はウララちゃんにそれを教わったんだ」

 

「ウララさんに?」

 

「ああ。

 ウララちゃんは何回負けても、絶対に諦めなかったんだ」

 

「うん! 負けちゃっても、次は負けないぞーって思って走ってたんだ! いっぱい負けちゃったけど、レースするの楽しかったから!」

 

「いっぱい、って……ちなみに、何回くらいなんですか?」

 

 キタサンがそう尋ねる。

 ちなみにキタサンブラックの成績は、11戦5勝6敗。

 傍から見れば見事な成績だが、キタサン自身にとってはそう思えない成績だった。

 ウララは指を折りながら、自らの戦績を数える。

 

「えーっと、ひいふうみい……いくつだっけ?」

 

「113敗だよ、ウララちゃん」

 

「あ、そうだった! 114戦113敗! 私、そんなに走ってたんだね!」

 

「ひゃ、ひゃくじゅうさん!?」

 

 キタサンは目を見開いて驚く。

 出走回数も常軌を逸しているが、敗戦の回数も常軌を逸している。

 故に、キタサンブラックはハルウララを知らなかった。

 キタサンブラックが見ていた番組は、強いウマ娘が出てくるレース番組ばかりだったからだ。

 一体なぜ、その戦績で走れたのか? 一体なにが彼女を突き動かしていたのか? 

 

「……ウララさんは、平気だったんですか?」

 

「ん、何が?」

 

「負けるのが……平気だったんですか? 悔しくなかったんですか? 走るのやめちゃおうって思ったこと……ないんですか!?」

 

 キタサンブラックの声に感情が乗ってしまう。

 それを見て少し驚く八百屋と対照的に、ハルウララは笑顔を崩さない。

 そして、明るい表情のままキタサンに答える。

 

「やめちゃおうって思ったことなんて、ないよ!」

 

「……ない?」

 

「うん! だってレースするのって楽しいもん! 

 そりゃ、いっぱい負けちゃったよ? どうしても、ほんとうにどうしても勝ちたいレースでも負けちゃったし、その日は悔しくて泣いちゃった。

 でも、次の日にはまた走ってた。

 次は勝つぞーって思って、一生懸命練習してた。

 だって、走るのってとっても楽しいから!」

 

 ハルウララのレースに対する姿勢は、一貫して真っ直ぐだった。

 走るのが好きだから、レースするのが好きだから走る。

 だから、一生懸命頑張る。

 

 何回負けても、何回負けても諦めない。

 決して折れることなく、一生懸命走り続ける。

 ハルウララは、勝ち星に恵まれないウマ娘だった。

 しかし、彼女は決して諦めなかった。

 

 どんな事があっても、頑張って最後まで走る。

 だって、レースが好きだから。

 その頑丈な身体と鋼の意志は、どんなウマ娘よりも強いものだった。

 

「ウララちゃんはな、勝っても負けても一生懸命、楽しそうに走るんだ。

 そんなウララちゃんの姿に、俺達は元気を貰ったのさ」

 

「俺もだ!」

 

「私も!」

 

「わしも!」

 

 八百屋の言葉に便乗して、商店街の人々も次々と声を上げる。

 

「楽しそうに、走る……」

 

 キタサンはひとり呟く。

 そして、自らの記憶の海を遡る。

 

 私がトレセン学園に入ったのは、なんでだったかな。

 それは、テイオーさんに憧れたから。

 

 なんでテイオーさんに憧れたのかな。

 それは、TVでテイオーさんのレースを見てたから。

 

 なんで、TVでレース番組を見ていたのかな。

 それは、レースが好きだったから。

 

 なんで、レースが好きだったのかな。

 それは……走るのが、好きだったから。

 

「……あ」

 

 何かが、胸にすとんと落ちた気がした。

 

「そうだ、私……走るのが、好きだったんだ」

 

 キタサンは、自らのルーツを思い出した。

 それは忘れてはいけない、大切なものだった。

 勝ち負けとか、期待とか、夢とか……走ることに付随するものが多すぎて、原初の気持ちを見失ってしまっていた。

 

 応援してくれるみんなの期待に応えなきゃいけないと思っていた。

 期待に応えられなくて申し訳ないと思っていた。

 

 でも、ハルウララと高知の人々の姿を見て、それは違うと思い直す。

 ハルウララは、人々の期待を背負って走る、というタイプではない。

 

 あくまでも、自分が楽しいから走っている。

 人々のの心を掴み、勇気を与えるのは結果にすぎない。

 ……思い返せば、自分もそうだ。

 

『キタちゃんが元気に走ってる姿をみると、こっちまで元気になるんだよ』

 

 昔、商店街の人がそう言ってくれた。

 その時キタサンはデビューすらしておらず、日課のランニングをしている最中の出来事だった。

 

 ……ああ、なんだ。

 

「……私、いいんだ」

 

 すっ、と心が楽になった気がした。

 とうの昔に夢は敗れ、憧れにも届かず、ライバルにはコテンパンに叩きのめされた。

 ……でも、それでも。

 

 まだ、走りたい。

『勝てる気がしない』くらいで走るのを諦めるのは勿体ない。

 

「ありがとうございます、ウララさん。

 私……大事なことに気付けた気がします」

 

「ほんと? よかった! ここに連れてきて正解だったね! キタちゃん、すっごく悩んでたみたいだから。

 解決できたならよかったね!」

 

「え、ウララさん気付いてたんですか?」

 

「気づくよー! だって、会ったときからずっと元気なかったもん。

 スペちゃんから聞いてた話だともっと元気な子みたいだから、ちょっとヘンだって思ったんだ」

 

 こう見えて、ハルウララは人を見ている。

 沢山の人と交流する過程で、人を見る『目』が養われていた。

 だからこそ、初対面にも関わらずキタサンブラックの異変に気付けた。

 府中のトレセン学園と高知のトレセン学園、二つの地で過ごした時間が彼女を成長させたのだ。

 

「……ありがとうございます。

 私、ここに来て良かった!」

 

 キタサンはウララと商店街の人々に対して、深く頭を下げた。

 

「……私、帰らないと。

 でも絶対、また来ます!」

 

「おう、兄貴によろしくな!」

 

「応援してるぞい、キタちゃん!」

 

「今度はゆっくりしていってねー! 高知のいいところ! もっといっぱい紹介するから!」

 

 皆からの暖かい言葉を受けながら、キタサンはウララたちと別れて駅まで走る。

 急ぐ必要はなかったが、なんとなく走りたくて仕方なかった。

 駅まで走って、ふと後ろを振り返る。

 

「……絶対、また来ます」

 

 こうして、夕暮れと共にキタサンブラックは帰るべき場所へと戻る。

 明日からの決意と、心配かけた皆への謝罪の言葉を考えながら。

 

 *****

 

 幸い、キタサンの旅は日帰りだったので騒ぎにはならなかった。

 そもそも彼女が旅に出たのを知っているのが、スピカメンバーと同室のダイヤだけだったからだ。

 

「すいません、今戻りました……」

 

 夜にも関わらず、スピカの面々は部室に集まっていた。

 

「心配したぞキタサン~!」

 

「本当よ! 怪我とかしてないわよね?」

 

 ウオッカとダイワスカーレットが、キタサンの姿を見るなり心配で駆け寄る。

 

「はい、大丈夫です!」

 

「とにかく、無事でよかった。

 すまん、お前が追い詰められていたのに力になってやれなくて……」

 

 トレーナーが申し訳無さそうに言う。

 キタサンは首を横に振り、元気に答える。

 

「いいえ、大丈夫です。

 私の方こそ、心配かけてごめんなさい」

 

「……それにしても、ずいぶん晴れ晴れした顔をしていますのね」

 

 マックイーンはキタサンの様子に疑問を覚えるが、キタサンはハキハキと答える。

 高知で貰った元気が有り余っていた。

 

「はい、ウララさんのおかげです!」

 

「ウララちゃん、って……もしかして、高知まで行ってたの!?」

 

 スペシャルウィークが驚きのあまり仰け反ってしまう。

 まさかそこまで遠くに行っているとは思わなかったからだ。

 それも、日帰りで。

 

「はい、目的もなく電車に乗ってて……高知で降りたのは、本当に偶然だったんですけど」

 

「とにかく、その様子だと大丈夫そうだね、キタちゃん」

 

「……はいっ!」

 

 テイオーの言葉に、キタサンは勢いよく返事をする。

 その様子を見たテイオーは、安心して息を吐くのであった。

 

「ところで、キタサン。

 これからの方針なんだが……実はスペから提案があった。

 今はエアプメンテとの直接対決は避け、そして──」

 

 *****

 

 時は過ぎ、7月。

 キタサンは再び、高知の地にやってきていた。

 

「まさか、ここに合宿に来ることになるなんて……」

 

 そう。

 今年のキタサンブラックの合宿地は高知に決まったのだ。

 そう、『キタサンブラックの合宿地』だ。

 チームスピカの合宿地では、ない。

 

「頑張りましょうね、キタちゃん!」

 

 スペシャルウィークがやる気に満ちた顔でキタサンに話しかける。

 

「はい! 頑張ります!」

 

「そうよキタさん! 今日からはこのキングの特別トレーニングを受ける権利をあげるわ!」

 

「はいっ、お願いします!!」

 

 キタサンと共に高知へ向かったのは、スペシャルウィークともう一人。

『不屈のウマ娘』キングヘイローだった。

 

「ウララちゃんと会うのも楽しみですね!」

 

「そうね。

 ウララさん、元気でやっているかしら」

 

「私が会った時はすごく元気でしたよ!」

 

 三人はウララの話で盛り上がる。

 今回高知を選んだのは、彼女に会いに来たという面も大きい。

 

「それは何よりだわ。

 それじゃあ早速向かうわよ。

 私達の合宿場所──高知トレセン学園に!」

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