ドゥ~ラドゥラドゥラ! 私が最強のウマ娘メンテねえ!   作:東頭鎖国

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無計画にキャラ出しまくったらとっ散らかって続き書けなくなっちゃってたので前話の最後の方修正しました
申し訳ないです


26話

 高知で合宿を行うことになったキッカケは、スペシャルウィークだった。

 それは、キタサンが高知へ行った数日後の話。

 

「キタちゃん。

 会ってほしい人がいるんです」

 

「会ってほしい人、ですか?」

 

「はい。

 あれから色々考えたんです。

 どうやったらキタちゃんの力になれるかなって。

 でも私じゃ、どうにも上手い方法が思いつかなくって……。

 それを友達に相談したら、是非会って話したいって」

 

「それで、その人っていうのは?」

 

「私よ!」

 

 キタサンの疑問に答えるかのごとく、一人のウマ娘が颯爽と登場する。

 それはスペシャルウィークのライバルであり友人。

 一流のウマ娘、キングヘイローだった。

 

「キ、キングヘイローさん!?」

 

「ええ。

 貴女がキタサンブラックさんね?」

 

「は、はい」

 

 キングの登場に、キタサンはついつい恐縮する。

 彼女の姿はテレビで見たことがある。

 先輩のスペシャルウィークと鎬を削っていたのも知っていた。

 ……中々勝ち星に恵まれなかったのも、知っていた。

 

 しかしいざ対面してみると、風格が違う。

 この人は、強い人だ。

 理屈ではなく、直感でそう感じた。

 

「貴女の話はスペシャルウィークさんから聞いているわ。

 その悩みもね」

 

「本当ですか?」

 

「ええ。

 ……ところでキタさん、私の戦績は知っていて?」

 

「ごめんなさい、詳しくは知りません。

 ライバルとしてスペさんと戦ってたっていうのは分かるんですけど……」

 

「なら、教えてあげるわ。

 私の戦績は27戦6勝。

 そのうち、私がライバルと認める黄金世代の皆と戦って勝利したことは一度もないわ」

 

「え……!」

 

 意外だった。

 彼女の風格からして、もっと勝っていると思っていた。

 

「鳴り物入りでデビューして、そこから三連勝。

 でもそこから中々勝てなくて、ダービーに至っては大崩れして14着。

 奇しくも貴女と同じよ、キタさん」

 

「あ……」

 

 キタサンブラックは、ダービーの時を思い出す。

 あの時もエアプメンテについていけず、全く歯が立たなかった。

 

「そこから……菊花賞も勝てなくて、有馬記念も勝てなくて。

 安田記念も、宝塚記念も勝てなかった。

 G1の冠は、ことごとく私の手からすり抜けていったわ」

 

 キタサンブラックは、ごくりと唾を飲む。

 自分と同じなんて、とんでもない。

 この人は、自分以上の挫折を味わっている。

 

 キタサンはライバルを一度破り、G1も一度獲っている。

 それに比べたら、当時のキングヘイローの焦りと絶望は想像を絶することだろう。

 

「……キングさんは、それで……諦めなかったんですか? 走るのやめちゃおうって、思わなかったんですか?」

 

「ええ、勿論。

 私は一流のウマ娘だから」

 

 キングヘイローは静かに、しかし自信に満ちた声で行った。

 そしてキタサンの目をしっかり見ながら話す。

 

「でも、それが出来るのはほんの一握りのウマ娘よ。

 貴女は……大丈夫みたいね」

 

 キングは微笑む。

 キタサンの目には自信のなさは見えても、諦めの色は見えなかった。

 

「はい、ウララさんのおかげで」

 

「ウララさんの? ふふっ……もう。

 相変わらずなのね、あの子は」

 

 キングはなぜか嬉しそうだった。

 キタサンが首を傾げると、スペシャルウィークが横から補足する。

 

「キングちゃん、ウララちゃんとは同室ですっごく仲が良かったんですよ」

 

「へぇ~」

 

「こらそこ! 余計なこと吹き込まない!」

 

 キングが顔を赤くして叱る。

 スペシャルウィークはえへへと笑ってキタサンから離れた。

 キタサンは温かい目をキングに向けていた。

 

「……コホン、とにかく! キタさん、貴女の悩みは大体想像がつくわ。

 今はエアプメンテさんと勝負するときではない。

 彼女とは別の路線を走りたい。

 でも、それは『逃げ』だと感じてしまっている。

 ……違うかしら?」

 

「……はい、合ってます」

 

 キタサンの競争人生は、エアプメンテへの挑戦の繰り返しだった。

 それを止めてしまうというのは、どうにも抵抗があった。

 自分の中の弱い気持ちが、対決を避けている。

 そんな後ろめたさが拭えなかった。

 

「ならば、逆に聞くわ。

 ずっと中長距離を走っていたウマ娘が、突然短距離に転向してG1に出走する。

 これを『逃げ』と言うかしら?」

 

「そ、そんなワケないです! それは逃げって言うには難しすぎるっていうか、大胆っていうか……」

 

「そうよ!」

 

 キタサンの返事を拾い、キングは朗々と言葉を続ける。

 

 「今までやってきたことを捨てて新しいことに挑むのは、逃げとは言わないわ。

 それは『挑戦』よ!」

 

「……挑戦……」

 

「ええ。

 逃げとは、諦めて楽な道に進むこと。

 あなたが選ぼうとしている道は、間違いなく楽な道ではないはずよ」

 

「ですね!」

 

 スペシャルウィークも同意する。

 それを聞いて、キタサンは本格的に考えを固めた。

 

「うん……私、決めました。

 全部! 全部やります!」

 

「ぜ、全部ですかぁ!?」

 

 後輩の予想だにしない言葉に、スペシャルウィークは驚愕する。

 中距離以外のどれか1本に絞るかと思いこんでいたからだ。

 

「はい! どうせチャレンジするなら、多いほうがいいと思って!」

 

「貴女……軽い気持ちでそんな決め方したら、後悔するわよ?」

 

 キングが呆れ混じりに忠告する。

 キタサンはそんなキングの目を、真剣な瞳で見つめながら言う。

 

「でも、やれることは全部やってみたいんです。

 出れるレース全部に出て、出れるレース全部に勝ちたい。

 プメちゃんにも出来ないようなことを、成し遂げてみたい」

 

「キタさん……」

 

「あはは……やっぱり、プメちゃんに勝ちたいって気持ちが消えないや。

 やっぱりこういうの、ヘンですかね」

 

 キタサンは頬をかき、照れたように笑う。

 それを聞いたキングは微笑みながら答える。

 

「いいえ、良い事だと思うわ。

 それに、あなたがずっとエアプメンテさんを意識しているのは分かっていたわ」

 

「え、本当ですか?」

 

「ええ。

『今は』エアプメンテさんと勝負するときではない、と考えているんでしょう? 

 つまり、いつかは彼女とまた戦いたいと思っている」

 

 キタサンの考えは、キングにはお見通しだった。

 そう、キタサンはエアプメンテに勝つことを諦めたわけではない。

 ただ、今は勝てないという確信があるだけだ。

 

「……そうです。

 今のままじゃ、ダメなんです。

 でも、プメちゃんにも出来ないようなことが出来るくらい強くなれば! 

 何かが掴めるかも、って思ったんです!」

 

「人が聞いたら、笑うでしょうね。

 エアプメンテさんの得意分野で戦うために、何で関係のない距離で戦おうとするのかと。

 そんなことをやっても無駄だと。

 勝てないと。

 不可能だと。

 そんなことはいい加減に、諦めろと」

 

「キングさん……」

 

 彼女の言葉には、ただならぬ重みがあった。

 かつて彼女も似たようなことを囁かれたことがあるのだろうと、なんとなく察することが出来た。

 

「それでも、やろうと思う?」

 

 キングは半ば答えが分かっていながら、試すように聞く。

 

「やります!」

 

 キタサンは大きな声で即答した。

 予想通りの返事に、キングヘイローは上機嫌で高笑いする。

 

「おーっほっほっほ! 気に入ったわ! これから、キングのサポートを受ける権利をあげる!」

 

「さ、サポートですか!?」

 

「ええそうよ! 私は全ての距離のG1レースで戦ったことのあるウマ娘。

 あなたの助っ人としてはピッタリだと思うのだけれど?」

 

「は、はいっ! よろしくお願いします!」

 

 渡りに船だった。

 これからやろうとしていることの先達がいるというのは、キタサンにとって非常に有り難いことだった。

 

「都合がつく日なら、マンツーマンで指導してあげるわ。

 いつでもいらっしゃい」

 

「私も、私も協力できることがあったら何でも言ってください! 全力でサポートします!」

 

 スペシャルウィークも動き回りながら存在感をアピールする。

 

「ありがとうございます、スペさん!」

 

 *****

 

 その後、二人はチームスピカにもその報告をした。

 そして、決意表明も。

 

「なるほどな……。

 今から短距離とマイルの走りを仕上げるのは大変な道だが、キタサン自身が考えて決めたことだ。

 だったら俺はその選択を尊重するし、出来る限りの協力はする」

 

 沖野トレーナーは賛成だった。

 

『全距離を走りたい』

 

 キタサンの掲げた目標に難しい顔を浮かべながらも、自力で立ち直ったことに対しての喜ばしさも感じていた。

 

「ボクも協力するよ。

 専門外だから、あんまり出来ることはないかもしれないけど」

 

 テイオーも賛成だった。

 

「私も賛成ですわ。

 もっとも、私もステイヤーなのでアドバイスできることは少ないですが。

 というより、このチーム……」

 

 マックイーンは、部室に集まったメンバーを見渡す。

 スペシャルウィーク、サイレンススズカ、ウオッカ、ダイワスカーレット、ゴールドシップ……。

 

「ちょっとメンバーが中長距離に偏りすぎてませんこと?」

 

「言われてみれば確かにそうね……」

 

 スズカも同意する。

 スピカに入ってからそこそこ経つが、全く気にしたことがなかった。

 それはスズカに限らず、全員が同じ気持ちだった。

 

「俺はマイルも走れるぜ!」

 

「アタシもよ!」

 

 そんな中、ウオッカとスカーレットがここぞとばかりに声を上げる。

 そう、この二人はマイルG1を勝った経験があるのだ。

 そんな二人は、キタサンに対してありがたいアドバイスをする。

 

「マイルはね、最初から最後まで一番前を走れば勝てるわ!」

 

「いや違えよ! もっとバーって行って、ギューンって行けば勝てるぜ!」

 

 二人はマイルレースの実力はあっても、人にモノを教える実力に関しては壊滅的だった。

 

「ワケわかんないですよー!」

 

 当然ながら、キタサンには理解できない。

 周囲の人間もそれに同意する。

 

「このザマでは絶望的ですわね……」

 

 マックイーンは頭を抱える。

 それを除いてもスピカはマイペースな連中の集団なのだ。

 そんな中、マトモな自分が力になれないことが歯痒かった。

 

 ちなみに、スピカのメンバーはほぼ全員が『自分が一番マトモ』だと思いこんでいる。

 実情は推して知るべしである。

 

「おい、ゴルシちゃんのアドバイスも聞けよ~」

 

「どうせ貴女は適当なことしか言わないでしょう」

 

 自己主張してくるゴルシに対して、マックイーンは呆れ顔だった。

 そんなマックイーンに対してゴルシは頬を膨らませながら反論する。

 

「あんだよー! こう見えてもアタシだって共同通信杯勝ってんだぜ?」

 

 共同通信杯は1800mのG3レースだ。

 ゴールドシップは生粋のステイヤーのような顔をして、実はマイルの重賞も勝っているのだ。

 

「それで一体、アドバイスってなんですか?」

 

「そう、アタシのアドバイス。

 それは……」

 

 キタサンに対して、ゴルシは真剣な顔をする。

 こんな真剣な顔をしたゴルシは、有馬記念の時以来かもしれない……。

 

 その真剣味が全員に伝わり、スピカの部室に緊張が走る。

 

「それは……」

 

「それは……?」

 

 どきどき、どきどき、どきどき、どきどき。

 自らの心臓の鼓動すら聞こえそうな程の沈黙を破り、ゴルシが口を開く。

 

「レモン1個分に含まれるビタミンCはレモン1個分だぜ」

 

 その発言に、場の全員がズッコケた。

 

「やっぱり適当なことしか言わないじゃありませんの!!」

 

 マックイーンは緊張して損したと言わんばかりに、ゴルシに対してフロントネックロックを仕掛ける。

 

「がああああ!! (りき)が入ってる! (りき)が入ってる!」

 

 ゴルシはマックイーンの腕をぺちぺちと叩いて降参の意を示す。

 解放されたゴルシは肩で息をしていた。

 

「はーっ、はーっ……腕を上げたな、マックちゃん」

 

「全く、話の腰を折るんじゃありませんわよ」

 

「でもよぉ、アタシたちがキタサンに言えることが大してねーのは事実だぜ。

 こんな事言うのもなんだけどよ。

 今度の合宿、一旦スピカから離れてキングのところについていくのもいいんじゃねーか?」

 

「え……それって、スピカから出ていくってことですか!?」

 

「ちょっとの間だよ。

 それに、キングヘイローが協力してくれるって言ってんだろ? それなら甘えてみようぜ。

 いい刺激になるかもしれねえしよ」

 

「うう……」

 

 キタサンは助けを求めるようにスピカの面々を見る。

 しかし皆は、どこか納得したような表情を浮かべていた。

 

「そうね……。

 私がリギルからスピカに移籍した時のように、環境を変えるのがプラスに働くこともあるわ」

 

「スズカさん……」

 

「餅は餅屋、という言葉もありますからね。

 このままスピカに拘るよりも、専門家に師事したほうがいいかもしれませんわ」

 

「マックイーンさん……」

 

「お餅美味しいですよね。

 お腹空いてきましたね……」

 

「スペさん……」

 

 皆の言葉に、キタサンは困惑する。

 まさか自分がスピカを出る、という話の運びになるとは思わなかった。

 

「今回はゴルシの言う事にも一理あるよ、キタちゃん。

 今のキタちゃんにとってはスピカに留まるより、外に行ってみたほうがプラスになると思う」

 

「テイオーさんまで……」

 

 憧れの先輩からもそう言われたことにより、キタサンは覚悟を決める。

 

「わかりました。

 私……キングさんのところに行こうと思います。

 でも、キングさんは許可してくれるでしょうか?」

 

「大丈夫だ、俺の方から先方に話は通しておく。

 安心して行って来い。

 そして、無事に帰ってこい!」

 

「……はい!」

 

 こうして、キタサンはキングと共に高知へ向かったのだ。

 お目付け役として同行を希望したスペシャルウィークを伴いながら。

 

 *****

 

 一方、エアプメンテ達はというと。

 

「今年も来たメンテねえ、合宿の時期!」

 

「そうだね。

 プメ、テストの成績はどう?」

 

「完っ璧ドゥラよ!」

 

 そう言ってエアプメンテはトレーナーに答案用紙を見せる。

 その点数はいずれも80点を超えていた。

 彼女は勉強に対する苦手意識が消えてからは、普通に高得点をマークするようになっていた。

 以前は知識と経験が伴っていなかっただけで、元々の学習能力は高いのだ。

 

「すごいよ、流石だよ、プメ! 去年からは信じられない進歩だね!」

 

「ドゥ~ラドゥラドゥラ! グルーヴお姉ちゃんもすっごく喜んでくれてたドゥラ!」

 

「僕も鼻が高いよ。

 とにかく、これで安心して合宿に行けるね!」

 

「ドゥラ!」

 

 そんなやりとりを交わした日からあっという間に時は経ち、合宿の日を迎える。

 

 *****

 

「いやー、楽しみメンテねえ」

 

 エアプメンテは車の助手席で小躍りしていた。

 去年の合宿は楽しかったし、自らのレベルアップを如実に感じることが出来たからだ。

 

「楽しみなのはいいけど、今年も厳しくいくからね。

 次の目的は、天皇賞・秋だ。

 前走は圧勝だったけど、次がそうとは限らない。

 しっかりと地力を鍛えていくよ」

 

「望む所メンテねえ! 

 ところで、ずっと気になってたんドゥラけど……後部座席のでっかい荷物って、いったい何入ってるんドゥラか?」

 

 エアプメンテの言う通り、後部座席にはやたら大きなバッグが積まれていた。

『後部座席に載せてください』という張り紙があったので、トランクにではなく後部座席に載せたのだ。

 

「え、あれってプメの荷物じゃなかったの? 

 去年、あんなふうに大きな荷物を持ってきてたからてっきりプメの物だとばかり……」

 

「私、今年は着替えと日用品くらいしか持ってきてないドゥラよ?」

 

 二人の間に、沈黙が走る。

 その時、バッグの中から本来するはずのない物音がした。

 そして、それが動くところをエアプメンテはしっかりと見てしまった。

 

「ひいっ! なんかモゾモゾいったドゥラよ!?」

 

「な、何が入ってるんだ!?」

 

 二人がビビっていると、バッグの中から人の手がにゅっと出てくる。

 

「ヒィ~ッ! 手、手メンテよぉ!?」

 

「て、手がどうしたの、プメ!?」

 

 エアプメンテは目の前の光景に怯える。

 トレーナーは怖がりながらも、運転中だから後ろを見ることが出来ない。

 

 そのまま両手が出てきて、バッグがひとりでに開く。

 そして──

 

「ふ~、暑かったぁ」

 

 中から出てきたのは、汗だくのサトノダイヤモンドだった。

 

「「うわぁ~~~~っ!?!?」」

 

 こうして、こちらの二人+αの合宿もまた、始まるのであった。

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