黒川あかねと話すだけ   作:推しの子ハピエンで終わりそうですかね?

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感想・評価・お気に入り登録・誤字報告ありがとうございます!!

アンケートの結果見て上二つは書くって感じにしました。
アクルビと有馬ルートはどこかのおまけで書くかも?
今回はご都合主義かつオリキャラ(お爺ちゃん)ありの間話です。
ご都合主義です!!!

「推しの子」総合評価で検索すると、私の作品がこれを書くきっかけになった作品と並んでました!!めちゃくちゃ嬉しい。
これからも投稿頑張るのでよろしくお願いします!


飛び降りif

 商店街の一角。ほとんどの店が閉じているにも関わらず、小さな書店には明かりがついていた。

 カウンターに座り問題集を唸りながら解いている緋彩。

 

「うーんわからん。誰か私に教えを授けてくれ。僕だけじゃやれる気がしないぜ」

 

 昼頃から参考書と向き合っていた緋彩であったが、数学嫌いを発揮して本来できるであろう問題すら諦めている。

 問題との睨めっこに飽きた上に眠くなって来た緋彩は、一緒にいる祖父は何をしているのだろうと、奥にある台所を覗けば、ラジオを聴きながら読書をしている姿が。

 それどっちも中途半端になるんじゃ……? と思ったものの、祖父本人は気にしていなさそうなので口には出さない。

 

 

 

 

「むむむ、なーんかやな予感してきた。こんな日にかぁ……お爺ちゃん!」

 

 先ほどまでは瞼が閉じかけていて、今にも寝てしまいそうな顔をしていたが、急に態度を一変させて声を上げる。

 数学をやらない口実にする気である。尤も、嫌な予感も嘘ではない。

 しかしそんな緋彩の思惑など、祖父からしたらお見通しである。

 

「なんだ緋彩。変なことを言ってないで数学をやりなさい」

「うっ、数学面白くないから……というかやってないわけじゃないから! さっきまでやってたの見てたでしょ」

「本に集中していて見てなかった……で、何を言おうとしたんだ? 少しは聞いてやる」

「なんかやな予感するから外出て来てもいい?」

「この天気で?」

「うん。虫の知らせ的な? 今行った方がいい気がする」

 

 ダメ? と尋ねる緋彩。

 祖父としてはこの悪天候の中勝手に外に出られて、吹き飛ばされでもしたら敵わない。あまり外に出てほしくはないが。

 

「…………緋彩の勘は当たるからな」

「じゃあ!」

「お爺ちゃんが車出してあげよう。早い方がいいんだろう?」

「ありがとう! その辺走ってれば見つかる気がする!」

「なら今日は店閉める。車に行って待っていなさい」

 

 はーいと返事をして車に向かう。

 ザァザァというよりも。ゴウゴウといったような雨が屋根を叩いている。

 正直この天気に、緋彩も外に出たくなかったが、しかし自分の予感はかなりの頻度で当たる。

 実際、勘で何度か人助け、或いは無くし物が見つかっているので、とりあえず今回も何か動いておこうと思っている。数学やりたくないし。

 万が一次の日のニュースで、近くの〇〇で事件がありましたなんて言われたら、自分の責任ではないとは言っても目覚めが悪い。

 

「何もないならないでいいんだけどねぇ……今日は当たっちゃう気がする」

 

 緋彩の呟きは雨音にかき消され、空に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 そう言えば、ずいぶんとまともな食事をしていない。

 どうせ食べてもすぐに戻すだけ。

 学校でも悪口陰口、いじめこそされていないものの、ストレスは溜まる一方。

 唯一落ち着けるはずであった家ですら、スマホを開けば自身に対する誹謗中傷。挙げ句の果てには母親を馬鹿にされた上に個人情報まで晒される始末。

 マネージャーは自分の力不足によって、上司に叱られてしまった。それでも私を慰めてくれる。

 

 ついには、雨音までもが自分を責め立てるように大きな音を立てて迫ってくる。

 

『ご飯買ってくるね』

 

『今ガチ』メンバーに連絡を入れてからスマホを置く。

 スマホを開けばあるのは罵詈雑言。もう見たくないと思うも、あれは私が直さなきゃ……いけないところ……だ。見ないわけにはいかない。

 ああ、また吐きそうだ。もう吐いても出てくるものは何もないと言うのに。

 でも、少し何か食べなきゃ。

 パーカーを羽織り、吐き気をこらえてリビングへ降りる。

 

「少し外に出てくるね」

「こんな天気で? やめておきなさい。危ないわよ」

「ううん、行ってくる。……じゃあね」

「あかね……?」

 

 母の言葉を無視して傘を取り外へ出る。

 雨がさらに強くなった気がした。

 

 

 

 私は何をしてるんだろうか。

 心配をかけたくないから見ないように言っていたのに、関係ないことで心配させてしまった。

 本当に何をしているんだろう。ああ、ゆきちゃんの顔に傷をつけたのか。何もしていなかったらこんなことにはなっていないなと、自嘲する。

 

 傘をさしてコンビニへと歩きながら考える。

 演技には自信があった。けれどもはや今回の炎上で、演技すらさせてもらえないところまで来てしまった。

 何もうまくいかない。

 

 全部私が不甲斐ないから。

 私がダメだからマネージャーが怒られる。

 私が魅力のない人間だから『今ガチ』の出演時間が少ない。私の性格が悪いから、ゆきちゃんに怪我をさせた。私の振る舞いが悪いから、なんの関係もないお母さんまで馬鹿にされた。

 

 私が悪いから。私がダメだから。私が不細工だから。私の性格が終わってるから。私が暴力的な人間だから。私が……私が…………。

 

 SNSの言葉で泣いた。学校がつらくて泣いた。親に心配かけて泣いた。もう最近はよく眠れてすらいない。

 芸能界にはもういられない。好きな演技もできない。私がいてもマネージャーに、ゆきちゃんに、親に、みんなに迷惑をかけるだけ。

 

「疲れたな」

 

 ことごとくを否定された私は、果たして生きている意味が、価値があるんだろうか。

 

 コンビニの店員が私のことを笑ってた。客もこちらを見て嘲笑した。

 聞こえるはずがない。そんなわけないと、何度も何度も自分に言い聞かせるが、ずっと馬鹿にして罵り、私を否定する声が聞こえる。

 

「う、うぉぇぇえ」

 

 他人の視線に晒されたことで吐き気をこらえられなくなってしまった。

 歩道橋の上でうずくまり戻してしまう。

 吐き出されるのは自身の汚い唸り声と胃液。雨と混ざってすぐに跡は消える。荒くなった呼吸が落ち着くことはない。心臓の音がいやに大きく聞こえてくる。

 顔を流れる水は、雨なのかそれとも涙なのかとっくに区別がつかなくなっていた。

 傘を手放してしまったため、体を直接雨粒と風が襲ってきて寒い。

 

 自分に向けられる音や視線の全てが、私を責めるように感じる。

 期待されることも、心配されることも、応援してくれる親の言葉すら辛い。何もかもつらい。

 

「ここから降りたら、楽になれるかな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

「うーん、大丈夫そうかなぁ?」

「お爺ちゃんには緋彩の感覚はわからないよ」

「僕的にはねぇ……まだ何も起きてない感じがする。勘だけど」

「幸い今日もう用事はない。気長に行けばいいさ」

「そうだねぇ…………ん? なんか人歩いてる」

「あの人かい?」

「知らないけど、まあ……声かけてくるよ。ちょっと車停めて待ってて」

 

 傘をさしてレインコートを着た人の方へかけていく。

 

「あの、すみません」

「っあかね?!」

「いえ、あかねと言う方ではないのですが……」

 

 声をかけると、あかねと言う人の名前を呼んで緋彩の方を向いて来た。

 緋彩は、ふーん? そこそこイケメンじゃんと謎の上から目線を心の中で発揮する。アクアマリンの顔面を見ても自分の顔がいいと思うあたり、相当な自信があるのだろう。

 

「すみません。人探しをしてたもので」

「そうだったんですね」

 

 返事をしつつ、おそらくこの人が探している人が、緋彩の勘に引っかかった人間なのだろうと察する。

 運命力が高いことを喜べばいいのか、巻き込まれる(自分からいくとも言う)無駄な高さを嘆けばいいのか。

 

「ちなみにどんな方なんですか? さっきまでこの辺りを走ってたので、もしかしたら力になれるかもしれません」

「本当ですか?! 黒川あかねって言う女の子なんですけど、身長は160センチくらいで、服装はわからないですが。コンビニに向かったそうなんです」

「……すいません、今のところ女性を見かけていませんね」

 

 あれだけ自信ありげに提案したのに、ただ時間を浪費させるだけと言う結果になった。

 こんな雨のなか出歩く人間はまともじゃないだろうから(ブーメラン)早く見つかるといいなぁと思う緋彩。

 家からコンビニに向かったなら家の場所を知らないとどうにもならない気がする。

 とはいえ、緋彩自身ももう少し探すわけなのだが。

 

「いえ、気にしないでください。俺は探しに行かなきゃ行けないのでそれでは」

「雨ひどいので気をつけてくださいね!」

 

 

 

「違ったのかい?」

「どうやら女の子を探さなきゃいけないみたいだ」

「こんな日に出歩くとは、穏やかじゃなさそうだね」

「さっき話した男の人があかねって子を探してるみたい。恋人とか好きな子だったりするのかな? 雨の日に女の子探すって、なんか映画みたいだ」

 

 家も知ってるみたいだしと続ける緋彩。

 自分の他にもこの辺りを探している青年がいたことで、この辺りを探すのに間違いはないと確信は得ることができた。

 

「で、何かわかったの?」

「近くのかどうかは知らないけど、コンビニに向かったらしい。この雨に興奮して外に出ちゃう小学生メンタルだったらいいんだけどね」

 

 それなら嫌な予感はしないと思われるし、あの青年もあそこまで焦らないだろうと思う。

 

「ならその女の子は緋彩の知ってる子なんじゃないかな」

「え? 知り合い?」

「緋彩の勘が冴えるのは知ってる人に何かある時だからね」

「そうだったの?!」

「自覚無かったのかい? 緋彩が騒ぐのは知り合いに何かあった時だけだよ」

「ほぇー今明かされる衝撃の事実だ」

「とりあえず、車は近くのコンビニに向けてしばらく走らせておくから、何かあったら言うんだよ」

「ん、承知」

 

 車に揺られながら、知り合いに「黒川あかね」なる人物がいたかどうか記憶を探る。

 

「うーん? 黒川あかね黒川あかね……誰だぁ?」

 

 黒川、黒川黒川……あかね、あかね……色の名前の友達なんていたか? いたら僕と同じだから忘れてるはずないんだけどなぁ。

 

「…………っ?! もしかして、ぼっち飯の女の子か?」

「思い出したのかい?」

「思い出した! 確か、去年の初め頃に校舎裏で話したんだよ! そーだそーだ!」

 

 確か嫌われてるとかなんとか言ってた子だ! とモヤモヤが解消されて満足そうな緋彩であるが、事態は何一つ良くなっていない。依然として行方知らずのままである。

 

「む、緋彩」

「ん? 何?」

「何か歩道橋の上に人がいるけれど、あれがあかねちゃんかい?」

「さあ? 暗くてよく見えないし……あれ、なんか背高くない?」

「手すりに登ろうとしている! 緋彩早くいきなさい!!」

「マジかよ?! 流石に目の前で飛び降りなんてされたらトラウマになる!」

 

 すぐに車を停め、傘もささずに飛び出す。

 

「もういいや。考えるの疲れた」

 

 雨音でかき消されはっきりと届くことはなかったが、あかねの纏う雰囲気から本気で飛び降りるつもりだと緋彩は確信した。

 幸いまだ登りきっていない。少しでも気が逸れれば飛び降りなんてしないだろう。

 

「黒川さん!!」

 

 名前を呼ぶが届いた様子は伺えない。雨の音も相まってか、周りの声も聞こえないような精神状態ようだ。なんにせよ時間的猶予はないも同然である。

 駆け寄りつつ名前を呼ぶが、ついにあかねは手すりの上に立ち上がった。

 

 

「何も考えたく無い」

 

 

 あかねは、緋彩の助けが間に合うことなく落ちていった。

 

 

「じゃ、ねーよ!!」

 

 

 かに思われたが、間一髪脇を掴むことでどうにか落ちるのを阻止しできた。これが頭から落ちていたら、まず間違いなくどこも掴むことができずに、目の前で飛び降り自殺を許すと言うトラウマ必至の展開となっていた。

 これでとりあえずは安心だと思った緋彩だが、それは追い詰められた人間を舐めすぎだ。

 

「いや! やめて!!! 離してよ!!!」

 

 予想とは反してあかねは緋彩に対抗する。

 

「あ?! おい馬鹿野郎! そんなに暴れたら落としちゃうって!!」

 

「いいから離して!! 私もう疲れたの!!」

 

 緋彩は必死に落とすまいと、橋から体を乗り出し上に持ち上げようとする。しかし抱えられている側のあかねは、身体を揺らし手を離させようと暴れる。

 

「本当に暴れるな!! 何があったか知らないけどひとまず落ち着いてって!!」

 

「知らないなら邪魔しないでよ!!」

 

「いいや! 邪魔するね! 目の前で死のうとしてる人間見捨てるほど僕は薄情じゃ無いんだ!!」

 

「やだ!! 楽にさせてよ!!!」

 

 さらに激しい抵抗に、そろそろ限界な緋彩。こんなこともあろうかと鍛えておいた、なんてことはない人間が頑張っている方だろう。

 

「緋彩! 大丈夫かい?!」

 

 祖父が来たからもう安心だと、気が緩んだことがよくなかったのだろう。

 

「あ」

 

 柵の金属部分に足を置いていたこともあり、前方にかかっている重さに耐えられず緋彩は足を滑らせた。

 

「緋彩?!」

 

「あかね!?」

 

 あかねに回した腕は解いてない。抱え込むようにして落ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、ははは……火事場の馬鹿力ってやつか、それとも運命力が高すぎたせいか」

 

「え? 私落ちたんじゃ」

 

「間違いなく落っこちたよ。普通の橋なら死んでた」

 

 歩道橋でよかったよ、何もよくないけどと緋彩は声を震わせて言う。普通に死んだと思っていた。

 

 今回の幸運な点は簡単に言えば三つ。

 歩道橋の高さが五メートルほどであったこと。あかねが頭から落ちようとしなかったこと。落下地点に車が突っ込んで来なかったことだ。

 とはいえ、二階建て相当の高さから落ちて無傷であったのは奇跡以外の何ものでもない。

 

「いやー運がいいね!」

 

「何を言って……?」

 

「死ななくてラッキーだったと思わない? なかなかないと思うよ。飛び降りしようとしたら、助けようとした人と落ちて怪我一つせずに生き残りました、なんて」

 

「……なんで私と落ちたの?! さっさと私なんて捨てちゃえばよかったのに!!」

 

 まさか助けて逆ギレされるとは思ってなかった緋彩は混乱した。飛び降りした人間に軽口を言ってしまうのはコミュニケーション能力の低さだろうか。或いは緋彩自身も落ち着いていられていないのか。

 しかし、ひとまずと

 

「ここ道路だからどいておこうか。えっと黒川さんであってる?」

「…………うん」

「立てそう? ダメなら手なり肩なりかすよ」

「一人で大丈夫……です」

「そう? なら早く行こう。せっかく助かったのに、車に轢かれたら笑えないからね……」

 

 落ちた時は死んだと思ったけど、結果無傷だったことに大喜びな緋彩。顔には出してないが、心の中で自分のことを褒め称えている。

 無傷で女の子を助けるなんてさすが僕だ。一般人なら一緒に落ちてお陀仏だったね! 

 先ほど死にそうになったばかりなため、生きていることが嬉しくて仕方ないようだ。奇跡を起こしたことで自己肯定感が上がりに上がり、テンションがおかしくなっている。

 

「緋彩! 無事かい?!」

「僕もこの子も無事だよ」

「よかった……もし無事じゃなかったら目の前で孫を失うところだった」

「我ながら世界に愛されてるんじゃないかと思うレベルで運がいい」

「いつもの緋彩と同じでお爺ちゃん嬉しいよ」

「生き残ったことで、ここで死ぬべきではないと世界に言われてる気がした」

「緋彩本当にさっき落ちた? いつも通りすぎる言動が、逆におかしくなってるんじゃないかと思うよ」

「多分奇跡の生還でハイになってる」

 

 一方あかねはぐすぐすと泣いていた。

 泣いてる女の子が隣にいるのにあんな会話をしているのは、全員が落ち着けていない証拠だろう。

 

「あかね大丈夫か?!」

 

 そこにやってきたのは星野アクアマリン。

 

「ああ、さっきの方。一応黒川さんも無事ですよ」

「本当ですか?!」

「あ、アクアくん……なんでここに」

「メムの奴が台風の中お前が出かけて、帰ってこないって探し回ってんだよ。だから俺もコンビニまでのルート辿ってたら…………馬鹿野郎が」

「うっ…………ううう」

 

 アクアマリンとあかねの会話を聞いて、一緒に落ちたの僕はなんで逆ギレされてたんだろうかと疑問に思う緋彩。場違いなことを考えても口に出さないあたり、最低限空気は読めるようだ。

 

「君たち! 何してるの!」

「あ、警察来た」

「お爺ちゃんが呼んでおいたよ。こんなことがあれば通報しないわけにはいかない」

「ふーん、まぁ解決したみたいだし僕たちは帰ろっか!」

「いえ、あなたにも事情を聞きたいので署までお願いします」

「あ、はい。すいません」

 

 

 

 

 

「やっぱりテレビ……と言うか芸能界ってクソでは?」

「緋彩やめなさい。関係者の方がいるから」

「でもさぁ、いい歳した大人が子供たちの間では解決したことを、悪く見せてお金儲けに利用するんでしょ? ロクでもないなぁ」

「はぁ、聞かれないようにしなさい」

「はーい」

 

 そもそも緋彩は恋愛リアリティショーの面白さが全く理解できないので、リアリティショーに炎上させるほどの視聴者何てついてると思えなかった。

 と言うか、テレビは全部やらせだと思っている緋彩からすれば、台本なしと言うのが一番驚いた。なんなら、やらせよりロクでもないことをしていて正直引いた。

 

「あ、出てきた」

「今回は娘がご迷惑をお掛けしてすみません」

「いえ、お気になさらず。幸い僕も黒川さんも無事でしたから。なんの問題もありませんよ」

「そう言うわけには……本当に娘を助けてくださりありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ……それで娘さんは大丈夫なんでしょうか?」

 

 緋彩としては、今回助けたのにもう一度チャレンジされては困る。そんなに自殺未遂に巻き込まれたくない。失せ物を見つけるくらいが精神衛生上ちょうどいいのだ。

 

「ええ、本人が言うにはまだ続けたいとこのことで。カウンセリングしつつ番組にも出ると」

 

 自殺未遂というか、自殺して死ねなかっただけなのにまだ出ようとするとは。どこからそのやる気が出てくるのか、緋彩には全くわからなかった。

 やめといた方がいいとは思うが、本人と親がやると言うなら部外者の自分が何か口出しすることではないと考え、相槌を打つに留める緋彩。

 

「えっと、あかねさんは……どちらに?」

「ああ、娘は今番組に出てた子たちが来てくれたようで、そっちに……本当はあなたに先にお礼をと思ったのだけど」

「いえ、祖父が僕は後でいいと言ったんですよね? 僕としてもお礼を聞きたくてしたわけじゃないので、気にしないでください」

「すみません……」

 

 わざわざ後で時間取るような必要もないので、緋彩は早く帰って風呂に入りたかった。雨に打たれて濡れた服が気持ち悪い。タオルを貸してもらい拭いたとはいえ、寒いものは寒いし気持ち悪いものは気持ち悪いのだ。

 祖父は傘をさしていたので濡れていないからそんなことが言えるのだ。僕のことをもう少し考えて欲しいと緋彩的にはご立腹。そんな祖父は今、車で待っているらしい。

 

「なら、僕はもう少し受付で待ってます。娘さんが友達と話し終わったようでしたら呼んでください」

 

 ペコリと頭を下げて緋彩は部屋を出る。

 まだ帰れないのかぁと思いため息をついた。

 

 

 

「あかねを助けてくれてありがとうございます」

「は、はぁ、お気になさらず。たまたま僕が近くに居ただけですし、なんなら一緒に落っこちただけなんで」

「あかね落ちたの?!」

「う、うん。ごめんね……」

 

 どうやら伝わってなかったらしい。やっちまったと思った緋彩だったが、まあ問題ないだろうと結論づける。どうせいつかバレるのだ。早いか遅いかと言うだけの話だ。

 

「えっと……あなたは黒川さんが出てると言う番組の共演者の方ですか?」

「私は鷲見ゆき。あかねの友達です」

「僕は月下緋彩。黒川さんとは同じ学校の生徒です」

「同じ学校?!」

「まぁ面識はほとんどありませんけどね」

 

 この人も芸能人なんだあと割と他人事な緋彩。鷲見ゆきという名前に聞き覚えは全くない。歌番組に出てれば話は別だが。

 

「えっと……月下くん」

「はい」

「さっきは助けてくれてありがとう。あと、助けてくれたのに酷いこと言ってごめんなさい」

「結果的に二人とも無事だったから気にすることはないよ」

「でも……」

「いや本当に。また身投げしようとか考えないでもらえればそれで充分だよ」

「うっ、ご、ごめんなさい」

 

 あれでもし僕が死んでたら祟るけど、と口には出さず思う。なんだかんだこいつは根に持つタイプだ。あかねが暴れなければ落ちることはなかったはずなので、残当。

 

「じゃあ僕はこれで帰ります。また何かあれば連絡してください。えっと連絡先は……………………連絡先ってどうやって交換するんですか?」

「え? 月下くんはあんまり友達がいない感じ?」

「いえ、そんなことはないんですが、普段は相手が勝手にやってくれるので自分で覚える機会がなかったんですよね」

「へーすごいねそれ」

 

 褒められてないことはわかった緋彩である。

 

「じゃあ貸してもらえる? あかねのと交換しておいてあげるよ」

「本当ですか? いやー助かります。僕はこういうのさっぱりなんですよねえ」

「…………はいできたよ」

「ありがとうございます。じゃあ今度こそ僕はこれで……ぁ、黒川さん」

「えっと、なんですか?」

「実はまだ一人で外に出てお昼食べてるんですよ」

「?」

「だからまあ、気が向いたら去年の春頃? 話したあたりでお昼食べましょう。こうやって関わったのも何かの縁ですし」

 

 そういうと緋彩は、あかねの返事を待たずにさっさと出ていく。

 

 

「あかね」

「ん? 何ゆきちゃん」

「あの人めちゃくちゃイケメンだったね」

「うん? そうだね」

「あかねのこと落ちてまで助けてくれたんでしょ?」

「酷いこと言っちゃったけどね…………」

「同じ学校で、命かけてまで助けてくれて、お昼まで誘ってくれたんでしょ? これは脈アリじゃない?!」

 

 ニヤリと笑ってあかねの頬をつつくゆき。あかねはそんなことないと思うけど……と冷静な反応。

 

「それはともかく、私たちもできることするから、あかねも頼ってね」

「っ! うん! ありがとうゆきちゃん」

「約束だからね!」

 

 

 

 

 

 

「よ、ようやく車に戻って来れたよ」

「お疲れ様。さぁ早くベルトをしなさい。帰ってすぐ風呂だ」

「全く明日は病院も行かにゃならんとは……晴れてれば行こっと」

「お爺ちゃんが連れて行ってあげるから、しっかり明日行くよ」

「はーい……」

「それで、あかねちゃんとは話したのかい?」

「んー、まぁ少しだけ」

「同じ学校なんだろう? 仲良くできそう?」

「お爺ちゃんは何を聞きたいのさ……まぁ一応お昼一緒に食べようとは誘ったよ」

「緋彩が誘うのは珍しいね。小さい頃に何ちゃんだったかな……誘ってたのは覚えているけど、最近はめっきり聞かなくなったからなぁ」

「そんなことあったっけ? 僕は今を生きてるから過去は振り返らない主義なんだ」

「それは覚えてないことの言い訳に使う言葉じゃないよ」

「それっぽいことを言えば大体の場合は切り抜けられるってこれまでの人生で学んだ」

「なんでこんな子に育ってしまったんだろう……」

「多分家庭環境だと思う」

「お母さんとお父さんか…………」

「あの人たち顔もいいし、仕事もできるし性格もいいけど、変な人だから」

「…………まああかねちゃんに優しくするんだよ」

「一緒に落ちたのにお昼誘うくらいには優しいよ!」

「緋彩のお母さんも、お父さんに同じことをしてたなぁ」

「ぅえ?! 本当?」

「お父さんが身投げしようとした時に、お母さんが一緒に落ちたんだ。聞いた時は心中したのかと思って不安だったねぇ。話を聞けば同じ学校なだけで仲良くないと言ってたもんだから、驚いたよ」

「僕の運命力は遺伝だったってこと?」

「もしかしたらそうかもね」

「まぁなんでもいいよ! とりあえずお風呂入ってさっさと寝る! それで明日は病院行って終わり! よし! 明日も頑張りますかぁ!!」




月下緋彩
テレビは基本嫌い。けど歌番組大好き。
この世界線では一人でお祭りと花火に行った。秋には紅葉狩りソロキャンしたらしいし、冬はこたつで丸くなっていた。あかねがいなくても普通に一人を満喫してる人。
本編時空の好感度を100としたら、この世界線のあかねへの好感度は30くらい。友達への好感度が50。つまり現時点では脈なし。
こっから仲良くなって最後はちゅーして終わるらしい。知らんけど。
運命力は遺伝するらしい。

黒川あかね
原作通り。特に語ることはない。
路上で吐いた描写(別に作者の趣味ではない)は勝手に想像した、歩道橋の上で蹲ってたシーンで思いついたのが、コンビニ行った時の視線に晒されたストレスで吐いたとしか想像できなかった。実際は普通にこけただけかも。


後書き的な何か
まずは………シリアス書けねぇえええ!!!!!
どうやったら重くなるんだ?緋彩がポジティブすぎるかつ何も気にしないせいで、緋彩の描写入れるだけで重くならない。
今話でわかったと思うんですが、緋彩くんも充分やべーやつです。
本人は無傷だったので気にしてない。親にもらった身体というか、自分大好きなので大怪我とかしてたらブチギレだった。

と言うのは置いておいて、今話を書くにあたって原作の『今ガチ』編読んで思ったことあげてきます。……つっこまないのがいい読者かもしれないけど。

今ガチメンバーがあかねの家なんで知ってるんですか?家に遊びに行ったりしてましたっけ?

あかね応援動画が74,000RTされたのバグだなと。そんなにネット番組の恋愛ショーとか見てる人いるのかな?
元旦のTwitter(新X)でも74,000RTもなかった気がする。ネット番組の出演者がちょっと炎上したくらいじゃいかないだろうと言った感想。実際現実だとどうなんですかねぇ?

でもそんなことより一番言いたいのは、ゆきがあかねにビンタするシーンで不覚にも笑ってしまったこと。
手を振って走ってきたんだろうなと思ったら、そのまま振り下ろして引っ叩くって言う。
………感動シーンなはずなのに。私の感性がズレてるのか、みんな思ったことなのか。

次回はロリあかとショタひいの話投稿予定。
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