黒川あかねと話すだけ   作:推しの子ハピエンで終わりそうですかね?

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感想・評価・誤字報告ありがとうございます!

後書きの方に全部持ってかれた感。
実質4000字くらいになってるので許してください。


黒川あかね()意識する(される)だけ

「…………距離近くない?」

「ん? そうかな?」

「うん。近いと思う」

 

 普段から距離感の近い二人であったが、普段よりもいっそう近いように思われる。

 これには司書さんも激おこである。図書館は別にデートスポットではないのだ。恨みの籠った視線を投げかける。残念ながら二人の世界を作ってる人間にはそんなもの効かないのだ。

 

「ずっと肩とか当たってるんだけど」

「あ、ごめんね。やりずらいよね」

 

 そう言ってあかねは少し離れる。少し。

 

 …………近いよ!!!!! 

 

 緋彩の内心は荒れていた。

 ちょっと前に事故で、まぁその…………アレだった事もあり、緋彩はあかねを意識してしまっている。

 なんだかんだ色々なところに遊びに行ったり、毎日のように昼食を一緒に摂っているのだ。それに加えて、勉強を教えてもらったりお互いの家に行ったりして、意識するなと言う方が無理である。

 たとえそれが憧れの女優で、自分がファンの一人だとしても。

 

 他方あかね。

 

 わわわ私、どうしちゃったのぉ?! 

 

 あかねの頭の中も一面ピンク色になっていた。

 事故、事故とはいえ、事故とはいえあんな…………! その時のことを思い出して頭を振る。

 マンガ的に表現するなら、もくもくと雲になって現れる想像を、わたわたと手を振って消す感じである。

 夏祭りや花火に一緒に行ったり、劇団に招待したり。今までの人生でここまで深く、仲良くなった人間は他にいない。

 確かにこれまでも緋彩のことは好きだったが、それは恋愛のあれこれでなく友人としてである───はずであった。

 しかし前のことを思い出すだけで、恥ずかしいだけでなく……もっと別の、そう、言ってしまえば、まるで私が緋彩くんのことを───

 

「……さん? ……かねさん? あかねさん!」

「……どうしたの?」

 

 呼ばれていることに気がつき、声のした方向を向ける。すぐ近くには緋彩の綺麗な顔が。

 動揺を隠そうとして、とても低く冷たい声が出る。やってしまったと思いひどく焦るが、ここわかんないんだけど……と普通に質問されたことで我に帰る。

 少し離していた距離を詰め、答えを書いてみせる。

 

「そこは、えっと…………これをこの式に置き換えてやれば」

「おーなるほどね。ありがとう」

 

 ……………………。

 

 

 

((恥ずかしい…………!!!!))

 

 

 おそらく二人の今までの距離感を知っている人間がいれば、今更何をと言うこと間違いなしだ。

 そもそも、こんなことを思いながらも肩がくっつくレベルの近さである。恥ずかしいと思いつつも離れないのは、筋金入りである。

 

 この雰囲気では勉強もままならないと感じた二人は、どちらが言うでもなくお昼にしようと言うことになる。

 

 

 

 

 

「「あっ」」

 

 イートインスペースに移動した訳であるが、お弁当を開けば内容が全く同じという。

 あの生温い雰囲気をどうにかしたいがために、場所を変えたと言うのに。これでは更になんともいえない空気が広がってしまったじゃないか。

 勇気を出して切り出したのはあかね。黙っていられなくなったとも言う。

 

「同じもの入ってるね」

「本当だ。もはや運命感じるよ」

「う、運命っ!」

 

 なるべく普段通りを心がけようとして失敗する緋彩。なぜここで「運命」とか使ってしまうんだ。

 口に出したあと、自分で言ったことに身悶えると言うアホっぷり。

 もう何をしても二人は悶えるので、諦めるべきではないだろうか。

 

「「……いただきます」」

 

 それでもいただきますは、欠かさずする二人。こういう時でも忘れずにする辺り、育ちの良さが伺える。

 

「うん。さすが僕だ。なかなか美味しいじゃないか」

「私もいつも通りよくできてる」

 

 一口食べればすぐに変な雰囲気と緊張は霧散した。やはり食事の力は偉大なのだ。

 

「なんで私たちあんなに緊張してたんだろうね」

「さぁ? なんかいつもと違った」 

「あんな事があっても私たちの関係が悪くなった訳じゃないのにね」

「ははは、確かに」 

 

 恥ずかしいだの緊張してたんだの言っているが、今まで恥ずかしくともなんともなかったという方が驚きである。

 

「むしろ…………」

 

 そう言ってあかねは席を移動する。緋彩の隣に座り直し、耳元に近づけて

 

「もっと仲良くなっちゃったね」

 

 

 ?!?!?!?!?!?!?! 

 

 

 叫ばなかった自分を褒めたい。緋彩はそう思った。

 急に、急になんなんだ?! さっきまで、というか今までそんな事言わなかっただろ?! いや僕は何にこんなに乱されているんだ落ち着け落ち着ける訳ないだろ(意味深)とかつかない? 大丈夫なのかこれ以上何か言われたら僕今でもおかしいのにもっとおかしくなるんだけどどうすればぁあぁあああ?! 

 

 緋彩に生まれていた心の余裕はもはやゼロ。あかねの言葉に乱れに乱れて乱れきっている。

 バクバクと自身の心臓の音が聞こえてくる。

 

「ふふふ、なんでそんなにドキドキしてるのかな?」

 

 おかしい、さっきまでオドオドしてたのはあかねの方であったはずだ。

 なのに今! 学校で友達など、僕以外いない天才美少女ごときに手玉に取られている。なんと情けない事かっ?! 

 緋彩は思った、コミュ力よわよわ美少女程度にいいようにやられるわけにはいかないと。

 

「…………あかねさんこそ。照れ隠しでそんな事しちゃうなんて……かわいいね」

 

 すぐ横にあるあかねの顔を覗き込み、少し微笑みながら負けじと言葉を返す。

 

「緋彩くんは恥ずかしくなると、ちょっとかっこいい事言いたがるよね? もしかしてさ。今もそうなんじゃないの?」

「ははは。……………………降参です」

 

 ジャブを打ったら強烈なカウンターをもらってしまったようだ。

 全く意識してなかったところを指摘されて動揺する。僕より僕のこと知ってんの? 

 

「何をそんなに照れてるのかなぁ? 私たち、前もこれくらいだった気がするんだけどな〜?」

 

 ニヤニヤと、何かに染まった瞳で緋彩を責め立てる。

 降参したのにも関わらず、聞こえませんでしたけど? とばかりの口撃である。これには緋彩くんも涙目。

 そういう顔をするから…………。

 

「………………僕は君のファンで、君は女優だ。適切な距離感を心がけるべきじゃないだろうか」

 

 苦し紛れの言い訳。今更何を言ってるんだ? とでも返されると思っていた緋彩。

 しかし反応は全く違っていた。

 顔を青くして呆然とするあかね。

 

「な、何を……言ってるの?」

「いや、だからもうちょっと節度のある距離感を」

「そう、だよね……あはは、ごめんね」

 

 言ってから、あかねの顔を見て失言を理解する。

 そんな顔をさせるために言ったわけではないのだ。

 

「ちがうちがうちがう! えっと、その、ほら、あの〜その!」

「…………なに?」

「その…………意識してるから

「えっ?」

「だから! あかねさんのことが気になって仕方ないから少し離れてって言ってるんだよ!」

 

 お前はどこのヒロインだ。男のヒロインムーブは求めていない。

 しかし、その言葉はあかねにとって劇物だったようで、青くしていた顔を、よく熟れたりんごのように真っ赤にして顔を背ける。もじもじとしながら元の席に戻っていく。

 

 むずかゆい沈黙が二人の間に流れる。

 

 僕は何を言っているんだっ?! まるで僕があかねさんのことを───

 

 失言をカバーするため失言をする。口は災いの元とはよく言ったものだ。ひとえに、お前がものを考えて話さない事が悪い。

 

 

 ええええ?! それって緋彩くん、私のこと───?! 

 

 あほぼけの言葉に絶望を感じていたが、リカバリの言葉によって再び──ベクトルは違うが──果てしない衝撃を受けていた。

 

 お互い完全に意識してしまった二人。

 食事を進めるが、チラチラと互いの様子を伺っては目が合うとすぐに逸らし、再びチラチラと見るなんてことを繰り返している。

 

 

 

 その後一応勉強はしたものの、まともに集中して進めることはできなかったとだけ言っておこうと思う。

 

 




有馬ルート
 このルートは、かなちゃんがあかねちゃんに「嫌い!」って言うことによって、幼女あかねちゃんが幼児緋彩くんとエンカするフラグが立ちます。するとどうでしょうか、がっかりあかねちゃんと緋彩くんが出会ってしまいます。高校で再会した二人は……となって最後にはあかねと緋彩がくっつきます。
 逆にここであかねと仲良くなると、緋彩くんもあかねと仲良くなります。そこそこ関係値がある中、高校が一緒になってあかねとくっつきます。
 つまりかなちゃんが緋彩くんを攻略するなら、黒川あかねとエンカしないことが最良の選択なのです。バケモノには関わらなければヨシ!
 あっちゃったらもう……ね?

「あんたが緋彩?」
「うん!月下緋彩だよ!」
「ふーん?私と友達になりたいんだって?」
「うん!仲良くしてね!」
「嫌だけど」
「ええ?!なんで!!」
「私売れっ子だから、あんたに構ってる暇ないのよね」
「!!!」

 緋彩の反応に気をよくした有馬。ちょろい。

「それ知ってる!!」
「そうでしょう?私テレビをつければいろんなところに──」
「時間の使い方がヘタ?ってやつでしょ!」
「はぁぁぁあ?!そんなわけないでしょ!」
「じゃあ遊べるね!また明日!バイバイ!!」
「ちょっと待ちなさい!!!」

 緋彩にその声は届かず、スキップで帰っていく緋彩を見送ることとなった。


─────────


「あ、かなちゃんだ!こんにちは!」
「アンタ何で昨日私の話最後まで聞かなかったの?」

 かなは激おこであった。私の話を聞かない人間などこの世にいないと思っているのだ。もう少し年齢が高くなっていれば、「この世をば」と詠んでしまうレベルだ。

「むふふ、そうすれば今日聞きにくるでしょ!」
「はぁ?」
「僕天才ってやつだからそこまでけいさん?できるんだよ!」
「私の方が天才ですけどぉ〜?」
「ふーん?」

 緋彩は自分が天才だと言いたいだけだったので、かなが何を言おうとどうでもよく適当に返事をした。こいつはこいつでクソガキである。

「そうた!」
「何よ」
「かなちゃんあいさつしたほうがいいよ!」
「はぁ?何それうざいんですけど」
「うざ?……挨拶はこみにけーしょん?のふぁんぶるたる?らしいよ!」
「あんたが何を言ってるのかさっぱりわからないわ」
「挨拶しようってことだよ!」
「何で私がそんなこと」
「挨拶すると、仲良くなれるよ!」
「それが何なのよ」
「だから、挨拶すればお仕事?好かれて楽なのが増える?みたいな?感じかな?」

 仕事増やされるなんて可哀想だなあなんて続ける緋彩。近所の姉さんに仕事はロクなもんじゃないと、膝の上に乗せられ英才教育を受けている。こちょこちょされてくすぐったいらしい。

「ふーん、あんたにしてはいいこと言うじゃない」
「でもかなちゃんできないもんね!」
「は?」

 緋彩の何気ない一言が有馬を殴る。

「僕さっきこんにちは!って言ったのに何も言わないじゃん」
「………」
「あ、時間だった。じゃあねかなちゃん!」


──────

「こ・ん・に・ち・は!」
「あ、かなちゃんこんにちは」

 今日は挨拶するんだねと言う緋彩。思ったことを言っただけで悪気はない。しかし、かなの額には青筋が。

「あんたねぇ!」
「あ!お仕事の人にも挨拶した?」
「……したわよ。嫌だったけど」
「なんでぇ?」
「あんたは私のこと全然分かってない!私は───(以下略)」

 ふむふむ、はー、ほーん、へー、と適当に聞き流す。テレビを見ないのでかなの活躍が、どんなもんかわからないのだ。
 とはいえ分かっていても、右から左するのがこの男である。小さい頃からこう言うところは変わらないようだ。

「今度私の仕事場に連れて行ってあげるわ!」
「え?いいよ。お姉さんに仕事は面白くないって教えてもらったし」
「いいから着いてきなさい!行くのは明日よ!」
「明日はお家の手伝いが……」
「私があんたのママに話つけてあげるからいくのよ!」
「うーん、じゃあれんらく?してみるね…………電話の仕方わかんない」
「仕方ないわね……誰?」
「おかあさんってやつ」
「わかったわ。じゃあかけるわよ」
「うん。がんばって!」
「あ、もしもし。こんにちは」





「………と、とにかく!明日迎えに行くから!」
「はぁい」

 緋彩の母親と話したことで、疲労困憊と言った様子のかなであるが、精一杯の虚勢を張って立ち去る。
 緋彩としては、おかあさんと話すのそんなに疲れるのかな?と言ったところ。
 それはともかく、明日はナントカという映画の撮影に緋彩も行けることになったようだ。
 緋彩は明日、邪魔しないように隅っこの方で体育座りしてようと決めたようである。邪魔しないようにしようという心意気は認めてやらんこともない。が、体育座りは邪魔だろう。
 そんなことを考えながら、迎えを待つ緋彩であった。





次回予告????
か「ふーん」
ひ「バター?アイ?誰それ知らん」(ガチで知らない)
アル「ひの字ぶっころ」
ひ「君たちみたいなのを厄介オタクっていうんだ!!」(キラキラ)


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