黒川あかねと話すだけ 作:推しの子ハピエンで終わりそうですかね?
バイト先で推しの子の一番くじを引いたら
・有馬かなのフィギュア
・黒川あかねのポスター
・黒川あかねのアクスタ
・黒川あかねの色紙
・黒川あかねのステッカー
が出るという、あかねさん大好きな引きをしたので久しぶりに投稿します。
───え?有馬?いや私はあかねさんが好きなだけなのでそこは別に
ガラガラ
祖父から任されている古本屋のガラス戸が音を立てて開いたのは突然の事だった。
いつも通り本を読んだり勉強をしたりしていた緋彩は、特別反応することもなくいらっしゃいませ〜と、半ば反射的に気の抜けた挨拶をした。
「これお願いします」
差し出された本の題を確認して、記憶を辿る。
「『風姿花伝』は……この値段です」
代金を受け取り、お釣りを返そうと顔を上げると
「え?」
どこかで見た顔があった。
小柄で華奢な身体。緋彩は詳しくないながら、友人曰く前下がりのボブと表現されるらしい髪型。なにより、輝きが溢れて隠すことのできないカリスマ性。
思えば、最近できた友人が異常なまでに熱く語っていた女優に似ている。
「……なにか?」
訝しげに女性は緋彩を見る。
はたして聞いていいものか、そんな疑問が緋彩の頭をよぎった。
芸能人ならプライベートでも声をかけられ慣れているのではないか?
いや、そもそも芸能人だろうとなんだろうと、プライベートでは声をかけては迷惑ではないか?
あかねさんはたまたま特別仲がいいだけで……。
そう悩んだ結果
「すみません、こちらお釣りです……レシートと商品です。ありがとうございました」
声をかけないことにした。
声をかけないように───
「ところでお客さん」
出て行こうとして扉に手をかけた少女の動きが止まる。
「お客さん、女優の有馬かなさんに似てるってよく言われません? 」
したかった。
どこぞのファンなのかアンチなのかわからない友人ほどでないが、緋彩も十分に有馬かなのファンであった。教えてもらうまで有馬の
おのれ黒川。ありがとう黒川。
「「…………」」
二人の間に沈黙が流れる。
じっと真正面からこちらを見てくる美人なお客さんに、やってしまったか? と冷や汗をかきはじめた緋彩。視線を泳がそうにも、じっと見つめあっているためそれが叶うことはない。
緋彩は野生の世界では先に目を逸らした方が負けだと知っている。
長い沈黙。
未だに視線は外れないままで、珍しく緋彩は後悔していた。
やはりプライベートで声をかけるべきじゃなかったのだと。あかねさんと僕の関係が異常なだけで、普通の感性を持っているのなら芸能人だろうと知りもしない人間に声をかけられるのは嫌に決まっているだろうと。
謝ろうと口を開きかけたその時
「わかるの?!」
沈黙を突き破る嬉しそうな声が店に響いた。
まさか好意的な反応が返ってくるとは想像もしていなかった緋彩は、目を白黒させた。
しかし、それでも一応黒川あかねという大女優と普段から話しているのだ。相手が芸能人で僕がファンであろうと返事くらいは……!
「はい、えっと、僕、有馬さんのファンで……」
「本当?!」
「も、もちろんです」
まともにできなかった。
完全に押されていた。
一方で有馬の内心はそれはもう大興奮であった。
最近は仕事が少なく、あっても思うように発揮できない実力。自分の表現をするよりも、作品が良ければそれで構わない。
そんなことを思って鬱屈としていた。
そんな時ふと思い立って入った古本屋で、変装をしていても気がついてくれるファンを名乗る人間と出会うなどという、もはや運命と言っても過言ではない出会にテンションが上がっていた。
「いつから、ファンなの?」
「えっと、ここ最近数ヶ月ってところです」
「どの作品に出てる私が好き?!」
「あー、アレですかね───」
怒涛の質問責めに、泡を吐きそうな緋彩。
「あ、そうだ。サインもらってもいいですか?!」
どうにか、絞り出したのはそんな言葉。
あかねが見たら「私の時と全然違うじゃん。なんで? ねぇ?」と壁ドンされて詰められる……かもしれない。
「いいわよ……代わりにアンタ、無害そうだし敬語じゃなくていいわよ」
「いやいやいや! 憧れの人にタメ口なんてそんなことできませんよ!」
「いいのよ。私たち同い年でしょ? 気にすんじゃないわよ」
学校でも子役時代のこともり、少々敬遠されている有馬。同年代で気にせず話せる相手が欲しかった。
「僕の友達、かなさんのすごいファンなんですけど呼んでもいいですか?」
「いいわよ? ただし、アンタは敬語禁止」
「それ、僕はもしかしたら刺されるかもしれないんですが」
「敬語!」
「で、アンタはなんて言って私のファンの友達を呼び出したのよ?」
「『すごく大事な話があるから急いで来て欲しい』って」
「ふーん、それで?」
「『え? どうしたの?』って返信が来たので『今日今すぐじゃなきゃダメだから』って送りました」
「敬語」
「送ったよ」
「悪くないわね」
何が悪くないのだろうか。
「でしょ?」
何を以て自信満々にでしょ? って言えるんだ。
「かなさんと会えたら間違いなく喜びますよ、彼女」
「敬語」
「よ!」
「そこまで略したらどっちかわからないわ」
「すよ!」
「それは敬語」
「っすよ!」
「敬語じゃないわね…………」
「まっすよ!」
「それは……なに?」
「あはは、僕にわかるわけないじゃん!」
なんだコイツ。
それを口に出さなかった有馬えらいぞ。
そんなことは置いておいて、君達は本当にそんな呑気な会話をしていて大丈夫かい?
緋彩は誰をどうやって呼んだのか、かなは誰が誰にどんな文言で呼ばれたのかを考えるべきである。
普段のかなであったらおそらく『彼女』という単語で危機に気がついたのだろうが残念。今は久しぶりにガチのファンと会って調子に乗り切ってる状態であった。
緋彩は…………まぁ、普段通りでも気がつくことはないだろう。
「ん、来たみたいですね」
「敬語。私は隠れといてあげるから、しっかり頼むわよ」
「なんで提案した僕よりもノリノリなんですか?」
「敬語……まだこの
天丼はとっくに過ぎてるわよとこぼすかな。
まだまだ対緋彩コミュニケーション能力が足りない。
あかねなら途中でそれでいいやと放り投げる。根気の良さは却って面倒なことになると学んだ。経験の差である。
「それで、なんで?」
それはね、と小柄な身体を大きく見せて笑う。
「機嫌がいいからよ!」
「機嫌」
「私、ファンの要望に答えられない女じゃないの」
「おお、さすかな」
死ぬほど雑な緋彩の褒め言葉ですら嬉しそうにしているあたり、相当思い詰めていたことは容易く想像できる。
これには緋彩くんも罪悪感。
もっとしっかり褒めてあげるべきだったかもしれない。
なんでお前は既に順応してきているんだ。
「緋彩くん、大事な話ってなに?!」
ガラス戸がガラガラと音を立てて開けられ、期待と喜色を隠すことのない美声が店内を抜けていく。
ん? これどこかで聞いたことのある声じゃ……?
そんな予感がかな頭を掠める。しかし、有馬かなはプロである。いくら最近仕事が減っていたとしても女優としてのプロ意識は誰よりも高いのだ。
彼女のプライドが判断を曇らせた。もう少しよく思い出せばわかったかもしれないのに。
「紹介したい人がいるんだ」
「───は?」
時間が止まった……気がした。
きっと気のせいだろうと首を振るかな。
「も、もう一回言ってくれるかな? あはは、私耳がおかしくなっちゃったかもしれ──」
「紹介したい人がいるんだ」
その証拠にあかねと呼ばれた少女は質問を、緋彩は先ほどと一言一句違わずに話している。
「き、きき聞き間違いじゃなかった……?」
「あかねさんもきっと喜んでくれると思う!」
「私が喜ぶって、そんな……」
なんとなくやばい予感……否、確信があった。
本棚に隠れていたかなはすこーしだけ、あかねと呼ばれた少女にバレないように顔を覗かせて───
「アンタは……黒川あかねっ?!」
「えっ……かなちゃん?!」
あかねのハイライトは消えた。
かなは白目を剥いた。
緋彩は知り合いなの? とニコニコである。
「そうそう! お客さんとして来てくれたんだ!」
死んだ空気をものともせずに、満面の笑みを浮かべたまま上機嫌な緋彩。
好きな人が二人とも自分の
盲目なのはいつものことか。
それにしても言葉選びのセンスはないといわざるを得ない。
「…………かなちゃん、私そこの
「「ひっ!」」
普段に比べて一回り、ともすれば二回りも低いあかねの声を聞いて、緋彩は遅まきながらにやらかしてしまったことを知る。
「か、かなちゃん、やばいよ。あかねさんがすごい怒ってる!」
「アンタ何やってんのよ?! 変な呼び出しするからこうなってるんじゃないの?!」
「ねぇ、何をコソコソ話してるの?」
「「なんでもないです!」」
天才美少女のハイライトの消えた瞳の前では、
二人は小さくまとまって震えることしかできない。
「なぁんだ」
ぽつりとこぼれた小さなあかねの声。
「えっと、あかねさん?」
かなに肘で脇腹を突かれたことで、恐る恐るといったように、緋彩はあかねの顔を下から覗き込んで尋ねる。
「緋彩くんは私が来てもそうやってかなちゃんと話してる方がいいんだ」
「いや、そんなことは」
「ならなんでそんなに近くでコソコソ私に聞こえないように話してるの? 私にもわかるように教えてよ」
「えっとその」
思っていた反応と違っててどうしようかなちゃんってなってる。
なんてことを言えるはずもない。緋彩は冷や汗をかきながら言葉を探すが、そんな思考はあかねのついたため息とともに断ち切られる。
「答えられないってことはやっぱりそうじゃん。私の方が長く一緒にいたのに、なんでなの?」
なんで僕がかなちゃんと浮気したみたいなことになってるんだ???
チラリと横を伺ってみればかなは既に離れており、素知らぬ顔で先ほど買った本を読んでいる。
確かに彼女は何も悪くないので妥当。
見捨てて帰らないのは優しさか、それとも出て行くまでしたらまずいという直感に従った保身か。
「ねぇ、緋彩くん」
「はいっ!」
あかねに名前を呼ばれたことで、現実に引き戻される。
「今ここで、黒川あかねと有馬かな、どっちを推してるのかはっきりさせよ?」
「私なんでファンサしようとしただけなのに痴情のもつれに巻き込まれてるのかしら」
そりゃあ、ごもっともで。
幸い二人には聞こえていないようで、変わらずとてつもない重力が二人の周りに存在しているように見える。
まああかねの方を答えると思うし、逆にここで私と答えられたら大変なことに───
「…………かなちゃんの方、かな」
馬鹿野郎────ー!!!!!
有馬かな、心の中で絶叫した。どう考えても、何をどう変な風に考えてもここはあかねだと答える場面だろうが!!
「帰る」
当然のごとく入ってきた扉に手をかけるあかね。
「待って待って待って待って! 最後まで話を聞いてよ」
「なに、私よりもかなちゃんの方が好きなんでしょ? 二人で仲良くしてればいいじゃん」
握られた手を払うことはせず、感情を込めることなく淡々と告げた。
緋彩はここで誤解が広がったままになれば、あかねとの関係が終わってしまうと理解しているので引き留めようと言葉を重ねる。
「かなちゃんを推してるのは、かなちゃんのことをよく知らないから。どんなものが好きで、料理が上手いのか、友達が多いのか、ふとした時の横顔は? 僕には何もわからないよ」
緋彩の顔を見れば、普段のようなぽけっとして何も考えていない表情ではなく、真剣な表情で真っ直ぐにあかねを見ていた。
この瞬間は間違いなく、あかねだけが緋彩の瞳に写っていた。
「けど、あかねさんのことはたくさん知ってる。好きな食べ物とか、実はぼっちぎみだったり、なんでもそつなくこなせるくせに変に自信がなかったり。呆れた時の表情とか、テンパって顔を赤くしてるところとか」
「ちょ、ちょっと待って! なんでそんな恥ずかしいこと言っちゃうの?!」
「女優の黒川あかねだけじゃなくて、あかねさんの普段の姿を知ってるから、僕はこうあって欲しいって妄想だとか、願望だとかそういうものを無責任に押し付けることはできない」
もちろん『推し』にだってそういうものをぶつけるのはいけないんだけど、そう言って一旦言葉を区切る。
「ええと、だから、つまり、僕にとってのあかねさんは芸能人の黒川あかねってフィルタよりも先に、友達の黒川あかねていうのがあって、僕はこうして話しているあかねさんの事が好きって事で」
上手く伝えたいことがまとまらないからだろうか、緋彩はあかねの瞳を見つめることをやめて逡巡する。
引き止めるために取っていた手に指から絡められ、きゅっと小さく握り返されて決心がついた。
「とにかく……僕が言いたいのは、あかねさんのことが『推し』って言葉で仕分けて表現することは出来ないくらいに好きだって事!」
うまく言葉にできたと胸を張って言うことはできないが、それでも伝えたいことは伝え切ったと胸を張ることはできる。
まるで一世一代の告白をしたような高揚感と、気恥ずかしさを感じながらも、あかねの瞳を真っ直ぐに捉えて離すことはない。
結ばれていた手が先程よりもずっと強く握られ、解けないように絡められる。
あかねは瞼を目一杯に広げ口をぱくぱくと開いたり閉じたり、なかなか言葉を発することができない。
それを見た緋彩は、やっぱり伝えたことは間違っていなかったと思えた。
しかし、残念ながらと言うべきか、ざまあみろと言うべきか。やっとのことで顔を逸らしたあかねから返ってきた言葉は無情であった。
「わ、わたた、私、帰る!!」
「……え?」
ぎゅうっと一際強く握られたと思うと同時に、パッと手を解かれて扉が開かれる。
「じゃあね、緋彩くん! また明日!!」
振り返った顔は真っ赤に染まっていて─────
「だから私は何を見せられてんのよ」
そう小さく漏らしたかなの呟きを拾うことのできる余裕がある人間は、残念なことにこの場には存在しなかった。
以前から出てこい有馬ぁ! と言われていたので出せて満足。
お前は黒川あかねのイチャイチャを見てればいいんだよ!!
あまりにも完璧な()原作再現ですよこれ。
あかね
え? あれ、私緋彩くんにすごいこといわれてない??? これってもう告は───
ちょっとした嫉妬から詰めてみたら思ったよりも火力高めな返事が返ってきたことに耐えきれなくなって撤退。多分布団で足をパタパタしてる。
緋彩
あれぇ? 僕なんかとんでもないこと言ったんじゃ……??
あほ、まぬけ、あんぽんたん、朴念仁。どちらにも迷惑かけたことを反省すべき。
かなちゃんには、お詫びとして何冊か本を渡した。
かな
途中から二人の世界に入るのやめてくれないかしら? 一応、アンタ初対面よね??
多分今後スキャンダルを撮られることはない。撮られそうになってもアホとあかねがなぜかたまたま世界の都合で偶然通りかかる。
あれ、それだとあかねさんがまずいんじゃ……?
ちなみに全然かんけいないけど、
久しぶりの投稿ですが、よろしければ評価と感想お待ちしております。
───ここから先は最近、初期のあかねさんが見れなくなってしまった欲求不満な作者の戯言で、世迷言です。『黒川あかねと話すだけ』本編に一切の関係はありません。
とはいえ、作者がおかしなことを言ってエアプ晒すのを見るのが嫌な人は、しおりを挟んで評価と感想を残して()ほかの小説へお願いします。
さて
推しの子最新話、みなさん追ってますか?
追ってる方がいらっしゃれば、私が読んでてさっぱりだったところを皆様の考察力で導かれたことを教えて欲しいのです……。
では、
なんでアイはあの内容のビデオ残したんですか???
「私と一緒に救ってほしい」ってどう考えても口頭で伝えればいいと思うんですけど……。どこかでアイは手紙を見るのが嫌いって言うのがあったので、尚更残しているのが不思議に感じました。
それに、救う人の名前を出さないと双子はわからないのでは?
ここでいう〇〇は××だよ〜って注釈入れながら家族みんなで見るのかな()
他には……あれを見て清十郎おじさんが父親だと納得したアクアマリンくん相当追い詰められていたんだなって思いました(小並感)
小さい頃に自分が死んでるか探した時に『ゴロー 医師 失踪』みたいな絶対出てこないよねって調べ方をしてるので、普通に清十郎で納得したのかもしれませんが……。
小さい頃の調べ方は流石にギャグ描写かな。
何はともあれ私が言いたいのは、
身の危険を感じていて遺書として残すなら、救ってほしい人の名前を出さないのはおかしいし「私と〜」とは言わないんじゃないか。
そんなものを感じていないなら、口で言えばいいのになぜわざわざ撮影してビデオを焼いてまでアレ残したのか。
わかる方や何かその辺りの考察がある方が、読者の皆様の中にいらっしゃいましたら、是非とも私に教えてください(土下座)