黒川あかねと話すだけ 作:推しの子ハピエンで終わりそうですかね?
ドラマチックな展開なんてないと思いますが、ゆる〜く見守っていただけたら幸いです。
「ねえねえ大女優あかねさん」
「どうしたのそんなに雑に私を煽てて。テストの結果が悪かったの?」
「違う。確かに既に数学は雲行きが怪しいが、現代文と古典に関して言えば100点だ」
「あ、私もだよ。お揃いだね」
「え、勉強ができて性格も良くて美人なのになんで友達いないの?」
「ふふふ、なんで緋彩くんはそうやって人の心を傷つけるのかな?」
あかねは激怒した。この邪智暴虐の友人を人の心に寄り添える人間にしなければと。
「ちなみに私は他の教科も全部100点だったよ」
「はぇ? ぜんぶ? 100点? ……はははは、あかねちゃんも随分とおもしろい冗談言うなぁ。お兄さん驚いちゃったよ。で、本当は何点だったんだい?」
「だから、本当だって! 先生も言ってなかった? 最高点は100って」
それまでは「冗談はよしこちゃんだぜ」などとふざけたことを言っていた緋彩だったが、あかねの言葉に一瞬で真顔となった。
「……なるほどね。うん。確かに、確かにどの教科の先生も100点がいるとは言っていた」
「それが私だよ」
「本当に? 僕の目を見て誓える?」
「うん。ほら、私は全科目100点です」
緋彩とあかねはしばらくの間、じっと見つめ合う。
「なんで何も言ってくれないの?」
「ここで何か言ったら負けだと思った」
「私には緋彩君が何を言ってるのか理解できないよ」
「つまり僕はあかねさんよりも賢いってことだね」
そんなことを言ってる時点であまり賢くないと思うよ。と思っても口に出さないのが優しさであるとあかねは思ったので、生暖かい目で見てあげることにした。
だがアホにはなんの効果もなかった。
どころか、女優に見つめられてる! いわゆる、推しに認知されてる! と喜ぶだけで、むしろ逆効果であった。
「まあ、いいさ。君が完璧美少女に限りなく近いであろうことはわかったよ」
「別に私は完璧でもないんでもないよ」
「あ、美少女は否定しないんだ」
「顔がいいのはいろんな人に言われてたから」
「ふーん。まぁ僕も負けず劣らずイケメンだけどね!」
「じゃあ完璧美少女チェックでもしようか」
「やっぱり残念な子なんじゃないかな?」
変なことを言い出した緋彩に、本当に気遣いする必要があるのか疑問が湧いてしまった。
「まず顔は……うんかわいいね。美少女だね」
「それ緋彩君が決めるの?」
「美醜は個人の好み。故に人によっては美少女の定義は異なるが、僕からしたら十二分に美少女なので、美少女とします」
「適当にやってる?」
失礼な、いつも一生懸命だよと、反論する緋彩だったがあかねの視線は冷たいままだ。
「次! 普段着! ……といきたいところなんですが、僕に服のセンスがないから飛ばします。まあ、なんでも似合うでしょう」
「やっぱり適当にやってると思うなぁ」
「三つ目! 料理はできますか?」
「お母さんと料理教室に通ってるから人並みにはできるかな」
「マジかよ。え、まさかそのお弁当って……」
「うん? 私が朝作ったやつだよ。どう? すごいでしょう?」
既に緋彩の頭の中では、黒川あかね=完璧美少女の等式が立てられていた。勉強、料理、気遣いができて? すごい女優で……ぼっち。あ、完璧でもなんでもなかったなと思い出して事なきを得た。
万が一これで、コミュ強だったら緋彩は間違いなくあかねに屈していた。なんの戦いをしているのかは知らない。
「……君に僕からほぼ完璧美少女の名誉を授けよう」
「私にはなんで緋彩君がそんなに沈んでるかわからないし、なんでそんなのを私につけようとしてるのか全然わからないよ」
「コミュ力があればなぁ、自信満々に人と話せればなぁ、人見知りが治ればなぁ」
「なんで緋彩君はそんなに私の心を抉るのが上手なのかわからないよ」
「何でもかんでもわからないって言ってるんじゃないぞ! ほらもっとよく考えて!」
「…………脊髄反射で会話してるから?」
「うーん正解」
まるで緋彩のことを何も理解してない様に言われたことで、プロファイリングの天才が顔を見せようとしたが、このアホに使うまでもないと思考レベルを落として考えた。やはりアホはアホだった。
「いやーこんなに近くで好きな女優と話せるなんて僕は幸せだよ」
その言葉がなんとなく気に触るあかね。
なぜそんなことを思うのか本人にもわからない。
おそらく、一度も観にきてないのにファンを名乗っていることだろうそうに違いない。演技もあれ以来見せていないのだ。ファンを名乗るからには、私がかなちゃんに向けるくらいの……と考えていたが、こぼれたのは全く違う言葉。
「私と緋彩君との関係は女優とファンなの?」
なぜこんな事を言ってしまったのかわからない。けれどこれで肯定されてしまったら私は……
「一緒にお昼食べる友達に決まってるじゃん」
あっけらかんとした様子で答える緋彩。
それにと、続ける。
「ほら……友達に憧れるのはおかしい事じゃないでしょ?」
はずかしいのか、少し顔を逸らして言う。
「ふーん? 私に憧れてたんだ? ならしょうがないね」
「なんだその態度! 恥ずかしかったんだぞ! お前もなんか言えよ」
「えっ?! うーん私も?」
「私も緋彩君のこと、友達だと思ってるよ」
演技によって憑依された
緋彩からあかねの表情を窺い知ることはできないが、明らかに恥ずかしがっているであろう事を察してニヤニヤとしている。
もっとも、ニヤニヤを構成している割合はあかねの言葉に嬉しくなっているのがほとんどを占めているが、それをあかねに伝えることはない。
それを伝えて終えば、トントンだった恥ずかしさの天秤が緋彩側に傾いてくること間違いなしだ。
同時にチャイムがなり、あかねはそそくさと、緋彩はるんるんで教室へ戻っていった。
☆☆☆☆☆
「明日で学校終わりじゃん」
「うんそうだね」
「夏休みが明けるまでほぼ会えないって……こと?」
緋彩とあかねに戦慄が走る。
考えてもいなかった。しかし少し考えれば当然のこと。お昼を一緒に食べること以外に、この二人の接点がないのだ。
学校ですれ違えば目を合わせるくらいで、どこに住んでいるのか、そもそもどのクラスにあるのかさえ知らない。
なんとも奇妙な縁で結ばれていた二人だったのである。
「ほ、ほらでもお稽古観にくるんでしょ? 全く会えないってわけじゃないしね」
「でもその一回なんじゃ……?」
「「………………」」
「緋彩君がララライに入ればいいんじゃないかな」
「そんな笑顔で言ってくれるのは嬉しいけど、調べたら有名じゃん。いくらエースのコネがあるとはいえ、僕みたいなパンピーが入れるわけないだろ」
そもそも、
あかねも本気で言ったわけでは無いので、だよねーと返す。
「すごい今更だけど私たち連絡先交換してないよね?」
「んー? ああ確かにしてないね」
「しよっか。そうすれば夏休みも話せるよ」
「そうだね…………はい。これ読み込んで」
連絡先も交換せずに、稽古場にどうやって招待しようとしたのだろうかと言う疑問が、二人の中で生まれるものの、今交換したからいっかと納得する。
「このアイコン何?」
「これは僕が作ったクッキー」
「な、なるほど……独特な感性してるね」
あかねの言葉をおそらく褒め言葉として受け取ったのだろう、喜んでいる。あかねも決して貶す意図があったわけではないが、無論褒める気持ちも一切ない。
本人が褒められたと思ったなら褒められたのだ。間違いない。
本当にこんなのでクール系気取れているのか心配になった。多分バレてるんだろうなと。
「夏休みは全部劇団で稽古するの?」
「ううん、休みもあるし午後からとか半日の日もあるよ」
「ほーん大変そうだねぇ」
「演技するのは好きだから大変よりも楽しいよ」
「好きこそ物の上手なれってやつか」
「そうかも?」
弁当をつつきながら会話をする。
あかねは携帯を緋彩に見せながら言った。
「これでいつでも連絡できる様になったんだし、夏休みもどこかのタイミングで会おうね」
「未来の大女優様からのお誘い? これは僕史上最高の栄誉かもしれないな」
「茶化さないでよ!」
「あはは、もちろん遊びに行くよ。僕イケメンだけど、スキャンダルにならない?」
「…………ならないんじゃないかな?」
「急に不安にさせないで欲しいんだけど」
少し不安になったがその時に考えればいいかと、よくわからない楽観さを発揮して考えることをやめた。そもそもあかねに恋愛感情などないが、万が一あったとしても劇団の一女優の恋愛模様など追いかける様な暇な人記者はいないだろうと思う。
チャイムがなり二人は教室へ戻る。
授業を受けながら、夏休み友達と何しようかと考える。
入学直後は、夏休みも劇団にこもって稽古をするのだろうと思っていたあかねだが、どうやら今はどうやって両方するかを考えているらしい。
いい思い出ができるといいなと、思う。
緋彩
クール系気取れてない。昼休み外にフラフラ食べるところを探しに行っている時点で、クールでもなんでもない事に気がつかないアホ。
クール系を演じてるが、ボロが出てるのでこいつが勝手に気疲れしてるだけ。つまりアホ。けどなんだかんだで、クラスの友達のこともしっかり好き。
あかね
プロファイリングするまでもなくアホと見抜いた。ガバガバだろうかとも見抜いた。友達のことを好きなのも見抜いてるけど、わざわざ昼に一緒に食べてくれるのはポイント高め。
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