黒川あかねと話すだけ 作:推しの子ハピエンで終わりそうですかね?
とても嬉しいです。
この作品はこのまま日常を垂れ流すような感じで進めていきます。
劇重展開は原作だけで十分でしょう?
「なんだか密会してるみたいだね」
「変なことを言うのはやめろ。君が言うと洒落にならないんだ」
「当分会わないのかと思ったら、夏休み初日から会えるとは思ってなかったよ」
あかねの言にある通り、二人は夏休み初日の朝から会っていた。ちなみに、こんなに早い時間から会うのは初めてのことである。
「夏休みの開始日が合わなかったんだっけ?」
「うん。他の子はまだ学校なんだって。だから今日はお休み」
「だから朝から集まろうなんて言ってたのね」
「そうそう」
「で、図書館で勉強しようって言ってたよね? 確かに図書館だけど」
ここはどこ? と疑問を呈する緋彩。
「うちの近くの図書館だよ」
「学校の図書館かと思ってた」
「緋彩くんは人気者なんでしょ? 見られたら私がどうなるかわからないよ」
「友達がいるだけで人気者とはこれいかに?」
女優とプライベートで会うという方が恐ろしい気が……などと言っているがあかねに伝わることは無い。あかねにしてみれば、クラスでこれ以上孤立するのは勘弁なのだ。
あかね自身マスコミに撮られる程有名でもあるまいし。
図書館のスペースに移動して、ではと始める。
「夏休み明けのテストでは私と同じ100点をとってもらいます」
「いきなりどうしたんだ。僕は英語と数学やりたく無いぞ。国語と暗記科目だけで戦うんだ」
「まだ一年生の一学期が終わっただけだよ? 諦めるの早いと思うんだけど」
「それはそうなんだけどさあ、日本語みたいに美しくないんだよなぁ」
「大丈夫友達の私に任せて。…………うまく教えられた事ないけど」
「不穏な言葉が聞こえたんだけど気のせい?」
性格に由来して、劇団で任されたまとめ役や演技指導を上手くやれた試しがないのだ。つい遠慮がちになってはっきりと伝えることが出来ない。
「でもわかった。僕も優等生な友達を信じようじゃないか。大丈夫、何かあれば何も気にせずズバズバ言ってくれ」
「わかった。私もしっかり教えるから緋彩くんもしっかりやってね?」
「うぃ」
差し当たってとりあえずは教科書の問題を解いていく。
しかし、一人でやらせようとしたところ、すぐに鉛筆を放り投げたのでほとんどあかねが教えながらやることとなった。
「…………教えてる時はできるんだね」
「まぁね! あかね大先生が介護してくれれば数学なんて敵じゃないのだよ」
「………………で、一人でやるとどうなの?」
緋彩は顔を逸らした。
計算するだけならできる。公式も覚えている。しかしどこで使えばいいのかわからないのだ。できるやつにはこの気持ち……わかるまい!
「大丈夫、答えを暗記すればテストは乗り切れる」
「その頑張りはもっと違うところに向けるべきじゃないのかな?」
「時に正論は人を傷つけるんだよあかねちゃん?」
「こんなので傷つかないでしょ」
「傷つかないけど! 私は最近あかねちゃんの対応が雑で悲しいよ」
「勉強見てあげてるから私優しいよ」
オヨヨと泣き真似をしていたが、あかねの言葉に確かにと頷く緋彩。何も考えずに話していることは明らかである。
「でも本当に国語だけはできるんだね」
「
だってと言って、前回のテストと緋彩が自信満々に大学入試も解けると言った国語を並べる。
「本当に現代文も古典も100点取れるんだね」
「しんじてなかったの?」
「なかなか信じられないんじゃないかな」
「あ、数学とかは見ちゃだめだよ」
「じゃあ見るね…………うん。ほら安心して、私が教えてあげるからね?」
学校でもらったのであろう、既に終えた範囲の問題をチラリと見てあかねは悟った。コイツ放っておいたら数学の全く出来ない男になると。
緋彩の名誉の為に点数は公表しないでおこうと思う。
「僕は優しい友達を持てて幸せだよ。いくら払えばいい?」
「出世払いでいいよ。つけといてあげる」
「海賊になればいいのか?」
「ふふふ、冗談だよ。そうだなぁ…………お金とかじゃなくて、友達でいてくれる限り付き合ってあげるよ」
「僕は友達付き合いがいいことに定評があるんだ。簡単にできた縁を切る様な人間じゃないぜ」
「つまり?」
「…………あかねさんが嫌にならない限り友達だよ」
なぜずっと友達だよくらい言えないのだろうかと、あかねは呆れたが、思っていても口にするのは恥ずかしいのだと緋彩は激しく抗議した。
時計を見れば午後一時を過ぎたところ。お腹も空いてきたので、二人は飲食可能なスペースへと移動して弁当を開いた。
「あ、そうだ」
「どうかしたの?」
パクパクと弁当を摘んでいた緋彩が、唐突に何かを思い出した様に声を上げた。
咳払いをすると、緋彩の思うキメ顔をしてあかねの方を向く。
「あかね。今日はいつもにまして可愛いね。制服姿とはまた違って、その私服もあかねの魅力を引き立てているよ」
急な褒め言葉にあかねは一瞬フリーズする。
この男は急に何を言ってるんだろうか? 変なものでも食べたのか?
「……どう? 僕が考えたキメ顔と殺し文句」
さっきまでの表情はどこへいったのか、普段の気の抜けた表情に戻って弁当を食べている。
変なものは食べていないが、元より変な人間ではあった。
「その言葉がなければ褒めてあげようかと思ったよ」
「マジか! ふふーん、いやはや僕は僕の才能が恐ろしいぜ」
「私は緋彩くんのその調子に乗りやすいところがこわいよ」
「ふっ、いつからこの調子の乗りやすさが演技じゃないと思っていた?」
「演技だったの?!」
「演技な訳ないじゃん。あかねさんは面白いなぁ」
真に迫った緋彩の言葉にまさかと思ったあかねであったが、やはりそんなことはなかった様で安心した。
自分の友人が自分に対してずっと猫かぶっていたと思うと、ショックを受けそうだ。
「でも、人によって見せる面が変わることを演技って言うなら、人間みんな一生演技してる様なもんだよ」
「それは……言い過ぎじゃないかな?」
「そうだね。適当にそれっぽいこと言っただけ」
賢そうに見えた? と聞く緋彩にあんまりと答えるあかね。緋彩は驚いた様だが、さもありなん。
賢そうだった? と聞くやつは大体賢くないのだ。
「あ、そうそう」
「今度は何?」
再び閃いた様に声を上げる緋彩に視線を向ける。
「かわいいと思ってるのは本当だよ」
初めて会った時と同じ様な、にへらっとした笑顔で言う。
「流石の僕でも、思ってもいないことを伝える様な人間じゃないぜ」
「ありがとう。これ友達と遊ぶって言ったらお母さんが選んでくれたの」
「そうなんだ。さすがお母様だね。あかねさんの良さをわかっていらっしゃる。元がいいから尚更だね……僕はファッションなるものはよくわからないけど」
「緋彩くんのそれもすごく似合ってると思うよ」
「ありがとう。まぁ、あかねさんと同じで元がいいから当然だよ」
弁当を食べ切って、再び勉強をしに戻る。
「暗記物ってどうやって覚えてる? 僕は何回も読んで書いてするんだけど」
「私は何回か見ればできるかな」
「ほえーあかねさんは頭が良いんだねぇ。僕にも少し分けてくれない? 主に数学で使うところ」
「暗記の話じゃなかったの?」
「暗記は別に。覚えるのは苦じゃないし。だけど数学、君はダメだよ」
「はいはい。ほら続きやるよ!」
「はーい」
「ん、いい時間になっちゃったね」
「本当だ。お菓子でも食べようかなぁ」
あかねの言葉に顔を上げて伸びをする緋彩。
荷物を持って昼と同じ飲食可能なスペースへ行く。
弁当を入れていた袋から取り出したのは、手作りのクッキー。いくつかの袋に分けられて梱包されているものと、タッパーにたくさん入っているもの。
「はい。これあげる」
「ん? これは?」
あかねに手渡されたのは、かわいくラッピングされた二袋のクッキー。
「手作りのものダメな家族いる? じゃなったら食べてもらいたいな」
「ううん。食べられると思うよ」
「これはご両親の分。いつも娘さんにお世話になってますってことで」
「わかった。しっかり渡しておくね。ありがとう」
緋彩は頷いて返事をする。
私の分はくれないの? と言いかけたが、目の前に出されたタッパーに困惑する。
「全部くれるの?」
「違うよ! これは僕とあかねさんの分! 残ったら持って帰っていいよ」
あかねさんは腹ペコキャラだった? などとふざけたことをぬかしている緋彩のことなど無視して、あかねは食い入るようにクッキーを見つめている。
自分の言葉になんの反応もしないあかねを不思議に思い、声をかけようとしたところで、あかねが顔を上げた。
緋彩はあかねの瞳に星を幻視したかのように錯覚してしまう。あかねは、今まで見たことがないほどにキラキラとした目でこちらを見ている。
「手作りのお菓子を友達と囲んで食べるなんて初めてだよ…………!」
「感激してたと…………?」
あかねの喜びっぷりに若干引いているものの、喜んでくれているならいいかと考える。
食べていい? と急かすあかねにどうぞと促す。
先ほどまでの勢いでパクパク口へ運ぶのかと思ったが、恐る恐ると言った様子で食べている。
「ん? あんまり美味しくなかった?」
緋彩自身も食べてみてそんな感想をこぼす。
「違うよ! せっかくだから味わって食べようと思って」
「量はあるし普通に食べていいと思うよ?」
「本当?! じゃあ遠慮なく食べるね!」
「うん。食べて食べて」
美味しそうに食べる姿を見て満足げに頷く緋彩。わざわざ昨日早く帰って作った甲斐があったものだ。
二人で食べていたため、そこそこあったクッキーもあっという間になくなってしまった。
「次は何食べたい?」
「えっ? 次?」
「もしかして今日で終わり? ……あ、予定が詰まってるのか」
「そうじゃなくて、また来てくれるの?」
「僕はてっきり面倒見てくれるのかと」
教えてくれなきゃ数学やらないぜと緋彩は言う。
どれだけ数学が嫌なんだと言う疑問が一瞬頭を掠めるが、それも友達と勉強会をやれることの喜びによって一瞬で塗り潰された。
「全く私がいないとダメなんだから!」
「何言ってるんだ。数学以外はやれる」
「次できる時はまた連絡するね」
「わかった。多分大体行けるはず」
「うん。次は私が何か作ってくるから期待しててね」
なぜか異様にやる気を出しているあかねを不思議そうに緋彩は見ていたが、割とこういうことあるなと思い返し気にしないことにした。
普通の時は大人っぽい雰囲気があるが、話してみればそんなことはない。意外と子供っぽいところもあるのだと、理解しているのだ。
「じゃあ僕は帰るよ。あかねさん、帰り道気をつけてね!」
「うん。緋彩君も帰り気をつけてね。バイバイ!」
二人は図書館を出て、それぞれの家に帰って行った。
普段とは違い教室でなく、家に帰ることになんとなくの特別感を抱いて。
緋彩
割となんでもできる人。今回はお菓子を作ってきた。部活に入らない理由もあるらしいが別に重い理由はない。
苗字が出ないが原作キャラとの関係もない。
数学はゴミ!!
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読んでくださりありがとうございました!!!!