黒川あかねと話すだけ   作:推しの子ハピエンで終わりそうですかね?

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すごく嬉しいです。
ルーキーの方に載せてもらって嬉しいです。夢は日間一桁!

演劇の知識ゼロで書いたので、単語とか評価に違和感があるかもしれません……致命的なやつは誤字報告か、感想で教えてくだされば直します。


黒川あかねを見てるだけ

「僕ここにいて本当に大丈夫?」

「金田一さんは大丈夫って言ってたよ」

「……ネットで見たけど代表の人でしょ? なんで見学が許されたんだろう」

 

 怖い緊張してきた……と時々呟きながらほとんど黙っている緋彩を連れて、あかねは稽古場へと入る。

 

「借りてきた猫かな?」

「そそそそんなことあるわけ」

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。みんないい人だし」

「あかねさんがそういうなら、きっとそんなんだろうけどさぁ」

 

 そもそも緋彩は演劇の()の字も知らないようなど素人である。しかしながら、あかねが所属していると聞いて多少なりとも調べてみた、調べてしまったのだ。想像以上に有名な劇団だと知ってしまい、果てしない場違い感に押しつぶされそうになっているのだ。

 そんな緋彩を見てあかねはとても呆れている。

 

「もう、何をそんなに気にしてるの?」

「あかねさんに置き換えたら、かなちゃんが撮影現場に連れて行ってくれるって感じだよ」

「ええっ?! かなちゃんが?! 私を?! ど、どんな格好していけばいいんだろう?!」

「例え話だ。急に興奮し出さないでほしいよ……」

 

 なぜか自分よりも焦り出すあかねを見て、緊張も緩んできたようだ。

 おそらく、あかねのこれも緊張をほぐす為にやってくれたんだろうと感謝した緋彩だが、いまだにあたふたしているあかねを見て、そんな意図などなかったのではと思い始めた。

 

「君が月下くんか」

「はいっ?!」

「金田一さんおはようございます」

 

 あかねはしっかりと反応して挨拶を返したが、緋彩は急に後ろから声をかけられ変な返事をした。

 せっかくあかねを見てほぐれてきた緊張が一瞬にして元に戻った。どうやら借りてきた猫状態で見学することになるようだ。

 

「えっと、そうです。おはようございます。僕が月下緋彩です。今日は招いていただきありがとうございます」

 

 誰だか確認する余裕などなくとにかく挨拶をする。挨拶しておけば悪く思われる事はないだろう。焦りながらも悪くない判断ができたと自画自賛している。

 

「金田一敏朗だ。黒川から話は聞いている」

 

 話って何を聞いてるんだろうかと思い、不安がさらに増した緋彩だが、別に話されて困る事はないなと自分の記憶を確認し、安心した。

 

「いつも黒川さんにはお世話になってます」

「そうか。おい黒川、早く稽古に行け。直に始まるぞ」

 

 わかりましたと言って練習をしに向かうあかね。

 緋彩は縋るような目で見たが、まさか構って練習に遅れるわけにはいかない。大人しく観てるんだよと、大人が子供に言うように諭されてしまう。

 

 あかねを見送り、金田一代表に案内された。

 道中、なんで代表に案内してもらっているのか、そもそもなんで僕はここにいるのだろうかと現実逃避をしていたが、座れと言われた場所に感謝を伝えて大人しく座った。

 

 ……まあいい。元よりぼっちで観ることはわかっていたことだ。それはいい。

 しかし、しかしだ。まさか代表の隣に座って観るなんて、想像つくわけがないだろうが! 

 

 指定された椅子の位置を確認してしまった緋彩の悲痛な胸の内は、表情筋先生のおかげで外に漏れることはない。側から見れば、練習風景を前にワクワクしているように見えているだろう。

 

 それはともかく、今日は立ち稽古なるものをやるらしい。

 ネット知識が正しければ、場面を抜き取って演技するとの事だが本当かどうか知らないので、緋彩としてはとても楽しみである。

 

 

 役者は既に舞台へと上がっていた。

 隣に座った金田一が、緋彩に話しかける。

 

「黒川とよく話していると聞いた」

「お昼休みの時間だけですけどね。それ以外の時はあまり」

「学校のことを聞いても誤魔化していた黒川が、少し前からよく話すようになった」

「そうなんですね?」

 

 あかねの姿を見つけてテンションが上がっている緋彩からしたら、それがなんなんだと言う話である。

 

「それくらいからだ。黒川の演技の幅が広がった」

「僕は素人なので詳しいことは全くわかりませんが、演じる事ができる役が増えたって事ですよね? すごいですね」

 

 あまりに浅い感想しかいうことのできない緋彩。

 さすがは演技を見ても「なんかすごい」程度の感想しか出ない男である。

 更に言えば、本人の意識はかなりの割合が、舞台にいる俳優らに向けられており、金田一の話に集中する事ができていない。

 

「そこで俺は黒川の演技を成長させた奴を一眼見てみようと、君を招待したわけだ」

「はい? ……僕は特別何かしたわけでもないですし、黒川さんが成長したのは黒川さんが努力したからじゃないんですか?」

「ああ、もちろん黒川が努力したから成長した。と言うのは間違いじゃないが、あいつの演技はほとんど完成していた」

 

 金田一の言葉に緋彩は驚きそちらを向く。元から理解できていなかった話が、ますますわからなくなってきた。

 

「君との会話で何を思ったのか俺にはわからないが、明確に変わったんだ。自分に自信がない故に表現できなかった、カリスマ性が顔を出した」

「……そうですか」

「役者として最高の才能があいつにはある」

 

 僕と関わって、自信がついたから演技が上手くなった事だろうかと考えた。

 僕と話したくらいで自信がつくようになるとは思えなかったが、プロが上手くなったと言うのならそうなんだろうと納得し、演技を見ることに集中した。

 

 視線の先にいるあかねは、舞台にいる誰よりも輝いて見えた。

 

 

 

 

 ☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「どうだった?」

 

 稽古が終わりあかねが聞く。

 

「うん。すごくすごかったよ」

「……もうちょっと何かないの?」

「素人だから別にいい事言えないよ?」

「いいの。私は緋彩くんの今日の感想が聞きたいの」

 

 そう言われて緋彩は少し考え込む。

 

「舞台のあかねさんと、普段話してる時のあかねさんは全くの別人みたいで驚いたよ」

「役のことをすごいたくさん考えて、成り切ってるんだ」

「へー。僕はできそうにないなぁ」

「ほかには、他には?」

「他かぁ…………演技してる時のあかねさんに、すごい……惹きつけられた? って感じがする。オーラみたいなものをめちゃくちゃ感じた」

「オーラかぁ。金田一さんにも似たこと言われるようになったんだ」

「それがある人は役者の才能があるってさっき聞いたよ」

「そんなに褒められると嬉しいな」

 

 笑っているあかねを横目に、やはりどう考えてもあのオーラは僕と仲良くなった程度で出さないだろうと思う緋彩。

 いくら自分の顔面に自信があるとは言っても、キラキラオーラを出した覚えもなければ、出そうとしてみたこともない。何より演技素人である。

 

「あ、そうだ差し入れ持ってきてたんだよ」

「そうなの? …………嬉しいんだけど、遅くない?」

「タイミングがなかったんだよ!」

 

 あそこに飛び込む勇気はないぞとぼやきながら、袋を取り出しあかねに手渡す。

 

「あそこであかねさんだけに渡すのは、申し訳なかったと言うのもある」

 

 緋彩の言葉に確かにと同意して、袋の中を確認する。

 

「ドーナツ?」

「何が好きなのか知らなかったから、僕が好きなもの持ってきたよ」

 

 そうなんだと返事をしながら、これはいわゆるファンからの差し入れってことではないかと思い、顔には出さないがテンションが上がるあかね。

 

「そうだ、前にもらったクッキー」

「うん?」

「お母さんとお父さんが美味しいって言ってたよ」

「それはよかった。ドーナツもいくつか入れてるから渡してね」

「うん。家で美味しく食べさせてもらうよ! ありがとう」

「どういたしまして」

 

 外へ出て、ゆっくりと歩きながら話をする。

 

「公演日にはしっかりチケット取って観に行くよ」

「本当?! 友達が観にくるってなんだか不思議な気分だなぁ」

「もしかして、友達が観にきたことないの?」

「うーん、もしかしたらあるのかもしれないけど、観たって言われたことはないかな…………そもそも母数が少ないからね」

「ああ」

 

 少し落ち込んだ様子を見せるあかねに、憐憫の表情を向けつつも納得する緋彩。

 

「まあ、僕もわざわざ遊ぶような友達は少ないから」

「え? そうなんだ。てっきりたくさんいるんだと思ってたよ」

「話す友達は多いけど、休みの日に会う友達は少ないみたいな」

「……じゃあ私は休みの日に会う友達ってこと?」

「そうじゃなかったら、今日観にきたり、一緒に勉強したりしないよ」

 

 おめでとう。君は数少ない、休日会いたい友人の一人だ。

 などと、演技掛かった手振りで緋彩は言う。

 

「ふふ、もしかして演技したくなった?」

「女優黒川あかねが演技指導してくれるならやってもいいよ?」

「私は大女優だから、そんな時間は取れないかなぁ〜?」

「キラキラオーラの出し方教えてくれたりするんでしょ?」

「緋彩くんも、交友関係を犠牲にお稽古すればできるようになるよ」

「むっ……ちょっと観ててよ。オーラ出してる時の真似するから!」

 

 そういうと、緋彩は大きく息を吐き目を瞑り下を向く。

 あかねは雰囲気が変わったことに驚き目を見張る。

 そして、ゆっくりと顔を上げ瞳を開けた。その瞳は真っ直ぐにあかねを捉える。どんな言葉が出るのかとあかねが期待してみれば

 

 

「どう? それっぽい雰囲気出てたりする?」

 

 

「うーん、静かな自信がみなぎる! って感じになっただけかな」

 

 そりゃそうだよーと一瞬で気の抜けた声を出して、それっぽい雰囲気すら消える。いつも通りのアホっぽさが全面に出ていた。

 

「でも、練習すればドラマとかの一言喋る端役くらいになれそうって感じだよ」

「ごめん、褒められてるのか褒められてないのかわからないや」

「私は普段の緋彩くんの方が好きかな」

「普段の方が好き? なるほど。つまり僕は褒められてなかった……?」

 

 あかねの言葉に肩を落とした。

 稽古を観るまでは素人だと言っていたのに、今ではよっぽど自信がついたらしい。

 

「緋彩くんはアクション映画見たら、自分もできると思っちゃうタイプだね」

「なんで知ってるの?!」

「これは誰でもわかると思うなぁ」

 

 緋彩はあかねのエスパー染みた能力の高さに戦々恐々としていた。

 

「あ、お母さん来てる」

「ん? そう?」

「またね! 会える時は連絡するから!」

「はーい、待ってまーす。バイバイ」

 

 あかねは迎えの車を見つけ、手を振る。緋彩もそれに応えて手を振り、車の方に向かって頭を下げる。

 

 あかねを見送ると、出て行った車の隣に停められていた車に乗り込む。

 まさか同じ場所に迎えが来ているとは思っていなかった緋彩は、少し項垂れているように見えた。

 

 車には、親に脇を突かれ嫌そうにしている少年がいたとかいないとか。

 

 

 




緋彩くん
氏名 月下(つきした) 緋彩(ひいろ)
苗字は月下美人から取りました。
月下美人……響きが好き。花言葉もなんか好き。緋彩くんも美人系の顔面してるから実質月下美人。
ドーナツが好き。

黒川あかね
友達が観に来てくれて嬉しい。いつもに増して、気合いが入ってたらしい。

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