宿儺様は現代を満喫したい   作:呪術大好き

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宿儺「魂の切り分け方おしえて」
羂くん「いいよ(人生最大のガバ)」


呪霊の肉などつまらん

 これは、虎杖 悠仁と両面宿儺が出会った夜の出来事である。

 

 「俺にジュリョクがあればいいんだろ」  

 

 虎杖はそう言うと、伏黒 恵の静止も聞かずにポケットから取り出した両面宿儺の指を飲み込んだ。

 

 (特級呪物だぞ!? 猛毒だ、確実に死ぬ!)

 

 ガクリと虎杖の頭が項垂れ、糸の切れた人形のように動かなくなる。その間にも鬣の生えた蟲のような呪霊は宿儺の指を食らおうと虎杖へ迫る。

 

 (だが万が一……万が一……!!)

 

 伏黒は想定する。考え得る限り最悪のパターンを。もしも、虎杖が耐える事が出来、両面宿儺がこの世に蘇ってしまう可能性。

 

 「お゛ォお゛お゛お゛ォ゙

 

 唸り声を挙げながら呪霊は虎杖へ迫る。呪力を持たない虎杖では反撃の手段は無い。このままでは死ぬ。式神を出して助けようとする伏黒だが───

 

 ぞくり、と嫌な予感が背筋から全身を伝い、伏黒は硬直する。一瞬とも呼べないほんの僅かな時間の中、伏黒は確かに見た。

 

 五条 悟にも迫る莫大な呪力が、虎杖 悠仁の肉体から噴出するその姿を。

 

 「ケヒッ」

 

 溢れた呪力を右腕に込め、虎杖が腕を振るう。その瞬間、呪霊は上から半分を粉々に斬り刻まれ、その場に倒れ伏した。呪力の噴出に耐えられなかったのか、振るった腕の袖が破けている。

 虎杖は閉じていた瞳をゆっくりと開く。その数は、四つ。そして虎杖の全身に紋様が浮かび上がっていく。

 

 伏黒 恵の最悪の予想は、今的中した。

 

 「ケヒッ、ヒヒッ」

 

 ゲラゲラゲラゲラと虎杖は、否。両面宿儺が高笑いを挙げる。悠久の時を越え、呪いの王が再びこの世に蘇ってしまった。

 

 「ああやはり!! 光は生で感じるに限るな!!」

 

 差し込む月明かりを見上げ、邪魔だったのか着ていたパーカーを破り捨て上裸になると宿儺は両腕を目一杯広げ、千年ぶりの光を堪能する。

 

 (最悪だ! 最悪の万が一が出た! 特級呪物が受肉しやがった!!)

 

 息絶え残穢として消えていく呪霊を横目で一瞥すると、宿儺は屋上の縁まで歩き仙台市の夜景を眺める。

 

 「呪霊の肉などつまらん! ご飯は! お米は何処だ!!」

 (……? 聞き間違いか……?)

 

 今アイツご飯とかお米とか言わなかった? と伏黒は己の耳を疑うが、疲労と出血のせいで幻聴が聴こえているのだろうと思うことにした。

 

 「! ……良い時代になったものだな。旨味の匂いが、そこら中に満ちている」

 

 呪力による強化で嗅覚を鋭くした宿儺は、付近の民家や店から香ばしい香りを感じ取る。この時代に受肉したのは間違いではなかったと、宿儺は確信した。

 

 「素晴らしい!! 回遊だ!!」  

 

 この時代の美味いものを飽きるまで食べ歩くことを宿儺は高らかに宣言する。

 だが、伏黒にとってはその宣言は悪印象に捉えられた。

 

 「動くな、宿儺。呪術規定に基づき……お前を祓う(ころす)

 「……やめておけ、術師。宿儺は今戦う気分ではない。それにその体で無理はするべきではないだろう。どれ、反転術式でもかけて───」

 

 伏黒へ一歩足を踏み出した瞬間、動きが止まる。どうやら虎杖の意識が目覚めたようだ。

 

 「むっ……もう起きたか小僧……もう少し待て、怪我人が───」

 

 だが虎杖の意識は中々強力だったのか、体から紋様が消え目の下の瞳が閉じていく。そして虎杖が覚醒すると、何故か上裸になっていたり伏黒がこちらに殺意を向けている事に驚く。

 

 「伏黒!? な、何がどうなってんだ……? 寒ぃし……」

 「動くなって言ってんだろ」

 

 意識が交代したと分かるのは虎杖本人だけ。伏黒からすれば今喋っているのが宿儺か虎杖か判断することは出来ない。どうしたものかと悩んでいると、背中から声がかかる。

 

 「今、どういう状況?」

 

 緊迫した空気にそぐわない気の抜けた声。傍に居るだけで理解できる呪力。間違いない。

 五条 悟がそこに居た。

 

 「五条先生……どうしてここに?」

 「特級呪物が行方不明となると上が五月蠅くてねー。観光がてら馳せ参じたってワケ。で、見つかった?」

 

 仙台土産の喜久福が入った買い物袋を手下げながら、珍しくボロボロの伏黒の姿を写真に撮り訊ねる。

 元はといえば高校の百葉箱に収められていた宿儺の指が行方不明になっていた事が始まりであり、伏黒はその調査の途中で虎杖と知り合った。そして現在に至る。

 これまでの経緯を説明しようとする伏黒だが、両手を挙げながら申し訳無さげに虎杖が五条へ歩み寄る。

 

 「そのー……ごめん。俺、ソレ食べちゃった」

 「……マジ?」

 「「マジ」」

 

 当人が二人同時に返事したので納得しつつ、五条は虎杖を見つめる。

 普段は目隠しで隠されているが、五条 悟の六眼は術式や呪力をサーモグラフィーのように可視化して見つめることが出来る為、虎杖の中に宿儺の呪力が宿っているのか見ることが出来る。

 

 「……ははっ、本当だ。混じってるよ、ウケる」

 「え、分かるの? 」

 「うん。君、宿儺と代われるかい?」  

 「多分出来るけど」

 「よし、10秒経ったら戻っておいで」

 

 喜久福を伏黒に預け軽くストレッチをすると、五条は宿儺と戦う準備を整える。伝承程度で聞いていたとはいえ、相手は史上最強の呪いの王。少し覚悟を持って挑むべき相手だった。

 

 「でも……」

 「大丈夫。僕、最強だから」 

 (……アイツ戦う気無いと思うけどなあ)

 

 そう思いつつ、虎杖は宿儺と意識を交代する。紋様が浮かび、目の下の隈取りのような部分が瞳になる。

 

 「や、宿儺」

 「……貴様、呪術師か。宿儺に何の用だ」

 「驚いた、いきなりかかってこないんだね」

 「こちらから攻撃する時は先に宿儺が攻撃された時くらいだ」

 (一人称宿儺なのか……)

 

 拍子抜けした様子の五条と、平然とした口調で会話する宿儺を眺めながら伏黒は思った。

 

 「起きたばっかで悪いけど、大人しく捕まってくれる?」

 「嫌だが。宿儺は小僧の体で今のご飯を食いに行く」

 「とは言ってもねえ……呪いの王様が現代で生きるのも色々手続きがいるからさ。面倒な話は僕が通しておくから、ちょっと大人しく確保されてくれないかな?」

 「そういう事なら構わんが……」

 (いいのかよ)

 

 五条の提案に宿儺が頷いたタイミングで10秒経過したのか、宿儺の意識は薄れ、虎杖と交代していく。

 

 「……おっ、大丈夫だった?」

 「凄いね。ホントに制御できてるよ」

 「でもちょっとうるせーんだよな、頭の中で声がする」

 「それで済んでるのが奇跡だよ」

 

 ガシガシと頭を掻く虎杖の額に五条は指を置く。トン、と小突くと同時に虎杖は気絶。倒れる虎杖を回収し、その場は撤収することになった。

 

 

 そして数日後。

 呪術界上層部の決定により死刑執行までの猶予期間、虎杖 悠仁は五条 悟の監視の下東京都立呪術高等専門学校の一年生として預けられる事になる。

 

 「え、小僧死ぬのか?」

 「お前の指全部食うまでは生かしてもらえるらしいけどな」

 「おのれ呪術界……ところで今何本食べた?」

 「こないだ食ったのと、爺ちゃんの火葬場で五条先生から貰ったので2本」

 「もう十分の一食べてるではないか!!!」

 

 

 虎杖 悠仁 現在の指保有数 2

 死刑執行まであと 18本

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