宿儺様は現代を満喫したい 作:呪術大好き
宿儺「襲われたからって術師の人殺してごめんね(死体ドチャ)」
裏梅「あっ」
平安の偉い人「
翌日。
次の一年生を迎えに行くため、原宿駅にて虎杖と伏黒はひと足早く集合を終えていた。
「聞いてくれよ伏黒、宿儺のヤツがさぁ……」
「もう何回目だその話、朝からずっと聞いてるんだが」
「小僧小僧、宿儺にもよこせ」
「うっせぇ出てくんな」
昨夜の一口を宿儺に取られた事を伏黒に愚痴りつつ、コンビニで買ったアイスを口にする虎杖は、ふと思っていた疑問を伏黒に投げる。
頬に口を出してアイスを欲しがる宿儺だが、人目につく前に虎杖が頬を叩いて大人しくさせられた。
「……そういやさ、一年がたった三人って少な過ぎねえ?」
「じゃあお前、今まで呪いが見えるなんてヤツ会ったことあるか?」
「あー……ねぇな」
「それだけ
「そっか……っていうか、俺が三人目って先生言ってなかった?」
「入学自体はずいぶん前から決まってたらしいぞ……こういう学校だし、何かしら事情があんだろ」
「ふーん………」
呪術高専は、表向きは宗教系の専門学校として扱われている。宗教と聞くとあまり良いイメージを持たないタイプの親からの反対、周囲の意見などもあってもたついていたのかもしれない。
そう考えつつ、いい加減宿儺がうるさいので手のひらに口を出したタイミングで乱暴に食べかけのアイスを突っ込んでおいた。
「……扱い雑だな」
「いいんだよ、食いもん食わせりゃしばらく喋んねえだろ」
「
棒アイス、
原宿。それはスカウトマンにとっての戦場。
如何に速く他の会社の奴等に攫われる前に美少女をスカウトできるか。全てはソレにかかっている。
この道二十年、スカウトマン鈴木 俊郎は今日も美少女を狙い撃つ。
今日の相手は一風変わった白髪のおかっぱ、顔は中性的な印象を持つ着物を着た子だ。学校か何かの式典でもないのに何故着物なのか、だがそんなものは問題ではない。
俊郎の目には見える。一目で分かる、スターの素質。この子は確実にビッグになる。そういうオーラが見えた。
「あのーすみません、お姉さん今お仕事中で───」
俊郎は凍りつくように動きを止める。これに関しては一般人でも分かる、明らかに怒気を孕んだ目でこちらを見下しているのが見えたからだ。
何故? ちょっと声を掛けただけなのにそこまで怒らせるような事をしただろうか? と何度も疑問が浮かび震え上がるが、彼女はゆっくりと口を開く。
「消えろ」
「はいっっっ」
そこからの俊郎の行動は速かった。人生で一番速く駆け出した。これ以上あの子に絡んだら殺されるという確信があったからだ。
だが運命とは無情。俊郎の襟を掴む者が一人。今の子かと思い恐る恐る振り向いたが、そこに居たのは茶髪の制服を着た勝ち気な雰囲気の少女。
「ちょっとあんた」
「な……何ですかぁ……?」
「私は?」
「え?」
「モデルよモデル、私はどうだって言ってんのよ」
「ひえっ……い、急いでますので……」
「待てコラ逃げんな、ハッキリ言いなさいよ」
「ひいいぃ〜……ごめんなさい、ごめんなさいぃ!」
(も……もう女性の相手は懲り懲りだ……!)
鈴木 俊郎はこの後、スカウトマンを辞めた。
「……俺達、今からアレに話しかけんの?」
その様子を遠目で見ていた虎杖と伏黒。あの女性が恐らく入学予定の一年生だというのは、呪術高専の制服を着ていることから見て取れた。とはいえ話しかけづらい雰囲気が凄いので虎杖として遠慮したい。
「ちょっと恥ずかしいかな」
「オメーもだろ」
「宿儺にもくれぇぷよこせ小僧」
ROOKと象られた大きめのサングラスに右手にポップコーンと左手にはクレープを装備した虎杖の格好を横目で見つつ、伏黒は小さく舌打ちした。
「おーい、こっちこっち〜!」
後から合流した五条が声を掛けたのに気がつくと、彼女はスカウトマンを放しこちらへと歩いてきた。
釘崎 野薔薇。
とある地方の村出身の少女で、呪術師の祖母から習った金槌と釘を用いる「
自己紹介を済ませると五条は早速地方人二人を東京観光と称して六本木外れの廃ビルへと連れ出した。
「はい六本木ついたよ」
「「騙されたあああああ!!」」
「思ってた六本木と違う!」
「お上りさんを弄びやがってぇ!!」
「ロッポンギには美味いものがあるのではないのか五条悟!!」
うおぉんと唸る虎杖と釘崎と宿儺を他所に、伏黒と五条は廃ビルを見上げる。
「居ますね、呪い」
「近所にデカい霊園が有ってさ、廃ビルとのダブルパンチで呪いが発生したってワケ」
まだ後ろと首筋で文句を言っている釘崎と宿儺を置いて虎杖は五条の隣へ立つ。
「……やっぱ墓とかって出やすいの?」
「墓地そのものじゃなくて、墓地=怖いって思う人間の心の問題なんだよ」
「あー、学校とかも似た理由だったな」
呪いとは人間の負の心が生みだすものであり、こういった土地ほど呪いが溜まりやすいのである。そういったものを人の多い場所から遠ざける為に宿儺の指などの強力な呪物を魔除けとして置く必要があるのだ。
「ちょっと待って、
あまりにも無知だと指摘する釘崎に、伏黒は虎杖が呪いの世界と関わらざるを得なくなった経緯を説明する。
「飲み込んだぁ!? 特級呪物を!?」
「うん」
「キッショ!! あり得ない、衛生観念キモすぎ!! 無理無理無理無理!!」
「んだとぉ!?」
「ソレは同感」
「ってか変な術式かと思ってたけどソレが宿儺!?」
「うむ、宿儺が両面宿儺だぞ小娘」
頬に口と目を開いた宿儺を釘崎は指差し、宿儺が返事すると「いやキモッ!」と叫び釘崎はまた一歩虎杖から遠ざかる。
宿儺はちょっと傷付いた。
「……君達がどこまでやれるか知りたい、実地試験みたいなものだね。野薔薇、悠仁。二人で建物内の呪いを祓ってきてくれ」
虎杖と組むことになった釘崎は嫌そうに声を上げる。だが虎杖は少し気にかかる事が有った。
「あれ? でも呪いは呪いでしか祓えねえんだろ? 俺、呪術なんか使えねえよ?」
「宿儺がいるではないか小僧」
「君の出番は無いよ、宿儺」
そう言いながら五条は振り向き、虎杖を指差す。
「悠仁はもう半分呪いみたいなものだから、体には呪力が流れているよ。でも呪力のコントロールは一朝一夕ではいかないから、コレを使いな」
そう言うと五条は何処からか革の鞘付きの短刀を取り出し虎杖へ手渡す。
呪具、
「呪具。呪力の籠った武器さ、これなら呪いにも効く」
「小僧、呪具より宿儺の方が強いぞ小僧」
(アレ禪院先輩のだな……あいつに持たせて大丈夫か?)
まるで漫画に出てくるような武器だと興奮した様子で屠坐魔を眺め、装備する虎杖。ダサい武器だと思いながら釘崎は道具を詰め込んだポーチを腰に巻き付けビル内へ先行した。
「あーそれから宿儺」
「なんだ?」
「いくら悠仁がピンチになっても、勝手に出ちゃ駄目だよ」
「小僧の仕事だ、邪魔はしないと誓ってやる」
「ならよし、行っといで」
早くしろと急かす釘崎を追いつつ、虎杖は廃ビルのシャッターを上げる。
「気をつけなよ、野薔薇……東京の呪霊は、田舎とはレベルが違う」
虎杖 悠仁、釘崎 野薔薇 実地試験開始。
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