宿儺様は現代を満喫したい   作:呪術大好き

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りーっぱ・りっぱ・りっぱぱぱ

 試験開始直後の虎杖 悠仁の動きは慎重だった。部屋に入る前には必ず聞き耳を立て、入った際には素早く呪具を抜き構え中を見渡す。

 その行動に両面宿儺と釘崎 野薔薇はほぼ同時にため息を吐いた。

 

 「アンタさぁ、何してんの? バカ?」

 「流石に小娘に同意するぞ小僧……」

 「いやー……こういうのはさ、とにかく警戒しといた方が良いって思って……」

 「ちっ、パンピーが」

 「呪霊は呪力の流れで探すものだぞ小僧……?」

 「そういうのまだ全然見えねえ……」

 「見ようとしていないだけだ。どれ、宿儺が教えてやろう」

 

 宿儺による呪力感知のレクチャーが始まるが、釘崎はダラダラと付き合わされたくなかったのか虎杖から離れていく。

 

 「待てって釘崎、危ねーぞ!?」

 「ちょっと前まで一般人だったアンタよかカンは良いっての! こんなとこの低級呪霊一匹二匹くらい私一人で祓えるから!」

 

 虎杖の制止も聞かず、釘崎は階段をさっさと上がっていく。追いかけようとする虎杖を宿儺は呼び止めた。

 

 「小僧、今は放っておけ」

 「でもよ、呪いって危ねーんだぞ。油断したらヤバかったし」

 「釘崎 野薔薇といったか……口は悪いがあの小娘の実力は確かだ、今の小僧よりかは強いぞ」

 「うぐっ……わかっちゃいるけど悔しい……」

 「ならば続きだ。いいか、まず大気に流れる呪力を目視できるようにだな───」

 

 (……恐らく、今回五条 悟が実力を測っているのは小僧ではないな。今の内に小僧には呪術戦の基本を学ばせておくべきだろう)

 

 助けが必要になれば虎杖自身の身体能力ですぐに向かえるだろうという事を考慮し、宿儺の密かなレッスンが幕を開けた。

 

 「あ、小僧上」

 「うおぉ!?」

 

 呪霊との戦いも幕を開けていたようだが。

 

 

 試験開始から五分後。

 釘崎は既に呪霊との戦闘を開始していた。

 服屋の跡地に放置されたマネキンに化けている呪霊を見抜き、自らの呪力を纏わせた釘を初撃で頭部へと命中させた。

 呪霊も観念したのか頭部に無数の目を開き、奇怪な呻きを挙げる。

 しかし、釘崎にとって既に勝負は決していた。

 

 「……(ソレ)、早く抜いた方がいいわよ」

 

 パチン、と静かに指を鳴らす。発射の際に込められた呪力が、釘という媒介を通して体内へ流れ込み───

 

 「ク、キッ…!?

 「私の呪力が流れ込むから」  

 

 急いで釘を抜こうとした呪霊だが、風船が炸裂するように呪霊の頭部は破裂。崩れた残骸も残穢として空気の流れに消えていく。

 芻霊呪法(すうれいじゅほう) (かんざし)。対象に呪力を流し込んで破壊する芻霊呪法の基本的な攻撃法だが、単純が故に強力。

 

 「ザッコ……ん?」

 

 あっけないと嘆息する釘崎だが、呪霊の居た場所の後ろにある荷物がガタリと揺れたのに気がつく。新手かと警戒したが、怯える声が同時に聞こえたので注視すると、地元の小学生らしき子供が居た。

 肝試しなどでこういった廃屋や跡地に入った者が呪霊に襲われるというのはよくある事例だ。

 

 釘崎は呼びかけるが、様子がおかしいのに気がつく。

 呪力が漏れるのに気がつくのは、少し遅かった。

 

 「ひっ……!」

 「ぐふ、ふ

 「クソッ!」

 

 壁をすり抜けて現れた呪霊に悪態をつく。小賢しく呪力を消して潜んでいたのだ。

 

 五条 悟はこう語る。田舎と都会の違いは"狡猾さ"であると。

 命と命を天秤にかけ、理不尽にそれを選ばせる。人間が躊躇する生き物だと理解しているからだ。

 

 (クッソ!! この呪霊、自分が弱いって理解してる! だから人質(こういう手口)をとってくるってワケか……!!)

 

 子供の首に爪を立てる呪霊。近距離である以上、すぐにでも釘を射てば届く。だが金槌を振りかぶっている間に子供の頸動脈を掻き切り致命傷を与える方が早いのは目に見えている。

 釘崎は迷う。人間の悪辣さを知っている呪霊のことだ、武装解除したところで人質を開放するわけが無い。だがこのままでは子供が死ぬ。それは避けたい。

 

 (落ち着け、落ち着け……よく考えなさいよ、ここで放って逃げれば私は助かる……)

 

 一人の子供か、自分か。どちらを優先するかなど釘崎の中では決まっている。

 

 「………先にその子放せよ」

 (……私のバカ!!!)

 

 床に金槌とポーチが落ち、手に持っていた釘は散らばる。

 自分の命を捨てたのではない、死なれると寝覚めが悪くてウジウジしたくないからだと釘崎は思うことにした。

 

 だが当然、呪霊は子供を放さない。当たり前の事だった。

 

 (そら見ろ、人質解放なんてしてくれないじゃん……!)

 

 ざまあみろと言いたげに下卑た笑いを浮かべながら、呪霊は釘崎へと爪を伸ばす。わかっていた。だが選ばずにはいられなかった選択だ。

 釘崎の中に、後悔はない───

 

 「───沙織ちゃんに、会いたかったな」

 

 「呪術師に後悔のない死など無い」。釘崎との面談の時にも、虎杖と同じように夜蛾 正道は言った。

 最初は意味がわからない言葉だった。釘崎にとっての後悔ある死は、自分の嫌う村から出られずに死んでゆく事だったから。だがその意味が、漸く理解できた気がする。

 呪術師にとっての死は、こうやって最期に悔いが生まれるものなのだと。

 

 

 「よく狙えよ、小僧」

 

 

 だがそれは、今ではない。

 

 「オッ……ラァ!!!」

 「「!?」」

 

 釘崎と呪霊、両者の視線が向く。その声が響いたのは、呪霊が現れた壁の向こうから。

 それとほぼ同時に、壁を突き破り拳が呪霊の体へとめり込む。

 虎杖 悠仁が、そこに現れた。

 

 「小僧、呪具を抜け!」

 「! 応っ!」

 

 虎杖の不意打ちで(ひる)みながらも、コレを見ろと言わんばかりに子供を前に出す呪霊に対し、宿儺の指示と共に周囲の状況を理解した虎杖は腰の屠坐魔(とざま)を引き抜くと同時に呪霊の両腕を切り裂く。

 

 「ううっ!うーっ……!!

 「上出来だ、小僧」

 「おうよ。……怪我無いか?」

 

 宿儺の褒め言葉に応じつつも子供を抱きかかえる虎杖は、少年の無事に安堵する。

 壁に阻まれながらも正確に狙いをつけられたのは、宿儺によって呪力でモノを見る事を教えてもらったからだ。

 両手と人質を失い地面を転がりながら虎杖に怯える呪霊は屋外へ逃げ出し、それを下から五条と伏黒が見上げる。

 

 「祓います」

 「待った」

 

 当然、ここまでされてタダで帰す釘崎 野薔薇ではない。

 

 「虎杖! その腕こっち!」

 「こ、コレ? ほいっ!」

 

 斬り飛ばした呪霊の腕を釘崎の方へ蹴飛ばすと、彼女は学ランの内側に潜ませていた藁人形を腕へと乗せる。

 

 「藁人形!? い、陰湿ぅ……」

 「よく見ておけよ、小僧。アレも立派な術式だ」

 

 

 「芻霊呪法───"共鳴り"!!」

 

 

 カアァン、と音を鳴らしながら藁人形と呪霊の腕を釘が貫通し、体の一部という霊媒を通して魂そのものを釘崎の呪力が貫いた。

 同時に、幾つもの棘となって具現化した呪力は内側から呪霊を貫き破壊するのだった。

 

 虎杖 悠仁、釘崎 野薔薇 実地試験終了。

 

 

 数時間後。

 子供を家まで送り届け、呪霊討滅完了の報告を済ませた一同が居たのは───

 

 「スッゲー!! ホントに新幹線乗って来た!」

 「だろぉ!? りっぱ寿司はコレが良いんだよコレが!」

 

 回転寿司全国チェーン店、りっぱ寿司であった。夕飯はどうするかという議題で釘崎と虎杖は回らない寿司と回る寿司のどちらへ行くかと言い争ったが「りっぱ寿司は皿が新幹線に乗って座席に来る」という殺し文句でりっぱ寿司に決定。

 伏黒は正直なんでもよかった。五条は出来れば面白い方に行きたかった。

 宿儺は知らない味ばかりなので何でも良かった。

 

 「釘崎、エビだよな? んで伏黒がウニで、五条先生がカニ……そんで俺はマグロー!」

 

 新幹線から皿を取り四人分の寿司を配膳し終えると、虎杖は箸を取り手を合わせる。

 

 「いただきまーす!」

 「契闊

 

 当然、この好機を見逃す両面宿儺ではない。

 

 「っ! 宿儺!? お前虎杖の体を……!」

 「案ずるな、一分借りるだけだ」

 

 戦闘態勢に入ろうとする伏黒を諌めながら、虎杖の体を借りた宿儺は手を擦り合わせる。

 

 「さて、スシとやら……楽しませてもらおうか」

 

 宿儺は箸でマグロを一貫取り、大口を開けて口にする。しっかりと二十回ほどよく噛みしめる。

 両面宿儺が真面目な顔をして寿司を食べているのが面白いので五条はスマホで撮影していた。

 

 「これは……! このマグロという魚、まるで肉のように濃厚な脂味を感じるぞ! それにお米も只のお米ではないな、この味は……酒か!」

 

 「何言ってんの、酒なんて入ってないわよ」

 「宿儺は平安時代の人間だからね、昔は多分お酢の事は酒って呼んだんじゃない? 知らないけど」

 

 ガタリと席を立ちかける宿儺だが、周囲の人間達の影響を考慮し少し腰を上げただけに留める。

 この時点で三十秒が経過している。

 

 「素晴らしい! これがスシか!」

 「っていうか、醤油付けなくていいのかい? 宿儺」

 「しょうゆ……?」

 「コレよコレ、コレとワサビ付けてこその寿司でしょ」

 

 ちゃぷんとボトルを揺らしながら五条は宿儺に醤油を差し出す。ソレを素早く取るともう一貫のマグロ寿司にかける。

 両面宿儺としての天性のカン故か、その量は適量であった。

 

 「ワサビは?」

 「それはまた今度だ、まずはしょうゆを付けたものを貰う」

 

 パクリと寿司を口に含み、何度も咀嚼して飲み込むと宿儺は四つの瞳を見開く。

 

 「塩味……! 否、(ひしお)の類か! 魚の脂にこれほどまで合うとは……! 素晴らしい!!」

 「ひしお?」

 「醤油の原型だよ、肉とか魚とかで色々材料の種類あったみたいだけど」

 

 タップリと寿司の味を堪能し、一分の縛りが終わる。虎杖の中に宿儺が戻ると、虎杖は目を開く。

 

 「……あー!! やっぱマグロねぇし! ふざけんなよ宿儺ァ!!!」

 

 

 マグロの寿司、星五つ(すばらしかった)

 

 

 この日虎杖は十五皿の回転寿司と締めのラーメンを食べた。




最強「支払いはカードで」
虎釘((懐も最強!!))
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