【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#7【にしまつや】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=lgum_GZTZpM

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43362402?

 

にしまつや。私の新しい名前。

みゆき。私の新しいお母さん。

パパス。私の新しいお父さん。

今度こそ幸せになれるだろうか。私に幸せは相応しいだろうか。

 

 

私は小さい頃はそれなりに幸せだったよ。

飼い主は当時女子高生のトレーナーさんで、そのトレーナーさんがスボミー……の進化先のポケモンを使ってた。

私はそのポケモンの子供。

お母さんは私に名前をつけてくれた。トレーナーさんにはポケモンの声は聞こえてないからそれは私達だけが知る名前。

「キネンシス。それが貴方と私の間だけの名前」

キレイな名前だな、と今でも思う。

今の私には似つかわしくない。今の私はこんな麗しい名前の性格してなくって、もっと小生意気な小娘だ。

もっともそれも今の環境のせいだが。

 

そんなお母さんもトレーナーさんも私を大切にしてくれた。

私は戦闘の為に生まれてきたわけではないが、最低限の自己防衛の為に「すいとる」という技を教えてもらった。

最初は上手くできなかった。何度も何度も練習した。

お母さんを練習台にしてもいいと言われて、私は、人間の赤ちゃんが母親のおっぱいを吸うかのようにお母さんの体力を吸って成長した。

 

そんな幼年期の真っ只中、トレーナーさんの友達が引っ越しの為遠くへ行くことになった。

「ねぇ、あーしとの友情の証にさぁ~、あんたのスボミーとあーしのポケモンの卵交換してよ。何が産まれてくるか分かんないけど」

トレーナーさんはその友達がそんなに得意ではなかった。

その友達が友情の証なんかではなく、当時学校内で頭一つ抜けていた強さの私のお母さんのDNAとして私が欲しかっただけだ。

トレーナーさんもそれが分かってるからか少し渋っていた。

だが、女子高生の友情というのは壊れやすいガラス細工のように慎重に扱わなければならない。

渋々私は謎の卵との交換に出された。

お母さんは別れ際に木の実と草の蔓で作ったペンダントを私にかけてくれた。

モモンの実を乾燥させて逆さまにし、真ん中から二つに割った、まるでハートを二つに割ったようなデザイン。それをつるのムチで作った蔓で結びつけたもの。

二つに割ったもう一つはお母さんが持った。

「いい、キネンシス。辛い時はこのペンダントを見て。お母さんはいつでもあなたを思っているわ」

 

こうして私は二人目の飼い主の元へと旅立った。

 

二人目の飼い主はそりゃあひどいもんだった。バトルが強い予定だった私が実はてんでバトルが苦手と知るやいなや私の毎日のご飯は質素なものとなった。

機嫌が悪い時はサンドバッグの代わりになった。当然名前はつけられなかった。

きっと今の私の性格はこの時に作られた。かつての私は、今の私から見ても別ポケと思うほどだったはずだ。キネンシスの名前に相応しい麗しさだったかもしれない。自分のことだから詳しくは思い出せないが、でもこんなに擦れては居なかった。

 

一人目のトレーナーさんとの文通は続いていて、その手紙の中でだけは私は愛されているようだった。そんな手紙もだんだんと数が少なくなり、一年経った頃にはほとんど無くなった。

その頃には私の家はこの広い大地になっていた。

バトルにも勝てず、食費だけかかる私には生命としての意味は無いってことらしい。

 

それからは毎日が地獄だった。もともと人間に飼われていて、禄に大自然で生きる術を学んでいない。そんな大自然の牙は私に幾度となく襲いかかる。

空を見ればムックルが、大地には私よりも体の大きなビッパやコリンクが私を狙う。

私はそんな天敵を回避しつつコイキングなどの安全なポケモンから体力をすいとることで日を凌いでいった。

 

そんなある日ばったり出会ってしまったのはコロトック。

死を覚悟した。こんな所にいるポケモンではなかった。

それもそのはず、そのポケモンは野良のものではなくトレーナーのものだった。

コロトックの後ろには帽子をかぶった、お世辞にもイケメンとは言えない男が立っていた。

そのトレーナーはコロトックに攻撃指示を出した。

しかしその攻撃は私を死に至らしめることは無かった。

じわじわとなぶり殺しにでもされるかと思っていたが、私に投げつけられたのはポケモンを捕獲するためのボール。

そのボールに包まれたとき、私の傷は癒えて行った。優しさを感じた。

 

こうして私は3人目の飼い主であるゆるすぎと出会った。

 

仲間になってから思ったが、コロトックのみゆきさんはその攻撃的な色に反してきれいな声をしていて、そしてその声は底知れない悲しさを孕んでいた。

彼女もまた、私と同じように悲しい過去があるのだろう。

だけど聞きはしない。自分から話してくれることがあれば聞きたい。

たとえ家族としても触れられたくない場所ってのはあるはずだ。

 

ね、お母さん。私ね、新しい家族ができたんだよ。

懐に入れているモモンのペンダントはいつでも温かい。

そして、新しい家族も、温かいぬくもりを持っていた。

 

でも、私が赤ちゃんぽいからにしまつやってのは……安直すぎやしないぃ?

ちょっとセンスが心配だよねウチのゆるちゃんは。

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