【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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クロガネジムのジムリーダーヒョウタ。
どうやらウチのチームを全滅させたことがあり仇という事になる。
だが、そんな事を聞かされて会ったことも無いポケモン達なので、にしまつや自身にはどうにも実感は沸かない。
どちらかというとみゆき達の為に戦っているという感覚の方が強いかもしれない。
そんな二度目のヒョウタ戦。
「君たちは……確か数日前にビッパやコリンクたちで挑んできたトレーナーだったね。そんな数日で僕たちを超えられるほど鍛えられたとは思えないけど、申し訳ない。こちらも大事なトレーナーを守る為なんだ。手を抜かず行くよ」
ヒョウタの切り札であるズガイドスは丁寧に先鋒のにしまつやへと挨拶に来た。
「なぁ、あんたらってさ。あんたらってなんで命かけてまでトレーナーの為に戦うんだ?私達は今からあんたらを殺意全開で襲うつもりだぜ?」
「殺意全開か。だったら……だったらなおさらヒョウタの為に戦うよ。彼は僕にとって小さな頃からずっと一緒にいる守るべき存在。家族だからね」
その言葉を聞いた瞬間にしまつやにはかつての飼い主達が脳裏に浮かんだ。
今目の前にいるズガイドスには、かつてにしまつやが手放したくてしょうがなかった幸せの全てが握られていた。
それは、嫉妬か渇望か。溢れ出る無量の殺意がにしまつやを支配した。
「殺してやるよ、ズガイドス。10秒で」
0秒
にしまつやの尋常ではない殺意を感知して飛び出してきたのはヒョウタ側の先鋒イシツブテ。
そのズガイドスを守ると同時ににしまつやを攻撃しようとする前進に対し、にしまつやもそれに合わせ前進しつつ頭の上に螺旋状交差した双葉の片側、人間で言う両手のうちの右の腕をイシツブテの突進に突き出す。
1秒
そのまま突進を右手で受け止めれば右の葉は折れるだろう。まだ幼体であるにしまつやが岩ポケモンの突進を片葉で受け止めることなど質量的に無理だ。
そこで右の葉の先がイシツブテに接敵した瞬間に前進の足を止め、葉の形をスコップのように凹みを作りながらイシツブテの突進に合わせ引いていく。
イシツブテは葉に包まれるような形になりながらもその葉を破ろうと突進の勢いを止めない。
その勢いに合わせにしまつやは自分の体を右回りに回転させていく。その際に遠心力でイシツブテの体が外へはじき出さないよう、吸収で葉に吸い付ける。もちろん攻撃としての意味もある。
葉の表面から命を吸収しつつ、体を吸着させ、その突進の勢いをそのまま回転運動にし全身でフリスビーを投げるかのようにイシツブテをイワークへと投げつけた。
2秒
イシツブテを投げながらにしまつやは過去の事を思い出していた。
「吸収の技がどんな状態でも出せるようになったら次のステップよ。まだまだ先の事にはなるかもしれないけどきゅうしゅうという技は私達草ポケモンの基礎となる技なの。その技を応用することで」
記憶の中のにしまつやの母はポケモンの技を練習する為のぬいぐるみに腕から伸ばした蔓(つる)を巻きつける。
「こうして蔓を巻きつけてそこから相手の体力を吸収する事ができるわ。これがメガドレイン。あなたはまだきゅうしゅうのステップだけど大丈夫よ。貴方ならいずれできるようになるわ、キネンシス」
走馬灯というのは、死ぬ間際に自分の過去から今の状況を打破できる為の手段を見つけるために一気に記憶の大開放をするから起きる現象だと言われている。
ならば今突如その記憶が呼び起こされたのは必然であると言える。
この闘争の中で、にしまつやは勝つための手段を考えた。その結果過去の母との記憶が今蘇り、そしてメガドレインという技の本質を先程の吸収で理解することができた。
にしまつやは、イシツブテを投げた反動を殺さないままイワークへ向かい飛び上がった。
その際に葉の先から蔦を伸ばし地面を叩く。にしまつやの軽い体はイシツブテの高さよりも高く飛び上がることとなる。
3秒
イワークは自分に飛んでくるイシツブテを傷つける事無く受け止め、その際に同時に飛躍していたにしまつやから視線を外すことは無かった。
自分の攻撃範囲の外まで飛び上がっているにしまつやに対し今攻撃することはできない。
だが、地球上にはどこにいようが重力が働く。上にあるものは必ず下に落ちる、その際の着地時には必ず隙はできる。
イワークは焦らなかった。
にしまつやの飛び上がる速度と角度を見極め落下地点へ岩雪崩が起きるよう既に準備をしていた。
着地した瞬間に数々の岩がスボミーを貫く姿をイワークは思い描いていた。
一方、上空のにしまつやはその体がイワークの上空を過ぎる直前に蔦を伸ばし、その蔦をイワークに巻きつけていた。
4秒
巻きつけられた蔦はもちろんただの蔦ではなくそこからはイワークの膨大な量の生命力が吸い取られていった。
そしてその蔦は体力吸収の為だけでは無かった。
にしまつや自身の運動エネルギーはまだ十分に残っており、そのエネルギーを蔦で急激にとどめた。にしまつやは張り詰めた蔦の先で自分の体をイワークを中心に円運動が起きるよう、勢いをつけた。
まるでイワークがハンマー投げをするかのような構図となる。
しかし、イワークがハンマーを投げるのではなく、ハンマーがイワークを中心に回るという異様な光景だ。
その際にも蔦からは急速に体力が吸い上げられる。
にしまつやの本来の着地地点には無数の岩が降り注ぐがそれらが誰かを傷つけることはなかった。
5秒
にしまつやの体がイワークを中心に半周した辺りで既にイワークの意識は途絶え始めていた。
蔦が首に絡まり、それが回転運動の為に更にきつく頸動脈を締め上げる。そのため脳への血流はほぼ無い状態となっている中、追撃のように蔦からは生命力を吸い上げられる。
イワークという種は硬さを自慢とするポケモンであるがそれは打撃に対してである。
体のタフネスと関係なく意識を断絶させればそれは意志の強さと関係なく気絶へと追いやることができる。
そして、イワークの意識が落ちる瞬間ににしまつやは蔦を切り離す。
その際のプツン、という衝撃がイワークを気絶させ、その体はズドンと地面に落ちる。
蔦を切り離したにしまつやの体はきりみもみ状に宙を舞い、その方向は最後の一匹ズガイドスへ向かう。
その体からは激しい運動の為、内包していた花粉のような物を撒きながらズガイドスを飛び越え着地することとなった。
僅か5秒で大将戦が始まることとなる。