【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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ハクタイの森を抜けた先にその町はあった。
ハクタイシティ。コトブキシティに比べるとこぢんまりとした町だが、住むならばこれくらい狭いほうが住みやすい。
そう思ってしまうのは俺がミノにくるまっている時の圧迫感がある状態が一番落ち着ける、という性分のためだろうか。
この町にはちょっとした高台にモニュメントがあった。そのモニュメントはポケモンの像なのだろうが、俺はそのポケモンを知らない。
その像の前で独り言を言っている人間がいたが、多分時間だか空間を司ってるポケモンなのだろう。
「この世界を形作るのは時間と空間の二重螺旋。ってちょっとカッコつけすぎよねぇ~」
そう俺に話しかけてくれるのはミツハニーのハチみつこ。通称みっこちゃん。
この世界を形作るのは時間と空間の二重螺旋。先程の男の独り言の内容だ。
俺も割とみっこちゃんと同じ意見だ。良い歳したオスの人間が一人で像の前でこんな事を呟いていたら……世が世なら通報案件だろう。
「確かそういうのを厨二病って言うんだっけ? 人間の世界では」
「あぁ~そうそう中二病~。ウチのゆるすぎちゃんも~、そうだったらしいわよぉ~」
「まぁ過去にそうだったってだけなら良いだろ。それにな、ただの厨二病で片付ける話でもないかもしれんぜ」
「?」
アイツは、時間と空間が螺旋を描いていると考えていた。
「時間が螺旋ってのは言い得て妙かもしれないぞ。時間ってのは繰り返しならが前進している」
「どういうことぉ? 私難しい話さっぱりよ」
「たとえば、一年だ。春夏秋冬というのが1年のワンサイクルだけど、基本的にはそれの繰り返しだろ?」
「うんうん」
「その一年を繰り返しながら、時自体は前に進むだろ?」
「うぅん? 分かるけど分からないような」
「他にも大体のことはある程度のサイクルを繰り返しているんだ。大きな枠で言うと氷河期と無氷河期とかな。人間の世界だって、戦争と平和が繰り返されているらしい」
「でもさ、そうなるとやっぱり思い出しちゃうわよ。パパスちゃんのこと……死んじゃったけど、生き返ったりはしないじゃん」
ハクタイの森で別れた大事な仲間。パパスの名を出され、俺も短い間ではあったが彼との過ごした日々を思い出す。
そう、みっこちゃんの言う通りパパスは死んだ。生き返ったりはしない。
「そう、生き返らない。それが時が進むということ。だけど大きなサイクルで見ると死と生もやはりサイクルしている。そう考えるともしかしたらパパスの魂も大きなサイクルに取り込まれてどこかでまた生まれるかもな」
「そうだと、良いわねぇ~。夢があるわぁ」
「時間の螺旋性ってやつでしょ! 小さい頃飼われていた家の本で読んだことあるよ」
そう言ってスボミーのにしまつやが会話に参加してくる。
そういえばにしまつやはゆるすぎに捕獲される前に二人の人間に飼われてたんだっけか。
欲しけりゃ飼って、面倒見きれなくなったら捨てるって勝手なもんだよな。
俺たちは物じゃないってんだよ。
「時間の螺旋性は概念的な話だけど、空間の螺旋についてはもっと具体例があるよ」
意外な言葉だった。赤ん坊かと思っていたにしまつやはなかなかどうして、博識なようである。
「宇宙にいろんな螺旋が観測されてるんだ。すごいわかりやすい所だと太陽の周りを太陽系が回ってるでしょ。それでね、その太陽を含んだ天の川銀河自体も回転しながら進んでいるって」
「にしまつやちゃんは物知りなのねぇ」
「他にもね、宇宙にはフィラメントが螺旋を描いているって説があるの。プラズマ宇宙論、って言うんだけど。フィラメント自体は実際に観測もされてるの。他にもね、ブラックホールから螺旋に伸びる地場構造ってのも観測されてるの。この宇宙にはね、螺旋がいっぱいなんだ」
「え、あぁ……すげぇんだなお前」
「そうねぇ、思ってたよりも何十倍も賢いのねぇ」
みっこちゃんの羽がにしまつやを撫でる。
嬉しそうに両方の葉っぱでほっぺを押さえながら体を揺らしている。
言葉はやたらナマイキなのに態度は子供っぽいんだよなぁ。
これもパパスが甘やかした影響か?
「それでね、私達は空間軸、つまり三次元までしか知覚できないけど、もし四次元目、時間軸も知覚できたらさっきの時間の螺旋性ももっと解明できるかもね。そうしたらさっきのおじさんの時間と空間の二重螺旋って言葉も謎が解けるかもな」
「なるほどなぁ、時間と空間の螺旋性を理解したらある程度自由にできるかもな。そりゃあ確かに夢がある」
それができたら、パパスにもう一度会えたりしないだろうか。
いや、それができたら前に進めなくなっちまう……な。