【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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ハクタイのジムリーダーが繰り出したポケモン、ロズレイドはただそこに立っているだけで尋常でない戦闘力があることを誇示していた。
相手は最後の一体。それに対してこちらは五体。
数字の上ではこれほどの有利はない。だが、だがしかし俺たち五人が束になってかかったとしても果たして勝てるのか?
そう思わせるほどの何かを感じさせていた。
今繰り出されたゼロもそれを感じているようだ。
交換には本来隙ができる。だが、その隙に対して相手は攻撃しなかった。
しびれごなを当たらないように舞い散らせ、ゼロを五分の状態で勝負の場におびき出した。
挑発?油断?慢心?
そのどれでもなかった。
逆にそれらを誘い出す行為であった。
体力が満タンの状態であるが為相手の火力を判断することを怠ってしまったゆるすぎは一つの命令をゼロに下した。
呪い
己の生命力の半分を削ることで相手の体力を永続的に削り続ける技である。
その命令を発した瞬間を見逃さずロズレイドはその両手から、葉を模した刃を飛ばした。
刃の数は十や二十を超え全てを瞬時に把握するのは不可能だ。
そのおびただしい数の刃はその一枚一枚が異様なコーティングがされており、殺意を持つ葉が刃となったかのようである。
触らずとも分かる殺傷力。それが視界を埋めるほどの波となりゼロを襲う。
95%がガスで構成されているゼロであれば一撃で致命傷に至ることはない。
だが、ゼロは今呪いを起こそうとしている。
そこに、今巻き怒っているマジカルリーフが当たれば絶命は確実である。
「そうか、でも今は……お前たちを勝たせたいよ、ゆるすぎ」
そう言ってゼロは自らの体に呪いの釘を打ち込んだ。
釘はゼロの体の半分を霧へと砕き、残った半分はマジカルリーフにより細切れにされた。
僅かの一瞬の間にゼロはこの世から姿を消した。
そう思っていた。
しかし、俺の耳に今、ゼロの声が聞こえてきた。
「だにょーら……俺を吸え……。俺の毒を……お前に取り込んでくれ」
ゼロの声、思いが伝わってくる。
よく見ると呪いの釘により砕けたゼロの一部が俺の元へと漂っていた。
どうやら、ゼロの意識の一部がそこに残っているようだ。ほぼ全てがガスで構成されているゴースだから為し得た技なのだろう。
「同じ毒タイプのお前ならば……俺を……俺の毒をお前の糧にすることができるはずだ」
分かっている。ゼロの毒を取り込むことで俺の力になること、俺が強くなること。
だが良いのか?
仲間の命の止めを……俺が刺すことになる。
「いいかだにょーら。俺は何をしてももう死は逃れられない。だったら……お前の血肉として……俺の命を繋げてくれ。それが最善手なんだ」
「頼む、俺の死を、無駄にはしないでくれ」
その言葉が決め手であった。
そうだ、このまま死なせてしまってはゼロは、ただ死ぬだけだ。
そう……ならば、俺と共に行こう。
行くぞ、生き抜くぞゼロ。
大きく息を吸い込む。
毒が肺を満たす。
眉の中の成体の体が震える。僅か一瞬のうちに俺が成った事を感じる。
俺の羽は眉を突き破り置き去りにする。
その上空には生えたての羽で飛び立っているドクケイルの姿があった。
こうしてゼロの霧を吸い込んだ今だから分かる。
血の摂取というものは即ち命の共有なのだ。
俺の中にはっきりとゼロを感じる。
あぁ行こう、俺とゼロの毒だ。これがどこまで届くのか、やってやろうぜ。
だにょーらが眉を破壊している間に、交代戦を制してゆるすぎたちはロズレイドを倒していた。
結果から見ればゼロの呪いは犠牲者を最小にするための最善手だったのかもしれない。
ロズレイドのマジカルリーフは誰であれ耐えきれる物では無かった。もしも彼女が本気で全滅させるつもりであれば可能であっただろう。
だが、一瞬の戸惑いが呪いを打ち込む隙を生み出し、そこに躊躇なく命を引き換えに勝利をもぎ取った。
見る者が見ればゼロが掴み取った執念の勝利とも言える。
ジムリーダー戦が終わり、太陽が沈む頃、ジムの近くににしまつやは立っていた。
にしまつやの視線の先には太陽があり、その太陽を背に一匹のポケモンが立っていた。
その姿は逆光となりシルエットのみが辛うじて分かる。
だが、にしまつやには分かっていた。
「お母さん……あのね、私……頑張ったんだよ」
「分かってるわキネンシス、いいえ、今は……にしまつやというのね。いい名前。でも、キネンシスという名前も、忘れないでいて」
「大丈夫。私ね、忘れたこと無いよ。私には二つの名前がある。どっちも私には大事な名前」
二人の間の空気が先程よりもずっと柔らかくなる。
どちらとも言わず、お互いがかつて分かち合ったモモンの実のペンダントを取り出す。
「本当はあなたとずっと一緒に居たい。けれど私達はお互いやるべきことがあるものね。それにあなたにはもう大切なお友達ができたもの、安心よ」
「うん、私の大切な仲間。そしてこうしてお母さんとも出会えた。私は大切なもので囲まれている。お母さん……ずっと、見ていてね」
「ええ」
沈みゆく太陽は二匹のポケモンを祝福していた。