【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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ギンガ団幹部ジュピター。
彼女に無理やり捉えたポケモンを取り返すため、ゆるすぎは戦いを挑んでいた。
本来他人のポケモンを奪うほどの姑息な事をするのだから素直に戦わずにそのまま奪い去れば良いものを、彼女は素直に相手をしようとしていた。
「嫌な予感がするわねぇ~。気をつけてねぶちょうちゃん」
本当に……嫌な予感がするわ。いつも以上になにか、言いようのない予感。
まさに虫の予感というやつかしら。
相手に出てきたのはズバット。
電気技を覚えたぶちょうの敵では無いはずであり、実際パパスが命がけで伝授したスパークにより倒した。
残りのポケモンの数が1体になって尚ジュピターの余裕は消えていなかった。
そして、次に出すポケモンを宣言した。
ポケモンの名はスカタンク。宣言するほどに自信のある一体なのだろう。
繰り出されたポケモンは紫色の毛をした四足歩行のポケモンだった。
その尻尾は体と同じ程の長さをしており太さもそのドッシリとした体に見劣りしない太さである。だがその毛先は細くなっており毛先は金属光沢にも似た光を放っている。
その尻尾は例えるならば人間が料理の際に肉を斬るために使う包丁という道具を思わせていた。
その尾を体の上に乗せるように威風堂々と佇む姿はまさに紫色の装甲を持つ重戦車であった。
対するこちら側のポケモンは期待の新人のプラズム。強さに関しては……全く問題ない。
(なんていったって……プラズムちゃんは私達の大事な仲間を倒せるほどの力があるものね……)
先日の一件、忘れるにはまだ時間がかかる。だが、今はそんな事を言うときではない。仇でもあり仲間でもあるプラズム。その強さが今は少し頼もしい。
「一撃だけ手加減してやる。死なない程度にしておいてやるから、だから悪いことは言わねぇ。逃げな」
言い終わるやいなや、スカタンクは尻から流れる毒ガス、いや、煙幕に乗じて姿を消す。
俊足というわけでもない速さだ、ただ煙幕が保護色になるため姿を捉えにくい。
突然プラズムの姿が横に大きく吹き飛ばされる。
攻撃が当たった後に、既に間合いの中にスカタンクが居たことに気がついた。
事が起きてから、攻撃の軌跡を理解した。まるで順番が逆だ。
「なるほどなるほど、タイプ的にもあたくしにゃあすこし分が悪いようですね。みゆきの姉さんすまねぇが交代願います」
ボロボロになりながらいつもの口調を崩さないプラズム。果たして攻撃を食らったのは計算のうちなのかどうか怪しいところだが……。
実際攻撃を食らう瞬間ちゃっかりとスカタンクの目にあやしい光を見せつけていた。そのため、スカタンクはしばらくは十全に動くことはできないだろう。
「みゆきさん気をつけてくださいねぇ~。相手は混乱しているとはいえ、とんでもない強敵ですよ」
「分かってるよ……あたしにもビンビンと感じるよ。虫の予感ってやつを。もしかしたら、ここで負けてしまうかもしれない。けどね、あたしは引く気は一切ないよ。娘が見ているところで情けない姿はできないからね。今までならそんな気持ちにはならなかった。これが心ってやつなんだろうね。命に付く名前だよ」
そのままみゆきはその美しい歌を披露し、スカタンクを眠りへと誘った。
ここまでの流れはあまりにも理想的過ぎる。
(それなのになぜ……私も、みゆきさんも……こんなにもヤバイと感じてるの?)
彼女たちが感じる、虫の予感。それが杞憂であったかどうかは次の瞬間分かることになる。
攻撃のために交代したももつむり。
ゆるすぎのパーティにおける主力の一匹であり、今まで数多くの敵を倒してきた。
今も眠っているスカタンクへどろばくだんをうち続ける。
何も言わない敵を打ち続ける。この姿を見れば楽勝意外の何者でもない。
しかしいつもなら1~2発で敵を倒しきるどろばくだんを何度食らってもスカタンクには大した傷を与えられない。
そしてスッとスカタンクの目が開かれた。
「良い子守歌だったよ。さて、逃げてない……ということは覚悟はできた。ということだな。じゃあ悪いが、ここから先は手加減はできないぞ」
いつの間にか辺りは煙幕が濃くなっていた。スカタンクは寝ながら、混乱しながら尚本能のみで自分に有利な戦場を作っていたのだ。
「シャラァア!」
先程の辻斬りが手加減と言っていたのは強がりでもなんでも無かった。
眠りから覚めたスカタンクが放った、二発目の辻斬りは一撃目のそれとは次元が違っていた。
煙幕の濃さ、速度共に先ほどとは比較にならず、虫の複眼を持ってしてもその動きはほぼ見ることができなかった。
「さっきのは、ロトムをギリギリ殺さないようにしてやった。だが、今回は切断範囲をこの煙幕全てに拡張した。……とは言ってももう聞こえてはないか」
「ももつむりさん! 大丈夫ですか!?」
煙幕には薄っすらとももつむりのシルエットのみが映っている。
返事はない。
「悪ぃけどもう奴さんには聞こえてねぇぜ」
スカタンクが右の前足で、トン、と地面を叩く。
それを合図としたかのようにももつむりのシルエットがズレていく。
首を境目にし、頭の部分が地面へ落ちた。
「嘘……」
自分でもその言葉が何に対して放ったものか理解できなかった。
目の前で起きたことがまるで理解が追いつかなかった。
「ももつむりさんは一撃もダメージを食らってないのに、なんで」
なんでただの一撃でこれほどに。
「なんでも何も、一撃で屠ってやったんだよ。苦しまないようにな。痛いのは……嫌だろ」
申し訳無さそうに返事をする。しかし、その言葉を挑発ととらえたのかぶちょうが戦場へ飛び込む。
「おいてめぇ! 何してくれてんだ!!」
電気をまといながら躊躇すること無く煙幕に飛び込んだ。
「頼むから逃げてくれよ。これ以上俺に無駄な殺生をさせないでくれ」
言葉とは裏腹に、先程の辻斬りの時と同様の動きをスカタンクは見せる。
煙幕から血しぶきがあがる。どう見ても致命の量の血の噴水。
煙幕の中には既に動かなくなったぶちょうの影があった。
「なるほどね……ぶちょう。あんたは頭に血が登ってるように見せかけて……やってくれたんだね」
隣で見ていたみゆきの口が開かれる。
「後に託した。なるほどね、サシじゃあ無理だからその刃を欠けさせて後に託す。気づいてしまったなら……次はあたしだね」
「みゆきさん……何を言って」
「みつこ。すまないね、にしまつやを、皆を、頼んだよ」