【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「なるほどね……ぶちょう。あんたは頭に血が登ってるように見せかけて……やってくれたんだね」
隣で見ていたみゆきの口が開かれる。
「後に託した。なるほどね、サシじゃあ無理だからその刃を欠けさせて後に託す。気づいてしまったなら……次はあたしだね」
「みゆきさん……何を言って」
「みつこ。すまないね、にしまつやを、皆を、頼んだよ」
みゆきはゆっくりと慎重に煙幕へと入っていく。
「おいおい、お前毒を受けてんだろ? やめとけって、分かってんだろ?万全でも俺には敵わないって」
「そうだね、あたしじゃあんたを倒せない。けどね、アイツラがあんたを倒してくれる」
正面を見据えたままみゆきは後ろを指す。
「さっきのパチリスさ。あんたより速かったのにを攻撃してはないでしょ」
「それがどうした」
「アイツは一撃の攻撃じゃあんたを倒せないと分かっていた。だからあんたの刃を欠けさせた。甘える、って技でね。だからあんたの自慢の刃はアイツを真っ二つにできなかったでしょ? あんたの攻撃力はぐーーんと落ちてるからねぇ!」
言いながらみゆきの右手はスカタンクに向かって突き出される。
その攻撃はスカタンクへ深刻なダメージを負わせることは敵わない。ただ、右手がスカタンクの横腹に埋まり、その強靭な体毛に絡まるだけだった。
「秘技、いわくだき。もとい装甲刈りってところかね」
引き抜かれた右手にはスカタンクの体毛が握られていた。
打撃自体はダメージのもので無く、装甲の役目をしていた毛を刈るためであった。
「あたしは歌姫だからね。こんなか弱い手であんたみたいなタンクをぶっ壊すことはできないのよ。あたしにできることは後に繋ぐ事」
「なるほど。見事だ。その姿、美しいよ」
スカタンクは体を揺らめかせる。辻斬りの予兆行動だ。
その姿が消えた時、みゆきはガードの姿勢を取ること無く、逆にその両手を大きく広げた。端からみれば、隙だらけで攻撃してくれと言っているような姿勢である。
そして、その通り、その姿は攻撃をしてくれという姿勢だった。
みゆきの外骨格が切断されていくのを感じた時、みゆきはその両手を前方にある何かを抱え込む形に型どった。
「攻撃するときは、どうしても接敵するだろ? だったらそこを捕まえれば良い。アイツがさ、一撃では倒しきれないようにしてくれたからね」
みゆきの手の中にはスカタンクが現れていた。あまりの速さのため、手で捉えた後に姿をやっと目視できほどの速さだ。
両手でスカタンクをロックしたままスカタンクの首元に顎を付きたてそこから血を吸う。
「こっからは根比べだ。アタシの命が尽きるまであんたの体力を吸い続けさせてもらうよ」
「死ぬことが分かっていながらその姿勢。何がお前をそうまでさせる」
「我が子の前で、情けない姿は見せられないからね!」
「そうか、ならばせめて誉れある死をくれてやる」
ビュン、という人間の子供が縄跳びで二重跳びをする時のような音が戦場に響く。
辻斬りという技の性質上、駆ける距離が必要であると思われている。
相手の目に映らない位置へ移動し、相手の急所めがけて斬りつける。それが辻斬りの全貌である。
しかし、このスカタンクはおびただしい量の死闘を繰り広げた結果、相手の急所を見ぬく眼力を養っており、たとえ如何なる状況からでも相手の急所を狙い打つという技能を身に着けていた。
スカタンクの尾はスカタンク自身の脇をかすり、密着しているみゆきの脇腹へと突き刺さっていた。それは欠けた外骨格の隙間に突き刺さり、みゆきの心臓がある位置に到達していた。
しかし、みゆきの両手はスカタンクを離すことはなく、体に突き刺さった尾は抜かれることはなかった。
「死後硬直。バカな、速すぎる。なぜだなぜ抜けぬ!?」
考えるよりも先に飛び出していた。
がら空きのスカタンクの脇腹。
(みゆきさんが刈り取った装甲、そこに向けて突き立てる。私の全力の虫食いを)
攻撃が来ることを感知したスカタンクは無理やりみゆきから尻尾を引き抜く。
あまりの力技の為その尻尾にはみゆきの肉片がこびりついており血糊がその軌跡を如実に示す。
「それじゃせっかくの辻斬りも軌跡がバレバレですよ」
刃が通るラインを避け、そのまま脇腹に向けて牙を突き立てる。
その牙は肉へと到達し、スカタンクはその大きな体を地面に倒す。
「ももさん、ぶちょうちゃん、みゆきさん。たかがこれだけの勝利になんで命まで賭けちゃったんですか」
勝者は勝鬨を挙げること無く悲しみに打ちひしがれていた。