【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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ただただ静かに暮らすこと幾星霜。
いつからこの洞窟の中に住んでいたか……。
たまに人間が捕まえようとしてくることもあった。そんなときは人間はお供のポケモンを連れてくる。人間もポケモンも血眼になって捕まえようとしてくる。
今日もそんないつもの集まりか、と思っていた。
そのポケモンの体は鏡となっていた。
そこに映し出されるのは姿形だけでなく、その心も鏡に反映される。
反映された心はそのポケモン、ドーミラーの心に直接伝わる。
だからこそドーミラーは辟易していた。
そのポケモンを捕まえようとする人間の心は欲望で満たされ、その人間に従うポケモンは殺意、或いは自分と同じ境遇になれという嫉妬に近い感情。
だが、今日目の前に現れたポケモンは悲しみと後悔で満たされていた。
とても戦うものの心ではなかった。
だから興味がそそられた。
そのポケモン、ミツハニー(仲間になった後にハチみつこという名前を知った)は我の捕獲を望んでは居なかった。故に興味が湧いた。
彼女の心の奥底を知りたくなった。
ドーミラーの放つあやしい光はミツハニーの精神をかき混ぜ、心の奥にしまった感情も何もかもを晒しだす。
(私がしっかりしていれば、私が戦いをもっとしっかりと見ていれば誰も死なせなかった)
その感情と共に零れ落ちた映像は彼女のかつての仲間だろうか。
様々なポケモンが切断されていく映像。それと共に悔恨の感情が止めどなく流れてくる。
今の彼女を構成しているのその殆どがその感情である。
しかし、その奥に仲間たちを守ろうとする責務。
そして愛情。愛という感情を感じる事は稀であった。
人間に従い戦うポケモン達も卵を宿す事はある。しかしそれは人間の都合の配合であり、そこに感情は無かった。
人工的に作られたポケモンの間にある家族愛は希薄だった。そもそも、家族が共に行動している事すらほとんどない。
だが、今覗いた彼女の感情……つまり愛情は家族愛のそれであり、対象はミツハニーという種ではなかった。
その対象は、彼女と共に居るポケモンたち。彼ら、彼女らはミツハニーにとって家族であった。
家族愛……半分無機物である我らは子を宿すことはない。そも性別が存在しない。
だから愛を受けることも与えることも無かった。
興味があった。愛というものに。
「故に我は貴様らについて行こうと判断した」
「それはそれは。もしその時あたくしの心が覗かれてりゃあ、手前様はこの場に居なかったかもしれませんなぁ。なんせ、あたくしまだこの者達にどのような感情を抱けば良いか分かっておりませぬ故」
「いや、貴殿も存外面白い心の模様だぞ」
「……。そういえば、ミツハニーの姉さんになんかしでかしましたか? 彼女はあの一戦以降やけに前向きになられた。今じゃあ進化して司令塔。随分な出世じゃあないですか」
「なにかをしたと言われれば肯でもあり否でもある。我と向き合った彼女は、自分自身の心を見た。後悔ばかりに塗り固められた彼女の心の奥には、愛すべき家族が居た。だから今彼女はそれを守るために進化し、鎧を纏い、司令塔たる女王蜂に成った。それだけであろう。プラズム、汝も家族に入っておったぞ」
「……やめてくだせえ。それを聞いたら心が揺らいじまう。あたくしは誰かの為に戦うってタマじゃあないんですから」
頭をかきながらレジドミラから視線をはずし照れくさそうにプラズムはボールに戻っていった。