【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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メリッサのジム。暗闇に覆われた状態でポケモンたちは訓練をしていた。視界による情報を遮断することで、他の感覚器官を鍛えるという意味があるらしいが、ポケモンたちは眉唾ものだと思っている。
だが、相手の顔も見えないため、顔色を気にせずある程度本音で語り合えるという利点もあった。
「なぁマージ。前戦った挑戦者さぁ、手ぇ抜いて無かった?」
「なっ! なに言ってんのよアンタ! 全力だったわよ」
ゆるすぎがジムに挑戦してから数日後、ジム戦での怪我が治癒したゴーストは大将のムウマージに当時の疑問をぶつけている。
「だってよぉ、最後だってマジカルリーフじゃなくてシャドウボールやシグナルビームだったら勝ててたろ」
「あ~……えーっとねぇ、シャドウボールはね……打てなかったんだよ。アイツラは文字通り命を賭けて戦ってたじゃん。その中でも、ビークインっていたじゃない。アイツのプレッシャーってとんでもなくってさ。きっとこれまで幾つもの命を抱えて来たと思うんよ。だからこっちの攻撃もいつも以上に力んじゃってさ。無駄にエネルギー消費しちまってガス欠しちゃったんよ」
「へぇ~。その割にはよぉ、そのビークインに抱えさせる命増やしちまったんじゃねぇの?」
ゴーストの指摘通り、先の戦いでムウマージはゆるすぎのポケモンのトゲピー、ズガイドス、フカマルの命を絶っていた。
「いやぁ、私もさ、まさか死ぬまで戦うとは思わなかったんよ。適当に痛めつけたら引くと思ったんだけどぉ。最初のトゲピーが死にまで戦ってさ、あ、こいつら本気だ……。ってなって手を抜けなくなった。っていうかズガイドスとフカマルなんて手ぇ抜けるわけないでしょ?」
「あぁまぁそうだよなぁ。まぁズガイドスはマージなら一撃で倒せるとは思ってたけど、けどまぁ刺し違える覚悟だったらこっちも大怪我だもんな」
「そそ。殺しきらないとこっちがやられるって確信があったからねぇ。ズガイドスなんてただでさえ火力一辺倒なやつが命まで賭けて突っ込んでくるんだよぉ? そりゃ……そうなっちまうよ」
全くの反論の余地が無いのか、ゴーストはしばらく何も言えずにいた。ムウマージもその時のことを思い出しているようでやはり黙っている。
「あぁ、それにさ。フカマルもびっくりしたよな。あいつってこの辺りに生息してたんだよな」
「そうそう~。マジビビったかんね。アイツの進化系ってあのドラゴンじゃん。最強の代名詞……っていうか、ポケモンバトルにおいて初めて最強という名をモノにしたやつじゃん? 今まではこの場合はコイツが強くて、この場合はコイツみたいな、一長一短? みたいな。けどアイツの進化系ばっかはねぇ……。そんな相手に手を抜いて戦えるわけないっちゅうか」
「うんまぁ……仕方ないな……」
「んで、3匹もやっちゃった時点で私の心はポッキリよ。もうこれ以上殺したくない。アイツラの心に負けた……ってこと」
「けど流石にメリッサにあとから叱られたな。命令無視して弱い技なんて出すから」
「だってしょうがないじゃんよぉ。アイツラ本気だからさ……私らみたいに一箇所に留まること無く進み続ける奴らだから……賭けてみたくなったって気持ちもあるのよ」
故人を思いながら、上を仰ぐ二匹。
「ま……そうそうに負けた俺にはお前の選んだ選択肢にケチつける権利はねぇからな。どっちでもいいよ。それに」
足元にうごめく怨念の塊をちらりと見て。
「こいつらも、十分満足しているみてぇだし良いんじゃね」
ムウマージもゴーストの視線の先と同じ場所を見つめる。
「あぁ……自称”メシウマ勢”ってゴースト? ね」
二匹の視線に気付いたその怨念の集合体は「満足」「全滅させろボケ」など喜怒哀楽種々の感情を織り交ぜその場から消え去った。おそらくはまたゆるすぎを追っていくのだろう。