【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#21【グラライガ】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=OTc2hfZ2o5M

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43512673

 

 壁も床も天井も全てが白い部屋。そこにゆるすぎは通されていた。

 部屋にはゆるすぎとは別の人間の姿があった。しかしそれには実態はなく、その部屋に投影された存在であり、どうやら別次元の「ゆるすぎ」であるようだ。その「ゆるすぎ」はカイと名乗っていたが、中身の魂は紛れもなくゆるすぎである。

 

 平行世界、ってやつか。知識では知ってはいるが……まさかこうしていざ目の前で実際にその片鱗を味わうとなんとも言えない気持ちになるな。しかし……人間という者の技術力ってのは本当にすごいな。まさかこうして別次元の人間とポケモンを交換できる技術を発見するとは。

 理屈の上では一旦ポケモンを電気信号へ変換。それを送信し、ボックス内で電気信号から再構築、というポケモンボックスへの転送のちょっとした応用らしい。全く理解はできないが、できるというのだからできるのだろう。

 

 そして今、グラライガは一本の毒針を持ち交換に挑まされている。ゆるすぎの予測では毒針を持ち次元を飛ぶ事で次元転送時に融合を果たしさらなる進化の形を得ることができる、ということらしい。だが、毒針などという異物を持ったまま次元を飛ぶというのは本来は危ない行為である。電気信号だけでも大した情報量であるのに、そこに毒針という物質を送ることで両世界の原子の数のバランスが崩れる。そのしわ寄せは当然、次元を行き来するポケモン、つまりこの場合はグラライガ本人に来る。肉体の一部が欠損、或いはその存在ごと紛失してしまう事がある。

 人間の間ではそれを通信事故。というらしい。

 

 だが、グラライガは無事何事も無く通信交換した。そう……無事に、何事もなく相手の元へと行ったのだ。

 

 ったく、結局何も起きねぇのか。強くなれると思ったが……やっぱ眉唾ものだったな。

 

 落胆の元、グラライガは帰りの支度をする。次元をまたぐ瞬間はなんとも言えない、浮遊感のものを感じるのであまり何度もやりたいものではないが、それでもやらなければ再び同じ世界に帰ってくることができないので仕方ない。

 渋々と通信交換の装置に入る。

 体の端から自分が電気信号に成っていくのを感じる。自分が一度この世から切り離されるのを感じる。

 だが、それでも尚自分という意思をはっきりと持っていて、自分という存在は肉体でなく、魂に宿っているのを感じながら次元の狭間を旅していた。

 

「聞こえるか、グライガーよ」

 

 突如声が聞こえた。行きでは聞くことが無かった声。そもそも体は電気信号に成っているので耳などの感覚器官が無い。今聞こえている声は電気信号に直接鑑賞しているのか或いは、

 

「その或いは、だ。私はお前の魂に直接語っている」

 

 ……。理屈はわからないがそれが今実際そうされているというのは理解できた。それ以外で今の電気信号と成った状態に干渉することは無理だろう。そして、それと同時に不思議な事がある。こいつは一体何なのだ。

 

「私は……そうだな、人間達が言うところの神という存在といったところか。次元を司るポケモン、と考えてもらって構わない。時間、空間、虚軸。そういった概念に近いものを管理するために創造神から作られた存在だ。私はその中の空間、拡大解釈で次元ということだ」

 

「そんな御大層な存在が一体何の用だ?次元に鑑賞したから怒ってんのか?」

 

「そうだな……それも少しはある。だが、この技術自体は今では多くの者が利用しているから止める手段は無い。そして怒っている理由は、これが危険極まりない行為だということを理解せずに使っているということだ。

 今、汝の体は電子化され次元の狭間を流れているのだが、それが今通信障害によりデータがロストしかかっている」

 

「どういうことだ?」

 

「端的に言えばこのままではお前は形を保てずバラバラの電気信号だけの存在になりこの次元の狭間で永遠に彷徨う。だが、それは我は望まぬ。この美しい世界をノイズで汚すわけにはいかない」

 

「なるほど、このままじゃ死ぬってところで神様に救われたってことか、ありがてえ話だな」

 

「だが、無償で助けてしまってはまた今回のように無謀な通信が後を絶たない。なので代償を払ってもらう。貴様一匹を救うために貴様の仲間二匹の命を頂こう。なに、今すぐというわけではない。時間の神にちょっとだけ未来から命を預かってきてもらった。これで貴様の命を補おう」

 

「おい、ちょっと待てよ! それを受け取ったら俺の代わりに誰か二匹死ぬってことか!? だったら……バカ言え!素直に死ぬよ」

 

 本心から出ている言葉だった。今までに仲間の死を何度も見聞きした。自分の番だったら素直に受け入れるつもりだった。それなのに他者の命を、しかも二匹分吸い取ってまで生きるなんて恥をかくわけにはいかなかった。

 

「貴様に拒否権など無い。この静かな狭間の世界をノイズで汚すわけにはいかない。お前にできることは元の世界で警鐘を鳴らす事で無謀な行き来を減らすことよ」

 

 グラライガを構成していた電気信号が完璧な形となり元の世界に返されることと成った。

 欠けていた信号には電気ポケモンのため再構築しやすいロトムのプラズム、完成した信号を金属コーティングするためのリーシャンのことぶきが選ばれたことを後に知ることになった。

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