【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#22【くさぁ!!】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=ig4e7VX_mB8

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43517007

 

 

「知ってたか? ゆるすぎ誕生日らしいぞ」

 俺のその発言を聞いてミツハニー……今はビークインであるみっこちゃんは目を丸くする。

「え? そうなのぉ?」

「いや……そんなに驚くことか?」

 人間なんだし誕生日の一つや二つはあって当たり前だろう? いや、二つはないか。何にしろ驚くことではない。

「あぁごめんなさい。今まで意識もしてこなかったから唐突に言われるてビックリしちゃったのよぉ。でも早生まれなのねぇ。子供時代は大変だったでしょうねぇ」

「一応設定上はまだ子供だろ。中身はともかく」

「くさぁちゃんメッ。そういうメタな事は思ってても口にしちゃあ駄目なのよぉ」

 

 

 それはそれとして、最近俺は自分の体の中の様子が今までと違う事を感じていた。どうにも今まで何もなかった部分に感覚が通っている気がする。腕だった箇所が薄く広がっているように感じる。もしかしたら何かの病気なのだろうか。と思うこともあったが、痛みや体の不調を感じることは無いのでそうではないのだろう。

 そんな自分の体に違和感を感じたまま冒険は続いていた。

 ロストタワーという、死者の魂が眠るとされている建物。

 

「でもさ、死んで奴ってぇのは……本当にこんなところでゆっくり寝てると思うか? プラズムやことぶきもよ、こんな所にいるのか?」

 独り言のつもりで言ったが、それを聞いていたみっこちゃんは答えてくれた。

「うふふ、そうだとロマンチックよねぇ。でも、やっぱりそうじゃない。と思うわ。たくさんの仲間が亡くなってね、やっぱり死んじゃったらそれまで、あとは何も残らない。だって誰も会いに来てくれないものねぇ……だけど死んだあとも元気でいて欲しい。そうあって欲しい、という思いがこういった忠魂碑などを作るきっかけになったんじゃないかしらねぇ。何かを思う気持ちっていうのはやっぱり……力になるものねぇ」

 言われてみれば、死んじまった奴らが夢に出て来てくれることは無かった。まぁ……そこまで親しくした奴がいないからというのもあるが……。俺が一番仲が良いのはそれこそみっこちゃんだ。

「俺は……どうなんだろう。死後を信じているかなぁ? もしあったら俺が死んだらみっこちゃんに会いに来るよ。」

「こぉら、演技でも無いこと言わないの。私はね、誰にだって死んでほしくないのよ。この進化はその為の決意」

 進化は決意。だとしたら俺はまだまだ本気じゃないんだろうな。そりゃそうだ。こんな箕に隠れているだけだもんな。なりたい自分も見えてこない。俺は何になりたいんだろう。

 

 

 そんな事を考えてロストタワーを登っていると、トレーナーバトルを仕掛けられた。ウチからはみっこちゃんが選出。相手のポケモンは見たことが無かった。

 しかし、その姿を見た時に自分の中に衝撃が走った。かっこいいからか? なにか思わずにはいられなかった。

 その姿は蝶や蛾のように羽を持ち、顔は心なしか俺たちミノムッチに似ている。虫、飛行タイプだろうか? 虫飛行といえばウチだとみっこちゃんか。そりゃあ道理でかっこいいわけだ。みっこちゃんの隣に立つならああいうポケモンが似合うんだろうな。

 俺も……ああなりたい。あんな風に空に羽ばたき、みっこちゃんと肩を並べて……戦いたいっ!

 何かを思う気持ちは力になる。

 みっこちゃんの言葉が頭の中に反芻する。誰かを思う気持ち、それは何も死者に限ったものではない。俺は彼女のことを思い、俺は俺の限界を超え 彼女に並ぶ!

 

 平べったくなった両手に力が入るのを感じる。今なら分かる、平べったくはなったがこの手は力を宿している。箕に篭もった自分から一歩抜け出る。それはとてもとても怖いことなのだろう。鎧を捨てる。自分を守る事ができなくなる。だけどこのまま篭もっていたらみっこちゃんに並ぶことなんて一生できない。

 俺は自分だけを守る鎧よりも、彼女を助ける剣になりたい。

 なりたい自分のイメージは? 言うまでもない、今戦っていたアイツだ。あの姿に親近感を抱いたのは自分を構成する物があまりに多すぎたからだ。俺は、ああなれる。

 俺の両手を剣とし、自らを守る鎧を内側から破壊する。

 箕がミチミチと音をたてる。強固に固められた鎧は衝撃にも引っ張りにも強いのだろう。我ながら最強の鎧だと感心する。一生ここに篭もっていれば安全に一生を終えることはできるのだろう。できたのだろう。

 だけど俺は選んだ。なりたいからなる。飛びたいから飛ぶ。

 さぁ広げろ。その翼を。

 

 箕は砕け散り 新しい俺が産まれた

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