【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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僕たちビッパはあまり強い種ではない。だから基本的には群れを為して生きている。
そして群れの中には明確に上下関係が存在している。
進化していたり、体が大きい、力が強いなどの戦闘力が高い者は群れを守るという名目のもとコロニーからあまり離れずに餌にありつける。
そしてその餌はというと僕たちのような特に良いところが無いような個体がこうして木の実などを集めてくる。
役割分担、と言えば聞こえは良いんだけど僕らが集めてきた木の実は上の者から食べていく。僕らに回ってくるのは極わずかだ。具体的には集めてきた木の実の10分の1食べれるかどうかである。
じゃあ上の者がそれほどたくさん食べられるほど立派な仕事をしているかと言うと……少なくとも僕はそうは思わない。まず、コロニーには常に数多くのビッパが居るため外敵がおいそれと攻め込むことができない。そのためガードマンとしての仕事と嘯いている者たちは基本的には仕事は無い。
むしろ、こうして餌集めに外を一人で出歩いているときのほうが余程危険だったりする。集めた木の実がちょっと目を話した隙にムックルに盗まれたり、単純に他のポケモンに襲われたりととにかくコロニーより余程危険なのだ。
ムックルに餌を奪われるのは危険か?と言われるとそれ自体は危険ではない。だけど、木の実が少ない状態でコロニーに帰ることが危険なのだ。
そんな時は指導、スパーリングという建前でしごかれる。シゴキ、と言えば聞こえは良いがとどのつまり只の一方的な暴力だ。
かと言って一匹で生きていけるほど外の世界は甘くないというのも身にしみて分かっている。
結局僕ら搾取される側の人間は選べる選択肢が少ない。
餌集めの時にたまに人間に飼われているビッパを見ることがある。彼らは僕のように痩せ細っておらず毛艶も綺麗だ。また、バトル用に訓練されている場合はその肉付きは僕らのコロニーの上位者よりも遥かにすごみを感じる。結局の所僕らのような群れはピッパという種全体で見ても弱い部類に属するのだろう。弱いから群れる。そしてその群れの中でも更に弱い僕らは搾取される。
考えていて悲しくなってきた。
このまま生きていても結局最後まで搾り取られるのだろう。
ならいっそ……。
いっそなんだと言うのだろうか。死ぬ勇気など無い。
そんな時、ふいに声をかけられた。
「そこのビッパ」
声の主はヒコザルだった。しかし、ヒコザルの声ではないように感じた。側にはモンスターボールを構えている男がいた。
生きているヒコザルからは聞こえてこないような音のように感じた。そう、声というよりは声帯に無理やり空気を流し震わせた音のような印象を受ける。
「ビッパよ、お前はこの人間と共に旅に出よ。さすれば汝の死後、その魂は我が救ってやろう」
え?いきなり何を言っているのだろうか。
「理解はできぬか。まぁよい。なんにしろ汝が求めた搾取からの解放が目の前にあるのだ。悩む必要もあるまい」
あまりの突然な申し出に混乱しているとモンスターボールが投げつけられた。
それそのものにビックリして反射的にボールに抵抗して脱出してしまった。
だが、このヒコザルの言うことが理解できないとしても男が僕を捕まえたいということは分かった。
ビッパの中でも特に痩せていて、毛もボッサボサで小汚い僕みたいなのを捕まえたいという状況は全く理解はできない。だけど捕まえたいというのであればそれは願ったり叶ったりだ。
次に投げられたボールには抵抗せずに全てを受け入れた。
そして僕がその男、ゆるすぎというらしい男の所有物になった瞬間に不思議なことが起きた。
さっきまで会話していたヒコザルがガクリと、糸の切れた操り人形のようになった。
起きたことのほぼ全てがわからないけど……とにかく僕はこのゆるすぎって人間と一緒に生きていけることになった。
もう搾取される人生とはオサラバだ。それだけで嬉しい。きっと大事にしてくれるのだろう。