【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

30 / 48
#23【ツーリスト】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=M6ikMgOrCsM

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43525200

 

 青い空には雲ひとつ無く、ただ燦々と輝く太陽が一つ空のアクセントとして存在していた。

 太陽、その温もりはありとあらゆる生命を育む。ポケモンもその例外でなく、特に炎ポケモンはその体に内包する炎を活かすため太陽の熱を利用するポケモンも少なくはない。

 その光はやはり多くの生命に輝きを与える。草ポケモンはその光を全身に浴び光合成を行う。もちろんポケモンに限らず木々や草も光合成を行うために太陽の光を利用している。

 いまこの場、ポケモン育て屋においても地面は芝生で覆われ、その全ての芝が光合成を行い多くの酸素を生み出しているだろう。柵の中にはトレーナーに預けられた種々のポケモンが伸び伸びと走ったりバトルの練習をしたり、餌かごから好きなきのみを選び食べている。そこには死の危険性など無く、かと言って愛玩ポケモンと同じように窮屈な檻や部屋に閉じ込められているわけでもない夢の世界のように瞳に映った。

 

 なんて自由なんだ。羨ましい。俺もこの場で思い切り駆けたい。

 

「こんなにも不自由な、かわいそうなシステムが存在してるんだね……」

 

 今しがた思っていたことと全く逆のことを耳にした。気づけば俺の横にはロゼリア……にしまつやが憐れみの瞳でポケモン育て屋に預けられているポケモンたちを見ていた。

 にしまつやは確かに、かわいそうと口にした。聞き間違いは無いだろう。

 しかし、俺の目にはどのポケモンも笑顔で芝生を駆け、思い思い自分がやりたいことをしているように見える。あえて不自由を挙げるとしたら柵があるためそこまで遠くには行けないという程度のことだろう。しかし、広さ自体は随分と広く、俺が全力で駆けたとしても端から端までは20秒はかかる程の広さはあった。

 

「なぁ、なんでこんなに自由に生活しているのに不自由なんだ?どいつもこいつもめっちゃ楽しそうじゃねぇか」

 

 考えてもわからないので直球の質問をにしまつやにぶつけることにした。

 

「うん……そうだね、とっても楽しそう。実際楽しいんだろうね。これ以上無いほどに……だからかわいそうかなって。私もね、昔他の人に飼われていたことがあるんだけどそれはそれは幸せだったんだ。だけど、それが終わったときね……とてもつらかった。悲しかった。ここにいる子たちもさ……そうなんだなって」

 

 言われて気付いた。ここにいるポケモンは全て戦うために育てられているのだ。

 この育て屋での生活が魅了的であればあるほど、その終わりが来た時のギャップに苦しむことになる。この生活の終わりは、終わりの無い戦いの始まりなのだ。戦いが終わることがあるとすればそれは死。

 ならばここでの甘い生活を知ってしまったポケモンたちは、その後の戦いの中で永遠に戻ることのできない甘美なこの世界を思いながら無限地獄を足掻くことになる。

 

「自由を与えることで、その後にこれ以上無いほどの不自由を強いる。なるほど確かに、えげつないシステムだな」

 

 だがきっと人間たちはこれを善意でやっていて、これを享受するポケモンの多くも素晴らしい場所だと感じている。

 誰かが言っていた。地獄への道は善意で舗装されている。本来の意味ではないにしろ、似たような何かを感じずにはいられなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。