【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#24【ガフエル】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=lVyMIA6MNnA

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43525290

 

 自分という存在の貴重さは重々承知している。世界に広く生息している為かその認知度は高い。だが、人前に現れることは珍しく、仮に見かけたとしてもテレポートですぐに逃げる事ができるため、我々の種が人に捕獲されることは稀である。そのため、その認知度の高さとは裏腹に所有しているトレーナーは多くない。更に、その希少性の価値を引き上げる追い風として、我々の種というのは……強い。その強さは同レベルのポケモンであれば比較になることは無く、頭一つ、いや二つは抜けているのだと自負している。

 そんなユンゲラーである私は草むらに生息しながら日々、様々なトレーナーに狙われる。私を見つけた時のトレーナーは決まって血眼になる。その興奮を感知しているのか、繰り出されるポケモンもまた興奮状態であることが多い。おそらくは強いポケモンを捕獲することで、自分たちが楽ができるという思いがあるのだろう。そのため、この大一番に勝つことさえできればあとは悠々自適の毎日なのだ。だから全力で挑んでくるのだろう。

 しかし慌てることはない。適当に数回程捕まる素振りを見せてから逃げる。体力さえあればボールから抜け出ることなど物の数ではない。テレポートで逃げる時のトレーナーやポケモンの顔はいつでも滑稽極まりない。掴みかけた物が指の合間からこぼれ落ちる時人間はなんとも言えない、諦めきれない顔をする。見つかった瞬間逃げた時は大体の感情は怒りに似たものとなる。これがなぜか、尻尾の先でも掴ませてから逃げたらその怒りは全て悲しみとなり、希望羨望の全ては後悔へと変わる。その環状の移りゆく様はまさに生の感情の劇場。私はそれを鑑賞するのが大好きだ。

 

 そしてその日もいつものように血眼のトレーナーが私に向かって手持ちのポケモンを放ってきた。

 いつものように殺気に満ち溢れたポケモンが出てくるのだろうと身構えたその先に、私の目の前に現れたのは予想とはまるで逆の感情を携えたポケモンであった。確かそのポケモンの名前はドーミラー。

 瞳は虚空を見つめ、感情は悲しみに近い色。今までのポケモンからは決して見ることのできない心の風景であった。

 端的に言ってしまえば、私はその虜になったのだ。いつもであれば人間を魅了し、捕獲のために血眼になる感情を弄び鑑賞する。それが楽しみであった私が、今はその読みきれない感情、そしてそれに囚われた私の心が何を生み出すのか。それが楽しみで仕方ない。その先を見てみたい。

 私は相手の催眠術を避けようともせず、深い眠りを自ら享受した。睡眠に深く落ちることで相手の精神とリンクしようとしたのである。

 そこで私は、火を纏った馬を見た。ギャロップ……いや、ポニータか。しかし、相手の手持ちにはポニータはいない。この思い出は何なのだろうか。

 そのポニータの影が勇ましく戦いながらその形を崩していく。

 戦死した?しかし、トーレナーが用いるポケモンは治療されるため死ぬことはないと聞く。ならばこのポニータの記憶は何なのだろうか。強くこの者たちの心に刻まれているということは、確実はこれはあったことであり、この者たちが共通でこのポニータを思っていたということは分かる。

 気になる……私の興味がこれ以上ないほどに唆られる。この者たちが描き出す演劇を見てみたい。

 良いだろう、そのボールで私を包んでくれ。

 そうか……この戯曲で私はガフエルという演者なのだな。良いだろうならば私も演じてみせよう。命の戯曲を。

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