【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「ねぇマスター……最近の愛と幸の解放教って何なの?」
「新興宗教」
ミロカロスのオリオールの質問に間を置かずに答えた。
愛と幸の解放教。ポケモンバトルを全面的に否定する事でポケモンたちを開放しようとする団体。ポケモンバトルは常にポケモン愛護団体から講義を受け続けているため、時折こういった活動が生まれることがある。
彼らの言い分はいつだってだいたい同じである。人間のエゴでポケモンたちを傷つけ合わせる事への抗議。
「アンタたちってさ……戦うのって嫌?」
オリオールと、ワカシャモのプラージュに問いかける。
私もたまに疑問に思うことがある。この子たちは本当に自らの意思で戦っているのか。私が命じてるから戦ってるだけではないか。
「何いってんだよ、あったりまえだろ。俺は強くならなきゃならねぇからな! 戦うのが一番の近道だよ」
プラージュの声はひときわ大きい。元気がいいのが取り柄だが、こと戦闘関係になると更に血が騒ぐらしい。
「強くなりたいってなんでよ? 男の子だからぁ?」
「そりゃあまぁ半分は当たりだな。男は誰だって最強を目指す。だが俺はそれだけじゃねぇ!」
「ふーん、それじゃなんで?」
「オリオールを守ってやるためだよ」
「はぁ?」
会話を聞いていたオリオールは素っ頓狂な声をあげる。私も驚きはしたがなんとなく察しては居たのでなんとか声をあげるまではいかなかった。
「アンタは旅立ちの時に言われたもんねぇ」
「おう!」
「言われたって何を……?」
一人自体を察して無いオリオールは自分だけ仲間はずれにされていると感じているのか少し不貞腐れている。そんな仕草が可愛くてついつい人差し指でほっぺをツンツンとつついてしまう。
「かわいいお姫様を守るナイトになれってね、言われたんだよ」
みるみる間に色白のオリオールの肌が紅潮していく。
「ばばば、バッカじゃないの! プラージュなんて私よりも弱いじゃない! むしろ私が守る側でしょ」
「可愛いって言われて恥ずかしがってやんの」
「恥ずかしがってない!」
紅潮した肌は更に赤みを増していく。元の色素が薄いせいか色の変化が反映されやすい。その澄んだ赤色はそれだけで美しくもある。
そんな痴話喧嘩にも等しい言い合いをしているところに私よりも弱いと言われた当人が不服そうにズイと入ってくる。
「確かに今は敵わないかもしれない。だけどな、だから俺はこうして戦って特訓しているんだ。オヤジの得意な二度蹴りだって俺のアレンジを加えて改良だってしているんだ。だからまぁ待ってろ! 俺はお前を守る分だけの力をつけてやるからな」
あまりにも真っ直ぐな言葉は下心なんて欠片も感じない。本当に言った通りの意味だろう。
「オーリぃ。羨ましいねぇ~。こんな頼りになるナイト様がいるなんて。こんなに思われるなんて幸せもんだよ」
「そんなこと言ったらマスターだって!」
「ん? アタシが幸せ者? なんでぇ? 私は誰にそんなに強く思われてんの?」
自分の言ったことで墓穴を掘ったと分かったオリオールはわなわなと震えている。
紅潮しきっていたと思っていた肌は、もはや真紅を思わせるほどに赤みを増す。
「知らない!」
プイと顔を背けてその場を離れようとしている。
逃げられる前に聞いておかなきゃ。
「でさ、オーリぃ。アンタって私と戦うのって嫌? アンタは優しいからね、戦うのが嫌だったらいつでも言って」
「好き……マスターと一緒なら……あとプラージュも」
その声は消え入りそうなほど小さく、しかし私にだけはしっかりと聞こえ感じ取れる声だった。
「ありがと。私もね、アンタらと一緒だからこの旅は楽しい」
「え? オーリは今なんて言ったんだ? 声小さくて聞こえなかったぞ」
返事の代わりに飛んできた冷凍ビームは、炎タイプのプラージュが半減できる攻撃であるあたり冷静さを感じる。だが、しっかりと凍らせる辺り頭には来てるんだろうと感じさせる。
ポケモンバトルは確かにポケモン同士を戦わせる野蛮さもある。だけど私は、拳を交えることでしかわかりあえない世界というものがあるというのもあると思っている。私達は命を賭けているからこそ、こうしてお互いを思い合うことができる。
ポケモンを傷つけるなという意見があるのも理解できる。だけど、私はそれを受け入れるつもりはサラサラない。私達は生と死の境を垣間見るこの世界でだけ生きていける狂人なのだ。頼むからそんな生ぬるい世界を押し付けないでくれ。
どうせどんな生き方をしたところでいつかは命は終わるんだ。何も起きない、ただただ平坦な道を行くつまらない人生よりも、生きてる感じを噛みしめるそんな人生をくださいよ、神様。