【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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太陽の光は高く伸びる木々が遮り、地面には大小様々な沼が点在している。沼には水草が溢れ、それを主食とするポケモンが集まっている。ここはノモセだいしつげん。水ポケモンを中心に日々様々なポケモンを見ることができる命あふれる大湿原である。
そんな大湿原を私は今、息を切らして走っている。足は沼のぬかるみに取られ焦りも加わる事で半ばパニクる。急いでぬかるみから足を引き抜き、走っていると泥のついた足は滑り、今度は四つの足がお互いに絡まる。しかし、それでも足を止めるわけにはいかない。ただ今は逃げ続ける。
水草の合間に身を潜ませ、ソレが見逃してくれることを祈る。
自分の心臓の音が聞こえてくる。今までに無いほどに大きく鼓動する心臓は、その音そのものが外に聞こえていないだろうかと不安になる。
不安定な姿勢のまま走り続けたため肺は大量の酸素を欲しがる。呼吸が足りない。しかし、ここで大きく呼吸をしてしまってはその音だけで気づかれてしまう。見つかってしまっては……見つかってしまっては捕まる可能性が出てくる。
いっそここがサファリゾーンでなく野良であれば自らの毒針を突き刺し逃げることも選択肢に入れることができただろう。だがここで毒針を使ったことがバレてしまっては殺処分だ。使うわけにはいかない。使わずに逃げなければならない……。捕まれば……やはりその後は死なのだろう。私の直感がそう言っていた。
遡ること数十分前。その男は私の目の前に現れた。一見して普通のポケモントレーナー。いや、一見の段階で普通の面立ちではかった。少年のような服を着て入るが、皮膚の張りのなさは中年のそれであり、喋る言葉は若者のような瑞々しさを感じさせなかった。
そしてなによりも異常を感じたのは纏っている空気だった。その男の周りにはまるで怨霊がまとわりつくかのような数多くの死を感じた。まるで死の概念を綿にした防寒具を纏っているかのようだった。そんな男が私を見つけゆらりとボールを構えたのである。
捕まる、イコール死。
直感が私にそう伝えた。それからは行動は速かった。脳が判断するよりも疾く私の足は逃亡を選択し、そして今に至る。
なんとか水草の合間に身を潜ませる。顔を出すわけにはいかないため、耳で周りの状況を判断する。
男の声が聞こえる。何か一人芝居のようにぶつぶつと喋っているかと思えばいきなり奇声をあげている。人間とはそのような習性があったのだろうか? 分からない。また、それを考えている余裕もない。今の私にできることはただただ見逃してもらうことを祈るだけだ。
このまま通り過ぎて。助けて。そのまま行って。助けて。これからはいい子にします。死にたくない。
思いつくだけの懺悔と、祈りが頭の中に交錯する。
だが、祈りは点に届くことは無かった。水草をかき分ける手が私の視界に映る。
心臓が握りつぶされたかのように縮み上がるのを感じる。あぁ、神が居たら心の底から恨んでやる。私は……いつか神を殺してやる。私が死ぬのが先か神を殺せる日が先か……。そんな事を考えながら投げられたボールになんとか抗おうと無駄な努力をした。