【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】   作:null cedar

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#33【フローゼル】

youtube:https://www.youtube.com/watch?v=lHUgiUrUAEo

ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43627007

 

 ジムトレーナーのポケモンとしての仕事をする一方、本業ではポケモンプロレスを行う。そんな二足のわらじを履いているのが俺たちマキシマム仮面一行だ。そんな中で俺は自分で言うのもなんだが人気はある。メインを張ることも多い。マキシマムフローゼルといえば手形を求められる事も多い。

 そんなプロレスラーとしての知名度もあるためか、ジムとしての人気も高く挑戦者は後を絶たない。尤もジムトレーナーとして戦う時はプロレスの時と違い全力で戦うことはない。相手の実力を測り、それが合格ラインに達しているかどうかを見るためだ。

 だが、挑戦者の中にはプロレスをつくりだらけのヤラセだと思って嘗めている奴がいる。そんな時はウチの悪役(ヒール)のギャラドスの頭に血が上る。そして今回もそんな挑戦者だった。

 

 その挑戦者の手持ちはここが水ポケモンのジムだと調べているためか、草タイプ中心のパーティを構成してきた。合格点だった。

 ショースポーツのプロレスであれば互角に見せるため有利不利の無い相性で試合を組むことが多い。或いは逆転などの演出を盛り込むために意図的にやや不利な相性で組むことがある。だがこれはジム戦。いわゆる実践としてのレベルを判定する場であり、相手の手持ちがある程度分かった上でどういった構成を作ることができるかを見る試験、という側面もある。

 ここでパーティを有利なポケモンで固めてくる、というのが一般的な解法である。中には戦術などの腕を見せることで自分のパーティを貫く者もいる。それも一つの解法である。

 このトレーナーは草タイプで水を半減しつつ有利な打点で戦うことを中心に考えつつ、水ポケモンの多くが持つサブウエポンの氷技を半減するために水ポケモンを少し混ぜる構成にしているのだろう。十分考えることができている。適当に戦って合格を与えよう。いい感じに勝利を与えるのがジムトレーナーであり、プロレスラーの俺としての仕事だ。

 

 

 そんな相手が最初に出してきたのはヤンヤンマ。なぜ水ポケモンにこのポケモンを選んだのかは分からない。相棒ポケモンなのか、験担ぎなのか。理由は分からない。理由はわからないが……そのポケモンが放った言葉がまずかった。

 

「相手はプロレス? だっけ? ヤラセしかできない奴に本物ってやつを教えてやりますよ」

 

 こちらの一番手はギャラドス。止めるよりも先にギャラドスの体はリングサイドの掘りの水の中に姿を消していた。

「おい、バカ! 相手は素人だぞ!? 手を抜いてやれ!!」

 そりゃあ俺も、プロレスをバカにされてちったぁ頭にくる。俺たちは文字通りこれに命を賭けている。だが、それが世間での認知が少しズレている、ってのもわかる。だから俺たちは本物を見せて……証明するんだろ。

「素人相手にそんなもん使ったら死んじまうぞ!?」

 ギャラドスは水中で加速していく。その体はまるで一つのロケットのようになり水面から発射される。ロケットの標的は当然相手のヤンヤンマ。その速度はトンボの複眼ですら捉えられる物では無かった。音速の体当たりはヤンヤンマの体の真ん中を下から打ち上げ、その体はくの字に曲がったまま上空へと打ち上げられる。

 コイキングがギャラドスへの進化時、滝を登り龍へとなるという。一種の比喩と思っていた。だってそうだろう? 滝を登るなんて普通に考えて無理だ。重力に従って落ちてくる液体を登るなんて、重力を凌駕し、理を捻じ曲げる必要がある。だけど……この技の凄さ、タフさ、鋭さを見ちまったら信じざるを得ない。

 俺の目の前には滝が見えている。その滝を一匹の龍が登り、ヤンヤンマという枯れ木を打ち砕く。

 ヤンヤンマを撃ち抜いた体はその勢い収まらず、その巨体を更に上空へと押し上げる。ヤンヤンマの折れ曲がった体が上昇を終え、重力に吸われ始めるのを確認したところで、ギャラドスは体をねじり力を貯める。そして、その溜まった力を尻尾へ押し込めたかのような鞭のような一撃が振り下ろされる。

 重力による加速を後押ししたその尻尾による追撃。この技を得意とする水ポケモンだからこそできる追撃だ。そう、自分と一致するタイプの技というのは扱いやすい。そのためこういったアレンジを加えることで本来の力よりもより大きな威力を出すことができる。

 ただでさえ馬鹿力なギャラドスの技を、更に得意な形で受け止められるポケモン。この世にそうは居ないだろう。

 打ち付けられたヤンヤンマはビクンビクンと痙攣している。すぐに治療すればなんとか命は助かるだろう。

「おいギャラドス! なんで素人さん相手に本気なんて出してんだ!!」

「うるせぇ! プロレス馬鹿にされて黙ってられるか! こんな技を避けたり当てたりする小細工すら許されてる奴らによ!」

「そんなもん言われなれてるだろ! それでも俺たちは本物だって証明するために──」

「だから証明してやったんだろ! 草ポケモンで固めてきたかと思ったらいきなり虫ポケモンで……俺たちは嘗められてんだよ! だから見せてやったまでだよ!

 おら、さっさと次のポケモン出てこいよ! 絡め手でも何でもしやがれ! お前たちはそれが許されてるからな。羨ましいもんだぜ、姑息な手を仕えるなんて。俺たちはな、すべての技は観客に見せるため技しかねぇ。 相手の技は全てこの肉体で受け切る。その負い目のなさが、自身の肉体への信仰につながる。おまえたちは精々小手先の技に頼ってろ!」

 

 

 その後出てきたモンジャラはそんな挑発に乗らずに自分の戦いをしていた。しびれごなや締付けで相手の動きを制限しつつメガドレインで、攻撃と回復を同時にこなす。実にポケモントレーナーとして正しい戦いをしていた。少し羨ましくもある。俺たちショーファイターにはできない戦い方。

 不利な相手に不利な戦い方。ギャラドスに勝ち目は無かった。俺たちがレスラーでなければ交代、という選択肢もあったが、やっぱ俺たちはレスラーだからな。相手の攻撃を受けきらなきゃならねぇ。だったら俺たちができることは……。

 相手のトレーナー、名をゆるすぎというらしい。そのゆるすぎがあと一撃のメガドレインでギャラドスを倒せると確信している。そんな中、倒せると革新したメガドレインを指示した。仲間のポケモンも圧倒的有利な状況で戦っていたモンジャラの勝利を革新していた。

 メガドレインの為の蔦はギャラドスに絡まり、確実にその体力を吸い取った。誰もが勝負が決したと思っていた。吸収し終えた蔦は、拘束を終えモンジャラの元へ回収される。ギャラドスの体は空中から地面へと落ちる。はずだった。その体は攻撃前と同じく宙に浮いていた。

「なんで……私の技は完璧だった。なんでまだ意識を保っていられるの……」

 モンジャラだけでなく、後ろで見ているポケモンたちも同様な事を口走っている。倒せるはずだった攻撃を受けきり、それでも倒れることなく立っている。

「なんでだぁ? それは俺がプロレスラーだからだよ」

 そう、レスラーってのは……心が強靭(プロレス)。体が強靭(プロレス)。あるいはそれら両方がプロレスなんだ。

「なんで立っていられるかじゃねぇ。立っていられるからプロレスなんだ」

 相手のトレーナーは倒れるはずだった相手がまだ立っている事で相当パニクっている。本来ならばこの隙に反撃して形勢を逆転させるのが勝負の世界だ。しかし、今回はジムトレーナーの試験だ。

「おい、ギャラドス。もう充分だろ。いたずらに相手を傷つけるんじゃない」

「わーってるって大将。こんだけプロレスを見せてやったんだ。──ってことだ、今回は勝ちは譲ってやんぜ」

「とても勝ったとは思えないけどね……」

 歯噛みをしながらモンジャラは止めの一撃をギャラドスへ繰り出した。

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