【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「私の名前はアカギ」
突然現れた男はそう名乗った。男は30代……あるいは40代くらいだろうか。青色の髪は短く切られ、天を突くように逆だっている。
「下らない争いを無くし、理想の世界を作るための力を探している」
そのままアカギは聞いてもいないのに自分の目的を語り始める。
「争いとは生き物が生きるための本能。俺もいずれは神に反逆をする。その闘争本能を下らないと言う時点でこの男とは相容れぬ」
ボールに入ったままファーは男の持論に反応している。ペラップのダーティにも思うところはあった。自分の自慢の声。それは人を楽しませるため、というよりは相手を殺傷するための技だ。自分のアイデンティティが他者を傷つけるために存在している。そして、それに対して嫌悪感はない。自分はそうなのだと、本能的に理解している。つまり、争いを否定されてしまった時点でそういったポケモンの闘争全てを否定されてしまった時点で、そのポケモンはこの世に存在する事は許されなくなるのだろうか。
「そこで聞きたい、今のこの世界は3匹のポケモンによってバランスが保たれているため変わらないということだな」
「変わらないなんてことはないんだよ」
チェリムのひびきはすかさず反論を口にした。
「均衡は保たれているのかもしれない。だけどもこの世界は……変わり続けているんだよ。私の大事なポケモンだってたくさんいなくなったんだよ。それはさ、とっても悲しい。悲しいけどさ、私達は彼ら彼女らからたくさん色んなものを引き継いだんだよ。そうしてもらったものを大事に育てて……また後輩に託していくんだよ。そうすることで私達全体は種として……生命として変わり続ける、進化し続けるんだよ。命がなくなることは悲しいことばかりじゃないんだよ! それを否定し、強硬策を取るなら……敵だよ」
そうだ……誰かに何かを伝える。そうして、自分の何かを託すことができる。俺たちはそうして生きていくことができる。そして俺は……数少ない人間の言葉を操ることができるポケモン……。もしかして俺たちの思いは人間に託すことができるんじゃないか? 今はまだそんなに言葉を知らないけど、この度を続けてたくさんの人間と接し発音を覚え、練習し、そして人間に、ゆるすぎに俺たちの思いを伝えていく。もしかしたらそれはとてつもなく大事なことじゃないのか?
そうか、だとしたらこんな小物に負けているわけにはいかないんだな。
「下らない態度だな。今の世界が不完全なのにおかしいと思わないとは……。私は世界を変える。その手始めに、お前たちが長年守ってきたこの壁画を壊す」
今まで静かに聞いていたイワーク、かつてのジムリーダーヒョウタから託された通称ヒョワークが目の色を変える。
「壁画……岩に刻まれた思い。何かを伝えようとする意思。石に刻んだ意思。それを壊すことは許されない」
「え? このタイミングでギャグ?」
ツッコミを入れるのはベロリンガのあっかんべ。
「ほら、石と意思で。普段だったら面白くないけど、ふふ、この緊迫した場面で言ってると思うと面白くなってくるね」
多分ギャグのつもりじゃないんだろうが……このタイミングでそれを口にできるあっかんべは大物なのかのんきなだけなのか……。
「ここには新しい世界の新しい神話を残せばいい。私は間違っているか? 違うと思うならかかってこい」
モジャンボのおんみょうがガリガリと後頭部の辺りをかきながらその言葉を聞いている。
「何のことはない……ただの子供のまま大人になったしょうもない奴じゃない。争いを無くしたいとか言ってたのに次のタイミングにはかかってこい? そして革命成功の暁にはまず自分のことを壁画に残そうなんて下らない承認欲求。ったく、自分の黒歴史を思い出してしまうくらいには痛々しいね。んでもって、力だけ持ってしまった子供ってのは扱いに困るもんだね。良いよ、来なボウヤ、相手をしてあげる」
思いは三者三様。だが、結論は一致していた。俺たちは、このギンガ団のボスを名乗るアカギ、という男を倒す。