【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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窓の外には夜の漆黒が広がっていた。室内を見ると細長い部屋に幾つものボックス席が並んでいた。どうやら鉄道車両に乗っているようである。ボックス席の対面の座席にはファーが物思いに耽った表情で座っている。
椅子、壁などは全て木造であり、車両全体が昔のものであることが伺える。
逆側の窓を見ると人工の明かりが差し込んでいるのが分かる。ホームの蛍光灯が差し込んできているようだ。
段々と自分の置かれている状況がわかってきた。私の乗っているこの車両はホームで停車中のようである。
そのホーム側の窓に駆け寄ってくる者がいた。ヘルメットを被っていないため気づくまでに時間がかかったがその眼鏡顔の情けない顔は忘れるはずもなかった。ヒョウタだ。どうやら見送りに来てくれたようだ。
「わざわざ来てくれたのか?」
「すまないイワーク……。俺が……俺が君を手放さなかったらこんな事にはならなかったはずなのに」
「大丈夫だよヒョウタ。君が気を病むことはない。もとより私がこの旅に同行しようとしたのは私の意思だ。あなたの父親はこれからは鋼の建造物の時代だと言っていたが……ヒョウタ、あなたは石を信じてくれていた。それは私にとっての救いだったんだ。石の持つ可能性。それを私も示したかった。実際これまでの旅路で私は様々な可能性を示すことができたと思ってるよ。でもね」
「でも……?なにか思い残すことがあるのか?」
「でも最後にパーティを救うことができなかったのは少しだけ後悔しているんだ」
それを聞いて下を向いていたファーは顔を上げる。
「そのことについては心配するな。この車両には他にはもう誰も乗っていない。どうやら死んだのは俺とお前だけだ」
「そうか、それならよかった。いや、君が死んだんなら良くはないか」
「俺は元より命を惜しむように戦ってない。遅かれ早かれこうなるように生きていた。お前がどうこう感じる必要はない」
そうか……私も、ファーもヒョウタも自分の信念の中で生きている。私とファーはその信念の中でやりきることができたんだ。だったらそこに後悔を感じるのは私達の生そのものに対する侮辱だ。私達は誇りある死を進まねば。
「ありがとうヒョウタ。最後に来てくれて。私はあなたと一緒に働いて、あなたに育ててもらえて本当によかった。先に逝くのは申し訳ないと思うが、それでも私なりに一生懸命やったんだ」
だからといって結果が結果だ、褒めてくれとは言えないが……。
「イワーク、お前は僕の誇りそのものだ。よくやったよ。君と出会えて本当によかった。ありがとう、君の思いはいつまでも俺が抱えていくよ」
目から涙が溢れる。ヒョウタはこういう時に卑怯だ。そんな事言われたら死にたくなくなるじゃないか。せっかく死を受け入れられると思ったのに。
ピピピピーと電車の出発を伝える警告音が鳴り響く。
汽車はゆっくりと加速していき。ヒョウタの姿は段々と小さくなっていく。
またいつか……なんど生まれ変わってもあなたに出会えることを今はただ祈るよ。