【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「なぁむこうみず、このタタラ製鉄所ってのはどんなところなんだ?」
マリルリのピースは普段見慣れない建物がどうにも気になり、このタタラ製鉄所の周辺に生息していたコイルのむこうみずに質問していた。
「どんな……とはどういうことだろうか? このタタラ製鉄所の歴史を知りたいのか?」
「ん?あぁ……どういうことをするのか、ってのが聞きたいつもりだったがそういうのも面白いかもな」
「では我が知っている範囲でこのタタラ製鉄所について語ってやろう。この製鉄所は今から100年以上前に建てられた、シンオウで唯一の銑鋼一貫製鉄所だな。100年前、となると我のような半機械生命体であれば生きてはいるが、汝らのような有機生命体は想像もつくまい」
「そうだな。100年か……なんなら20年前すら想像つかないな」
ピースは自分の子供の頃を思い出していた。その時点ですら今と比べると随分と違う、という事実に気づく。世界というのは常に変化し続け、ほんの数年でガラリと様変わりする。その変化を良しとするものもいるが、先日のアカギのようにそれを否定する者もいる。やはり、どんなことにも肯定派と否定派がいるのだろう。
「100年と少し前、ここいら一体は採掘による産業が盛んではあったが、石炭や鉱石は段々と世の中で必要とされなくなってきた。海外から電気製品など新技術が輸入されて来たためだな。このシンオウでも広大な土地を利用し、新技術に適応すべくこのタタラ製鉄所が作れられる事になった。だが、このような大規模な工場が作られることに対し地元は反発することになる」
なるほど新技術に対する肯定と否定か。と先ほど考えていたことを別の例で示された気分になる。
「工場に対する反対、というのは産業廃棄物などの問題か?」
「そうだな、それと環境汚染と災害懸念だな」
「災害……確かによくわからない技術のよくわからない工場が建つから人間は恐怖するわけか。俺たちだってモンスターボールなんてよくわからんボール投げられて捕獲されることは今では常識だと感じてるが、やはり初めてみた時は恐怖しか感じなかったからな」
「そう、人間に限らず知的生命体は未知のものに恐怖を感じる。そしてそれに対し根拠なき否定的な意見をぶつけることは珍しくない。無論それは愚の骨頂ではあるのだがな。まずはよく知ること。そのうえで多角的な物の見方をする。当たりませのことだがそれが難しい。なぜなら生命体というものは感情があるからな」
「それは何となく分かるな。物を知らずに否定する。すると、同様に何も知らない者が賛同してくれる。そうすることでトンデモ論発信者は気持ちよくなる。受信者は安心してデモ活動などの反発を起こせる。負のwin-winの完成か。いろいろな縮図を今でも見るよ」
「その大規模なデモ活動、というのがこのタタラ製鉄所の場合は、製鉄所の南の川を挟んだ先にある花畑だな。一見するときれいな花畑だが、これは環境保全派が植えた花なのだ。今のこの大自然を壊してまで工場を作る必要はない。新技術を使わなくても我々は生きて行けているではないかと」
「はは……それでお花畑を作って抗議か」
「当時は過激派も多かったのだがな」
「人間は何をするにしても反発しぶつかり合い、争い続けないとならないんだな」
「それが、心を持つということなのだろう。様々な個がある以上それは仕方ないことだ」
そして、ポケモンもまた様々な個がある故に思想の違いで戦い続けるのだろうか。先のギンガ団との戦いにピースは想いを馳せていた。
(俺はその時いなかったが……やっぱギンガ団の考え方は気に入らないから前向きに戦っていただろうな。もし同調できたとして……ヒョワーク、ファー。お前たちを奪ったアイツラを許すつもりはない。はは……なるほど、俺という個がアイツラの存在を否定しているのか)
心さえ無ければいなくなった者を思わず日々平穏を過ごすことができていた。心があるばかりに今、復讐を考えなくてはならない。心があるから争いが生まれる。だからといって無ければいいなんて思ったことは一度もない。清濁全てを引っくるめて今の自分があるのだから。