【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
youtube:https://www.youtube.com/watch?v=mwxHciJeMZE
ニコニコ:https://www.nicovideo.jp/watch/sm43681945
「なぁ、これから先の敵討ちは義務じゃない。無理についてこなくてもいいんだぞ」
俺の目を真っ直ぐと見つめてそう言ってくれているのは、俺よりも一回り小さいポケモンだった。小さい体というだけで大きなポケモンからは嘗められてしまうだろうに、そんな体のハンデをものともせず、仲間たちにきめ細やかな心のケアをしてくれる。誰が呼んだか「課長」。かちょうはまさにそんなポケモンたちの間を取り持つポケモンだった。
俺ら……所謂二軍の事を常に心に止めていてくれていた。戦えなくて悔しがっているポケモンには戦うだけがパーティの仕事ではないとフォローをし、逆に戦わなくて安堵しているものにはいつ何時戦いのチャンスが回ってくるかわからないので常日頃から鍛錬を欠かさぬよう叱咤していた。
「バカ言わんといてください。俺はやりますよ。やらせてください」
先日、俺たちの飼い主たるゆるすぎは六体もの遺体を抱えて帰ってきた。錚々たるメンツだった。
モジャンボに進化したモンジャラのおんみょう。彼女虫飛行タイプである俺を怖がっていた節がある。
しかし、俺は……俺は実は彼女のことが少し気になっていた。彼女の愛くるしさに惹きつけられていたのだ。最初は俺にはない器用な戦いと堅牢な守りに惹かれたのだと思っていた。だが、時間を共にするにつれそうでないと気づき始めた。単純に……異性として惹かれていたのだ。どこにかって……そんなもんはわからん。誰かを好きになるってのはそういうものだ。気付いたら好きになっていて、好きになったら歯痛のように常にそのポケモンのことばっか考えている。
俺にとってそれがおんみょうだった。
そんなおんみょうがこの世からいなくなった。俺の心の中にはまだい続けるのに、この世界のどこを探してももう陰陽はいない。それが我慢ならん。
敵討ち? そうなのかもしれない。勝ったところでおんみょうは帰ってこない。けれどこれは心のけじめ。俺の頭の中で生き続けるおんみょうに……なにかこの世界の進捗を知らせに行きたい。だから俺はそいつらと戦いたい。
「やらせてくださいっていうか……やらないとならないのです。俺が彼女のためにしてやれることがそれだけだから。だからやれることは全てやる、それだけです」
他にもたくさんのポケモンが逝った。
コイルからレアコイルに進化し、10万ボルトを覚えたことで盤石の強さを手に入れたむこうみず。鋼の肉体と弱点の少ない電気という特性を併せ持つ事でこれから先のチームの主力の存在として期待されていた。そんなやつが死んだ。
「アイツの電気の力は、かちょうよりも強かったんですよね」
「あぁ……そうだな。彼の素質、タイプとしての優秀さ、どれをとっても私には無いものであった。私の唯一としていた10万ボルトも彼は使えた。これから先、私が彼の代わりを勤めねばならぬと思うと気が重いよ」
「かちょうだって逃げる気がない……やる気まんまんやないですか」
「そうだ。その通りだ。君のやる気に感化され、やる気まんまんになってしまった」
言いながら毛の隙間に隠し持っていた石を取り出した。その意志は帯電しているようでパチパチと音を鳴らしている。恐らくは雷の石だろう。
ピカチュウという種はその石を使うことで進化することができる。しかし、他のポケモンならば進化というのはメリットしか無いが、ことピカチュウに関しては話が代わってくる。ピカチュウはその愛らしい見た目の為進化させないトレーナーが多い。極端な話ピカチュウとして生きていけば、このまま戦うことなく愛玩ポケモンとして一生安泰に暮らしていくことができる。逆にライチュウに進化してしまえば、戦闘能力こそ上がるもののその見た目の愛くるしさは無くなる。愛玩ポケモンとして生きていくとも絶望的となり、その後は戦うことでしか生を紡ぐことのできない修羅のみととなる。
「本気……なんですね……」
「あぁ、君たちだけにつらい思いをさせるわけにはいかない。私は課長だからな、君たちの戦闘に立つよ」
握っていた雷の石は光を放ちピカチュウを包み始めた。
そうだ、悲しいのは何も俺だけではない。皆それぞれ何かを思っている。だから戦いたい奴らは一緒に戦おう。
その歩む道の先に死神が微笑んでいるのだとしても……死神ごと倒してしまおう。そういう気持ちにさせてしまった彼奴等にいつか話をしてやるために沢山たくさん戦おう。