【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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「ねぇオーリ。あなたにとって大切なのは結果?過程?」
クロガネジムの控室のモニタを見ながら私は相棒であるミロカロスのオリオールに語りかける。
傍から見ればジムに挑戦するのが不安で相棒ポケモンに一方的に話しかけてるトレーナーなのだろう。
それほどまでにモニタに映し出されている光景は凄惨を極めていた。
挑戦者の名前はゆるすぎ。最近トレーナーになったばかりの駆け出しトレーナーと言うやつだ。
しかし、私はその名前を知っている。かつてホウエンの地で同じようにトレーナーを追跡し、見続けていた。その時のトレーナの名前がゆるすぎであった。シンオウのゆるすぎにはそのホウエンのゆるすぎと同じ魂を感じる。
同じようにポケモンを愛し、共に戦い、膝を折り、旅を楽しみ、下ネタを言う。
そんなゆるすぎの瞳は今、絶望という色に彩られていた。
モニタには砂埃が立ち上る会場が映し出されている。砂埃に薄っすらと映るシルエットはワンリキーの姿であったが、それは地面に立っておらず地に伏していた。
その周りには砕かれた岩が落ちている。ただの岩では無かった。砕かれた岩の先には腕のようなものがついているパーツがある。腕のパーツが二つ。その破片がかつてイシツブテという生命であったことが理解できる。
イシツブテを砕くほどの圧倒的な暴力。そんなものが存在するというのはにわかには考えにくい。
だが事実として目の前にはイシツブテを文字通り砕き、そしてワンリキーを一撃の元に死に追いやった暴力が存在していた。
そのポケモンは青い鱗に覆われ、二つの大きな後ろ足。前足は小さく、細い。それで攻撃することは考えにくい。後ろ足の見ているだけで出力の大きさが伺える質量に対してあまりにもアンバランスな小ささの前足。進化の過程で前足を小さく軽量化し、後ろ足による短距離の爆発的推進力を十全に活かす形状になったのだろう。
しかしそのポケモンは牙はそれほどには発達していなかった。前足も牙も使わずにどうやって獲物を捉えていたのか。
それは、ひと目で分かる殺意の塊。他を打ち倒すためだけに存在していることがひと目で分かる硬度。そのポケモンの頭部には頭部の骨が露出していた。その骨は、骨と言うには相応しくない、金属光沢のような輝きがあった。その輝きはその頭骨の密度が尋常ではないことを示している。
発達した後ろ足のロケットのような推進力からこの頭をぶつけられたらどうなるのか。
そこが岩盤であればその岩盤を砕くことができるだろう。
そこがコンクリートの建屋であれば出入り口が1つ増えるだろう。
そしてそれがポケモンという命であれば、その生命のロウソクの火が1つ消えるだろう。
それを証明するのはイシツブテであった岩とワンリキーであった肉塊。
「過程か結果ってマスター……まだ勝負はついてないでしょ」
そう、オリオールの言う通り勝負はまだついてない。
しかしそれは、まだ、というだけであり、誰が見てもこの先は一方的な虐殺ショーだ。
それ自体はオリオールも分かっている。だから言葉を濁している。
「うん、そうだね。でもさぁ~私は結果と過程がどっちが大事か聞いてるだけだよん。つまりね、ポケモンと人間は出会った瞬間にいつの日かに訪れる別れの日が決定するわけじゃん。どんなに遠回りになっても別れ自体は必ず訪れる。それは今目の前のように戦闘でかもしれないし、野に返すことかもしれないし、寿命かもしれない。色んな理由はあるけど別れはあるの」
「うん……そうだね」
「んでさ、私はこう考えるわけ。使命ってそんなに大切なのかな、って。例えば今死んじゃったワンリキーやイシツブテって仲間になったばっかじゃん。この子達にとってこの戦いは最期の時になったけど、この最期って満足だったのかな、って」
「結果が満足かどうかってこと?」
「そそ。戦って死ぬことが結果。こうして彼のポケモンになるってことは大抵の場合はこの結末は決定してるじゃん。んで過程っては彼のポケモンたちといろんな思い出を作る、って感じかな」
「ん?その二つをなんで比べるの?」
「なんだろうなぁ、言葉にしにくいなぁ。さっき死ぬのが結果って言ったけどちょっと違うんだよなぁ。使命を果たすって感じかな?生きているにしろ死ぬにしろ。んでさぁ、結局どんなに思い出を作ったって結局9割以上は死んじゃうんだ。私はさ、今までに数多くのポケモンの死を見てきた。本当にたくさんの。だけどね、どんだけたくさんのポケモンが居ても、誰も完全に満足して死んでいったポケモンなんて居ないと思うんだ。結局やり残しや思いがあって、それを誰かにお願いして逝く。もしも過程が無ければ、つまり……思い出なんて作らなければ想いのこしもなく綺麗に逝けるじゃん。結果を重視するなら過程、思い出なんか作らない方が良い。過程を重視するなら結果、つまり使命なんか無視して生きることを選べばいい、極論戦わなければいい」
「あのさ……マスター、それ私に聞く?あなたは、結構頭切れると思ってたけどこういうところはやっぱり鈍感なのね」
「え?」
「私がなんでマスターについてきてるか考えたことある?」
「え?私がミクリさんに無理言ってミロカロスの卵分けてもらったからでしょ」
「……バカ……」
それだけ言って、オリオールは自分のボールに帰っていった。
彼女はこうしてたまにふてくされる。こうなると半日は機嫌が戻らない。
「ねぇプラージュぅ~、オーリはなんで怒ったん?分かる?」
ボールの中で寛いでいるワカシャモのプラージュに聞いてみるが、
「あ?なんも聞いてなかったわ」
コイツはコイツで扱いにくい子だ。
そんな会話をしていたらいつの間にかモニタの中にはキラー、ビバディ、ぴるぷぷの死体が増えていた。
彼らは、それぞれに想いがあって、お互いに出会ったから生まれた新しい想いもあって。
でも結局こうして死の結論に至って。
ま、考えても仕方ないか。どんなに考えたって物語は続いていく。終わっていく。
さぁゆるすぎは今からどんな物語を見せてくれるのかね。