【ポケモンプラチナ】失ったポケモンは二度と戻らない。【ポケモン視点】 作:null cedar
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ヒョウタのことは好きだ。いや、好きなんて言葉だけでは済ませたくない。
ヒョウタが子供の頃からずっと僕らは一緒に居た。赤ん坊のヒョウタの友達として僕はヒョウタの家に招かれたらしい。僕自身も赤ん坊だったから覚えてはいない。
小さい頃は一緒に家の中で遊んだりした。僕の頭は赤ん坊の頃から固く、よく食器棚にぶつかって中の食器が割れてヒョウタと一緒に怒られた。目一杯叱られて、その後は二人で笑いあった。
ヒョウタは小さい頃から石が大好きだった。その好奇心のせいで一人で洞窟に入っていったりした。それを探し出すのはいつも僕の仕事だった。ヒョウタの親よりも僕はヒョウタと一緒に居たから、どこに行くかは大体予想がついていた。洞窟で泥だらけのヒョウタを見つけて背負って帰る時、僕は嬉しかった。僕が世界で一番ヒョウタのことを分かっている。
学生時は石好きという変わった趣味のせいでよくイジメの標的にされていた。石が好きなんだろ?といじめっ子から石を投げつけられているのを見た時は、頭に血が登って石を投げてきた子だけでなくその取り巻きの子供も頭突きで跳ね飛ばした。いじめっ子たちはたまらず持っていたポケモンを繰り出して防衛をしようとしていた。その時に僕は自分が強いということに気づいたんだった。彼らが繰り出したポケモンは僕がいつものように頭突くと粘土細工のように凹んで立ち上がらなくなった。その時の事は子供同士のポケモンバトルの練習ということでお咎めは無かったが、それ以降ヒョウタをいじめる者は居なくなった。
ヒョウタもこの時に僕の強さを見て、僕のバトルの才能を伸ばそうとした。彼なりの優しさなのだろう。人間の世界ではそういった長所を仕事に活かすことが標準的らしい。僕もこのバトルの才能を見出されてからヒョウタはバトルトレーナーとしての勉強を始めた。
しかし、石好きとしての仕事も諦めておらず、地学を中心に勉強を続けていた。できれば地質学者として働きたかったようだ。
僕の才能を腐らせないためにヒョウタはトレーナーの勉強も続けながら毎日夜遅くまで地質学を勉強した。学者の道というのは二足の草鞋(わらじ)でやれるほど楽ではない。体も立派になった頃には、大学への進学を諦めたヒョウタは炭鉱で働きながらトレーナーとしてもやっていくことにした。立派に育ったヒョウタに対して僕は、人間よりは成長が遅いようでまだそれほどの体躯をしていなかった。だが、何年も戦い続けた肉体は並の進化ポケモンなら一撃で倒せるほどの破壊力を持っていた。
勝利を積み重ねる旅にヒョウタは喜んでくれた、褒めてくれた。僕をなでてくれるヒョウタの手は温かく、だから僕は本当に申し訳なくも感じた。僕がこの力を持っていたばかりにヒョウタは学者の道を諦めた。彼の頭脳は炭鉱夫なんかで収まって良いはずが無かった。
だからせめてもの罪滅ぼしのつもりもあって僕は炭鉱での仕事を手伝った。
炭鉱での仕事は楽しかった。暗闇で黙々と岩を砕くのは誰も傷つけずに己を鍛えることができる。誰かを傷つけるのが好きでないからこうして相手の居ない訓練は安心して没頭できる。
それに、巨大な岩盤に隠れている様々なものを探すのは楽しい。少しずつ僕の頭突きによって世界に隠されていた部分が明かされていくのは、まるでスクラッチのクジを削るときのような気持ちになる。大抵はただの石炭だが、まれに宝石の原石だったり化石が見つかることもある。そんな時のヒョウタは本当に嬉しそうだ。
僕が勝利を積み重ねるよりも、こうして珍しいものを掘り起こした時の幸せのほうが本来はヒョウタの為なのは分かっている。
けれど……それだけでは駄目だ。ヒョウタは僕の為にトレーナーの道も頑張ってくれている。だから、僕はバトルも頑張った。目の前に現れる敵を倒して倒して、倒した。
現れる敵のことごとくが壊れやすい物に見える様になった頃に、ヒョウタはジムトレーナーとして抜擢された。その頃にはイシツブテやイワークも仲間になっていた。
彼らも炭鉱の仕事を手伝ってくれて何でも話せる良い仲間となった。
他のポケモンの命の重さがどうかと聞かれると……僕にとってはヒョウタが一番で二番目がイシツブテとイワークだった。
別に良いことだとは思わないし、他社の命を奪いたいわけではない。だけど、手加減できない者が挑んできた時は、やはり死ぬことはある。
目の前に転がるイシツブテ、ワンリキー、ビッパ、ムックル、コリンク。彼らは自分の信念で戦っていたのか、トレーナーの命令で戦っていたのか。僕が真実を知る術はない。
せめて彼らに安らかな眠りを。次は安らかな命に生まれますように。