〜〜〜[アーク視点]〜〜〜
クイ「嬢ちゃんの目当てはこんなしけた試合じゃなくて次だろ?」
(次、ということはこの人達もジミナ•セーネンに目をつけているのかな。)
アン「確かあなたは、」
クイ「クイントンだ。昨日の3回戦、嬢ちゃんも見てたんだろう?」
アン「そうね。そういうあなたも?」
クイ「その気はなかったんだが、偶然目に入ってなぁ。」
アー「その話、僕も混ぜてもらっても良いでしょうか。」
クイ「あんたは確か、」
アー「学園シード枠のアーク•ヤックノウです。」
アー「それで、ジミナ•セーネンの話ですが、あなた方には何か見えましたか?」
アン「少なくとも、対戦相手が転んで、運良く勝ったようには見えなかったわ。」
クイ「あぁ。あいつなんかやりやがったぜ。それが何なのか俺にはわからねぇが、嬢ちゃんなら分かるんじゃねえか?ベガルタ七武剣のアンネローゼ•フシアナスさんよ。」
アン「その名は捨てた。今はただのアンネローゼだ。」
クイ「そりゃあすまねえ、遅くなったが、女神の試練、合格おめでとうさ。」
アン「どうも。」
クイ「それで?まさか嬢ちゃんでも分からなかったのか?奴が何をしやがったのか。」
アン「全ては分からなかった。まさか私の目をもってしても追いきれないとは思わなかったわ。ただ確かな事は、ジミナ君の右手が動いたように見えた。」
クイ「ほう。右手か。」
アン「えぇ、右手よ。何をしたかまでは分からないけど、それだけは間違いないわ。あと一つ言えるとすれば、とてつもなく速かったって事。」
アー「僕は、右手が動いたのは見えませんでしたが、顎に何かを喰らわせたのは分かりました。」
アン「だとすると、右手で顎に何発か。」
クイ「はぁ。となると俺の予想は外れかぁ。使用禁止のアーティファクトでも使ってやがるかと思ったんだがなぁ。」
アン「その可能性もなくはないわ。」
アー「少なくとも相手に直接危害を加えるアーティファクトではないけど、身体強化系のアーティファクトを使っている可能性はある。でも、ジミナに実力がないなら、自分の動きに目で追いつけず、まともに攻撃ないように思える。」
クイ「どちらにせよ、今日の試合で分かる。」
アン「対戦相手は不敗神話のゴルドー•キンメッキ。彼は一度も負けたことがない。」
クイ「ほぉ。俺は知らねえが、有名らしいな。強いのか?」
アー「強いとは言えないものの、弱いとも言えない。」
アン「良くも悪くも有名ね。私も過去の大会で3度、彼と当たっている。」
クイ「ゴルドーは一度も負けたことがない。って事は、嬢ちゃんも負けたのか?」
アン「そんな訳ないでしょう?戦えなかったのよ。」
クイ「はぁ?なんじゃそりゃ。」
アン「彼は負ける可能性がある相手とは決して戦わない。当たった時点で棄権する。ついた二つ名は『不敗神話』。彼自身はそれを嫌って、『常勝金龍』と名乗っているようだけど、」
クイ「常勝と不敗。似ているようで全く別の意味だな。」
アー「本人としては、常に勝つ為に動いた結果、負けた事がなかったと言いたいのだと思います。」
アン「そうは言っても、彼は確実に勝てる相手とだけ戦って、大会で上位に食い込んでいる。規模の小さい大会なら、優勝経験もあるわ。」
クイ「ほぉ。確かに弱い訳じゃねぇな。」
アー「弱くはないけど、強くもない。」
アー「とは言え、自分と相手の実力を見ただけで判断できるというのは、ゴルドーの強み。そして今回、ジミナ相手に逃げなかった。」
クイ「なるほどな。不敗神話ですらジミナの実力を見抜けなかったか。それとも、ジミナがアーティファクトに頼った卑怯者か。」
アン「付け加えると、不敗神話はこれまで、確実に勝てる相手とだけ戦ってきた。つまり、まだ試合で一度も本気を見せた事はない。」
クイ「そりゃ、面白くなるな。」
アン「えぇ、」
アー「果たして何が起こるのか。」
審判「四回戦第六試合、ゴルドー•キンメッキ対ジミナ•セーネン。試合開始!」
ゴルドーが開始と同時に加速し、ジミナの首に狙いを定めて剣を振るう。
そのまま首が斬られると思われたが、避けられた。
そして、避けられたことへの動揺でゴルドーが固まる。
ゴルドーが隙を見せている間に、ジミナがゆっくりと剣を抜き、構えた。
そして、ゴルドーが距離を取る。
ゴル「お前舐めてんのか!」
クイ「見えたか?」
アー「いや。」
アン「かろうじて。」
クイ「さすがだな。俺は見えなかった。不敗神話の剣が、ジミナの首を捉えたと思ったんだがなぁ。」
アン「そう。普通なら避けられるタイミングじゃない。」
アー「でも、事実避けた。」
アン「そう。ジミナは剣の当たる直前で首を鳴らした。」
クイ「首を鳴らした?」
アン「こう、コキッコキッと。」
クイ「ぁあぁ、ちょっと待て、余計に意味が分からん。」
アン「私にも分からない。彼が首を傾けた瞬間、コキッと音がして、ゴルドーの剣を避けたんだ。」
クイ「おいおい、そりゃあねえだろ。首を鳴らすために傾けたら、ちょうど剣を避けたってか?そんな偶然あり得ねえだろ。」
アー「アーティファクトだとしたら偶然で辻褄が合う。でも、」
アン「偶然じゃないとしたら?」
クイ「何だと?」
アン「彼は私ですら注視してないと見逃す速度で首を鳴らしたんだ。普通の人間にそんなことができるのか?」
クイ「っ、確かに。だが!あの速さの斬撃だぞ。首を鳴らして避けるなんて狙ってできる訳がねえ。」
アン「私も半信半疑さ。ただの偶然かもしれない。しかし、もし偶然じゃないとしたら、」
アー「あの速さで体を扱えるとすれば、動体視力も相当。狙えないとは言い切れない。」
クイ「っ、」
ゴル「気に入らねえな。お前は今、千載一遇の好機を逃した。なのになぜ平然としている。お前が俺に勝てるかもしれない、人生でたった一度きりの機会を逃したんだぞ!もっと嘆け!もっと悔しがれ!無様にあがいて這いずり回れ!そうしないのは俺に対する冒涜だ!」
ゴルドーが喚く。
なお、ジミナは無反応。
ゴル「まさか、好機を逃したことすら気づいてないのか?バトルパワー17の雑魚が、俺に恥をかかせやがって、全力で、
ゴルドーが金色の魔力を可視化する
ゴル「冥途の土産に教えてやるよ。俺のバトルパワーは4330だ。」
ゴル「邪神秒殺金龍剣!」
クイ「ゴルドー•キンメッキ。雑魚じゃねえな。」
アン「あれほどはっきり魔力を可視化できるとは、思った以上だったわ。彼が上を目指し、強者との戦いを求めていれば、もっと優れた魔剣士になっていたでしょう。」
クイ「それで、ジミナは最後、何をしやがった。」
アン「私の見間違いじゃなければ、くしゃみをしたわ。」
クイ「ん。は?」
アン「黄金の龍が眩しかったんじゃないかしら。くしゃみと同時にジミナの剣が振り下ろされて、そこにゴルドーが突っ込んで、衝突事故よ。」
アー「ん?」
(眩しいと、くしゃみってするもんだったか?)
クイ「いやいや、おかしいだろ。龍とくしゃみがぶつかってくしゃみの勝ちかぁ?」
アン「事実そうだった。ゴルドーは『千載一遇の好機を逃した』と言っていたけれど、そもそもジミナはゴルドーの隙を狙う必要すらなかった。つまり、ジミナにとっては、すべての瞬間が隙だった。」
アー「確かに、一度剣を避けた直後は、素人目に見てもゴルドーは隙だらけだった。なのに、そこを突かなかったのはアーティファクトを使っている素人らしくはない。」
クイ「ふんっ、バカバカしい。真面目に聞いて損したぜ。奴が勝ち上がってくれば、予選決勝の相手は俺だ。化けの皮をはがしてやる。」