第8話「他人事」
そして、2年が経った。
(ハイカが特待生として学園に入学した。それまでの間に、シャドウガーデンは予想通り勢力拡大した。その過程で活動拠点が移り変わったようで、カゲノー領付近から離れて王都かその周辺に移ったようだ。)
(欲を言えば、勢力拡大する前に潰したかったが、準備が不完全だったからな。今であれば、アーティファクトの修理と装備の開発も終わらせて、戦っても安全だと断言できるくらいになったからな。これからが反攻作戦だ。)
色々考えながら学園を歩き回っていると、ふと気になる光景が目に入った。
(あそこの草むらに見えるのは、アレクシアか。ブシン祭で天才の剣を使って負かしたから、だいぶ嫌われていたりする。もう一方はシ、、、シド•カゲノー?)
(見るに告白だろうが、なぜ男爵家で特にこれと言った特徴もないにも関わらず告白しているんだ?いや、他に草むらに隠れている奴が2人程いるな。ヒョロ•ガリとジャガ•イモか。なるほど、つまり罰ゲーム告白か。)
疑問も解決したので、歩き出そうとすると、
アレ「あなたのような方を待っていたの。よろしくね。」
(どうやら、シドをゼノンへの当て馬に選んだようだ。その程度で教団の影響力に勝てるわけがないだろうにな。)
そして、ある日の帰り
(生徒会の活動があると、ネスの活動時間が制限されがちなのは面倒だな。)
列車の途中駅から帰りの列車に乗ろうとする。
??「僕は適当な人間でね。もし世界の裏側で不幸な事件が起きて、100万人が死んでもわりとどうでもいい、」
??「最低のクズね。」
(ん?中から聞こえる声は、シドとアレクシアか。)
シド「けど、どうでも良くないこともある。他の人にとってはくだらないことかもしれないけど。それは人生において、何より大切なものなんだ。だから、僕は君の剣が好きだよ。」
アレ「その言葉に何の意味があるの?」
列車に乗り込むと、アレクシアがシドに剣を向けていた。
(この場合の最適解は、)
(時を戻そう。)
列車の扉を閉じて、180度Uターンする。
アレ「待ちなさい。」
(止められたか。いつにも増して面倒だ。)
アー「他人の痴話喧嘩に関わるつもりはないのですが、」
アレ「あら、何のことかしら。」
(仕方ない。教団が動くのも近いし、容疑者になるであろうシドとアレクシアの関係性でも見ておくか。)
諦めて列車に乗る。
アレ「ところで、あなたは私の剣を『好き』か『嫌い』かだったら、どちらかしら?」
アー「その二択なら、『嫌い』ですね。」
アレ「そう。」
シド「誰が何と言おうと、僕は僕の剣であり、君の剣である凡人の剣が好きだよ。」
アー「聞いてて思ったんですが、他人の剣を好きになるのは構わない。成長の糧にできるから。でも、自分の実力に満足するまで、自分の剣を好きになってはいけない。自分の剣を好きになることは、成長を止める事なのだから。僕はそう思いますよ。」
シド「自分の剣を好きでもないのに努力するの?」
アー「いずれ好きになれば良くて、今の段階で好きである必要はないんじゃないかな?」
シド「それでも、愚直に努力を重ねた剣。凡人の剣が美しいのは誰が使ってもそうなんだから、好きになるのは良いんじゃない?」
アー「未完成の美は、美を彷彿とさせるだけであって、そのものに美はないと思うんだ。」
アー「未完成の美の利点は、美を彷彿とさせることによって、色々な美の感性を持つ人に有効だと言う点のみかな。」
シド「それでも僕は、努力を積み重ねた凡人の剣。それが好きなのは変わらないよ。」
アレ「その言葉に何の意味があるっていうの?」
アレクシアがまたシドに剣を向ける。
駅に着き、車掌が扉を開けて目の前の光景に腰を抜かす。
シド「何も。」
(よし。色々と巻き込まれないように、さっさと帰るか。)
車掌の開けた扉から列車を降りる。
シド「ただ、あるとすれば、自分が好きなものを他人に否定されると腹が立つ。」
(自分が好きなものを否定された程度で何が変わると言うんだ。俺は誰が何を言おうと、そんな事気にせず無視して、悪の道を進むだけだ。)