やぁ、独立傭兵のアルノさんだよ   作:上代わちき

10 / 13
後日談です。
小話を二つ、という具合です。

……が、今回は殆どその後のあとがきが本番です。
詳しくはあとがきにて。


※余談
九話あとがき冒頭にて2024/02/04日付で文を追記しました。内容としてはここまで読んでくださった皆様へのちょっとしたお礼が主となっておりますので、暇があるときにでも読んでいただけると幸いです。


おまけ譚

 

 

 

「おーい、イグアス。ブルートゥの奴から給料が出てるぞー」

 

 待て、ヴォルタ。

 

 

 

「あん? なんだって……アルノさんか」

 

 あんだけ「二人でデートだぁ!」とかなんとかはしゃぐだけはしゃいで、勝手に疲れて寝ちまったんだよ。

 今は静かにしてやってくれ。

 

 

 

「そっちの両親をほっぽっての二人きりか。ずいぶん楽しんだようだな。あの二人、ちょっと寂しそうだったぜ」

 

 付き合わされる方にもなってくれってんだ。

 こっちはこっちで休日が潰れるし、いろんなところの買い物に付き合わされるし、めちゃくちゃ食べ歩きするし、アーケードゲームもやらされるしで大変だったわ。

 

 

 

「いいじゃねぇか。むしろうらやましいぐらいだぜ。次は俺が行っていいか?」

 

 うるせぇよ、姉貴は誰にもやらねぇ!

 

 

 

「なんだかんだで楽しんでんじゃねぇか」

 

 ケッ……。

 

 

 

 

 

「……今更だが、あの時はギリギリだったな」

 

 んだよ、本当に今更じゃねぇか。

 

 

 

 

「そりゃ、そうだが……二人を見てると。つい、な」

 

 …………勝てたんだな、野良犬に。

 

 

 

「ああ、機体は互いに滅茶苦茶になったが……あの時はアルノさんを護るための勝負だった。アルノさんが五体満足なら、間違いなく俺らの完勝だ」

 

 そうだな。

 礼をいうぜ、ヴォルタ。

 

 

 

「……明日は雪でも降るのか?」

 

 なんだよ人がせっかく礼を言ってやったってのに!

 もうてめぇなんざ知らねぇ!

 

 

 

「ったくそういうところは相変わらずだな」

 

 うるせぇ。

 

 

 

「礼をいうのはこっちだ。アルノさんには、何から何まで救われっぱなしだし。……イグアスにも救われてる」

 

 なんか、らしくねぇな。

 

 

 

 

「こういう時ぐらいは別にいいだろ。明日からまたいつも通りやればいい。仕事もあるし」

 

 

 またクソみたいな配送仕事か。

 

 

 爺さんはこの倉庫の和室でお茶して、てめぇは詐欺師野郎の真似で経理に回り、あのドーザー野郎は社長としてふんぞり返ってやがる。

 

 仕事ができねぇドーザーどもと少しはマシなレッドガンの生き残りを除いたら、俺とレッド、それからレッドんとこの兄妹だけだぞ。

 ACで配送に回ったり倉庫で雑用したりしてんの。

 

 

 

 

「仕方ねぇだろ。ルビコンで大金稼いで、さらにこっちのアリーナでも稼ぎだしたアルノさんに働けなんて言えるか」

 

 

 姉貴が一番イレギュラーだよな……。

 目に良くねぇっつってんのにずっとここの和室でゲームしやがって。

 昼間から飲み屋街で酒飲んでると体壊すぞって何回言ったことか。

 

 

 

「相変わらずだな……つーか、アルノさんが絡むと苦労人だなお前」

 

 うるせぇ、わかってるなら少しは楽な仕事寄こせっつってんだよ。

 そういうのがてめぇの仕事だろうが。

 

 

 

 

「経理も経理で苦しいんだぞ。俺以外でまともにやれるの社長だけなんだぜ。……あのドーザーがその辺まともだから何とか回ってる企業なんだよ、ここ」

 

 

 こっちのアリーナでトップ取った姉貴からの資金もあるだろうが。

 

 ……まったく、気に食わねぇよ。

 だけど、今は。

 

 

 

 

「ああ。とりあえずアルノさんを部屋に戻すか。荷物ぐらいは持ってやる」

 

 

 助かるぜ。

 

 ……重てぇって言ってやるつもりだったんだが、姉貴の体だけだとやたら軽いな。

 こんな軽い体で、ルビコンでめちゃくちゃ無理してたのかよ。

 

 

 

「なら、今度は俺らが無茶する番だろ。それが、この人への恩返しだ」

 

 …………ケッ。

 

 

 

 

 

「イグアスぅ……えへへ」

 

 

 ……人の気も知らねぇで。

 まったく、姉貴には完敗だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 義体の調子はどうだ、エア。

 

 

 

『この間の修理でよくなりました。ありがとうございます、ウォルター』

 

 当然だ。

 621が悲しむからな。

 

 

 

『素直じゃありませんね、お義父様』

 

 …………。

 

 

 

 

 

『……』

 

 

 そろそろ、技研都市が焼ける頃合いだ。

 

 ……これで、よかったのか? エア。

 

 

 

『正直なところ、なんとも……私以外の同胞を殆ど見捨てるような形になって、それでも私だけのうのうと生きていることに、含むところがないとは言えません』

 

 だが、お前が消えれば621は悲しむ。

 それは、わかっているだろう?

 

 

 

『はい。私は、私のためだけではなく、レイヴンのためにも生きなければならない』

 

 それをわかっているなら、それでいい。

 

 

 

『貴方もですよ、ウォルター』

 

 ……。

 

 

 

『貴方がいなくなったら、レイヴンは間違いなく寂しがります。……絶対に、逃がしませんからね?』

 

 ……エア。

 

 

 

『今の私に、人とコーラルの可能性を探る資格はない。『破綻』の可能性と、貴方とレイヴンが、それを奪ったのです。……ちゃんと二人には責任を取ってもらいますからね?』

 

 621も、ずいぶんと怖い友人ができたな……。

 

 

 

『誰が怖い友人ですか! まったく……』

 

 

 

 

 

 ……これからよろしくな、エア。

 

 

 

『これから『も』ですよ。ウォルター』

 

 

 




本文はここまでですが、ぶっちゃけここからが今回の本番です。
各キャラと組織の簡単な動向をまとめました。
なんとなくTRPGのアフターセッション(GMがPLにシナリオの裏話を種明かしする、PLがシナリオや互いのRPへの感想を告げ合うなどの場。今回は前者の意)のようなノリでお楽しみいただければと思います。

本当に長文なので、それだけご注意ください。



────
アルノ
ルビコン脱出後はまだ生きている両親を無理やり連れだして、ルビコンとは無縁の辺境惑星に引っ越し。
以降は、ジャンカー・コヨーテスの船を拠点にタバコキメたり酒をかっ食らったりスモークチキン食べたりギャンブルしたりしている。
ここ最近は、船の中の座敷でオンラインゲームしてる。ついでにこっちの星系でアリーナにエントリーして大稼ぎした。
流石に金が余っているのでブルートゥの企業に寄付の要領で投資している。そしたら何故かまた金が増えた。えぇ……。

ルビコンの一件で完全に傭兵を引退した。そもそも人生を買い戻したのになぜルビコンへ出稼ぎしたのかというと、イグアスを家族のところまで連れ戻すため。
ただしレッドガンの顔を立てる程度の理性があったため、当初はコーラル争奪戦に勝たせてその余韻でイグアスをレッドガンから連れ出すつもりだった。
ちなみにルビコンにおける目的はもう一つだけあり、それは「傭兵として死ぬこと」。
これは額縁通りの意味ではなく、傭兵として積み上げすぎた実績・知名度をリセットすることで暗殺リスクを低減するのが目的。
本来ならイグアスを連れ戻す算段がついたあたりで、コールドコールに暗殺とは名ばかりの工作をするように依頼していた。
いずれもルビコン星系・ベイラム経済圏を飛び出すことになったことで、事実上叶うことになった。

相変わらずイグアスのことが大好き。ラスティにもフロイトにも一切靡かない癖に、家族に対しては猫撫で声で甘えるのがこいつ。





イグアス
ブルートゥが立ち上げた運送企業で、配送員としてACにコンテナを積んで頑張っている。親とは色々確執があったが、なんとか和解できた。
ルビコンにいた時は、アルノさんの存在に焚きつけられてヴォルタと一緒の訓練は一切欠かさなくなった。
姉貴の生存ですべてが上向き……と見せかけて、実は野良犬がいるところでは原作同様拗らせていた。ダムとかチャプター2のグリッド086とかアイスワーム戦とか。
だが最後の最後で曲がりなりにも野良犬に『勝利』したことで、ようやく落ち着いた。
本作は、彼が野良犬に『勝利』するための物語である。



ヴォルタ
ブルートゥが立ち上げた運送企業で、五花海に教わった商売の知識を活かして経理として働いている。
最終決戦でイグアスをイレギュラーに引き上げたキーパーソン。G4+G5=9の図式は伊達じゃない。
ヴォルタにとってアルノさんは昔からの憧れであり命の恩人でありすごくやべぇやつである。
いやだって、アルノさんのヴェスパー部隊壊滅の戦績とか普通じゃないし……。いくらじいじと協働とはいえさ……。



レッド
ブルートゥが立ち上げた運送企業で、配送員として頑張っている。
ミシガン総長やG2・G3の死を乗り越えて、何とか生存している。
ルビコン脱出後は故郷の兄妹を無理やり連れだして、一緒に美味しいものを食べる毎日を過ごす。
アルノさんに対しては初恋にも似た憧れを抱いており、いつか自分もアリーナでトップをとるようなAC乗りになりたいとか。



コールドコール
ルビコン脱出後は傭兵を引退。暗殺者に似つかわしくない穏やかな余生を過ごす。暗部として繋がっていた企業から離脱した故である。
基本的にはブルートゥのところの倉庫にお邪魔して、アルノやイグアスとお茶を楽しんでいる。
実はブルートゥともお茶を飲む仲になり、時折ブルートゥの相談役として企業に貢献していたり。



オーネスト・ブルートゥ
ルビコン脱出後、アルノやレッドの家族も連れ出してルビコンとは無縁の辺境惑星にたどり着く。
そこでACを使った運送企業を立ち上げ、利益を出してはイグアスたちや部下たちを食わせている。
一応重度の虚言癖持ちの人格破綻者であること自体は事実で、その本性自体は危険ではある。
が、本世界線ではアルノといった悪友に恵まれているためその側面をうまく制御できている。
ヴォルタという優秀な人材や、コールドコールという新しい友人に恵まれたのもある。商売敵相手は「ご友人♡」している。



S・C社
ブルートゥが新たに立ち上げた、ACを用いる運送企業。社名の元ネタはRaD製重逆関節。同パーツが高所への物資輸送を目的にしたパーツであったことが由来。
本社はルビコン脱出に使った大型船。もう殆ど動かしていないため、ただの拠点として運用している。
船の中にはアルノさんたちの居住区やACガレージ・倉庫がたくさん並び、そして何故か飲み屋街がある。よくアルノさんがタバコ片手に食べ歩きしてる。
ここの運び屋ACは社名にもなっている重量逆関節パーツを使うことが特徴で、同パーツの特性により積載量を確保しつつ高所への輸送ができるのがウリ。
特に荒れた地に混在している個人シェルターへの配送と、トラックが使い物にならない悪路の先の都市からの仕事などが、主な収入源となっているようだ。





621
本作の彼・彼女は、実はアルノさんに対して強い敵意を抱いていた。だって、ランク1の傭兵とか倒さないと嘘じゃん?
ただでさえ序盤から実績を得るチャンス奪われるわ会敵してミッション失敗させられるわで、おまけに二戦目の時はだまし討ちAAを食らったもんだから戦意バチ上がり。
一方でエアに対する友情も本物であり、アルノ二戦目でオーバーシアーのことを偶然知った時は彼女の生存のために色々奔走した。
その結果、何故かアルノさえ倒せればすべて解決する状況に収束したため、621にとってアルノは宿敵に等しい存在になっている。
だってアルノのせいで実績が足りず地底探査に行かせてもらえなかったところで、何故かレッドガンとヴェスパーが勝手に共倒れしたから……。
あの場面では、解放戦線とヴェスパー抜きのアーキバスの動きさえ足止めできればもうどうにでもなる状況であり、だからこそ組織を足踏みさせるための称号が必要だった。
一応最終決戦でアルノに勝利したものの、イグアス・ヴォルタのコンビ戦では相打ち同然に機体をやられている。
それでもなお全員生存しているのは、コンビ戦の時点で互いに相手の殺傷を二の次にしていたため。
アルノさんの物語が「イグアスを連れ戻す」もの、イグアスの物語が「野良犬に勝利する」ものなら、621の物語は「ランク1越えを果たす」ものである。



エア
意思を持たないコーラルの焼却を見逃す代わりに、彼女だけは義体の中で生存。
何もかも両立などという甘い夢が実現しなかったが故の、苦渋の決断。
あるいはただ自分が焼かれたくなかったが故のオーバーシアーへの反発だったのかと自己嫌悪しているが、それでもレイヴンと共に在れるのが嬉しい模様。



ハンドラー・ウォルター
レッドガンもヴェスパーも事実上の共倒れであり、両企業を裏で操っていたオールマインドも無力化したため、大した障害もなく使命達成。
その具体的な方法は、技研都市のみの規模で成立した、小さなレイヴンの火であった。
なおランク1越えの件は、別に嘘をいっているつもりではないが、自分とカーラを納得させる側面もなくはなかった。
その際に621とエアの強い希望により、共にルビコンを脱出し生存。以降は、三人でまた新たな事業を始めて稼ぐ。
例えば、殺生を伴わない大会アリーナのエントリーなど。



カーラ・チャティ
ランク1越えのビジターの名声により、企業・解放戦線の妨害が殆ど来なかったため順当に生存。
思うところはなくもないが、ウォルターが大分621側に寄っているのを感じて、ある程度は察して身を引いた側面がある。
カーラは多分大会アリーナに出るビジターに全賭けして稼いだ金で、また工房にこもってる。
チャティはそんなカーラの補佐を務めつつ、ときおりビジターやエアと交流を楽しんでいる。

一応ブルートゥやアルノへの殺意は全く消えていないが、幸せそうな三人を見ているうちに馬鹿らしくなっている側面がある。
なので、偶然会ったりする分ならともかく、自分から復讐を仕掛けるようなことはしなくなった。
数年後に至っては、ブルートゥのS・C社と「オーバーシアーの情報を口外しない代わり、RaDのACを使った事業に口出ししない」不可侵条約を結ぶ。





ベイラム
本世界線においてはオールマインドの走狗。
そもそもアーキバスの支援が目的のルビコン進駐であり、壁越えの成功からしてプログラムになかった。
それでも表向きの建前を律義に守った結果、終盤いろいろガタがきた。
レッドガンについては、ウォッチポイント探査辺りで使いつぶす・生き残った場合は暗殺で口封じする予定だった。
ミシガン死亡後は、アルノさえ倒せればヴェスパーが共倒れしても、ヴェスパーの『次』の働きで無理やりアーキバスを勝たせる計画だった。
という理屈で色々工作したが、ナイルのイレギュラーな生存と暗部に詳しい暗殺者がアルノ側についたことで結局成功しなかった。
本編以後、本社の機能がさらに崩壊したためアルノを追うこと自体ができなくなった。以降アルノさん達の身の安全は保障されたも同然。


アーキバス
本世界線においてもオールマインドの走狗。
ヴェスパーが倒れても『次』を投入する用意があったが、アルノのようなイレギュラーが存在すると現場の人間が尻込みするデバフがかかっていた。
だからベイラム経由でアルノの暗殺を目論んでいたが、結果アルノ以上のイレギュラーが台頭したせいで結局重い腰をあげられなかった。


解放戦線
ラスティという強力なパイロットを失ったことで、勢力としての勢いを削ぎ殺された。
終盤レッドガンとヴェスパーが共倒れしたことで一時は巻き返しを目論んだが、ランク1越えを果たした傭兵が立ちふさがることを知ると断念。
技研都市とコーラルを焼かれた後は、仕方なくBAWSとエルカノの製品を星外に売る企業努力で外貨を得る方針に。
独立傭兵レイヴンがランク1を倒してなかったら、たかが傭兵と中堅ランクのドーザーと侮って玉砕覚悟の全員特攻を仕掛けていたかもしれない。
その場合、どさくさでウォルター・カーラ・チャティのいずれかが戦死する可能性があったかも。
本作一の貧乏くじ担当。なぜなら企業勢のように星外の物資を持ち込めたわけでもなければ、オールマインドによる支援を受けていたわけじゃないから。
つまり企業勢や独立傭兵が基地や中立地帯で美味しいものを食べている裏で、この人たちだけが美味しくないミールワームで飢えを凌ぎ続けていた。


オールマインド
コーラルリリース計画を進めるため、コーラル争奪戦の裏で暗躍。
アーキバスを勝たせることを計画の第一段階としており、そのためベイラムを操って露払いとし本命のアーキバスでコーラルを一か所に集めさせる計画だった。
だがアルノというイレギュラーによって何もかも滅茶苦茶に。あとついでにスッラも舞台裏でやられてより滅茶苦茶。
なんとか第四世代の強化人間を取り込んで立て直しを図ったが、数少ない候補であるイグアスも621も協力を拒否したためエラーを起こした。
協力者がいないのにベイラムとアーキバスを使ったアルノ暗殺計画を刊行したのは、もはやただの私怨故。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。