やぁ、独立傭兵のアルノさんだよ   作:上代わちき

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・所謂過去編です。
・アルノさん視点ではなく、アルノのハンドラー視点のお話です。
・もともと「主任」みたいなところがあるという裏設定があったため、声優ネタが多め。その割には「主任」ではなく別の名を名乗っているので注意。
・今回のアルノさんは「物静か」です。
・「一般ルビコニアンデス傭兵の話」から一部設定を流用しています。


番外編「アルノのハンドラー」

 

 

 

「よう、ヤブ医者」

「まさかあんたが来るとはな、ハンドラー・アーデン」

「見ての通りだよ。ヴェスパーんとこのダリって奴にやられちまってな。再手術でもしなきゃもうACにゃ乗れん」

 

 よう、ハンドラー・アーデンだ。

 生憎元の名前と顔は捨てたんでな、昔地球のアーカイブから引っこ抜いたゲームから名前も顔も借りた。

 

 別に「レノ」でも「アクセル」でも、それこそ「主任」とか「ヴァルドール」とか「アリー・アル」とかでもよかったんだが。

 しっくりくる名前の中で、形はどうあれ復讐に成功したのは『アーデン』ぐらいだったからな。

 その成功にあやかりたいってだけのつまらん偽名さ。

 

 

 

「こいつが513だ。資料は……ほら、これだ」

「手術前は『アルノ』とかいうスラムのガキ、ねぇ。使えるのか」

「見ての通りだ。旧世代でこいつを超える成功作はない。シミュレーションの成績も良好だ。こいつほどACに愛された奴もいないだろうよ。こんな手応えの仕事は初めてだ」

「なるほどねぇ」

 

 ギチギチに拘束衣で縛られてやがる小娘の顎を持ち上げてみる。

 すると小娘はやけに鋭い目でこっちを睨んできやがった。

 

 なるほど、カタログスペックだけのガキってわけでもないらしい。

 躾が必要そうだってのは面倒だが、悪くない。

 

 

 

 ヤブ医者にこいつを買うって告げて、すぐ手続きさせる。

 今の俺に必要なのは、こういうやばい奴だからな。

 ちょうどうってつけってなもんだった。

 

 

 

「来いよ、513……いや、アルノ。てめぇに価値を与えてやる。仕事の時間さね」

 

 

 

 

 

 

 俺は今、ベイラム方として仕事をしている。

 今傭兵稼業として最もホットなのはアイランド・フォーの方だが、そっちとは違う惑星で稼いでいる。

 

 一応ベイラム経済圏だ。

 こっちでもベイラムとアーキバスの戦争があってな、これがいい金になるんだよ。

 

 

「ハハハ、見てたよアルノ。なかなかやるじゃない? 俺が手配したBAWS製ACのおかげだけどさ」

「安値の旧型のわりに性能が良好であることは認めます。……しかし、射撃適正と耐EN装甲が低いのは問題かと」

「だーかーらそのバースト銃なんだしその機動力なんだよ。……ま、不満があるならちゃっちゃと稼いでその金でパーツを換装しな。そんぐらいは好きにさせてやる」

 

 アルノの具合だが、まぁ良好だ。

 手始めにその辺のパーツショップで売ってたBAWS製ACを使わせてスタートさせてみたが、いきなりアーキバスどものちょっとしたデカブツを難なく倒しやがった。

 

 そりゃ高い値段になるわなって納得するだけの価値を、このクソガキは示して見せたわけだ。

 もちろん、この俺がバーストライフルと組み合わせてやったからでもあるが。

 

 

 

「おんや、次は大豊からちょっとお手伝いして欲しいそうだ。……どうせ僚機の傭兵と一緒に捨て駒にされるだろうが、どうするよ」

「受注します。私には、金が必要だ」

「ハハハハ、いーじゃん、自信過剰だねぇ。だが結構。存分に稼いでこい」

 

 

 まずは腕をベイラム製にして、銃もやたらでかいガトリングやらショットガンやらを要求しやがって、耐EN性能・ジェネレータ性能を求めてかまたベイラム製の頭とコアを買いあさって。

 そりゃ勿論ジェネレータも換装するしFCSも割と初期に換装してるし。

 まぁそういうことができる程度にはどんどん稼いでいける。

 

 いやはや使命のことを忘れちまうぐらいには気持ちのいい経営ができたもんだ。

 とりあえずこいつを戦場に出せば必ず黒字でことを終わらせてくれるんだ。

 

 そりゃ最低限の配慮ぐらいはしてやろうって気になるもんだ。

 

 

 

 

「よぉ、シンダー・カーラ。これがお初ってことになるな。ハンドラー・アーデンだ」

『あんたは、うちの屑の友人か』

「いんや、その友人のハンドラーだ。どうにもうちのがそっちのと結託して悪さしたと聞いたんでな」

『ハン、飼い犬の躾もできちゃいないのにハンドラーを名乗るとはね。うちらを舐めているのか?』

「オーネスト・ブルートゥが本来卸す筈だった『スプリングチキン』と『12345』の納品先……そこにコネがあるといったらどうする?」

『……あ?』

 

「そこはアーキバス経済圏……その貧民街ってわけだが、色々あってそこの幹部とは連絡先を交換してるのさ」

『……あんた何者だ? 独立傭兵にしちゃ『ベイラム寄り』の動きをしているのに、何故アーキバス側と繋がりがある?』

「お、ずいぶんと動揺しているねぇ。不用意な詮索は嫌われるぜ?」

『……っ』

 

「まぁそれはいい。今はビジネスの話をしようじゃないか。……そちらと貧民街の関係性、俺なら仲介して元の木阿弥にしてやることができるぜ。一回のミスをチャラにしてやる」

『対価は、そっちの屑の蛮行を見逃せってことかい?』

「ついでにそっちの屑も見逃してくんない? RaD製のパーツを使うんだから、事情を知ってる人間が生き残って整備修理してくれると色々便利なんだけど? うちのアルノ強いよ?」

『……わかった。いい値で勉強させてもらうよ』

 

 

 これで、アルノとその友人君はRaDからにらまれることはなくなった。

 俺に黙って友人を作って、その友人から勝手にパーツを横流ししてもらうなんて、生意気にもほどがある。

 だがまぁ、今回ばかりは寛大な精神で許してあげることにしたのさ。

 

 他にも事情があったしね。

 

 

 

 

 

 

「乾杯!」

「私はあまり飲まないと申し上げましたが」

「あ、そうなんだ。 で、それが何か問題? ……俺知ってるよ、お前またRaDのあいつと一緒に賭博やって酒もタバコもやらかしてるって」

「……別に、成人しているからいいでしょうに」

「そりゃそうだけどさ……お前、物静かなわりに大分いい根性してるよなアルノ」

 

 

 今日の晩飯は中立地帯にある居酒屋で乾杯だ。

 ここのみそだれおでん大根がうまいんだよ。

 

 

 

「……おいしい」

「だろう? ギャンブルも酒もタバコも悪いわけじゃねぇが、そいつらだけじゃ舌が馬鹿になる。こういう美味い店の目利きも鍛えるのが、長生きの秘訣だぜ」

「……すみません、スモークチキンはありますか」

「っておい! さっきの説教聞いて真っ先に頼むのがそれかよ! よくそればっか食ってて飽きねぇよな……」

「好物ですので」

「チキン・アルノ……」

 

 

 喫煙席であることをいいことに、タバコを吸う。

 ルビコンとかいう田舎惑星が作った奴の、手持ちの最後の一本だ。

 

 味は不味いが、不思議と癖があってこういう気分の時に吸いたくなる。

 

 

 

「この数年、お前はよくやってくれたよ。RaDの商売敵とやらを崩しきったり、ヴェスパーのダリを吹き飛ばしたり。でかい問題も起こしてくれたが」

「いきなりなんですか、気持ち悪い」

「まぁ聞け。……お前さんの働きで俺の仕事ももうそろそろ一区切りになりそうなんでな、自由にしてやろうってんだ」

「自由……ですか? 自由、自由……?」

「我が強い癖に、いきなり自由になったら道に迷うのかよお前。よくわからんなおい」

 

 

 タバコをたっぷり味わいながら、どこか浮つくアルノを見やる。

 どうにもこいつ、手術前の記憶があいまいらしい。

 だから、帰る先すらわかっちゃいないんだろうよ。

 

 だが、その辺りは一応織り込み済みだ。

 

 

 

「コールドコールって爺さんがいる。ベイラムにもアーキバスにもツテがある奴だ。話は通しておくから、当面はそいつを頼りな」

「コールドコール、ですか?」

「ああ。今はアーキバス経済圏で仕事してるから、お前もアーキバス側に渡ることになる。お前は奴らから恨みを買いすぎてるから、コールドコールの『暗殺』は受けとけよ」

「なんですかそれは……」

「要するに、お前のベイラム寄りとしての名声を一度リセットすんのさ。『暗殺』とは名ばかりの偽装工作でな。その後は、爺さんと仲良くするもよし、普通の人生を歩むでもよしだ」

「普通の、人生……」

 

 これで、ひとまず身辺整理は済んだってところかな。

 こいつほどの戦力を手放すのは惜しいが、流石に元手分の働きはしてくれたからな。

 流石にこれ以上、首輪をつけたままではいられなかった。

 

 それに、今回の話は俺の納得が絡むだけの仕事だしな。

 

 

 

 

「失礼する。まだ席は空いているか?」

「お、ナイルさんじゃないか。見ての通り専用席が空いているぜ」

「礼を言う。……とのことだ。座れ、ヴォルタ、イグアス」

「うっせぇな……」

「お前こんな時だってのによくその態度を貫けるなイグアス……」

 

 

 とかなんとか言ってたら、まさかまさかのレッドガン部隊のご登場だ。

 楽しい身辺整理はここまで。

 同じ空気を吸っていて愉快な相手ってわけでもないし、邪魔にならないようさっさと会計を済ませてしまう。

 

 そういうわけで、ここでの話はこれでおしまいだった。

 

 

 

 

 

「…………イグ、アス?」

 

 

 

 

 

 

 アルノをコールドコールに預けた後。

 俺もすぐ、例の貧民街経由でアーキバスに渡った。

 ベイラム方の独立傭兵勢力として得られた情報・データを全部アーキバスに売り渡して。

 

 

 目的はアーキバスで受けられる第七世代強化手術だ。

 アーキバスの身内でもない奴がこの手術を受けるには、膨大な代償が必要だ。

 アルノが築き上げた実績と戦果があって初めて支払える程度には高い値段だった。

 

 俺には、やんないといけねぇ仕事がある。

 そのため、後一回だけACに乗る必要があったのさ。

 

 

 

「……っ……ぁ?!」

 

 だが強化手術は殆ど失敗。

 ファクトリーの『部品』よりはマシ程度って有様にまで落とされた。

 

 手術が終わってから、ずっと二日酔いのような頭痛と幻聴が治まらない。

 

 

 でも、一度ACに乗ることだけはできた。

 それだけでも、アーキバスに賭けた甲斐はあった。

 

 

 

 

 

 

 

 そろそろ、俺の仕事について明かそうか。

 

 仕事と言っても、大層なものじゃない。

 ベイラムに対するただの復讐を、格好つけて言ってみただけだ。

 

 

 

 俺には家族がいた。

 だが、ベイラムの作戦で街ごと焼き払われた。

 

 言葉にするとそんだけだが、まぁ納得できるようなものじゃなくてさ。

 だからヤケになって今の今までベイラムに自分の手でテロをぶちかます準備を重ねてきたのさ。

 

 

 

 

「っ……はぁ……もってくれよ……!」

 

 

 絶え絶えの息でACに乗り込み、作戦領域に入る。

 

 戦闘モードを起動した先に広がったのは、ベイラムのスラム街。

 目標はスラム街のすぐそばにある巨大な工場を吹き飛ばすことだ。

 そこが俺の街を焼き払った責任者の新しいお城で、お互い顔も見ないまま工場ごと爆破してやる算段だ。

 

 本来工場を吹き飛ばすには条約やら何やらで阻まれているが、今回に限っちゃ関係ない。

 これは表向きアーキバスとは無関係の、ベイラムに個人的な私怨があるテロリストの犯行ということになる。

 ヴェスパーは一切関与しない。

 そういう作戦だ。

 

 

 

「お、おいアーデン。あんた大丈夫かよ……」

「黙れよ。……俺のことは、いい。あんたは、あんたの段取りを進めろ……そのためのRaDパーツだろうがっ」

 

 

 この作戦の実働部隊は、個人的にベイラムACに駆る俺と『貧しさ』故にRaDのパーツに頼っている例の貧民街の勢力のみ。

 

 だからまぁ、アルノとその友人君がやらかした時にRaDと貧民街の仲を取り持ったのは。

 ここでお仲間となる貧民街の奴らをRaDパーツで少しでも強くしてやるためって意味合いの方が強いのさ。

 

 比較的建物と障害物が多い市街地戦では、跳躍力に優れる逆関節パーツの方が有利な場合がある。

 そういう理屈さ。

 

 

 

 

「……っ……みえて、きたぜぇ」

 

 今回の作戦は、表向き出自不明の巨大戦艦を突っ込ませるものだ。

 工場にぶつかり次第、内部に積んだ爆弾で吹き飛ばす。

 そういうもんだ。

 

 逆関節ACを使う部隊は下に降りたり甲板にとりつくレッドガンの奴らを撃破していく囮役。

 通常の二脚を使う俺は、船に乗って本命から船と爆弾を護り、時が満ちたらACに載せた拡散バズーカですべての引導を渡す。

 そういう布陣の作戦だ。

 

 

 

 だからまぁ、何かが来るのはわかっていた。

 レッドガンがここにいるのも、な。

 

 指をくわえて見ていると死ぬのは奴らだから、レッドガンとの敵対は不可避。

 そのために、ここまで備えたんだ。

 

 

 

 

「ハンドラー。そこにいるのは、貴方なのですね」

「お前は……アルノっ?!」

 

 だが実際に来たのは、ベイラム製パーツとRaDの重量逆関節パーツを組み合わせる『スモークチキン』。

 俺の手元から離れて、アーキバスに渡った筈のアルノだった。

 

 

 

「ハンドラー。私は、貴方を消さなければならない」

 

 

 

 

 

 

 俺のAC「キャスケット」は、典型的なベイラム製ACだ。

 ヴェスパーのダリにしてやられるまでずっと愛用していたACで、この時までずっと大切に保管していた宝箱だ。

 フレームはすべてメランダーで統一し、武装はベイラム製長身ハンドガン二丁と六連ミサイルを搭載。

 とにかく超近距離で相手の体勢を一気に崩して、最後の武装である拡散バズーカを至近距離でぶちあてる超近距離射撃機だ。

 

 だからまぁ、俺は体の消耗を無視してでもアルノに近づかなきゃならん。

 

 

 

「てめぇ、なんの、つもりだ……今のお前は、アーキバスに……」

「ベイラムから大金を積まれました。独立傭兵とは、そういうものでしょう?」

「くっ……そう、だわな……っ!」

 

 

 アルノのAC「スモークチキン」も大概近距離戦を意識している。

 ガトリング・重ショットガン、そして俺と同じ拡散バズーカを搭載しているんだから、自然とそうなる。

 

 良くも悪くも、あいつの本性は凶暴なもんだ。

 だからまぁゴリゴリの近距離戦が性にあったんだろうよ。

 

 

 

 だが、今回の動きは違う。

 

 

 

「なんだ……その動き……お前に、何があった……!」

「まぁ色々と。ですが、敵に話す道理はありません」

「クソ……ただでさえ強かったのに、さらに強くなりやがったなぁ……!」

 

 アルノは逆関節特有の長いQBで距離をとり、ただひたすら十連ミサイルを展開し続けている。

 本場のミサイラーほどの火力はないが、俺のようなACにはその戦法は面倒で仕方ない。

 ひどくクレバーで、でもいつもの荒々しい動きとは違う何かを感じる。

 

 頭痛と幻聴のせいで正確には図れないが……今のアルノからは冷静・冷酷とでもいうべき『冷たさ』ってものを感じる。

 

 

 

 

「おらぁ! これで死んだか!!!」

「浅はかな。誰が死んだと、言うのです?」

「っ……?!」

 

 なけなしの切り札であるパルスアーマーを展開し、強引に取りついてハンドガンとミサイルで体勢を崩し、ようやっと得たチャンスに拡散バズーカを叩きこむ。

 だがアルノはそこへアサルトアーマーを展開して、弾幕をすべてなかったことにしつつこっちにショットガンと強烈な蹴りのコンボを繰り出しやがった。

 

 

 

「っ……まだだ……こいつさえ届いたら、やっと仕事が終わる……解放、されるんだ……!」

 

 

 それで俺の機体に大分ダメージが入っちまったが、まだ終わらねぇ。

 アルノは距離をとって十連ミサイルの弾幕を展開してくる。

 こっちは近づくしかねぇが、そうしたら今度はガトリングと拡散バズーカの弾幕が飛んでくるのが目に見える。

 

 俺にとっちゃ苦しい展開以外の何物でもなく、勝ちの目は見えない。

 だがそれで終われるほど、頭の出来は良くないんだ。

 

 

 

 

 

「まだ続けるのですか、そのACで」

「っ……ベイラムが、奴らが、火を点けたんだ……! 俺の、全てに……!」

 

 認めよう。

 俺の目的は、おそらく他者からすればとんでもなく稚拙で自分勝手なものだ。

 家族の死なんてありきたりな話を飲み込み、何とか苦しんで今日を生きているのが大勢なこの情勢で、それでもこの動機でここまでやれる狂人は俺ぐらいしかいない。

 俺は俺の納得の為だけに、無関係の奴を無意味にぶち転がすテロリストなんだろうよ。

 

 

 

 

「……」

「おかげさまで、俺は全部空っぽだ! もう何もかも燃え残っちゃいねぇんだよ……!!!」

 

 

 だがそれでも、俺には家族がいたんだ……!!!

 家族を焼き殺したあいつらが、どうしても許したくないんだ……!!!

 

 

 

 

 

 

 

『……イグ、アス?』

「あ……?!」

 

 

 それは、まさしく冷や水だった。

 強化手術の失敗で聞こえるようになった幻聴の中で、アルノの声が聞こえた。

 

 頭痛と幻聴で苛まれている俺でも、わかった。

 これは、家族に呼びかける類の声だった。

 

 

 

 俺にはこの声に聞き覚えがある。

 あの時聞こえていたくせに、聞こえていないふりをしたツケなのか。

 だから今聞こえたんだろう。

 

 

 

 

 

 

「俺には、家族がいた」

 

 笑っちまう。

 たかが幻聴一つで、一気に気力を削がれちまった。

 

 

 

 

「けど」

 

 簡単な話だった。

 あいつも、俺と同じ理由で戦っていた。

 今までとは違い、今のあいつには自分以外の何かを背負って戦っていた。

 

 それが、あいつの『理由』なんだろう。

 

 

 

 

「お前にも、家族がいる、か……そりゃ、勝てんわな……」

 

 

 新世代型の失敗作。

 旧世代型の成功作。

 

 既に家族を亡くした奴。

 まだ家族が生きている奴。

 

 やけになってその家族を殺そうとする親父と。

 冷静にその家族を護ろうとする娘。

 

 

 どっちに分があるかなんて、わかりきった話だ。

 結局、俺は戦う前から負けていたってことだ。

 

 

 

 

 

「アル、ノ……」

 

 だから、この結末は仕方のないことだ。

 まったく、お前は本当に強い奴だよ。

 アルノ。

 

 

 

 

 

 

『ご友人。船の制御システムのハッキングが終わりました』

『こちらも仕事を済ませた。まったく、暗殺者コールドコールを顎で使うなど、高くつくぞ?』

「助かったよ、みんな」

 

『しかし、これでよかったのでしょうか……』

『私はもうすでに奴から縁を切られてしまった。今更勝手に死なれた所で関係はないが……』

「でも、私は選んだよ。ハンドラーではなく、イグアスが生きていける未来を選んだ。その結果として、ハンドラーが死んだだけだよ」

『アルノ……』

 

 

 

「さようなら、ハンドラー。貴方はこの街とイグアスを殺そうとした……でも、嫌いではありませんでした。今までありがとう、ハンドラー・アーデン」

 

 

 




※原作ネームドじゃなかっただけ/無口だったから喋らなかっただけで、コンゴもしっかりアルノさんに加勢して貧民街のRaDACを撃破していました。
※2024/04/16 ブルートゥたちを労うセリフを刷新。「二人共」→「みんな」
→喋らなかっただけでコンゴもその場の通信にいてくれたということにしました。


改めて、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
アルノのハンドラーについては一定以上のネタがありましたが、今回の執筆にあたり当初の予定とは少しずれた仕上がりになってしまいました。
例えばACネタなら偽名をACVの「主任」にするべきところを、復讐というテーマに引っ張られてFF15の「アーデン」という名になってしまったところとか。
それでもアルノさん、ひいてはAC6の世界観を広げるに足る内容であると考え、今回の配信に踏み切りました。

以下、ハンドラー・アーデンとAC「キャスケット」のデータをまとめました。例によって長文ですので、ご了承ください。



ハンドラー・アーデン
独立傭兵アルノのハンドラーとして知られる男。

アーデンはアルノと共にベイラム寄りの独立傭兵として活動し、共に多大なる実績を積み重ねるほどの戦果を挙げる。
その一方、アーデンは方々と人脈を築き上げており、それ故に彼の存在を恐れる者は少なくない。

その人脈の中には、何故かアーキバスの影がちらつく者もいたという。



AC // キャスケット
ハンドラー・アーデンが、ダリに敗北して再起不能になるまで/第七世代の再手術を受けた後に使用した、ベイラム製の中量二脚AC。
「キャスケット」とは「宝箱」を意味し、アーデンはそのつもりで名付けた。が、他にも「棺」を意味する。

武装は、長銃身ハンドガン二丁・六連ミサイル・拡散バズーカ。
フレームはすべてベイラム製メランダーで統一された、外見の上では平凡な機体。
ブースターは通常推力に優れる「BST-G2/P06SPD」、FCSはミサイル性能を優先した「TALBOT」、ジェネは大豊製「明堂」。
拡張機能は「パルスアーマー」。

とにかく相手に張り付くことが大前提の「近距離射撃機」。フレームは中二なのに、実はブースト速度350をギリギリ超えている機動型。
二丁拳銃と六連ミサイルの波状攻撃で一気に相手の体勢を崩し、至近距離で拡散バズーカをぶち当てることでダメージソースとする。
戦術の都合上被弾を無視できず、それを拡張機能のパルスアーマーで補う構成。



メタ解説
アーデンは表向き「ベイラム寄り」として活動しており、キャスケットはその特色が強く出ている機体構成。
メタ的にはダンテやアーカードみたいに二丁拳銃したかっただけ。だが近距離で使えばバ火力が出るのがAC6のハンドガン。一応実機では仮想敵であるレッドガン全員をアリーナで撃破済み。
おそらくダリに倒される前/そもそも家族をベイラムの作戦で焼かれる以前においても、基本はベイラム側だったと思われる。
だが上述のベイラムの裏切りによりアーキバス方に寝返り、第七世代強化手術を経てベイラムの巨大工場に対してテロを仕掛けるに至る。
恐らくは、色々紆余曲折して復讐を建前にしただけで「死にたい」のが彼の本質。

声優ネタも少なくない本作アーデンだが、キャラとしての本質は「ハンドラー・ウォルター」の対象となるイメージで考案したもの。
物静かなウォルターに対し、割とうるさいアーデン。
621のハンドラーと、アルノのハンドラー。
趣味が不明なウォルターと、飲み屋で楽しむ余裕は取り繕うアーデン。
友人の使命のために戦うウォルターと、家族の復讐のために戦うアーデン。
友人のために戦う621に倒される(可能性を持つ)ウォルターと、家族のために戦うアルノに倒されるアーデン。
燃え残った全てに火を点けようとするウォルターと、火を点けられて全て燃え残らなかったアーデン。
不思議なことに、ただただ過去に囚われている節があり、自力では抜け出せない癖に、その地獄から解放されたい側面を思わせるところは共通している。
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