やぁ、独立傭兵のアルノさんだよ   作:上代わちき

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 お久しぶりです。
 タイトル通り、ラスティ生存IF絡みの後日談エピソード三本立て+αです。

 内容の性質上"お祭り騒ぎ"感を演出したくて「一般ルビコニアンデス傭兵の話」と「ブレイン傭兵事務所へようこそ」と"部分的にクロスオーバー"した内容となっています。
(二作とも筆者が描いてる、AC6の別作品)

 要するに『なんでも許せる方向け』って奴です。
 よろしくお願いします。


IF番外編「もしラスティ達が生き残っていたら」

 

 

 

◆IF「生き延びたラスティ」◆

 

 

『おおーっと! サム・ドルマヤン選手がパルスブレードを決める! これは勝負あったか?!』

『いえ。相手選手はアサルトアーマーを発動しました。これは苦しい』

『ですがサム・ドルマヤン選手はナパームランチャーを使ってうまく距離をとりました。まだまだ互角の勝負は続きそうです』

 

 

 やぁ、元独立傭兵のアルノさんだよ。

 現在はルビコンともベイラムともアーキバスとも関係のない、けれども一定のつながりぐらいはある中立のアリーナで稼いでいる。

 

 ……のだが、この日は妙な縁と再会できた。

 

 

 

「すごいねぇ。あの解放戦線のおじいちゃん、以前見た時は話が通じないおじいちゃんだと思っていたけど、なかなかどうしてやるね」

「技研都市と集積コーラルを焼かれた時から、まるで憑き物が落ちたように落ち着いた。無論、相手選手の独立傭兵が強いというのもあるだろうが」

 

 解放戦線。

 どうやら"何らかの奇跡"があったようで、彼らはまだ生きていたんだ。

 

 そして、ボクの隣に座るこの男も。

 

 

 

「ふむふむ。ダブルランセツに六連ミサイル、そしておじいちゃんと同じパルスブレード。相手の独立傭兵の機体、君ならどう崩すかい? 第四隊長殿」

「ラスティと呼んでくれ、アルノ。その称号は、もう過去の話だ」

 

 

 

 

 

 ヴェスパー第四隊長、ラスティ。

 ルビコンで仕事をしていた時に出会った男だ。

 

 ヴェスパー番号付きということで、アーキバスからの仕事を持ってきてくれたんだ。

 当時のボクはベイラム寄りとして活動していたけど、解放戦線を攻撃する仕事だったから引き受けたんだ。

 まぁその結果、アーキバスから解放戦線に寝返る感じになって、以降は解放戦線からも仕事を貰えるようになったんだよね。

 

 

 

 今だから言える。

 その正体は、ルビコン解放戦線の一員。

 その具体的な立ち位置までは聞いていないけど、まぁ事実上のトップに物言える立場であり、そして同時にアーキバスに対するスパイ活動をもこなしていた傑物だ。

 

 だが何らかの計算違いがあったのか、いつの間にかアーキバス内部に粛清されていてね。

 だからファクトリーの部品にされてしまって、そのまま死んでしまったのかと思ったけども。

 

 

 

 そうだね。

 おそらくはここでも"何らかの奇跡"が起きた。

 

 ファクトリーの部品は、うまいこと解放戦線の誰かに回収されて、そして治療された。

 その治療は長いもので、コーラル争奪戦に復帰することはついになかった。

 それでも、ラスティという人間が生き延びることについては、成功したらしい。

 一歩間違ったらそのまま死んでしまう"IF"の方がありえたのに、大したものだよ。

 

 

 

「機体といえば、君の機体はルビコンの時から大きく様変わりしたねぇ。同じパーツなの、左手の武装だけじゃんね」

「『スティールヘイズ・オルトゥス』か。もともと私はアーキバスから離脱する計画で、その後に『ルビコンを解放』するために使う予定の機体だったんだ」

 

 

 

 スティールヘイズ・オルトゥス。

 このアリーナで再会した時に、ラスティが使っていた機体。

 

 

 特徴的なのがエルカノ製のフレームで、これとんでもないことに"ファーロン"と"シュナイダー"と協力して作り上げたフレームらしい。

 普通パーツってのは単独の企業が製造するのが殆どで、部分的に他社から技術を奪ったもの解析する……というのがせいぜいという具合だ。

 それだけ、当時のラスティには大きな期待が寄せられていたってことだね。

 

 また武装には、同じくエルカノ製のニードルガン・ニードルミサイルが載せられている。

 ラスティお得意のVCPL製レーザースライサーは、元来のスティールヘイズから引き継がれている。

 そして最も興味深いものとして、ベイラム製の実弾オービットも備えられている。

 もしかしたら、ベイラムの中にも解放戦線と繋がるような後ろ暗い連中がいたかもね。

 

 

 総評するとラスティの好む機動性を残したまま、よりタイマンに特化したようだね。

 ボクに言わせればもう少しやりようがあるように思えるけど、少なくとも『現在』についてはエルカノのパーツを強調する意味合いが強そうだ。

 

 

 

「今はエルカノの首輪付きってことか」

「アーキバスの口枷よりは着け心地がいい。私が勝てば勝つほどエルカノに入る金は増えて、みんなの生活は少しずつマシになる」

 

 

 そう。

 今のラスティは、エルカノの看板を背負うアリーナ選手だ。

 

 現在ルビコンにコーラルは殆ど残されていない。

 ルビコン解放戦線はコーラルの輸出やそれに関連した利権で飯を食おうとしたようだけど、オーバーシアーの働きでその計画は大きく狂った。

 だから別のアプローチで、外貨を得ることになった。

 

 その一環が、エルカノをスポンサーとした選手の選抜。

 エルカノ製の武装とパーツを使いこなすラスティの戦いをテレビに見せることで、エルカノ製パーツの販売ルートを拡大する。

 その方向で、解放戦線の皆を食べさせようとしてるみたいだ。

 

 

 

 おそらくここまでこぎつけるにはかなりの苦労をしたんだろね。

 今のラスティの機体にはファーロンとシュナイダーの協力があるけど、おそらくその二社の当初の目的も多分コーラルだ。

 だがその目論見が外れてなおも今のラスティとルビコン解放戦線に協力しているからには、ラスティ側は相当うまく立ち回ったのだろう。

 

 それでもコーラルを使う当初の計画と比べると相当に金回りは苦しいだろうけど。

 まぁ、うまいことなんとかやりくりしているようだ。

 

 

 当時のルビコンでそれなりの付き合いがあった身としては、まぁ少しだけ安堵したとは言っておこうかな。

 場面場面で敵対したり命のやり取りをしたこともあるけど……このアリーナが中立地帯であることもあり……ひとまずはお互いに水に流すことにしたのさ。

 

 

 

 

「さて。それでいったい何用だい?」

「いやなに、どうせなら少し"商談"に付き合ってほしくてね」

「商談?」

「ああ。私がエルカノの看板を背負うように、今の君はS・C社の看板を背負ってアリーナに参加しているのだろう?」

「S・C社。まぁ、そういうことにはなるね」

 

 S・C社。

 ルビコンを脱出した後、私の悪友であるブルートゥの奴が立ち上げたACを使う運送企業だ。

 これはジャンカー・コヨーテスとレッドガンの生き残りを食わせるための企業で、イグアス達もここで頑張って働いている。

 

 私は、その企業の看板を背負って戦うという体裁でこのアリーナに出入りしている。

 ラスティが言いたいのはそういうことだね。

 

 

 

「だから、そちらの重役に手紙を届けてほしい。エルカノの重役でもある、私の『上官』からお言葉がある」

「エルカノ……解放戦線の重役から、ボクのところの重役にねぇ。……君、割となりふり構わずだね?」

「仕方ないだろう? みんな一生懸命にやっている。私も、使えるものは何でも使わないと」

 

 「それに」と間をおいて、ラスティは小さな箱を取り出した。

 

 

「……それは?!」

「君の興味を引く算段は何とか整えてから、この会談に乗り込んでいる。受け取ってくれ」

 

 それはタバコだ。

 昔解放戦線から仕事の報酬でもらった、あの限定タバコ。

 

 ルビコンの脱出を機に解放戦線とは縁が切れたものだから、当然解放戦線経由で入手していた限定タバコとも縁が切れていた。

 一番好きなタバコ……とまではいかなくとも、それなりに思い入れがあるもので、吸えるならまた吸いたいと思っていたんだ。

 

 

 

「……君は悪い男だねぇ。まさか"また"タバコでボクを釣ろうとは」

「だが、好きなんだろう? この話がうまくいけば、君のところにエルカノとBAWSの商品が行くようになる。その商品の中には、そのタバコもある」

「……いいね、君。ルビコンでスパイやってた時より、ずっといい」

 

 

 ラスティに勧められて、その場で一本吸う。

 

 公共の場ではあるが、地球と違ってタバコ規制は撤廃されている場所だからね。

 気兼ねなく吸える。

 

 

 

 

「どうだ。ルビコンのタバコは」

 

 久々に吸った限定タバコは、相も変わらずクソ不味い。

 でも、不思議なクセがあるところも相変わらずだった。

 

 

 

 

 

◆IF「生き延びたフロイトとラスティ」◆

 

 

「む、ここにいたかアルノ」

「っ……お前は?!」

「あれ、いたんだフロイト」

 

 ちなみに。

 実はフロイトの奴もふっつーに生き延びていた。

 しかも"妙に落ち着いた"精神状態だったものだから、最初は偽物を疑ったもんだよ。

 

 

 

「ん、お前は……っ?!」

「……っ。……もうすでに終わったことだ。ここで騒ぎを起こすのは、互いのためにならない」

「っ……それもそうだな。言いたいことがあるなら、アリーナで聞こう。今のお前なら純粋に楽しめそうだ、ラスティ」

 

 

 最初はラスティと妙な雰囲気になりかけたけど、わざとタバコの煙を吹きかけて落ち着かせた。

 ラスティはともかく、フロイトはすごい嫌そうな顔をしていた。

 どうやらタバコの匂いがだめらしい。

 

 その割に吸うのをやめろと言ってこないし、その場から離れようともしないし、よくわかんない奴だ。

 確か酒……それもエナジーカクテル……はいけたんだっけ。

 

 

 

「それで、そっちは何かあったのかい。フロイト君」

「スネイル達が話し込んでいてな。……ハンドラー・ウォルター達とばったりだ」

「うっわ、あの時の連中勢揃いかよ。まさかあっちでも一色触発かい?」

「いや。……俺とスネイルの『古い友人』とその『助手』のことは以前アルノに話しただろう? そいつ絡みで……まぁ、わりと"穏やか"な話をしている」

 

 

 ラスティが「仲がいいんだな」と言いたげな目を向けて来た。

 まぁ、フロイトとはもうすでにアリーナで何度か戦っているからね。

 

 先述通り、その時のフロイトはルビコンの時と比べてかなり落ち着いていた。

 私が見るに、『古い友人』の件でうまく戦闘欲を抑え込めた……という感じだろう。

 

 

 その『古い友人』については……まぁ、"ここ"で話すのはちと"無粋"かな。

 まぁラスティの生存と同様に"何らかの奇跡"が起きたようだ……とだけ。

 

 

 

「じゃあ適当に世間話でもするか。惑星フィウミチーノでアーキバスが敗れたと聞いたけど?」

「ああ、あれか。俺達の仕業だ。この間の仕事でようやくケリがついた。複数の惑星を出入りする羽目になって、意外に長い仕事だった」

「やっぱり」

「質問をしてもいいだろうか。フロイト、お前はやはりアーキバスを……」

「ああ。完全に裏切った。今の俺とスネイルは、もうアーキバスとは無縁だ。……フィウミチーノ支部に関しては別だが、まぁここでは無関係だろう」

 

 

 ラスティが割とド直球な爆弾を投げつけたのは、場の雰囲気を理解したからだからか。

 まぁ過去のことだし、この場にボクという緩衝材があるのをわかった上で何かの賭けに出たのかもね。

 

 

 フロイトは、もうすでにアーキバスから独立している。

 先程の『古い友人』の助けを得て、スネイルともどもルビコンとアーキバスから脱出したらしい。

 

 以降は独立傭兵として、特にアンチアーキバスとして活動しているそうだ。

 

 

 

 

「……詮索するようだが、何故? 特にスネイルが何故そうしているのかが疑問だ」

「アーキバスはスネイルを粛清しようとした。たかがコーラルを取り逃した程度の言い訳で、ファクトリー送りにしようとした。実に愚かな選択だ」

「こいつこう見えて意外とあのアーキ坊やの回し者のこと好きなんだよ。だから友情に目覚めて、スネイルを連れてアーキバスを出たってわけだ」

「語弊がある言い方だ。スネイルには能がある。あいつがいれば面倒ごとはすぐ片づけてくれるからな。あいつほど侍らせる価値のある男はそうそうない。それだけだ」

「わお、聞いたかい? "侍らせる"だってよ」

「茶化すな」

 

 

 ふとラスティの方を見ると、目を丸くしていた。

 この妙に落ち着いた雰囲気のフロイトを、まじまじと見て呆けていた。

 

 

 

「……お前は、私が思っていたよりは人間的なんだな。意外だったよ、フロイト」

「だから茶化すなといっている。俺とスネイルが"そういう仲"だと見られるのは、流石に虫唾が走る」

「もう手遅れだと思うよ。その発言からして邪推してくれって言っているようなもんだぜ」

 

 

 

◆IF「ラスティとイグアス」◆

 

 元ベイラム寄りと元ヴェスパー部隊による会合……というか、ただの近況報告会……は割とすぐ終わった。

 

 なんせフロイトを呼び戻しにあの眼鏡が来たからね。

 眼鏡はラスティを見た途端ぎょっとした顔をしていたが、それ以上にボクの顔を見た瞬間に顔を青白くしていた。

 

 そんなにひどいこと、あいつにしたっけ?

 そう言ってやったら、フロイトが「流石にそれはスネイルに同情するぞ」とツッコミしてきた。

 お前そんなキャラだったっけ……?

 

 

 

「やっと見つけたぜ。姉貴、いつまでほっつき歩いて…………あ?」

 

 ちなみにボクの方にも迎えが来た。

 イグアスだ。

 

 その時点でフロイトとスネイルは立ち去った後だったから、そちらとの一悶着はなかった。

 いやまぁ過去にも似たようなやりとりやって、ひとまずは冷戦状態程度には落ち着いているから、今更何か起こることはないけれども。

 まぁ面倒ごとが減るに越したことはないね。

 

 

 

「てめぇは……ヴェスパーの犬野郎か!」

「君は、アルノのご令弟か。確か、イグアスといったな」

「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇ!」

 

 まぁそれはそれとして、今度はラスティと一悶着。

 だって未だにラスティ君はその場に留まっていたからね。

 

 

 

「おい犬野郎! てめぇんとこの爺がガレージに戻って騒ぎを起こしてやがるぞ」

「帥父なら、相手の独立傭兵と会談したいと前々から言っていたからな。多少はうるさいだろうが、私がいなくとも騒ぎは収まる筈だ」

「姉貴に近づくんじゃねぇって言ってんだよ! その耳は飾りか」

「いやだって、ボクが誘ったし」

「……は?」

 

 ラスティがこの場に留まった理由は一つ。

 せっかくだから、ちょっと近くのおでん屋で奢ろうと思ってね。

 

 

 

「なんなんだよ……」

「いやぁちょっと懐かしいものに出会えてね。お互い時間があるそうだから、ラスティに昔話をしようと思ってさ」

「昔話だぁ? そいつに聞かせる道理は……」

「ハンドラー・アーデン。昔のボクの飼い主。……イグアスも聞きたいって言ってたでしょ? "このタバコ"と、みそだれのおでん大根のセットなら、喋ってもいい気分なんだ」

 

 ボクにとって……私にとって、さっきラスティから貰ったこのタバコは、そういうものだ。

 あらゆる意味で、思い出のタバコなのさ。

 

 

 

「……まぁ、そろそろ腹が減る時間だとは思ってたが」

「いい子だイグアス。じゃあ移動しようか」

「おでん屋はC9エリアだ。一度前を通っている。私が先導しよう」

「仕切ってんじゃねぇよ犬野郎が!」

 

 

 イグアスがラスティに噛みつき、ラスティは涼しげにのらりくらり。

 だから余計にイグアスはイラついて、さらに突っかかる。

 

 割とあれな光景の筈なんだが、なんだか微笑ましいのはどうしてだろうね?

 

 

 

 

◆IF「イグアスとレイヴン」

 

「あ、そういえば」

「なんだよ姉貴」

「いやね、今このアリーナにルビコンの時の奴らが勢ぞろいしてるんだよ。……多分"少年"もいるぜ?」

「……野良犬か」

 

 

 おでんを食べ終えて、ラスティと別れた後。

 

 

 なんとなく思い出した。

 ボクとイグアスに、妙な因縁のあるレイヴン。

 奴も、多分このアリーナのどっかにいる筈。

 

 奴の所属するオーバーシアーとはもう"停戦協定"は結んであるから"挨拶"ぐらいはしてもいいじゃないかと思った。

 ボクはともかく、どうにもイグアスはレイヴンに執着があるようだったからね。

 

 

 

「仲良しこよしは趣味じゃねぇ。あいつと会うつもりはない」

「おや、それはどうしてだい?」

 

 かと思えば、どうやらそんな気配はなかった。

 

 

 

 

「野良犬とのケリはもうついた。今更あいつと話すことなんて何もねぇよ」

「……そっか。なんか、かっこよくなったね。イグアス」

 

 

 結局オーバーシアーとの連中に会うことなく、アリーナを発った。

 妙にルビコンのことを思い出させる一日は、こうして終わったのさ。

 

 穏やかで楽しい一日だった。

 

 

 




 イグアスのラスティに対する呼び方、これでよかったのか不安。
 何気にこの二人、(筆者が把握する限り)原作ではろくに絡んでいないのよね……これも二次創作、IFだからこそって奴だと思います。
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総合評価:4796/評価:8.86/完結:20話/更新日時:2024年05月18日(土) 12:58 小説情報


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