やぁ、独立傭兵のアルノさんだよ。
あれから色々仕事をやりまくってるよ。
ときたま『弁えていない』仕事もあるにはあるけど、ここ最近ボクのスタンスを理解したのかちゃんと『弁えている』仕事も増えてきたね。
例えば解放戦線からアーキバスに抵抗する類の仕事をやったり。
報酬としてまた例のタバコを一カートン用意してくれたから、ほいほい釣られちゃったよ。
釣られちゃったのはいいけど、まさかまさかのランク2のヴェスパー首席隊長が出張ってくるとは思わなかったよ。
アセンの完成度のわりにやたら動きがよくて、なんとか勝ちはしたけどトドメは刺せなかったなぁ。
「お前が独立傭兵アルノか。ずっと、やりあいたいと思っていた!」とか。
「お前の戦い方、まさしく自由な鳥だな!」とか。
「なるほど、俺を差し置いてランク1を名乗るだけはある……!」とか。
「待て、まだ俺は戦える……! お前には、勝ちたいんだ!」とか。
やっけに奴の声が耳に残ったなぁ。
ちょっとチンピラ相手にライバル意識燃やすの、できればやめて欲しかったんだけど……。
例の保護者みたいな第二隊長殿、めちゃくちゃ頭痛そうな声してたよ……。
一方で、意外にもアーキバスからも仕事が来た。
これは惑星封鎖機構相手のが殆どで、燃料基地とか旧宇宙港とかを強襲する仕事でいっぱい稼いだね。
こちらもちゃんとベイラムを叩く仕事はボクに振ってこなかったから、まじめにさせてもらいましたとも。
封鎖機構の連中もボクの『スモークチキン』を見て「寄せ集め」とかいうから、なおさら仕事の熱はこもっちゃうよね。
気が付いたらガトリングが焼け付いていて、封鎖機構側の拠点はぺんぺん草も残らないような有り様になってたよ。
とまぁそんな感じで。
今日もアルノさんはのんびり傭兵生活を満喫しているというわけさ。
いやはやガレージヘリに搭載されたACシミュレーターもなかなかゲームとして楽しいもんだねぇ。
気まぐれに買って開けたエナジードリンクも美味しいやー。
『通信が入っています』
『アルノ。緊急事態だ。お前の友人が、RaDからの襲撃を受けている!』
◆
「新しいご友人……贈り物をくれるのですね……」
「やっとか。ビジター、トドメを……っ?!」
ギリッギリだ。
ほんっとうに、ギリッギリ間に合った!!!
「ランク1、独立傭兵チキン・アルノ! ……まずいことになったよ、ビジター!」
「ふぅ……。やってくれたね、君達」
オーネスト・ブルートゥ。
ボクの、数少ない友人の一人。
よくも、彼を殺そうとしてくれたね。
カーラ。
そして、少年。
「アル、ノ……!」
「後は任せてブルートゥ。……すぐに、片づける」
独立傭兵レイヴン。
まずは君からだ。
ここで、死んでもらう。
「気をつけなビジター! 奴の使う逆関節脚部は、そこのクズが横流ししたうちの商品だ。そいつが繰り出す蹴りは、他の脚部パーツと比べ物にならないよ!」
ガトリングガンと十連装ミサイルを押し付けながら、一気にABで詰めてブーストキックをぶちかます。
が、忌々しいカーラの助言のせいか一番肝心なところは避けられちゃった。
その代わり、拡散バズーカをぶち当てて一気に奴の姿勢安定を奪う。
後は、重ショットガンでさらに怯ませて、そこへ今度こそ重逆の超強化キックをぶちこむ。
それで、レイヴンは面白いぐらいに吹き飛んでいった。
「っ?! アサルトアーマー?!」
さらにリロードが終わった重ショットガンで追撃してやろうかと思ったら、レイヴンがアサルトアーマーで反撃を始めて来た。
重ショットガンの弾はかき消され、こちらも後方へのQBを強いられた。
が、おかげで少しは頭が冷えてきた。
「……ふぅ。反撃を仕掛ける元気があるのには感心するけど、そろそろもたないんじゃない?」
「何が言いたいんだい? クソ女」
「わぉ、こわいこわい。そんなにも例のグリッド襲撃が堪えたのかい、シンダー・カーラ?」
「私が……『持ち逃げ』したものの中には……『オーバーシアー』についての情報も、ありました。……ふふふ、酷く堪えた、筈です……」
「ちぃ……!」
ボクの目的は、ブルートゥの救出だ。
レイヴンへの復讐じゃない。
「この状況に至るまでのことは、じいじから聞いている。そこの少年、ここへ来るまでにこいつが仕掛けたトラップをかいくぐってきたんだろ? 結構苦しいんじゃない?」
「聞く必要はないよ、ビジター。その女も、いつかは消すことになる。……弱気になってるってことは、付け入る隙がある。殺せるうちに殺すんだ」
「後ろに引きこもっている奴が偉そうに言っても、状況は何も変わらないよ。クソババア」
少年は何も答えないが、戦闘は中断してくれた。
「ビジター、何故動かない? ……確かにレールキャノンの奪還が一番の目標とは告げたが、そいつの死も目標に設定してある筈だ」
「馬鹿だなぁオマエ。……少年、君はこいつとの戦闘でそれなり以上に消耗している筈。このままボクとガチンコはよろしくないんじゃない?」
二兎を追う者はなんとやらだよ。
そう続けてやったら、露骨に舌打ちされた。
それなりのでまかせではあるが、一応じいじから情報を貰っているのは事実だ。
それに、ブルートゥの罠を仕掛ける腕はそこそこだ。
ボクへの連絡が遅れるような奇襲を受けたとしても、すぐに相手へ一定の消耗を強いるだけの場を作れる筈だ。
そのうえで、下手なレッドガンよりも上澄みなこいつとの戦闘をこなしているんだ。
少年としても、このままボクと戦闘を続行するのは嫌な筈だ。
ボクにとって本当にまずいのは、この戦闘のどさくさでブルートゥにトドメを刺されてしまうこと。
怒りのあまり喧嘩を売ってしまったけど、このまま戦闘を続けて不利なのはこっちなんだよねぇ。
何気に、今の攻防でなんとなく察したよ。
この少年、そこそこなイレギュラーだ。
「……いつか絶対。お前達を殺してやるよ」
「おんや、交渉は成立かい?」
「忌々しいがね。ビジターが、レールキャノンを置いて二人が逃げるなら追いはしないってさ。こっちとしては心底不本意だが、せいぜい感謝することだね」
「そうかい……そいつぁ、ありがたいねぇ!!!」
「っ?! 避けるんだビジター!!」
そうして交渉を続けていくうちに少年のACに近づき、思いっきり拡張機能を展開する。
ボクの『スモークチキン』に搭載している拡張機能は、少年と同じアサルトアーマー。
それを至近距離で食らえば、如何に少年というそこそこのイレギュラーが操るACとて、特大の隙を晒す筈だ。
「じゃあね。次は殺す」
その隙を利用し、ブルートゥの『ミルクトゥース』を連れて全速力で撤退する。
理想を言えば今のであのイレギュラーには死んでいて欲しかったけど、それこそ二兎を追う者は一兎をも得ずって奴だ。
幸いなことにこちらへの追手はなくて、うまいこと二人して逃げ切ることはできた。
ミッション完了だ。
「アルノ……レールキャノン、は……」
「しゃべるな。悪いけど、着の身着のまま病院にぶちこませてもらう。お前は死んでいい奴じゃない」
「いい、え……。もはや、カーラを止めることはできない。……あのビジターを味方につけられたら、如何に貴女とて……」
「話は後で聞くから! お願いだから変なところで体力を使わないでブルートゥ!!!」
今にも消え入りそうな声だ。
正直なところ、ちょっとしんどい。
こんなところで、知り合いが死ぬだなんて嫌だ。
もう、そういうのはこりごりなんだよ……!
「アルノ……ルビコンから、脱出する準備を。この星に、この星系にいたままでは。カーラに、皆殺しにされる……!」
ブルートゥが、そんな決定的な何かを言った時には。
もうボクの耳は機能してなかった。
ボクが事の次第を知ったのは、ブルートゥが病院で何とか持ち直してからのことだった。
◆
「戻ったか、621」
「……話をしよう」
「先の一件で聞いたという『オーバーシアー』と」
「そして、俺の端末にハッキングを仕掛けたお前の『幻聴』について」
オーネスト・ブルートゥ
RaDの裏切り者にして、現ジャンカー・コヨーテスの頭目の男。
独立傭兵アルノとはRaD星外担当セールス時代からの付き合いであり、数年経った今でも共にタバコを吸ったりギャンブルに興じたりする程度の関係を続けている。
二年程前に他の場所へ降ろす予定だった逆関節パーツとブースターパーツを彼女へ横流しした。
この横流しは優れた傭兵とのパイプを築くことが目的であり、当時のカーラもその事情と当時の勤労態度を理由に『その場では』許したという。
原作では「重度の虚言癖を持つ人格破綻者」とされるが、本作ではその側面をある程度制御できているものとして定義。
本作の彼の本質は、すべてのルビコニアンへ重大な裏切りを目論むカーラに対し、並々ならぬ憎悪と恐怖を抱く点にある。
RaDの構成員時代にカーラの裏切りを知ったブルートゥは、原作同様RaDを裏切りレールキャノンと技術と資金を『持ち逃げ』した。
アルノの台頭で全体的にランクが一つずつずれている本作における、『ランク9』枠。
チキン・アルノ
独立傭兵アルノの、異名の一つ。特にドーザーたちが、彼女のことをそう呼ぶ。
名の由来は『臆病者』……ではなく、チキンが好物であったり逆関節パーツ『スプリングチキン』を使ったりエンブレムに鳥のモチーフを使ったりといった点にある。
要するに「お前どんだけ『チキン』が好きなんだよ」というツッコミと呆れによる異名。
なお当人は、この異名を酷く気に入っている。
もとより自身のACに「スモーク『チキン』」と名付けるセンスの持ち主であるが故、必然であった。
アルノ自身、感性も価値観もドーザー寄りのため、ジャンカー・コヨーテスと交流時の居心地はかなり快適なものと認識している。
※実はアルノさん、オーバーシアーについてはほとんど何も聞いてない。
→彼女が把握しているのはカーラがやべぇやつであることと、カーラさえ消せれば一端は丸く収まるだろうという点のみ。
→最後のブルートゥの台詞が殆ど耳に入っていないこともあり、彼女が事のやばさを知るのはもうちょっと先。